カテゴリ: 人気階級で旋風を巻き起こすのだ!

Friday 14, November 2025

Kaseya Center, Miami, Florida, USA
commission:Florida Athletic Commission
promoter:Nakisa Bidarian (Most Valuable Promotions),
       Tom Brown (TGB Promotions),
                 Jake Paul (Most Valuable Promotions)

matchmaker:Tom Brown, Alex Camponovo,
Mike Leanardi
 
view on Netflix


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すっかりお馴染みのマグショット。指紋採取とともに慣れたものです。


「ボクシングがスポーツとして認められなくなるとか、そんなの俺には関係ない。スポーツとしてのボクシングが死んだのなら、そうじゃない(茶番劇)のボクシングでカネをもうけさせてもらうだけ」という発言通りに、14日にジェイク・ポールとのクルーザー級契約10回戦のエキシビションのリングに上がるガーボンタ・デービス。

しかし、リングよりも法廷に立つ方が多い生粋の犯罪者デービスがまたまたまたまたDVで訴訟を起こされ、イベントが延期されるのではないかと心配されています。

弱い相手を豪快にKOするだけの雑魚専デービスは「無敗でも殿堂入りには程遠い」と多くの専門家から断言され、PFPランキングでも大きなステップを踏めないまま、とうとうラモント・ローチに事実上のTKO負けを喫してしまいました(オフィシャルはドロー)。

マネジメントするフロイド・メイウェザーに「ワシル・ロマチェンコとは絶対に戦わせない」と明言されても、沈黙していたチキン。普通なら「ロマチェンコとやらせろ」と怒り狂うところですが、彼の怒りはか弱い婦女子にしか向いません。

lこのブログでは「デービスは強くない」と一貫してきましたが、ボクサー失格というか、人間失格の輩です。

それは、それで、いいのですが、14日のイベントにはまともな試合もセットされています。

平岡アンディがWBAジュニアウエルター級王者ゲイリー・アントゥアン・ラッセルに挑む大勝負もその一つ。

迷惑系YouTuberは、井上尚弥がラスベガスで初めて登場したジェイソン・モロニー戦と同じ時期にも茶番を繰り広げていましたが、米国でマニア以外の関心ゼロの軽量級とはいえボクシングメディアの注目度ですらもう全く比較にならないレベルで吐き気がしました。

いまのところ、プロモートするMVPから中止を伝えるニュースは入っていませんから」、大丈夫だと思いますが…。



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「大谷翔平はあっちでも大騒ぎなのか?」。

以前も書きましたが、米国在住の友人や会社関係者には「大谷翔平を全く知らない」という人も少なくありません。

もちろん、来日にあたって日本のことをいろいろ予習した人は、自分たちの国(米国)の野球に日本中が大きな関心を寄せていることを喜んで、大谷を応援、野球を知らなかった人でも野球ファンになるなんてことがあります。

米国勤務の日本人はさすがに母国の情報に通じていることもあり、日本では国民的英雄であることは知っていますが、それゆえに米国での認知度の低さに「盆暮れに帰国した時に『大谷はそっちでも大騒ぎなんでしょ』と聞かれると、正直に答えて良いものか困ってしまう」と泣きつかれることも。

ただ、これも私の皮膚感覚という超ローカルな地点からの印象ですが、ポストシーズンに進出すると明らかに違うフェーズに入ります。

スポーツニュースのトップで十分な時間をかけて報道されることが格段に増えます。

スポーツは別冊的に織り込む一般紙でも〝本体〟の一面で報じます。

もちろん、一般紙の一面だろうが、タイム誌の表紙を飾ろうが、米国で有名とは言い切れませんが。

それでも、レギュラーシーズンはメジャースポーツのハシクレだったのが、この時期は最もメジャーなスポーツだと勘違いするほど。

勝負事はやっぱり注目されるステージに立って、勝たなきゃダメ、いうことです。



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平岡アンディが11月14日(日本時間15日)にマイアミ州でWBAジュニアウエルター級王者ゲイリー・アントアン・ラッセルに挑戦することが決定しました。

舞台はカセヤセンター。Netflixが世界配信する「ジェイク・ポールvsガーボンタ・デービス」のメガイベントでセミファイナルに組まれると見られています。

ジュニアウェルター級で「世界」のストラップを獲ったファイターは、日本ボクシング史上3人しかいません。



最初は藤猛。1967年にローマ五輪銀メダリストのサンドロ・ロポポロを2ラウンドで仕留めてUndisputed championに。初防衛戦も4ラウンドでKOしますが、所属のリキボクシングジムとの金銭関係のもつれから、JBCに提出した引退届けは受理されず。

ボクシングに集中できないまま、WBCタイトルが剥奪され、WBAのみがステイクされたニコリノ・ローチェとの防衛戦に失敗(10ラウンド終了TKO負け)。

藤猛が在位(1967年4月30日〜1968年12月12日)していた時期は、すでにWBAからWBCが独立していたものの、一部の階級では王座は分裂していませんでした。



藤猛から19年後の1986年、浜田剛史がジュニアウエルター級のWBCストラップをレネ・アルレドンドから初回KOで鮮烈に奪取。

初防衛戦はのちの名トレーナー、ロニー・シールズに辛勝するも、2度目の防衛戦でアルレドンドと再戦し第6ラウンドTKOに散りました。

浜田の時代は完全な2団体分裂時代。WBAはウバルト・サッコやパトリツィオ・オリバ、IBFはジョー・マンリーやゲイリー・ヒントン、テリー・マーシュと地味な王者がパッとしない交代劇を繰り広げていました。

しかし、一つ下のライト級はWBAでレイ・マンシーニやリビングストン・ブランブル、エドウィン・ロサリオが闊歩、WBCにヘクター・カマチョが派手なネオンを煌めかせ、ジュニアライト級からフリオ・セサール・チャベスがライト級に食指を伸ばしていました。

満身創痍の浜田が安定長期政権を築くーーーそんなことは誰も期待していませんでしたが、一つ間違えば歴史的なスーパースターと拳を交えるタイミングだったのです。




ロサリオが「歴史的なスーパースター」といえるかどうかは別にして、1992年にメキシコの闘牛場でWBA王者ロサリオをわずか92秒で失神させてしまった平仲明信の大番狂せは歴史的でした。

リングに駆け上がったドン・キングとのツーショットも衝撃的でした。

当時のWBC王者はPFPキングのチャベス。IBFはパーネル・ウィテカー。現在とは違い、団体間の確執が深く、統一戦の実現は容易ではありませんでした。

それでも、藤猛の時代とは違い、堂々の人気階級になっていたジュニアウエルター級の牙城を日本人が崩したことに、大きな夢が広がった…そう感じたものでしたが。



ーーーそして、平仲明信の衝撃から33年。

この間、ジュニアウエルター級はますます日本から遠い存在のクラスになってしまいました。



今年6月には、さらに遠く彼方のウエルター級で佐々木尽がブライアン・ノーマンに人気階級の壁の厚さ、高さをまざまざと見せつけられました。

11月にアンディが挑むラッセルは、かつての勢いは失っているものの、強打のラッセル。

29歳のサウスポー、同い年対決の掛け率(bet365)はラッセル勝利が4/11(1.36倍)、アンディは11/5(3.2倍)。

兄の元WBCフェザー級王者ゲイリー・ラッセルの全盛期のような難解な相手ではありませんが、アンディにとってキャリア最強の相手です。

それでも、パワーもテクニックも大きく見劣りしません。

大きなダメージを負うことなく、序盤を潜り抜ければ十分チャンスがあるはず。


藤猛は第2ラウンド、浜田剛史と平仲明信は初回で勝負を決めました。彼らと同じ衝撃をフロリダから届けることが出来るか?

おそらく、アンディが序盤から仕掛けることはないでしょう。その意味では早いラウンドで試合が終わる可能性は高くありません。

もし、それが起きるとしたらアントアンが威嚇も込めてスタートからアクセルを踏み込み、アンディが迎え打たざるを得なくなった状況でしょう。

メインイベントのexhibitionがシナリオ通りに塩試合になるのは間違いなし。

世界配信の大舞台で、主役を喰うスペクタクルな大番狂せを期待します!

がんばれ、アンディ!!!






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スポットライトから外れた軽量級ファイターたちは、栄光と報酬を求めてライト級以上の人気階級を目指してきました。


「中量級の壁」なんて幻想だ。

佐々木尽の惨敗に際して、平岡アンディがボクシング・ビート9月号で絞り出した言葉です。

中量級。欧米基準でいうと軽量級はライト級以下、中量級はジュニアウエルター級からミドル級を指すことが多いのですが、日本ではライト級も含めてミドル級までの5階級、あるいはフェザー級まで「中量級」と表現することが珍しくありません。

ミドル級が事実上の最重量の日本では、ウエルター級〜ミドル級は文句無しの「重量級」になりますから、フェザー(羽毛)級が中量級という感覚は何もおかしなことではありません。

ライト(軽量)級からが欧米のボクシング。ジュニアフェザー級以下の軽量級は米国で州タイトルが存在しないことも普通にあります。

ライト級からの人気階級であるがゆえに層も厚く、報酬も高く、つまりボクシングに集中できる専業ボクサーの比率も高くなります。

人気階級のハードルが、不人気階級(軽量級)よりも高いのは当たり前で、そこに「壁」があるのも必然です。

その意味ではアンディの「幻想」という考えは間違っています。そこに横たわっているのは、幻想ではなく、厳しい「現実」です。

軽量級の井上尚弥や中谷潤人が人気階級で同じことをやってのけていたら、つまりライト級を手始めに3階級、4階級制覇を果たしてチャンピオンクラスのスターを根こそぎ倒していたら、世界の捉え方がまったつ違っていたことは、狂信的な井上信者ですら否定できません。

誤解を恐れずにいうと、人気階級はサッカーや野球とすると、軽量級はフットサルやソフトボール。コアなマニアは興味を示しても、カジュアルなファンは認知していません。

軽量級にも中谷潤人や井上尚弥のような強豪王者は生まれますから、彼らを倒すよりも中量級の穴王者に勝つ方が易しいという見方はできますが、一般的には「中量級の方がはるかにレベルが高い」のは言うまでもありません。

日本人中量級はなぜ世界に通用しないのか?

理由は簡単で「中量級はレベルが高い」「人気階級だから日本で好き勝手できない(チャンスが極端に少ない)」からの2点に集約されます。



どうして人気階級から目を背けるのか???の続きです。

今回もジョー小泉の通用しない理由は「技術の問題」という考え方もご紹介しながら。





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ボクシング・ビート8月号「ジョー小泉の珍談奇談」から「日本人中量級はなぜ世界に通用しない『世界の壁』突破の試案その1」について。

佐々木尽のウエルター級挑戦が惨敗に終わったことを受けての記事です。

「軽量級選手が多数、世界を制覇する一方で、中量級以上ではパワー負け、技術(特に防御)負け、スピード負けしている現実にどう対処すればいいのだろう」というテーマに迫っています。

そして、その対処法として「軽量級と中量級の教え方は違えるべきか」として、「手打ち、連打型の軽量級」「パワー、強打型の中量級」の差があるとして、結論は9月号の「その2」に持ち越されますが、教え方を変えるべきという立場を示しています。

「手打ち、連打型の軽量級」「パワー、強打型の中量級」という棲み分けは、非常に単眼的な見方で、ジュニアフェザー級の井上尚弥はもちろん、バンタム級を実質制圧している日本人選手を見ても「手打ち、連打型」では括れません。


「日本人中量級はなぜ世界に通用しない」、本当の原因は大きく二つ。

一つ目は、スタイルの差ではなく日本人が好き勝手できないクラスだからです。

具体的には、コストが大きく「挑戦機会があまりにも少ない」から「穴王者狙いのマネジメントが効かない」からです。

もし、ウエルター級が好き勝手できる階級なら、日本人初のウエルター級王者を狙う場合「まずはマリオ・バリオス」だったはずです。

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バリオスはウエルター級を好き勝手できるマニー・パッキャオに取られてしまいますが、〝まずは〟ならブライアン・ノーマンJr.は危険すぎます。

もちろん、そんな好き勝手を言っていては、チャンスが限定されている中量級ではいつまでたっても挑戦できません。何度失敗してもチャンスが与えられる軽量級とは全く違うのです。

そして、パッキャオやフロイド・メイウェザーが人気階級で見せたパフォーマンスは運動量豊富な軽量級のボクシングでした。

軽量級と中量級の指導に大きな差はありません。

「日本人中量級はなぜ世界に通用しない」原因の二つ目は、国内レベルが低いから。

世界レベルにある練習相手はゼロ、ほとんど手探りの状態でシャクール・スティーブンソンやアンディ・クルス、ノーマンに当たって砕けろとばかりに挑戦したのが吉野修一郎であり、三代大訓であり、佐々木尽でした。

贔屓目かもしれませんが、ダウン応酬のようなギリギリの戦いなら日本人は勝負根性で上回ったかもしれません。しかし、彼らとの実力差は勝負根性が試される次元ではありませんでした。

豊富で多彩な練習相手に不自由しない海外を拠点にするのは、「世界の壁」突破の解答になるかもしれません。

そして、村田諒太のように奇跡的にアマチュアでハイレベルのスタイルを確立したボクサーなら、プロ転向を機に米国を拠点にすべきだったと思いますが、多くのボクサーは早い段階から米国で練習・試合をすべきです。

亀海喜寛は日本でマエストロと呼ばれたテクニシャンでしたが、米国では小手先の技術は通用せず、天性の打たれ強さを全面に出した激闘型への転身を余儀なくされました。

真逆のスタイル転換を強いられながらも、最高峰の舞台でも潰されずにゲートキーパーの手前まで辿り着いた亀海はやはりマエストロだったのでしょうが、本来なら、米国でマエストロとして成長すべき才能だったかもしれません。

「挑戦機会が少なすぎる」「練習相手がいない」という問題さえ解決されていたら、ウエルター級の空白などとっくの昔に埋められていたはずです。

そして、日本のジムやファンがラスベガスを目指したいと本気で考えているなら、そこがメジャーリーグだという意識を明確に持つことです。

「軽量級でPFPに入ったからゴール」という考え方も間違ってはいません。

しかし、ラスベガスの大会場でPPVイベントのメインを張るのがメジャーリーグだとしたら、軽量級はベガスとは無縁の日本が主要地域のマイナーリーグなのです。


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マーク・マグサヨ、ダビド・ピカソ、ゲイリー・ラッセルJr.。PPV圏外の3試合を終えて、いよいよコース料理のお出ましです。

メインディッシュは現代ボクシングの腐敗を凝縮したマニー・パッキャオのカムバック。

注目は初回。まだ危険でトリッキーなタイミングを失っていないのか?

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ブランドン・フィゲロアvsジョエト・ゴンザレス

「前回(スティーブン・フルトン再戦)覇気がなかった」「世界レベルじゃなかった」というWOWOW解説陣のとおり、フィゲロアにとって重要な再起戦。

WBAフェザー級王者ニック・ボールへの挑戦権を賭けた試合です。

さんざん言われていますが、フィゲロアはボクシングを崩しています。

UD(116−112*2/115−113)でフィゲロアが辛勝。




イサック・クルスvsオマール・サルシド

WBCジュニアウエルター級暫定王者決定戦。

WOWOWでも「10回戦なんですね」と少し驚いていたように、不思議な設定です。もうどうでもいいのか?

クルスが順当に判定勝ち。





セバスチャン・フンドラvsティム・チュー

人気階級、人気者同士の再戦。

WBCジュニアミドル級王者フンドラは2度目の防衛戦。

初戦は不運なエルボーでチューが頭部から大量出血。それでもクロスゲームに持ち込んだオージーが再戦も有利と見られていましたが、予想外の展開に。

初回からフンドラの長距離に苦しみ、ダウンを奪われると、そのままペースを奪われます。

異形の長身フンドラは体格を生かしたボクシングが出来ない〝欠陥品〟ですが、今日は違います。

初戦ではここまで相性が悪い相手に見えませんでした。それが戦前予想、オッズにも表れていたのですが。

第7ラウンド、ベストラウンドでしたが、この回終了でチュー陣営が棄権。

番狂せと呼ぶのが憚られる内容でした。

亀田京之介とピカソの試合が大昔に思えます。会場もあったまってきました。もうセコンドの声は響きません。

メインディッシュの始まりです。

英雄の帰還か?それとも、伝説の晩節汚しか?





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この画像は日本ハムが大谷翔平をドラフトで強行指名したときの、有名なプレゼン資料の1ページです。

縦軸が「世界トップクラスと日本トップクラスアスリートとの絶対的競技レベル」で、横軸が「世界トップクラスと日本の競技環境(コーチ・練習場所・気候)の差」です。

黄色に塗られているのは「トップ選手であっても国内に拠点を置く」競技。ピンクは「若年層から海外に拠点を置く(勝負する)」競技。青は「国内で選手として確立されてから海外に拠点を置く(勝負する)」競技。

日本人が世界トップクラスで戦っている野球は、国内の競技環境に恵まれているため「国内で選手として確立されてから海外に拠点を置く(勝負する)」競技になります。

(当時は)その対極がバスケで世界とのレベル差が大きく、日本トップ選手は国内に引きこもっている状況でした。

面白いのはサッカーで青の下地にピンクが乗っています。21世紀初め頃までは「国内で選手として確立されてから海外に拠点を置く(勝負する)」競技でしたが、Jリーグの在籍時間が短い段階で世界に挑戦、最近では〝Jリーグ飛ばし〟も見られるようになっています。

テニスはピンクですが(錦織)。

あらためて見ると、かなり杜撰なカテゴライズですが、ボクシングを当てはめると同じ競技にも関わらず黄色とピンクに分裂する興味深い状況が生まれます。


日本の経済力とコネクションで好き勝手できる軽量級は「トップ選手であっても国内に拠点を置く」競技です。

対して、日本の経済力やコネクションが脆弱であるだけでなく「世界トップクラスと日本の競技環境(コーチ・練習場所・気候)の差」が大きいライト級以上のクラスは、本当なら「若年層から海外に拠点を置く(勝負する)」競技であるべきですが、現実には「国内で選手として確立されてから海外に拠点を置く(勝負する)」競技になってしまっています。

トレーナーの手腕や練習相手、大舞台での経験など、世界との比較で競技環境の格差が大きい人気階級ではレベルの低い日本国内で「選手として確立」してしまうことは、世界的な成功の可能性を閉ざす行為です。

村田諒太が米国人か英国人なら、金メダルの看板は優秀なトレーナーと豊富な練習相手、育成システムを知り尽くしたプロモーターによって遠回りに見えても、プロとしても金メダルのポジションを掴んだかもしれません。

現実には、電通とフジテレビによって金メダルの威光は性急な世界戦ロード、何の種子かを理解せずに、どんな車幅の列車なのかを把握せずに温室の中に線路を敷いてしまいました。

それでも、ゲンナジー・ゴロフキンとの大勝負とロブ・ブラント2を除くと、全ての試合で明白に有利と予想され、オッズもフェイバリット。

アルファベットタイトルとはいえ、ミドル級の世界戦線で当たり前に王者に返り咲く才能は不世出でしょう。

ライト級以上の人気階級が「若年層から海外に拠点を置く(勝負する)」べき競技なのはわかっていても、その道筋はどこにもありません。

それこそ錦織圭のテニスのように、世界を体感できるIMGアカデミーのような若い才能を受け入れる器があればいいのですが、マイナースポーツのボクシングではあり得ません。

幸運が重なった竹原慎二や、突然変異の村田諒太ーーーそうではない、いまなら井上尚弥や中谷潤人、寺地拳四朗のような、階級最強と誰もが認めるチャンピオンを人気階級で誕生させるには何が必要なのか?

そして、何を切り捨てなければならないのか?




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米国ボクシングシーンで、ライト級未満のクラスが大きな注目を浴びることはまず、ありえません。

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まさか、デラホーヤと戦う未来がやって来るとは…。

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まさか、初戦でパッキャオが圧勝、再戦があるとは…。

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まさか、メイウェザーと…まさか、まさか…。


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まさか、自殺行為とまで言われたデラホーヤ戦があんな展開、結果に終わるとは。


非常にレアな例外はマルコ・アントニオ・バレラ、エリックモラレス、ファン・マヌエル・マルケス、歴史に残る3人のメキシカンがフェザー級からジュニアライト級で繰り広げた複数のビッグファイトです。

3人とも揃いも揃ってPFP上位に君臨、のちに一発殿堂入りまで果たすグレートたち。

メキシコ史上最高選手の10傑リストを作るとき、この3人を外すことはまず不可能です。

マニー・パッキャオはそんな3人の包囲網を打ち破り、打撃戦上等、一歩も下がらないメキシカンスタイルはメキシコのファンをもトリコにしてしまったのです。

軽量級にも関わらず、大きな会場をフルハウスにし、当たり前にPPVイベントの主役をつとめたパッキャオの衝撃は、現在の井上尚弥や中谷潤人とは全く違う次元のものでした。


しかし…。

そんなパッキャオですら、オスカー・デラホーヤを斬り刻んだキャリア47試合目のたった1試合で、それまでの46試合で積み上げたファイトマネーを凌駕するビッグマネーを手にしたのです。

それはもちろん、カネだけではありません。メキシコ系をはじめとする熱心なボクシングファンの枠を超えて、カジュアルなボクシングファンの誰もが注目する存在にまで昇りつめたのです。

当時のパッキャオはほぼ全てのメディアが満票でPFP1位に推す、ずば抜けた専門家評価を集めていたばかりか、ファイター・オブ・ザ・イヤーにも輝き、傑出した専門家評価に浴していましたが、人気はコアなファンに限定され、報酬も人気階級のトップとは桁が一つ落ちました。

もうお分かりでしょう。

井上尚弥のPPVにすら乗らないT-モバイルが、どれほど無茶苦茶な欺瞞の興行だったかを。

あの、対戦相手に恵まれるにも程があるマニー・パッキャオですら、ライト(軽量)級までは専門家とコアなマニアの評価だけが高く、スターダムのトップに立てなかったのです。




なぜ、三代大訓は何もさせてもらえずに惨敗したのか?

なぜ、佐々木尽は嬲り者された挙句に轟沈させられたのか?

そして、なぜマニー・パッキャオは人気階級で大暴れ出来たのか?

才能と実力だけが原因なら、私たちはリングの上の〝大谷翔平〟が出現するまで待たねばなりません。

しかし、それだけではないのなら、人気階級攻略の糸口がどこかにあるのなら、それを探してみましょう…。




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「ドーベルマンとチワワ」と自虐したのは、WBCジュニアフェザー級王者マニー・パッキャオに挑戦した千里馬鉄虎の言葉です。

前日計量の時点で両者の体格差、筋肉量の差は明らか。

佐々木は秤を降りて「俺の方が強いと動物として感じました。技術うんぬんより生物的な強さで勝敗つくんじゃないかな」と言い放ちましたが、それはチワワの悲しい勘違いにしか聞こえませんでした。

オープニングラウンドで、王者の左で喫した二つのダウン。

ノーマンが放ったのは「見えない角度」から飛んできたという上質なパンチではなく、鈍い当て感を露呈する、佐々木の右側頭部と、左フックがなんと左頬にヒットしたもの。

第1ラウンドを終えてコーナーに戻る佐々木の表情には笑みが。まだ心は折れていませんが、ダウンのダメージとペース配分を考えない勇敢なアタックで肉体は、間違いなく消耗していました。

第2ラウンドも佐々木は、2度も倒された相手に勇猛果敢に攻め込みます。下がるノーマンに「来いよ」と挑発まで見せますが、ノーマンは佐々木を誘い込むスタイルを崩しません。

佐々木のコーナーは「ジャブから」と指示していますが、実力で大きく上回る相手にジャブから組み立てる正攻法など成立するわけもなく、単発のリードと大ぶりのフックを空転、ノーマンの迎撃のパンチを浴び続けます。

第3ラウンドになると佐々木の足元はますます怪しくなり、スタミナのタンクも赤信号。それでも、ノーマンのカウンターを浴びても立ち続けます。

意識がある限りは敗北を受け入れない。そんな強烈など根性を剥き出しにして前進を続ける佐々木。

早い段階で、王者が佐々木のパワーを警戒してくれたらチャンスがあるーーーそんな期待も裏切られてしまいます。

第4ラウンド。WBO王者はバックペダルを踏みながら、佐々木を誘い込み(当て感の乏しい)パンチを佐々木に浴びせます。

この4ラウンドは佐々木の限界以上に、ノーマンの底が割れた12分間でした。

そして、第5ラウンド。

意識がある限りは敗北を受け入れない、そんな闘士の戦いが終わりました。

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この勝利を収めても「ノーマンは現状でウエルター級で飛び抜けた存在ではない」(浜田剛史)というのが世界の共通認識です。

厳しい言い方になりますが、佐々木尽を破壊するのに5ラウンドもかかるノーマン。この日のノーマンを見て「なんというスピード」「恐るべきパワー」「すげえ当て感だな」という驚きは一つもありませんでした。

もちろん、いまさらですが。



https://www.8nakaya.co.jp


八王子中屋ボクシングジムは、大手ジムにはない本物の挑戦者魂の背骨を持っています。

マニー・パッキャオに散った寺尾新。ゲンナジー・ゴロフキンに砕かれた渕上誠。

寺尾も渕上も、世界チャンピオンになれませんでしたが、後楽園ホールとウクライナ・キーウで戦った2人がどれほど輝いていて、後日談もどれほど魅惑的であるか。



いま、思うのは、佐々木尽の再起と、ノーマンが本物のチャンピオンに大化けしてくれること、です。


立ち上がれ、佐々木尽。

頑張ってくれ、ブライアン・ノーマンJr.。


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Thursday 19, June 2025
  

Ota-City General Gymnasium, Tokyo, Japan
commission:Japan Boxing Commission
promoter:Hideyuki Ohashi (Ohashi Promotions)

view on JAPAN Lemino/USA ESPN+ 

WBOウエルター級12回戦


©︎ブライアン・ノーマンJr. vs 佐々木尽


両者同じ66.6kgで秤を降りた前日計量。

ウエイトは全く同じでしたが、ノーマンの方が大きく見えてしまいます。

佐々木尽は本来ならライト級かジュニアウエルター級がベスト(相対的に最も強い)かもしれませんが、ウエルター級バージョンが絶対的に強いのは明らかです。

それを言い出すと、減量階級の選手のほとんど全てが絶対ではなく相対の檻に自らを閉じ込めていることになります。

絶対的な強さで挑んで勝てる、ウエルター級がそんな世界ではないことは、ボクシングファンの誰もがわかっていること。

一方で、そのウエルター級への畏怖の礎になっているのは、JBC発足から70年以上の歴史でたったの6試合のサンプルからです。

私たち日本のボクシングファンが「ウエルター級はレベルが高い」と畏怖するとき、そこに渦巻いているのは過剰な怯懦です。

たった6度の失敗。

数で言えばフライ級やバンタム級など日本人が好き勝手している階級の方が、失敗の数は多いのです。

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遥か太古の昔、大きく筋肉質の肉体と鋭利な牙、頑強なアゴを持ち、とてつもなく早く走る脚力まで見せる怪物を、私たちの祖先は恐れ慄いていたはずです。

そして、怪物をつぶさに観察し、炎を極端に恐れること、俊敏な動きは瞬間的で持久力に欠けることを知った祖先は怪物を恐れなくなりました。

そして、最も決定的だったのはその怪物に「ライオン」と名前を付けたことでした。





あす、佐々木尽がウエルター級を恐れる私たちに「たくさんある階級の一つに過ぎない」と教えてくれるのか?

それとも、私たちはまたしてもウエルター級に〝名前〟を付けられないまま、長い歳月を耐え忍んでいくのでしょうか。

もちろん、そんな屁理屈をこねてもウエルター級は特別です。

ウエルター級よりも重いジュニアミドル級やミドル級で日本人が活躍した経験があることには理由があります。

ジュニアミドル級は、かつて欧米から格下と見られていました。現在、ジュニアミドル級の強豪王者の壁はウエルター級と同じかそれ以上です。

ミドル級では2人のアルファベット王者が生まれていますが、竹原慎二はビール腹で来日した油断にまみれたホルヘ・カストロが相手。

東洋太平洋レベルでも無双とは言い難かった竹原は、現在の地域王者に勝つのも厳しかったでしょう。

地域王者レベルには当たり前に勝利していた村田諒太も強豪王者を倒すまでには至りませんでした。そもそも、村田は五輪ミドル級金メダリスト、強豪王者も倒すかもしれないと大きな期待を集めた不世出の日本人です。

そう考えると、特別な事情が絡み合って初めて日本人が戦えるクラスがウエルター級から上ということかもしれません。

佐々木尽に勝機がないとは思いません。

ノーマンとの相性やノーマンの調子、複数の要素がノーマンにマイナスに佐々木にプラスに働けば、チャンスは十分にあるはずです。

そう期待して応援しているのは私だけではありません。

しかし、そんな私たちですら、ノーマンに勝った佐々木尽がウエルター級に君臨するか?と聞かれたら答えに詰まってしまいます。

そんなウエルター級に対する煮え切らない思い。

佐々木には、そんな外野の思いを沸騰させて蒸発させていただきたいと願っています。

「待たせたな、世界!」。

今夜、そんな勝利者インタビューを聞けますように。

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