カテゴリ: 人気階級で旋風を巻き起こすのだ!

WBAインターコンチネンタル・ジュニアウェルター級タイトルマッチ

王者ジャック・カテロール、挑戦者ホルへ・リナレス、ともにリミット一杯の140ポンドで前日計量をクリア。

38歳のリナレス、仕上がってます。30歳、今が全盛期のカテロールも気合い満々。

エディー・ハーンは「英国にとっては苦い思い出をたくさん作ってきたレジェンド」とリナレスを紹介。「直近2試合で連敗しているのは、準備不足のままロシアで戦ったから。彼はまだこの階級のトップファイター」。

リナレスは正確には3連敗。2018年5月のワシル・ロマチェンコ戦から数えると8戦3勝5敗。5敗のうち三つがKO負け。ベネズエラのゴールデンボーイにキャリアの終焉が迫っているのは間違いありません。

そして、リナレスは140ポンド級で戦うのはこの試合が初めて。

いつものことながら、ハーンは「嘘をつく、嘘を重ねる」というプロモーターの仕事に忠実です。

そのハーンはこの試合の勝者を、12月9日に行われるWBCジュニアウェルター級王者レジス・プログレイスとデビン・ヘイニーにぶつける計画です。

さらに、ライアン・ガルシアとのビッグファイトの可能性もあると口にしていますが、これは〝プロモーターの仕事〟

現在のオッズはカテロールの勝利が1/9(1.11倍)、リナレス11/2(6.5倍)。立ち上がりから英国人が圧倒的有利と見られていた試合、その旗色はますます濃くなる一方です。

軽いクラスでも打たれ弱かったリナレスが、初の140ポンドでカテロールのパンチに耐えることは出来ないーーー常識とハーンの台本にはそう書いていますが、そうはならないのがボクシングのリングです。



さて、今回の舞台はキャパ1万人のリバプール・アリーナ。見やすそうなアリーナです、行ったことないけど。

アンダーカードには140ポンド史上屈指の人気者リッキー・ハットンの息子で13戦全勝無敗のキャンベル・ハットンも登場、偉大な父親と同じ10ストーン(140ポンド)級のリングに上がります。

ジュニアウエルター級(63.5kg)の試合が3試合盛り込まれた明日のイベントでは、英国以外ではなかなか耳にできない「テンストーン!」のアナウンスコールが聞けそうです。

日本は完全に「kg」単位に毒されてしまい、尺貫法に愛着を感じている人なんてほとんどいないでしょうが、尺貫法なら100斤級(60kg)が人気クラスになりそうです。
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「俺のことを全盛期の強い相手と戦ってないと非難する奴がいるけど、ジャーメル・チャーロは誰と戦ったんだ?まさかブライアン・カスターニョか?」。

「チャーロは168ポンドで戦ったことがないだけじゃない。俺のレベルのファイターとは一度も戦ったことがない」。

「もう長い間、世界で最も注目される大きな試合で戦ってきた。そして、その度に感じるよ。誰もが俺が負けるところを見たいんだと」。

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今なお、カネロ・アルバレスを突き動かしているモチベーションがあるとしたら「俺が負けるのを楽しみにしている奴らの思い通りにさせてたまるか」という反骨もその一つかもしれません。

現在のオッズはカネロ勝利が1/4(1.25倍)、チャーロ3/1(4倍)。
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【英国BBC】British heavyweight Joe Joyce was sensationally stopped in the third round by Zhilei Zhang in London, leaving his dream of securing a world-title shot - and perhaps his career - in tatters.


英国のヘビー級、ジョー・ジョイスはロンドンでヂャン・ヂレイに衝撃的な3ラウンドKOで敗れ、世界王者への夢はもちろん、おそらくそのボクシング生命も絶たれた。
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日本の「大谷翔平報道」が他国から見ると信じられない熱狂であるように、メディアの報道量は非常に恣意的なものになります。

中国のヂャン・ヂレイ(張志磊)がジョーンズ・ジョイスを完璧に破壊して、ヘビー級トップ戦線に躍り出ました。

「日本のボクシングファン」は、アジア人がついにヘビー級の王者になっても不思議ではないポジションまで駆け上がったという、驚きと歓喜を持って受け止めましたが、日本メディアの報道は遅く、控えめです。

中国メディアも丸一日経っても大々的な報道をしていません。韓国でもフィリピンでも見当たりません。

アジア大会が開幕したというタイミングはあるのせよ「世界ヘビー級」という、これまで誰も夢想だにしなかった高嶺の花畑にアジア人が史上初めて足を踏み入れたという事実を、まだ受け止めることが出来ていないのかもしれません。

張は「WBOヘビー級暫定王者」ですが、世界的に暫定王座は認められていません。つまり、張はまだ世界王者ではないということです。

また、ボクシングの世界王者は世界の統括団体ではなく、主要4団体(WBA/WBC/IBF/WBO)が認定する摩訶不思議なシステム。

現在の張のステイタスは「世界最強候補」の一人に過ぎません。

それでも、アジア人が世界ヘビー級で最強候補の一角に楔を打ち込んだことは、歴史上初めて。間違いなく大偉業です。



さて「暴論サロン」です。

そこは、大っぴらには言えないけど事実と真実を語る地下酒場。

「アジア人が世界ヘビー級王者になる」。その夢には実現不可能と思われたロマンが充満しています。

マニー・パッキャオを突然変異の例外として、ウエルター級もアジアにとって前人未到の階級ですが、ヘビー級とは違い、数は少ないものの挑戦する機会が与えられたクラスでした。

しかし、ヘビー級は挑戦すらさせてもらえない、「アジア人・立ち入り禁止区域」だったのです。

日本で好き勝手できるジュニアフェザー級以下の軽量級は、欧米ではほとんど認知されていません。それと同じように、日本や中国、東アジアではスーパーミドル級以上の重量級世界的な動向が詳しく報道されることはありません。

日本のボクシングファンの中には「バンタム級とクルーザー級、欧米でどっちがメジャー?」と聞かれて「バンタム級」と答えてしまう人もいるかも知れませんが、国内ランキングがまともに組めない軽量級はボクシングファンでも興味の対象になり得ません。

そして「暴論サロン」的に語ると、欧米が軽量級に興味を示さないのは、残念な話ですが彼らが軽量級を軽蔑している側面もあることは否定できません。

そして、アジアが重量級、ヘビー級に興味を示さないのは、それらを軽蔑していることは一切なく、むしろ「どうせ俺たちは弱いから」「どうせ俺たちは強い階級では通用しないから」という負け犬根性、諦めが発露になっていることも否定できません。

村田諒太があれほど大きな神輿に担ぎ上げられたのは、文句なしの人気階級、ミドル級で五輪金メダルを獲得したからです。

人気階級には、ノニト・ドネアやスティーブン・フルトンのように普通旅客機(世界王者でもエコノミークラスが定番)で来日するのが当たり前の軽量級世界王者とは違う世界が広がっています。

つまり、飛行機も、泊まるホテルも、滞在日数も、何もかもが全く違うのです。

これ、逆はあり得ません。

欧米でもジュニアフェザー級以下の世界王者が誕生することはあっても、ストロー級になるとヨーロッパ大陸ではまだ一人も誕生していません。

英国でポール・ウェアーが1993年にIBFストロー級王者に就いたのが唯一の例外で、以来30年間も欧州ではストロー級王者を輩出することが出来ないままです…が、欧州のボクシングファンが「史上二人目のストロー級世界王者を待ち望んでいる」なんて聞いたことがありません。

日本で軽量級の人気が高いのも、欧米での人気階級と比較しての結果ではなく「欧米の人気階級は手が届かないから」という負け犬の諦めが先走っての結果です。

井上尚弥や井岡一翔、寺地拳四朗らだって、世界のボクシングを一通り学んでボクサーを志した時点で「好きな階級を選べばその肉体を与える」と神様に告げられたら、絶対に軽量級は挙げないでしょう。

村田のミドル級や、欧米の人気階級のメガファイトの報道を「軽量級の興行と比べられると困るから(軽量級にはメガファイトなんて存在しない、欧米では全く人気がないことがわかるから)本当はやめてほしい」という声を、関係者から聞いたことがあります。

これ、大間違いです。

このブログでも「軽量級を賛美する嘘も必要、嘘も方便」みたいな意見を寄せられることもありますが、大間違いです。

普通の思考回路を持っていれば「専門家評価が変わらないドネアとゴロフキンなのに、どうして乗る飛行機は全く違うの?」なんて疑問は持ちません。

村田や張志磊の登場は、軽量級ファンにとっても「事実を大っぴらにされたら困る」と考える人たちにとっても、長い目で見ると実は喜ばしいことなのです。


井上と張を比べてどちらのボクシングが美しいか?あるいは凶悪か?(ボクシングにおいて「美しい」と「凶悪」はほとんど同義語ですが)。

あるいはさらに、重岡銀次朗は井上に十分対抗できるスタイルを完成させているように見えませんか?

もちろん、重量級の選手の動きが鈍く、パンチの回転数が物足りない、スタミナの無さも論外なのは、人類の骨格と生理の限界に近いから。ネズミのように動けるゾウなど存在しません。

さらに、生でリングサイドで観戦できる幸運に恵まれたとしたら世界ヘビー級タイトルマッチが一番のお薦めです。

私が見たのは国技館のビチェスラフ・ヤコブレフと、有明コロシアムのニコライ・ワルーエフでしたが、ちょっと尋常でない感動でした。

https://fushiananome.blog.jp/archives/29342921.html

とはいえ、ほとんど全ての試合はテレビ観戦、中にはスマホで済ませたメガファイトもあります。そこでは、画面上のスピード、パワー、そして技術とスタミナ、すなわち軽量級で満点が取れる項目しか視覚できません。

さて、張志磊のせいで、またまた終わりのないシリーズが幕を開けてしまいました。
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WBOヘビー級暫定王者ヂャン・ヂレイ(張志磊)が、ジョー・ジョイスを鮮やかに返り討ち。世界へびー級のトップを争う存在であることを強烈に印象づけました。

ジョイスとの2連戦、初戦は完全なアンダードッグ。再戦では試合が迫ってトップドッグに返りましたが、40歳の中国人が過小評価され続けてきたのは間違いありません。

今でも、WBC王者タイソン・フューリーはもちろん、Lineal /Ring-magazine /WBA /IBF /WBO王者オレクサンデル・ウシクと対戦するとなると、試合が始まるまでアンダードッグ。

試合が始ってからのイン・プレーのオッズではジプシーキングもウクライナの英雄も圧倒して見せるかも知れません。 

フューリーとウシクの陣営は、張のオファーにすぐ応えるわけがありませんが、40歳の中国人に残された時間は限られています。



唯一の敗北はフィリップ・フルコビッチ、評価の高い〝El Animal(クロアチアの野獣)〟に雪辱するのは遠回りに見えるかも知れませんが、ファンとメディアを煽るには格好の狼煙になります。

フルコビッチも張と同じ、ホームリングを持たない〝流浪のBサイド〟。都合良く世界戦を組んでもらえる出自ではありません。

そう、張もフルコビッチもAサイドにとっては非常に都合の悪いハイリスク・ローリターンなのです。 

それにしても、北京2008で金メダル獲得など輝かしいアマチュアキャリアを引っ提げて2014年にプロデビューしたとき、すでに31歳。あれから9年が過ぎました。

「問答無用のパワーで世界をネジ伏せた」という一点ではマニー・パッキャオを凌ぎ、アジア最高のファイターでしょう。

大谷翔平に迫るかも知れないアジアの奇跡(容貌と年齢は全く違います…)が、世界ヘビー級のリングを揺るがしています。 

それにしても、中国メディア(共産党)がこのニュースを報道しないことには違和感しか覚えません。 
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日本人の生息が許されない、禁断の階級。

階級の連続性を考えると、スーパーミドルならわかります。8ポンドのリミット差があるミドル級とスーパーミドル級の間に、ブラキストン線が存在するだろうことは、十分予想出来ます。

しかし、現実には最長不倒のミドルから二つも下のウェルター級で、日本人を寄せ付けない強烈な結界が形成されているのです。

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軽量級では団体統一戦でも日本国内で好き放題に出来るというのに、どうしてウエルター級では日本人が近づくことすら許されないのでしょうか?

もしかしたら、軽量級は「日本」に過ぎず、本当の「世界」はウエルター級だからなのでしょうか?

8月31日現在、ウエルター級の日本人ボクサーは72人。

寺地拳四朗らが活躍するジュニアフライ級の71人人、井岡一翔や中谷潤人がトップ戦線を形成するジュニアバンタム級の128人、井上尚弥が君臨するジュニアフェザー級の152人と比べると少ないものの、数字上は日本人がらみの世界タイトルマッチがもっと頻繁に行われていてもおかしくないはずです。

もちろん、世界のボクシング市場はフェザー級から潮目が変わり「ライト級以上になると日本人が好き勝手できないクラス」(村田諒太)になります。

ライト級の日本人ボクサーの数が108人と聞けば、競技人口が世界との距離を測るのに何の役にも立たないことがよくわかるでしょう。

ライト級で張り巡らされた〝日本人立ち入り禁止〟のイエローテープは、ウエルター級にもなると高圧電流が流れる鉄条網になります。

日本人がまだ一度も味わったことのない、禁断の果実ウエルター級。

「日本人では無理」。そんな忠告が貼られた鉄条網を突き破るファイターはいつの日か現れるのでしょうか?

それとも、例え4団体17階級の大水増し時代ですら、近づくことすら許されないのでしょうか?



〝津軽海峡冬景色〟。

まだまだ続きます。
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大谷翔平がホームラン・ダービーを独走、打点でも2位、リーディングヒッター争いでも上位に浮上。三冠王も不可能ではないポジションにつけています。

大谷がMLBでも結果を残すことは確信していました。そして、ファンとして大きな期待も膨らませていました。

しかし、それを超えて「いくらなんでも、ここまで期待していない」という領域に完全に突入しています。 

他の生物の常識でユニコーンを語ってはいけないのは、十分理解していたつもりでも、初めてユニコーンを見た私たちが持つ物差しは、既知の生物の常識しかありません。 

日本人が大谷にカタルシスを覚えるのは「パワーで世界を捩じ伏せた」と言う事実に行き着きます。

そして、そこに「アメリカ」「野球」という日本人が信仰するキーワードがブレンドされているのですからたまりません。

このブログでも繰り返しているように「野球」は環太平洋のほんの一部の先進国でメジャーなだけの〝ローカルスポーツ〟です。

しかし、日本にとっては「世界とはアメリカ」であり、力づくで倒すべき相手は「アメリカのメジャーヒーロー」でありながら、これまで誰もそこに辿り着くことが出来ませんでした。

それは、イチローも松井秀喜もなしえなかったスペクタクルです。

ボクシングは、米国でメジャースポーツとは口が裂けても言えませんが、私にとってはシュガー・レイ・レナードやマービン・ハグラー、マイク・タイソンらは、個人的には日本人がノックアウトしたら、大谷のサイ・ヤング&三冠王よりも大きなカタルシスを覚えていたでしょう。

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村田諒太がカネロ・アルバレスとの対戦が内定(コロナ禍で見送り)したときに膨らんだ期待の大きさ、種類は、カネロはメキシカンですが、そのリングが「打倒アメリカ」につながるからでした。

そして、なでしこが来週11日金曜日に待ち構えるのが、米国では堂々のメジャースポーツ、代表チームです。米国がスウェーデンに敗れてしまうと「打倒アメリカ」はお預けになってしまいますが、それはなでしこの責任ではありません。

もし、勝ち上がってきた米国代表を、なでしこがスペイン戦のように完全に破壊してしまうと、これは日本が倒した最強の「アメリカンヒーロー」と、みなして良いかもしれません。
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ホルヘ・リナレスが10月21日、英国リバプールのM&Sバンク・アリーナで、ジャック・カテラルとのジュニアウエルター級12回を戦います。 試合はDAZNが世界配信。




ベネズエラのEl Nino de Oro(ゴールデンボーイ)は2年前から帝拳を離れてロシアのRCCプロモーションと契約。

フェザー、ジュニアライト、ライトとレベルの高いクラスで世界王者に就いたリナレス37歳。2021年5月にWBCライト級王者デビン・ヘイニーに敗れてから3連敗と、輝かしいキャリアは正念場を迎えています。

対するカテラルは、昨年2月にジョシュ・テイラーのジュニアウエルター級Undisputed titleに挑戦、SDで敗れてしまいますが、多くのファンや専門家が「勝ったのはカテラル」という内容で、負けて評価を上げました。

リナレスはケビン・ミッチェル、アンソニー・クロラ、ルーク・キャンベルら人気者を破っていることから、英国ボクシングファンにはよく知られた存在。世界で最も歴史のあるボクシング専門誌、ボクシング・ニューズ(BN)誌でも長らくPFPランキングに入っていました。

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何故「歌舞伎町一番街ゲート」↑を透かしているのかよくわかりません。リング誌が廃刊に追い込まれても週刊で頑張っているBN誌は英語圏での唯一のボクシング専門誌?

リナレス、カテラルに勝てば次はテイラー!再び〝ユニオンジャック破り〟の快進撃が始って欲しいと思いますが…。
 
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「フェザー級になると少し風景が変わってくる。日本で好きなようにできる階級ではなくなる」(村田諒太)。

先日行われた井上尚弥とスティーブン・フルトンの試合は、ジュニアフェザー級以下では史上最大の興業規模、両者のファイトマネーは今回も正式発表されていませんが、史上最高をマークしたことは間違いありません。

フェザー級になると特殊な背景があったとはいえマルコ・アントニオ・バレラと戦ったナジーム・ハメドが850万ドルを手にし、レオ・サンタクルスやアブネル・マレス、カール・フランプトンらの報酬も100万ドルを大きく超えていました。

もちろん、彼らの厚遇は「メキシカン」「アイルランド人」「中東マネー」というキーワード抜きには語れません。
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それでも、日本人ボクサーの層が厚いにもかかわらず、フェザー級の世界戦が国内で行われることが非常に少ないことを考えると、ジュニアフェザー級とフェザー級の間に、生態系を区切るブラキストン線のような境界線があるのは明らかです。

あるいは、長年のボクシングファンなら、そこに境界線があることを肌感覚で理解しているかもしれません。

欧米でフェザー級のタレントが枯渇すると、日本に〝タライ〟が回ってくることもありますが「フェザー級からは日本やメキシコ、東南アジアなどではなく、アメリカやヨーロッパのマーケットになる」(村田)のです。

その意味で、ロベイシ〝電車〟ラミレスが日本に来たことは異例だったと言えるでしょう。

井上尚弥の場合、恋焦がれたラスベガスに需要はなく、日本に出戻り、ネット配信をスポンサーにビッグマネー路線を確立しましたが、おそらくまだラスベガスへの憧憬は残っているでしょう。

もちろん、マーロン・タパレスやルイス・ネリ、ジョンリール・カシメロ、亀田和毅との試合は日本限定でのメガファイト、ラスベガスの大舞台での需要はゼロ。

〝ブラキストン線〟を超えるのは最低条件です。

では、どのパターンなら井上がラスベガスの T-Mobileアリーナでメインを張る可能性があるのでしょうか?
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7月15日(日本時間16日)
ラスベガス ザ・コスモポリタン・チェルシー宴会場
media:USA Showtime/Japan WOWOW

WBCライト級挑戦者決定戦


米国のホープ〝The Ghost〟マーティンと、リオ五輪ライトウエルター級銅メダリストのアルメニア人〝The Original〟ハルチュニャンの無敗対決。

このイベントのセミファイナルには当初、ノニト・ドネアvsアレハンドロ・サンチアゴのWBCバンタム級王者決定戦がセットされていました。

しかし、25日T -モバイル・アリーナ開催のメガファイト(エロール・スペンスJr.vsテレンス・クロフォード)のアンダーカードで故障者が相次ぎ、ドネア戦が穴埋めで起用されることに。

The GhostとThe Originalからすると「俺たちをメガファイトの前座にしてくれ」と言う気持ちだったかもしれませんが、こっちを持っていってしまうと、米国での商品価値が低いドネアがメインになってしまいイベントが成立しません。

ドネアとサンチアゴからすると、宴会場からラスベガス最大の屋内アリーナに舞台が映されたわけですからラッキーです。




マーティンは「無敗の銅メダリストに初黒星を味合わせる。ターゲットはガーボンタ・デービス、デビン・ヘイニー、シャクール・スティーブンソン。俺から逃げるなと伝えてくれ」。

ウィリアム・ヒルの掛け率は28歳のマーティンの勝利が1/12(1.08倍)、32歳のハルチュニャン 7/1(8倍)。若さと勢いで勝るサウスポーが圧倒的に有利と見られています。
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1970年12月11日、ティファナ市立体育館。

3本のロープが張られたリングのキャンバスには何の広告もなく、世界タイトルを争う二人のトランクスにもその類のものは何も見当たらない。

潔いほどシンプルな時代だった。

ビセンテ・サルディバル、27歳。柴田国明、23歳。

この試合は日本でも衛星放送で生中継される予定だったが、通信機器の不調から急遽中止になってしまう。

日本ボクシング史上最高の海外ニュース、あの試合は生中継されなかったのだ。

オープニングラウンドで試合は決していた。王者は「こんなに強いとは、これは厳しい」と感じ、挑戦者は「勝てる」と、確かな手応えを掴んでいた。

12ラウンド終了TKOで、柴田は最初の世界タイトルを獲得。しかも、敵地メキシコで。しかも、王者はあのビセンテ・サルディバル。

完全ホームで大番狂せに散ったサルディバルだったが、勝ち名乗りを受ける柴田に近づくとその手を挙げて祝福してくれた。

“I learned from Saldivar the dignity of a champion, of honoring your opponent at the beginning and at the end.”

柴田は「サルディバルから対戦相手に敬意を表す王者の威厳を学んだ」と感動を語っている。

一方で、確実と見られていたサルディバルの防衛成功を祝うイベントは全部中止。宴会場では、粛々と食べ物などが片付けれられた。




そして、大騒ぎになったのは、日本。

衛星放送が中止になって、動画も画像もない「柴田がメキシコでサルディバルに勝った」というニュースだけがテレビやラジオで報じられ、東京や大阪では写真もない、柴田の勝利だけを短く伝える号外が配られた。

「お世話になったティファナの人たちにお礼をしたり、メキシコ見物してから帰国しよう」と考えていた柴田だったが、東京のテレビ局から出演オファーが殺到、すぐ帰国しなければならなくなった。

往きの飛行機はエコノミーだったが、帰りはファーストクラス。

出発のときの羽田空港は関係者しかいなかったのに、タラップを降りると空港にはファンが大勢詰めかけていた。

日本中が大騒ぎで、柴田は全く落ち着くことができない、そんな時間が1ヶ月も続いた。

 I had flown economy and flew back as a champion upgraded to first class. On my arrival in Tokyo, I realized the whole country was literally buzzing about my accomplishment. It lasted for a month.”


ーーービセンテ・サルディバルの生涯戦績は40戦37勝26KO3敗。

最後の試合は1973年10月21日。WBCフェザー級王者エデル・ジョフレに挑戦、4ラウンドでKO負け。世界戦で敗れたのはジョフレと柴田だけだった。

サルディバルが王者として敗れたのは、柴田だけ。




BoxRecによると、これまでリングに上がったフェザー級のプロボクサーの数は6万7607人(2023年5月31日現在)。

BoxRecが選んだ、その頂点に立つ史上最強のフェザー級は誰でしょうか?

普通にウィリー・ペップ?それともファン・マヌエル・マルケス?いや、やっぱりサルバドール・サンチェス?

全部、外れです。

史上最強のフェザー級はビセンテ・サルディバルです

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