カテゴリ: 世界最強の女

日本女子サッカーのクライマックスは、現在のところ2011年の2011年FIFA女子ワールドカップ優勝です。

なでしこはUSWNT(米国代表)との死闘を制して優勝、澤穂希が得点王と最優秀選手に選ばれた、ドイツで開催の大会です。



あの大会で、米国ではすでに人気スポーツにのし上がっていた女子サッカー、USWNTの最年少選手として大きな注目を浴びていたのがアレックス・モーガンでした。

滅多にお目にかかれない〝スター然〟とした強烈なオーラを纏っていたストライカーでした。

決勝戦でも可愛い顔してるのにエゲつないにも程がある攻撃力で、なでしこを何度も崖っぷちに追い込みました。

とにかく、影響力のある女性でした。

私の友人の娘さんが全米代表のジュニアチームに選抜されるほどサッカーのめり込んだきっかけも、やはりアレックスでした。


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ESPNはスーパースター引退を伝える冒頭で「There is no weight like the expectation of being the next star of the U.S. women's national team.〜USWNTの次期スター候補と期待されるほどの重圧は他に存在しない」と書き始めています。


2009年代表デビューを果たした20歳はすでに、伝説のミア・ハムと比較されるほどの才能を撒き散らせていました。

そして「Just as Hamm came to be known simply as "Mia," Morgan is known to most as "Alex" without any other qualifiers needed.〜ミア・ハムが〝ミア〟と呼ぶだけで彼女を指すように、アレックス・モーガンも〝アレックス〟だけで誰でもわかる存在になったのです」。



特別な美貌を持つアスリートは、いつの時代でもスペシャルです。

サッカーで真っ先に思い浮かぶのは、男子のデービッド・ベッカムでしょう。

ピッチの外でもファッションや言動で芸能面を賑わせた点では、共通していますが、アレックスとベッカムは決定的に違います。

アレックスはセクハラや賃金など、男性優位の社会で虐げられた女子アスリートの代表として、敢然と戦いを挑み勝利を勝ち取る、ピッチの外でもストライカー…というかファイターでした。

この意味で、アレックスはベッカムよりも、モハメド・アリに近いグレートでした。



There is no weight like the expectation of being the next star of the U.S. women's national team.〜USWNTの次期スター候補と期待されるほどの重圧は他に存在しない。

この世界一重いスーパースターのトーチをアレックスから受け取るのは、誰になるのでしょうか?




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チェコの小さな町、ドマジュリツェに〝凱旋〟した北口榛花。

NHKをはじめ、多くの民法テレビが報道したので目にした方も多いのではないでしょうか。

人口1万人の町、200人のお出迎え。こじんまりした〝凱旋〟でしたが、日本人として見ていて嬉しくなる映像でした。

「(チェコ名物の)ビールは好きか?」と聞かれた北口は「ビールは苦くて嫌いだったけどチェコに来て飲めるようになった」と答えていたのが、印象的でした。

ここからは私の勝手な想像ですが、彼女は今もビールを好きではないと思います。

大会で優勝してレポーターから「今、何がしたい?」と聞かれるのを何度か見ましたが、「チェコのビールが飲みたい!」とは一度も聞いたことがないからです。

実際はそうではなくても、そう発言したならチェコをますます喜ばせることができるのに、彼女はそういう、良い意味でリップサービス、悪くいうとウソはつけないアスリートです。

そんなわざとらしさが微塵もないのも、魅力の一つかもしれません。



月陸、雑誌「月刊陸上」のチャンネルです。



…高校時代、野球部と兼部する形で陸上競技部にも籍を置いていた私。

短距離と跳躍、複合競技をこなす、ひとつ上の先輩から「野球やってるならヤリを綺麗に飛ばせるって言われてんの知ってる?これ、逆もまた然りなんやけど。強肩やって聞いてるで、君」と、私にちょっと投げてみろとヤリを渡してきたことがありました。

野球の強肩選手は投擲種目にも向いているーーーというのはメカニクス的にも正しいのですが、だからといって全く同じではありません。

私が初めて投げたそのヤリは、急に失墜する紙飛行機のように20メートルほどゆらゆら飛ぶと地面に刺さることなくパシャっと腹這いにワンバウンドしました。

先輩は、何度投げてもきれいな放物線を描かない私の槍を大声で笑いまくりました。

先輩が短い助走で力感なくスッと投げると、槍は放物線の弧を描きながら、30メートルほど飛んで土のグラウンドにきれいに刺さりました。

「君は中長距離を走ってればよろしい」と言われた私は全く悔しくなかったのですが、槍は奥深いなあと感心したのを覚えています。

記録会や試合のスタンドには、強豪校の投擲ブロックが作った応援横断幕がいつも翻っていました。

そこには、力強い真っ黒の筆文字で「描け、大放物線」と揮毫されているのです。



中高だけでなく、大学の陸上競技部でも投擲ブロックに入部する選手が世代を繋げず、槍やハンマー、円盤、砲丸が手入れもされずに錆びたり、劣化して使い物にならず、廃棄されているというニュースを聞きました。

1年ほど前に、よく顔を出す高校の野球部の子が「体育倉庫にあったコレはなんだ?」と2枚の円盤を重ねてガチャガチャ鳴らしながら聞いて来たことがありました。

円盤の周囲をぐるっと回る鉄枠が錆びついているのを見ると、さすがに悲しくなりました。

最近はカーボンファイバーを使った最新型が流通していて、しっかり手入れをしていてもとっくに〝引退〟している代物ですが、かつてこの高校の陸上競技部にも円盤投げの選手がいたということです。

北口榛花の活躍を見て、私も投げてみたい、俺も大放物線を描きたいという中高生が増えてくれたら嬉しいのですが…。

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【Český rozhlas(チェコ国営放送)】

Díky Haruce Kitagučiové bylo oštěpařské zlato tak trochu i české. 

私たちの誇りを取り戻してくれたのは、北口榛花だった。






私たちは陸上競技フィールド種目、特に投擲種目に思い入れがある国民だ。

五輪や世界大会でチェコ人が金メダルを獲れば国中が喜びに沸き立つし、そうでなければ落胆してきた。

負けてしまったときは、私たちの誇りが奪われたような気分になってしまって、その日は誰もビールを飲む気になれない。

飲む飲まないは別にして(笑)。

そういえば。世界の人々は大きな勘違いをしているが、世界で一番ビールを飲むのはドイツ人でもベルギー人でもない。

チェコ人だ。

そして、世界で圧倒的に人気があるのはピルスナービールであり、世界のビールのほとんどがピルスナービールなのだ。

何が言いたいのかって?

ピルスナービールはチェコのピルゼン地方で生まれたビールのことなんだ。

地球上の何十億人という人類が今日も明日も明後日もビールをたらふく飲むだろうが、あなたの喉を潤し、全身に活力を与えるこの飲み物がどこからやって来たのか、ほんの少しでもいいから思い出してくれたら、私たちも嬉しい。

ドイツでもベルギーでもないのだ、チェコなんだ!(笑)。



そういうわけだから、女子槍投げの世界記録保持者バルボラ・シュポタコバは私たちにとって、ほとんど神のような英雄だ。

私たちを誇らしい気持ちにしてくれて、美味しいビールを飲ませてくれるのだから、まさしく神だ。

バルボラが2008年の北京、そして2012年のロンドンで大放物線を描いて金メダルを持って帰って来てくれてから、もう10年以上も経ってしまった。

そして、バルボラは2022年の欧州選手権で3位になって引退してしまった。

私たちの太陽が沈んでしまったってことだ。

私たちは、少し長い間、暗いトンネルの中をとぼとぼ歩かなければならない…そう覚悟しなければならないはずだった。

しかし、不思議なことにそんな予感は、湧いてこなかった。


プラハから南西に130kmも離れたところに、ドマジュリツェという小さな町がある。

そこに、アジアの最果てからやって来た一人の女性が2018年に「憧れのシュポタコバの国で槍投げをマスターしたい」と住み込んでいた。

デービッド・セケラックの指導を受ける、ただそれだけのために。

セケラックの名前は、チェコの陸上ファンでも知らない人がいる。つまり、無名だ。セケラックはジュニアのコーチの一人に過ぎなかったのだ。

北口は「フィンランドで参加した国際講習会でセケラックの指導法に惹きつけられた。私はシュポタコバのチームに入れてくれなんて言えるレベルじゃない」と、チェコ語はもちろん、英語もほとんどできないのに何度もメールを送って、槍投げの優秀な指導者がいるということだけしか知らない私たちの国に、たった一人でやって来たのだ。



申し訳ないが、私たちも、極東の最果てにある日本について何も知らない。他の欧州の国と同様に、中国と韓国と日本の区別もついていない。

しかし、怒らないでくれ。

私たちはあなたたちにビールを捧げた。そして、あなたたちは私たちに金メダルを取り戻してくれた。

金色の飲み物と、金色のメダルを交換したんだ。

これでイーブン、貸し借りなしだ。

だろ?



それに、私のようなメディアに携わる人間なら、日本のことを少しは知っている。

マンガとアニメの国で、みんな子供のように小さくて可愛い。

やはり、北口榛花もアニメの主人公のように前向きで天真爛漫で可愛らしかった…しかし、彼女は小さくはなかった。

そして、彼女は大嘘つきの傾向もあった。

「私はレベルが低いから、シュポタコバのチームに入れてくれなんて言えない」というのは、アジア人によくある謙遜の中でも、呆れ果てるほどの最上級の謙遜だった。

彼女が大嘘つきだという証拠は、ちょっと調べただけでいくらでも出てくる世界大会の鮮明な動画を見れば誰にでもわかる。

彼女は世界陸上やダイヤモンド・リーグの大舞台、絶体絶命の最終投擲で全てをひっくり返して金メダルをかっ攫って見せた。そう、やはり日本のアニメの主人公のように。

そして、優勝インタビューではチェコ語で喜びを爆発させてくれるんだ。槍投げと同じくらいにどんどん上達するチェコ語で。

それを聞いたチェコ人がどんな気分になるのか、あなたたちにわかるだろうか?

「誰か教えてくれ。チェコ人が北口榛花を嫌いになるには、どうしたら良いのか?」という気分になってしまうのだ。

昨年、チェコ人が全員敗退してしまったブダペスト世界陸上の決勝で、やはり最終投擲で大逆転の金メダルを獲って、北口が「チェコに教えてもらって優勝した」と、いつものように破顔一笑、チェコ語で叫んでくれたとき、私たちは北口榛花を嫌いになる方法も理由も永遠に失ってしまった。



あの世界選手権で、孤高の英雄バルボラ・シュポタコバは、外国人の北口が最終投擲の助走を始めたとき絶叫して応援していた。

英雄は「私たちはパリで必ず誇りを取り戻す」と興奮気味に宣言した。

それがどういうことなのか、少しだけ複雑な話になるけど、肌の色やパスポートの国籍を重視する人にはわからない話だろうけど、北口榛花の胸には日章旗が縫い付けられているけど、北口榛花はどう見てもアジア人かもしれないけど…図々しい話だが、彼女は私たちにとってはチェコ代表でもあるということだ。

きっと、こういうことは日本の人は嫌がるだろう。日本だけでなく、どこの国でもそうだろう。

自分たちの国のヒーローが獲った金メダルを「チェコの取り分もある」というようなものだから。同じことを言われたら、私たちだって嫌な気分になるかもしれない。

それでも、それは偽りのない気持ちなんだ。

いや、「金メダルの取り分」じゃないな。私たちは、北口榛花の金メダルを日本人よりも喜びたいんだ。

まあ、どっちにしても厚かましい話ではある(笑)。


"Je to bojovnice, zapsala se do dějin. Je to obrovský úspěch. Předvedla hezký výkon šestým hodem, takhle se vyhrává. Moc hezký a navíc ještě ta česká stopa. Samozřejmě by bylo lepší, kdyby tam byla nějaká naše oštěpařka,"

インタビューを受けたり、フィールドを離れている彼女は底抜けに明るいパーティガールだが、槍を握った途端にファイターになる。

すでに榛花は歴史に残るジャベリンスローワーだが、来年のパリ五輪でまたヨーロッパに来て、彼女は最後の証明書に署名するだろう。


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そして、その通りになった。



最後に。

野球が大好きな日本人にお伝えするのを忘れてはならないことがある。

アトランタ・ブレーブスのトライアウトを受けてアメリカ中の話題を集めたヤン・ゼレズニーもチェコ人で槍投げの世界記録保持者なんだ。



ありがとう、北口榛花。

ありがとう、日本。



以上。






*************



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本当ならチェコの英雄・北口榛花のホーム旭川の地酒「男山」あたりを飲みたかったのですが…自宅の貧弱なサケナリーには見当たらず。

新潟の限定品「雪国 甚九郎 生酒」を。

しかし、チェコのビール「ピルスナー・ウルケル」は2本だけあった!!!

乾杯!

うう、しかし、甚九郎…美味すぎる。


昨年のワールド・ベースボール・クラシックでも大きな話題を呼びましたが、チェコは気質的にも日本人と相性が良い国です。

おめでとうございます、北口榛花。

おめでとうございます、チェコ共和国。


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勝つべき人が勝つ。

実はそれがどれほど難しいことか、スポーツファンはよく知っています。

そして、五輪の舞台は特別です。

陸上競技の本物のチャンピオンは、ダイヤモンドリーグのシーズンを戦い抜いて勝ち名乗りを挙げる優勝者です。

しかし、一発勝負にも関わらず、オリンピックの舞台は特別です。

いつも満面の笑みで大声で笑う女性が、ずっと厳しい表情でヨーロッパ最高のスタジアム、スタッド・ド・フランスの美しい芝のフィールドを睨みつけていたのは、そこが特別な場所だからです。

彼女は、勝つべき人でした。

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陸上フィールド競技の面白さの一つは、他の競技ではあり得ない心理戦を孕んでいるからです。

早い段階の投擲や跳躍で記録を出して、ライバルを威圧する。それに威圧されない不屈のアスリートは最終投擲や跳躍で全てをひっくり返して見せる。

北口榛花は間違いなく、後者のアスリート。逆転の女王様でした。

その彼女がオープニングスローで勝負を決めました。

大きな大会で優勝しても周囲に笑顔を振りまいていた女性が、まるで目の前しか見えていないように狂喜する姿、スタッド・ド・フランスの勝者だけに許された鐘撞で子供のように鐘を打ち鳴らす姿を見て、五輪が特別であることを改めて思い知らされました。



「PARIS 2024」と刻印されたあの鐘は五輪が終わると取り外され、ノートルダム大聖堂の鐘楼の一つとして吊るされるそうです。

なんと洒落た発想でしょう。腹立つくらいにお洒落です。



パワー競技(この表現は高度な精密技術をマスターした北口に失礼千万ですが)で日本女子が世界を圧倒してみせるーーー今回は逆転のドラマを見せてくれませんでしたが、かっこ良すぎるよ、北口榛花さん。


いつかノートルダム大聖堂に行って、北口が打ち鳴らしたあの鐘を拝みたいと思います。




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「なぜこの試合を地上波でやらないのか!」と、怒り爆発のレスリング53kg級で金メダルを獲得した藤波朱理の試合。

53kg級、ボクシングでいうとバンタム級です。プロボクシングの4団体のチャンピオンは日本人が独占していますが、藤波は〝5人目〟。

メディアの扱いは、5人の中で比較にならないレベルでずば抜けています。



国民的関心が高いスポーツを「特別指定」して有料テレビやネット配信による独占中継を禁止した英国放送法の一つが
ユニバーサル・アクセス権。日本でも2022年サッカーW杯から話題になりました。

井上尚弥らボクシングの世界戦について「地上波でやれ!」なんて声はほとんど聞かれません。「特別に高い国民的関心事」とはいえないからです。

では、藤波は「特別に高い国民的関心事」と言えるかどうかです。藤波の知名度がどれほどあるか?となると、井上より下です。

しかし、五輪は「特別に高い国民的関心事」であり、もっと集約すると日本人の金メダル獲得が「国民的関心事」です。

今回のパリ五輪で、最も金メダル獲得の可能性が高いと見られていた藤波のチャンピオンシップが「特別に高い国民的関心事」であることは明らかでした。

決勝で激突したルシア・ジェペスは昨年の世界選手権で勝利している相手でしたが、7失点を喫して〝苦戦〟を強いられました。

20歳の日本人は「(勝ってはいても)悔しかった」と〝リベンジ〟のチャンスを待ち望み、23歳のエクアドル人は王者の気迫に気圧されているように見えました。

藤波の強さは「あれほど(多彩な技を駆使して)器用に攻める選手はトップレベルでもまずいない」(ソウル五輪金メダリスト小林孝至)。

ブルース・リーの「私が恐れるのは1万通りの蹴りを一度ずつ練習した者ではない。私が恐れるのは、たった一つの蹴りを1万回練習した者だ」の言葉を借りるなら、最強は「1万通りの蹴りを1万回ずつ練習した者」です。


圧倒的な力の差を見せつけ、10−0で見事〝リベンジ〟した藤波は、これで137連勝。最後に敗れたのは中学2年のとき。

吉田沙保里、藤波のコーチでスパーリングパートナー伊調馨、少女の面影を残す藤波は最強の系譜を受け継ぎ、完成型になろうとしています。


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ESPNの総合トップページをなでしこジャパンが飾りました。

大谷翔平は数えきれないほどあるものの、ボクシングでは井上尚弥や井岡一翔らでも一度も実現出来なかった快挙です。

なでしこが準決勝で当たるUSWNT(米国代表)、これが米王で問答無用のメジャーという背景はありますが…。

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Surviving group of death will have prepared Japan for huge quarterfinal test against USWNT〜死のグループから勝ち上がった日本代表は米国代表との大一番に挑む。

ウィリアム・ヒルのオッズはUSWNTの勝利が4/7(1.43倍)、なでしこ17/5(4.4倍)。

なでしこが勝ったのは、あの2011年World Cupでの激闘だけ。

W杯優勝後も、USWNT史上最高のスーパースター、アレックス・モーガンに好き放題される敗北を繰り返してきました。

4.4倍。大したオッズじゃありません。強さの反対語が弱さではありません。スポーツの世界において、強さと弱さは、同義語とは言いませんが、紙一重の類似語です。

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やっぱり、五輪は最高です。

ロシアは排除でイスラエルは参加、採点競技のモヤモヤ感、そして阿部詩の独唱、さらに五輪を慮ってユニコーンはノーヒット試合を継続…世知辛い現実を忘れさせてくれるのが清廉なスポーツなんてわけはなく、美しいものも薄汚いものも全部包含した世界の縮図を見せてくれています。

開会式で混交した素晴らしさと薄汚さなんて、その象徴です。

なんて、酔っ払いの戯言はこの辺にしておいて、下手くそなりにずっとスポーツをプレーヤーとしてやってきて良かったと思うことがあります。

イでも交友関係が増えるということは、もしかしたらスポーツをやり続ける最大の成果物かもしれません。

今夜もオンラインでバレー部の面々と女子バレーを見ていたのですが、こっち側の質問に短く完全な答えを速射でピピッと返してくれるのはありがたいにも程があり、楽しすぎる時間でした。

「陸上始まっても、俺は一人で見たいからすまぬ。というか最近はダイアモンドリーグもほとんど見ないからよく知らんねん」という私を受け入れてくれる、おおらかな友よ…といってもかなり久しぶりに会うので顔は覚えていても名前が出てこないという、かなり申し訳ない状況なのですが。

期待されていた男女バレーボール、決して弱いチームではありませんが、強いと言い切れるチームでもありません。強いチームとは一次リーグで苦戦しても、ステージが上がると徐々にリズムを取り戻し、調子を上げてゆくようなチームです。

日本は、つまり、初戦に勝って勢いに乗る必要があるチームでした。

過去2大会でオリンピックに嫌われた女、古賀紗理那が、やはり3度でも厳しい現実を突きつけられて散ってしまうのか、それともこの大逆風でもまさか散らないのか、しっかり見届けましょう。




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角田夏実が金メダル第1号。

いや、強かった!

準々決勝のシリーヌ・ブクリ戦が一つの山場と思われましたが、警戒されまくっていた巴投げで見事な一本勝ち。

準決勝は対戦相手の18歳のスウエーデン選手(タラ・バブルファス)が可哀想な判定でした。角田も納得できる勝利ではなかったかもしれません。

そのバブルファス、3位決定戦に勝利。銅メダル、おめでとうございます!美しい女性です。まだ18歳、日本柔道の強敵に成長するのでしょう…お手柔らかにお願いしますね。

決勝のバルドルジもモンゴル人特有の体幹の強さを見せて難敵でしたが、いや、強い。

勝利の瞬間に微笑みすら見せない勝負師の顔が印象的でした。

感動して、嬉し泣きするのは人間だけ。泣きながら笑うのも人間だけ。




巴投げからグラウンドでの絞技へ。それが来月32歳になる、柔術にも精通した柔道家の、勝利の方程式です。

…方程式というか。それしかない、柔道家です。

彼女が最初に世界の頂点に立ったのは2016年のグランドスラム東京。それから8年間も世界からマークされ続けてきました。

迷いもあったでしょう。もっと幅広い技を習得して、引き出しの多い柔道家になるべきだと。

しかし、彼女はそれを貫き通しました。

そんな彼女が、ついに最高の舞台で、最高の色のメダルを掴み獲りました。

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格闘技の奥義を極めたブルース・リーは語りました。

I fear not the man who has practiced 10,000 kicks once, but I fear the man who has practiced one kick 10,000 times.

「私が恐れるのは1万通りの蹴りを一度ずつ練習した者ではない」と。「私が恐れるのは、たった一つの蹴りを1万回練習した者だ」。



角田夏実様。

金メダル、おめでとうございます。感動しました。



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大坂なおみが、ウィンブルドン1回戦をなんとか勝ち抜けました。

フランスのディアヌ・パリに2-1、勝負の第3セットは先にブレイクされる大苦戦の末に掴んだ薄氷の勝利。

元世界1位の大坂は四大大会で四度の優勝を勝ち獲っていますが、そのサーフェイスはいずれもハードコートの全豪と全米を2度ずつ。

芝のウィンブルドンは過去4年間は出場なく、最高成績は3回戦敗退と、テニスの代名詞どいえる大会は女王にとってジョーカーです。

追い詰められた第3セット、敗北のストレスに脆弱な一面を見せていた大坂は「負けても少しずつ成長しているところを示したい」と相手の攻撃に耐えました。

この大会がReturn of the Queen となる。そう確信するには至らない勝利でしたが、世界を破壊した強烈なサーブは徐々に戻ってきています。

「芝の女王」となって、再びビッグタイトルを手にするときが近づいています。





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パリ五輪の組み合わせ抽選が終わりました。

日本のプールBは…ポット1:ブラジル(世界1位)、ポット2:ポーランド(4位)、ポッド3:日本(世界7位)、ポッド4:ケニア(20位)、の4カ国。

FIVBのランキングは、ボクシングのアルファベット団体ほどではないものの、五輪出場をすでに決めている国にとってはテストマッチやチューンナップで臨んでいるネイションズ・リーグ(VNL)の結果を受けたもので、日本の7位はかなり高めの評価です。

五輪金メダルを狙う国と、VNLで五輪出場枠を争う日本とでは競技レベルのステージが違うと言い切っても良いかもしれません。

ブラジルには勝てるわけがない、ポーランドはVNLでストレート負けしているようにランキング以上に格上。

ウィリアム・ヒルが叩いた出場12国の優勝オッズは以下の通り。カッコ内は世界ランキング。

イタリア(2位)4.00倍
トルコ(3位)5.00倍
ブラジル(1位)6.00倍
米国(5位)7.00倍
セルビア(9位)8.00倍
中国(6位)9.00倍
ポーランド(4位)10.00倍
日本(7位)11.00倍
オランダ(8位)51.00倍
ドミニカ(11位)67.00倍
フランス(19位)501.00倍
ケニア(20位)751.00倍

イタリアの4倍から日本の11倍までは、一ずつ積み上げた数字で、全体的にもかなりアバウトです。

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それでもセルビアまでの上位5カ国が決勝トーナメントに進出、優勝争いを繰り広げると見られています。

残る3つの枠はそれぞれのプールで3位に付けるであろう中国、日本orポーランド、オランダの4カ国で1次リーグの成績によって争われます。

バレーボール。

普段はあまり見ないスポーツですが、学生時代の運動部では必ず一定の勢力を持っていた時代を過ごしました。

練習場所は私は屋外、彼らは屋内であまり接点はなかったのですが、それでも何人かは古い友達がいます。

女子バレーとなると、男子と同等の注目度が集まる数少ないスポーツの一つでもあります。

野球やサッカーとは違い、ファーストインパクトで世界一になった女子バレーは重い宿命を背負い続けてきました。



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「東洋の魔女」の謂れは、1961年のヨーロッパ遠征で24連勝をマークした日本代表(日紡貝塚)の強さに、世界最強のソ連のメディアが「東洋から来た魔法使い」と報じたのが最初のことでした。

その翌年、敵地モスクワで開催された世界選手権。魔女たちは圧倒的不利の予想を覆して、無尽蔵のスタミナと回転レシーブ、揺れる変化球サーブによって決勝でソ連を撃破、金メダルを獲得します。

彼女たちは、大袈裟ではなく誰も見たことのない魔法を、確かに使ったのです。

あり得ない魔法は、あり得ない練習量と集中力によって現実のものとなりました。

練習の合間の水分補給、小休憩での軽食、短い昼寝までーーー1950年代末という時代に、現代にも通じる科学的なメソッドが、あり得ない練習量とあり得ない集中力を可能としたのでした。

そこには「練習中に水を飲むな」などという馬鹿げた根性〝論〟ではなく、勝利だけを追求する〝根性〟だけが純粋に科学的に研ぎ澄まされていたのです。

そして、東京五輪を翌年に控えた1963年。東京国際スポーツ大会では、「(ホームでやられた屈辱をアウエーで)やり返す」と雪辱に燃えたソ連を3−0のストレートで返り討ち。

世界最強を再び破壊した東洋の魔女に、皇太子夫妻は拍手を送り、横浜文化会館を埋め尽くした大観衆は熱狂しますが、当の彼女たちは「負けるわけがないじゃないか」と平然としていたと伝えられています。

そして、東京五輪。もはや、立場は逆転。ソ連が番狂せを起こす側でしたが、それは起きませんでした。



東京1964から60年もの歳月が経過しています。

ソ連はすでに崩壊して、その名の国は地球上に存在しません。そして、舞台はパリへ。

世界最強を当たり前に倒した魔女たちの血脈を受け継ぐ日本代表は、悪戦苦闘にのたうち回りながらなんとか五輪出場の切符を掴み取りました。

時代は変わりました。

当たり前です、60年とは、何もかもを変えてしまうのに十分すぎる時間です。




何もかも変わった世界で、半世紀以上も頂点から遠ざかっている代表を率いるのは、古賀紗理那。

彼女は魔女ではありません。

代表メンバーに落ち、怪我に泣いた、五輪に嫌われ続けたバレーボール選手です。

そして、彼女をパリで待ち受けてるのも、また悲劇かもしれません。


それにしても、ウィリアム・ヒルの11倍は失笑するような数字です。好調の大谷翔平のホームラン打率並みです。現実には110倍ですらないでしょう。


21世紀のパリに東洋の魔女は再び現れるか?そんな可能性が1%もないのは、誰にでもわかります。

そう、1%もありません。


それでも、たったの1%もありませんが…、0ではありません。



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19日に、パリ五輪のグループ分け抽選会が行われます。

この手の話題で必ず耳にするワードが「死のグループ」。世界ランキング1位ブラジルのプールB、2位イタリアのプールCには入りたくありません。

世界ランキング7位の日本が決勝ラウンドに進出する可能性がより広がると考えられるのは、開催国の世界ランク19位フランスのプールAを引き当てることです。

とはいえ、8チームが進む準々決勝ラウンドが目標ではありません。

だったら、どこのグループに入ろうが関係無し。

死のグループ、上等です。


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