カテゴリ: 英国ボクシングニューズ誌

IBOのエド・レヴィン会長は英国ボクシングニューズ誌のインタビューに「5番目のメジャーを目指してはいない」と明言しました。

1960年代にWBAからWBCが分離独立、80年代にIBFとWBOがやはりWBAに造反して独立、現在の4団体体制が形成されました。

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認定団体の分裂で水増し階級も激増、17階級にまで細分化されてしまっています。また、認定団体よりもはるかに誠実なランキングでチャンピオンシップ制を敷くリング誌や、そのリング誌ランキングを活用して8階級制を目指すズッファ・ボクシングのタイトルもあります。

デタラメ認定団体は独自の理屈だけでランキングを作成、好き勝手にタイトルマッチを行っているのが現状です。

レヴィン会長は「団体の駆け引きや、スーパースターから距離を置いて、政治的影響力の小さな貧困国のボクサーにも実力があればチャンスがある、そんな健全な環境を整備したい」と、ボクシング界の構造を〝スポーツ化〟すると訴えています。

IBOは暫定やスーパー、休養などの王者を認定せず、ランキングもポイント制で恣意的な要素を極力排除し「当たり前だが世界王者は一人だけ」の常識を守っています。

しかし、ランキングのポイントは認定料の支払い実績の高い傘下の地域タイトルホルダーが有利になる仕組み。レノックス・ルイスやフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオを優遇してきた歴史は「スーパースターへの忖度」がちりばめられています。

IBOが第5のメジャー(5つもあったらメジャーとちゃうわ!)と認められない原因の一つは、本家(WBA)の血筋がないから。ボクシング界を混乱と堕落に導く認定団体に存在意義を認める人は少ないでしょう。

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もし私にボクシング界を変えるパワーがあれば、一つの統括組織、一つのチャンピオンシップを作る。WBAとかWBCなんか要らない。


WBAとWBCの2団体時代の初めは、対立王者もランキングに加えて、その序列は今と比較すると想像できないほど納得できるものでした。それでも、アリらは認定団体への嫌悪感を隠しませんでした。

認定団体は必要悪ではありません。不必要悪なのです。





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英国ボクシングニューズ誌(電子版)から「“Styles make fights” フリオ・セサール・チャベスが語るクロフォードに勝てただろうボクサー」。

ジュニアウエルター級、ウエルター級、スーパーミドル級の3階級でUndisputed champion になったクロフォードはエロール・スペンスJr.、ショーン・ポーター、ケル・ブルック、アミール・カーンといった強豪に勝利を収めています。

とはいえ、全盛期を過ぎた相手ばかり。さらにメイウェザーとパッキャオのあとのウエルター級近辺は地盤沈下していました。


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Crawford is a great fighter, but if you look at who he has beaten, he has only beaten Canelo.

クロフォードが偉大なファイターの一人であることは認めよう。しかし、彼が勝ったのはカネロ・アルバレスだけ(チャベス)。

そのカネロも心身ともに完全劣化バージョン。「いつの誰に勝ったのか?」という、このスポーツで最も重要視される尺度において、クロフォードのキャリアは非常に貧弱です。

ライト級のユリオルキス・ガンボアにグラつかされ、WBOジュニアミドル級暫定王者のイスライル・マドリモフに手こずったクロフォードが、彼の本当の姿に近いのかもしれません。

もちろん、単純な数字だけならクロフォードはフロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオとの比較に耐えられるかもしれませんが、パックメイの時代は認定団体が統一戦に乗り気では無く、彼ら自身も栄光や報酬には貪欲でしたが、Undisputed champion への関心は極めて希薄でした。

全盛期のカネロも「メキシコ史上最高」の評価もありましたが、クロフォードと同様に「誰に勝ったのか」の点であまりにも脆弱で、いまではチャベスと比較する専門家もファンも極めて少数派です。メキシコのトップ5も怪しいかもしれません。


Mayweather’s defensive brilliance and style would have been enough to preserve his own unbeaten record while inflicting the first loss of ‘Bud’s professional career.


メイウェザーの卓越した防御技術と相手の長所を消し去るスタイルは、クロフォードにキャリア初の黒星をなすりつけ、自身の無敗レコードを維持するのに十分だっただろう(チャベス)。


米国ボクシングが骨抜きになってしまった21世紀、パックメイ、そしてカネロが最後に咲いた花でした。最後の花、カネロが枯れ果てたところで摘み取ったのがクロフォード。

カネロがドミトリー・ビボルに完敗してから4年以上の歳月が流れましたが、いまだにスターのトーチを継承するファイターはたったの一人も見当たりません。もちろん、クロフォードが引退しなかったとしても、玉座に就くには華が絶望的に欠落しています。

米国ボクシングは完全に死んだ、そう断言して良いでしょう。




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英国ボクシングニューズ誌から。

もし、リコ・バーホーベンがオレクサンデル・ウシクに勝利していたら?

バスター・ダグラスvsマイク・タイソンのようにオッズだけを取り出せば、もっと多くの番狂せが起きていますが「異種の格闘技からボクシングが攻略された」という意味では、最も衝撃的だったかもしれません。

ボクシングシーンがキックからボクシングへ、で成功したトップ5を発表しました。



①ビタリ・クリチコ(現ウクライナ・キーウ市長)

アマチュア時代はキックとボクシングの二刀流で活躍。キックでは世界タイトルをアマで2回、プロで4回獲得。最終的にボクシングに絞って、WBCタイトルを12度防衛。全盛期はほぼ全てのメディア、ファンがヘビー級最強と評価していました。



②トロイ・ドーシー

1980年代にキックで世界タイトルを獲得後、ボクシングに転向。1991年にIBFフェザー級王者に。



③那須川天心

2022年に引退するまでPFP最高のキックボクサーと見られてきたSon of God(神童)。2023年のボクシングデビューからは質の高い相手に7連勝、井上拓真に番狂せを起こされ評価を下げたが、ファン・フランシスコ・エストラーダをストップしてトップ戦線に舞い戻った。



④マルコ・フック

アマチュアのキックで成功を収めたあと、ボクシングでも欧州選手権2連覇などトップアマに。WBOクルーザー級を13度防衛。



⑤ディリアン・ホワイト

キックで英国と欧州のタイトルを獲得したあと、MMAで1試合してボクシングに転向。アマチュア時代にはアンソニー・ジョシュアにも勝利。



*******武居由樹にふれないのは、きっと知らないから。そして、ムエタイ戦士についても「きりがない」だけでなく、よく知らないからでは?





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英国ボクシングニューズ誌(電子版)でトム・イートン記者が「フレディ・ローチが全盛期のマニー・パッキャオでも勝てないファイターがいる」という記事をアップしました。

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マルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスーーー軽量級で史上最高のファイターに数えられる3人と合わせて9試合も総当たり、ミッション・インポシブルのメキシコ包囲網を、あろうことかBサイドで突破した時点で「一発殿堂確実」と太鼓判を捺されたパッキャオ。

人気階級へ進出してからもオスカー・デラホーヤ、リッキー・ハットン、ミゲール・コット、キース・サーマンらを倒してフライ級からジュニアウエルター級までの10階級でトップ戦線で躍動したパッキャオ。

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…なのですが、ローチは「全盛期のパッキャオでも(全盛期の)チャベスには分が悪い」と見ています。

この手の妄想対決は「互いに全盛期」は当然、どの階級で戦うかも幻想の重要なファクターになります。

ジュニアウエルター級とウエルター級なら、チャベスは厳しいでしょう。

しかし、ジュニアライト級かライト級なら?

個人的には、それでもパッキャオ有利と見ますが、ローチは「攻撃こそ最大の防御」という骨髄を持つトレーナー。メキシカンスタイル最強論者です。

パッキャオvsチャベスーーーゾクゾクする妄想です。

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ちなみに…リング誌がモハメド・アリの旅立ちを哀悼して企画した2016年の「THE GREATEST LIVING FIGHTERS(いま生きているファイターのPFPトップ10)」では…。

①シュガー・レイ・レナード
②ロベルト・デュラン
③パーネル・ウイテカー
④イベンダー・ホリフィールド
⑤マービン・ハグラー
⑥フリオ・セサール・チャベス
⑦フロイド・メイウェザーJr.
⑧ジェイク・ラモッタ
⑨マニー・パッキャオ
⑩ラリー・ホームズ

チャベスが〝上〟です!

さらにちなみに…ウイテカー、ハグラー、ラモッタは旅立ってしまいました。





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WBCジュニアウエルター級12回戦

©︎サブリエル・マティアスvsダルトン・スミス

オッズは8/13(1.62倍)、13/10(2.3倍)で、33歳の王者がやや有利。

母国英国のボクシングファンから大きな期待を集める〝サンダー〟スミスは無敗の28歳。


World title challenger Smith inspired by Hatton


ジュニアウエルター級、140ポンドはストーン(1ストーンは14ポンド)単位が馴染み深い英国では思い入れのある階級です。特に、昨年はこのクラスの史上最高の英雄、リッキー・ハットンを失ったタイミングですから、ボクシングニューズ誌はもちろん、BBCまでが「ダルトンはハットンになれるか?」と連日報道、ボクシングファンの熱い期待が伝わってきます。

スミスがニューヨークで番狂せの雷鳴を轟かせると、英国ボクシングはさらに盛り上がります。




バンタム級10回戦

ハビエル・シントロンvsビクター・エフレイン・サンドバル

リング誌ランキングでトップ10に7人も送り込んでいる日本バンタム級。

世界的には注目度も報酬も低い軽量級でも、日本人王者に日本で挑戦するとなれば話は別。ましてや王者になって、日本人挑戦者を迎えるとなると、さらにファイトマネーが跳ね上がります。

オッズはシントロンが1/4(1.25倍)、サンドバル18/5(4.6倍)。

30歳のプエルトリカンが再び日本のリングに上がる日はやって来るか?


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バンタム級10回戦

エマヌエル・ロドリゲスvsフェルナンド・ディアス

劣勢になると泣き顔になる弱気な〝マニー〟も33歳。3つの敗北、SDに追い詰められたジェイソン・モロニー戦のいずれも、弱気の姿勢を曝け出してしまいました。

大一番に弱いが経験豊富なロドリゲスが1/11(1.09倍)。直近の試合で完敗、ここ10試合でも5勝5敗のディアスは8/1(9倍)。

ロドリゲスも西田凌佑に敗れて以来の復帰戦。残された時間が少ない33歳のロドリゲス。ここで負けるようなら、キャリアの終焉です。











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グローブの話もいつのまにやら、第9回。

英国ボクシングニューズ(BN)誌の2020年2月13日号からーーー6年近くも前の古い記事ですが、あしからず。

Inside the word GLOVE, meanwhile, you will find the word  LOVE.

よく見てご覧。GLOVE という言葉の中にLOVEが見つかるでしょう。

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グローブは近代ボクシングと切っても切り離せない存在でした。

ベアナックルの時代、ボクシングは顔の皮膚を切り裂き血だるまになりながら戦う残酷なショーでした。

しかし、グローブによって裂傷は劇的に減り、残酷なショーは多くの人(といっても女性や子供は除きます)が見るに絶えられるスポーツになりました。

そして、馬の毛をクッションにしたグローブはベアナックル(素手ではなく多くのケースで包帯を巻きつけた拳)と同じように、対戦相手の頭部を強く殴ることの代償は拳の骨が折れるということでした。

しかし、時代は進み、1980年代も後半になると多くのグローブの詰め物が一新されます。

手に入りにくい馬の毛から発泡スチロールの材料になるポリエステルに、中身が変わるのです。

ファンはもちろん、それをはめているファイターにも中身は見えませんでしたが、目に見える変化が二つ起きます。

一つ目は、対戦相手の頭部を思い切り殴っても拳の骨は折れにくくなったこと。

二つ目は、リングの中で事故が多くなったこと、です。

この二つに相関関係があるのかどうか、科学的に証明するのは非常に難しく〝馬の毛時代〟に事故の統計がないことからも、難しいというよりも不可能なのかもしれません。

ただ「試合で拳を骨折することは減り、リング禍が増えた」というのが、長くこの世界に関わって来た人々の肌感です。

現在、国内の試合を統括するJBCではジュニアウエルター級までが8オンス(227g)、ウエルター級から10オンスのグローブを装着するのか一応の決め事。

昨年、ウエルター級タイトルに挑んだ佐々木尽が8オンスを選だことからもわかるように絶対のルールではありません。

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1990年代まではストロー級からジュニアバンタム級までは6オンスのグローブを付けており、具志堅用高らは「(現在の)8オンスよりも小さいから拳を立てて相手のブロックを通すなど、小さなグローブならではの技術があった」と語っています。

リング禍については、グローブの大型化と中身のポリエステルなどの素材変更によって、思い切り殴って相手の頭に当たっても拳を骨折する可能性が低くなり、広い打撃面積は脳を軽く揺らすことを繰り返すことがわかっています。

このグローブの変化と、前日計量によってより過酷な減量をすることになったことが、現代のリング禍につながっているだろうという仮説はおそらく間違いありません。




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今月8日で94歳になった怪老ボブ・アラム。

約60年にもわたってプロボクシングの世界で生き馬の目を抜いてきた彼は、モハメド・アリからマービン・ハグラー、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオまで個性的なグレートをリングに送り込んできた。

“most underrated.”

スカイスポーツはアラムに「あなたが知る、最も過小評価されたファイターは誰?」と質問した。

怪老は即答した。「ミゲール・コットだ」。

マディソン・スクエア・ガーデンを何度もフルハウスにしたプエルトリコの英雄が過小評価…。まあ、たしかにもっと評価されても良いファイターでした。
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ボクシング雑誌が大好きです。

初めて手にしたのは日本のボクシング・マガジン。このスポーツにあっという間に惹きつけられたのとほとんど同じ時期だったはずです。

野球や陸上競技、他のスポーツ専門誌との違いは明白でした。

国内の選手と同等か、それ以上に海外のスター選手を大きく頻繁に扱っていたのが、とにかく新鮮でした。

ベースボール・マガジンの中でメジャーリーグはサブストーリー以下の扱いでしたが、ボクシング・マガジンではシュガー・レイ・レナードやマービン・ハグラー、トーマス・ハーンズ、ロベルト・デュラン、マイク・タイソンらは完全に主役だったのです。

それが、とにかく魅力的でした。

試合展開や結果だけでなく、このスポーツを職業に選んだ男たちの生き様もまた、ボクシングの大きな魅力を構成しています。

それを生々しく伝えてくれたのがボクシング・マガジンやワールド・ボクシング、そして米国のThe RING magazineでした。

しかし、ネットニュースに速報性で劣り、コストもかかる紙媒体の専門誌は2020年に英国ボクシングマンスリー誌、2022年にはリング誌とボクシング・マガジンが廃刊に追い込まれてしまいました。

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そして、英国ボクシングニューズ誌が12月18日号を最後に、116年の週刊体制から月間体制に移行することになりました。

月刊は2026年1月から発行。そして、廃刊していたはずのボクシングマンスリーを吸収合併する形で「BOXING NEWS MONTHLY」として刷新されます。

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週刊誌でなくなるのは寂しい限りですが、引き続き充実した内容を期待しています!

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一発大逆転のスペクタクル。

え!まさか!信じられない!これは奇跡だ!…そんな驚きと、次の瞬間にはそれが必然だったと感じてしまう、不思議な恍惚。ボクシングのリングの上だけに現出される超常現象です。



今世紀に入って25年、このスパンで最も決定的な一撃を持つパンチャーはデオンティ・ワイルダーでしょう。

自分よりも遥かに重い、つまり打たれ強いタイソン・フューリーからも豪快にダウンを奪っているワイルダーは、ヘビー級以外の減量階級のパンチャーとは同列に考えるべきではありません。

そんな元WBCヘビー級王者のブロンズボマーは2019年11月23日、ルイス・オルティスとの再戦で圧倒的ビハインドを〝一発精算〟してみせました。

第6ラウンドまでのスコアは55-59が2人、56-58が1人と明らかなリードを許していました。

そして、第7ラウンドも残り10秒を切ったとき、ワイルダーの右ストレート一閃、この一撃でオルティスをノックアウト、10連続防衛を果たしました。

5年以上も経ったとはいえ、あの試合を鮮明に覚えているファンも多いはずです。

しかし「え!まさか!信じられない!これは奇跡だ!」という驚きで、あの結末を迎えた人は少数派かもしれません。

ほとんどの人は「ワイルダーの逆転の一撃がいつ火を噴くのか?」と期待を膨らませていたはずです。

多くの人がワクワクしながら予見していたという意味で、あの結末は「まさか」でも「奇跡」でもありませんでした。

想定通りの一発大逆転…言葉にすると、なんとも大きな矛盾を抱え込んでいます。

ワイルダーが経験した世界戦は13試合、その全てが自分よりも大きく重い相手でした。

アマチュア時代はヘルシンキ五輪のミドル級で金メダルを獲ったフロイド・パターソンは、164ポンドでプロデビュー。軽くて小さなヘビー級でしたが、ワイルダーのような爆発的なパンチャーではありませんでした。

身長179㎝/リーチ173㎝のロッキー・マルシアノも小さなヘビー級で、強烈なパンチャーでした。いつも自分より重い相手と戦っていましたが、その体重差はワイルダーほどではありませんでした。


デオンティ・ワイルダー。PFPに選ばれてもおかしくない〝理屈〟を持ったエンターテイナーでした。




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Only in boxing can a seemingly lost cause be rescued in a split second


昨日のMLBワールドシリーズ初戦。2−2の同点で迎えた6回裏、ブルージェイズが大量9点を入れて11−2としました。

ドジャーズは残り3イニングの攻撃を残していましたが、この時点で勝負あり。

スポーツの醍醐味は大逆転ですが、それにも限度というものがあります。満塁ホームラン2本でも追いつけない9点差。

この点差では、奇跡を起こしてひっくり返すにも時間がかかります。



しかし、ボクシングにおいてはどんな劣勢でも1秒もかからずひっくり返す、とんでもない奇跡がありえます。

英国ボクシングニューズ誌のOnly in boxing can a seemingly lost cause be rescued in a split secondから。

普通に訳すと「絶対絶命の劣勢を一瞬でひっくり返せるスポーツはボクシングだけ」。ぎゅぎゅっと圧縮して訳すと「Puncher’s Chance」。



*****一方の選手が終盤までリードしながらスタミナ切れで失速して大逆転を許す…ボクシングでも見られるスポーツの逆転パターンですが、ここで取り上げるのはもっと唐突で、予兆のない、劇的な大逆転です。

え!まさか!信じられない!これは奇跡だ!…そんな驚きと、次の瞬間にはそれが必然だったと感じてしまう、不思議な恍惚。ボクシングのリングの上だけに現出される超常現象です。


Only in boxing can!


1952年9月23日、フィラデルフィア・市立スタジアムで行われたNBA世界ヘビー級タイトルマッチ15回戦。王者ジャーシー・ジョー・ウォルコットの左フックで初回にダウンを喫したロッキー・マルシアノは12ラウンドまで8ラウンドを失っていました。

第13ラウンド開始から30秒、王者がカウンターを狙って挑戦者を引き寄せますが、マルシアノの強烈な右フックがウォルコットの顎に叩きつけられて、テンカウント。


1980年3月31日、テネシー州ノックスビル・ストークリーアスレティックセンター。WBAヘビー級王者ジョン・テートは最終15ラウンド、残り60秒まで優勢に試合を組み立てていました。

2位を大きく引き離し、あとはゴールするだけ。マラソン競技なら、そんな展開でしたが…。

試合を全米生中継していたABCは判定勝ちを確信して、試合終了後に流すニュースと広告を告知していましたが、ウィーバーの電撃の左フックで王者テートがダウン!

ABCは慌ただしく衝撃の瞬間のリプレイを用意、判定勝ちで進めていた番組プログラムはKO勝ちで放送時間をオーバーするという普通はあり得ない事態に見舞われました。



Only in boxing can!


1994年11月5日、ラスベガス・MGMグランドガーデン・アリーナ。WBA /IBFヘビー級タイトルマッチ12回戦。

サウスポーで史上初のヘビー級王者となったマイケル・モーラーは第9ラウンドまで88−83*2/85−86の2−1でリード。9歳も年上、45歳のジョージ・フォアマンに出来ることは12ラウンド終了のゴングを聞き、大差判定負けのコールを受けることだけに思えましたが…。

モーラーのパンチで左目が塞がったフォアマンでしたが250ポンドの巨体は、222ポンドの王者の心身を着実に削っていたことに多くの人は気づいていません。

唐突に訪れたかに見えたその瞬間は、必然でした。45歳の右は試合を終わらせるにはあまりにも遅く、短く、軽く打ったように見えましたが、それは「象をも倒す」と恐れられたジョージ・フォアマンの拳です。

人間マイケル・モーラーを昏倒するのには十分すぎる威力を秘めていました。


それまで積み重ねてきた大量リードが一瞬でひっくり返されて試合が終わるーーーそんな不条理、狂気の沙汰がときとして起きるのがボクシングです。

そして、そんな〝必然の奇跡〟はヘビー級だけで起こされてきたスペクタクルではありません。


Only in boxing can!


1991年5月10日、アイオワ州ダベンポートはジョン・オドネル野球場。ミシシッピ川のほとりに作られた小さなボールパークで奇跡が起きます。

IBFミドル級王者マイケル・ナンは5連続防衛中、36戦全勝24KOのスーパースター候補。

10ラウンドまでは99−91/98−92/97−93と3者ともナンを支持。

第11ラウンド、王者が左アッパーを突き上げてガードが空いた一瞬にトニーの左が炸裂。背中からキャンバスに叩きつけられた王者はナンとか立ち上がるだけで精一杯。再開後のトニーの猛攻に再び崩れ落ちたところでジ・エンド。

過大評価のナンと、フレディ・ローチが「マイク・タイソンやマニー・パッキャオも比較にならない才能」と認めることになるトニー。この結果も奇跡ではなく、必然でした。


Only in boxing can!

1994年12月10日、メキシコ・モンテレー。WBAミドル級王者ホルヘ・カストロは2度目の防衛戦にジョン・デビッド・ジャクソンを迎えます。

階級最弱と見られ、王者ながらアンダードッグのカストロでしたが、タフネスだけは怪物級。

挑戦者に一方的に打たれ続けて両目を負傷、何度もぐらつくアルゼンティーナは頼みの右フックを振り回しますが、空気をかき回すことしか出来ません。

8ラウンドまで80−71/80-73/79-74と大きくリードを許していたカストロでしたが、第9ラウンドで乱雑な右フックに狙い澄ました左フックをこっそり忍ばせます。

予想できないパンチにジャクソンは痛烈にダウン。さらに2度のダウンを追加して、ミドル級史上最も不安定な王者カストロが大逆転で防衛に成功しました。

リング誌の年間最高試合にも選ばれたこの試合、カストロが「死んだふりをしていた」と見るのは早計ですが、試合をひっくり返した左フックは無尽蔵のスタミナと、岩石のような顎という必然があったからこそ。


Only in boxing can a seemingly lost cause be rescued in a split second…スペクタクルはこれからも不規則な彗星のように私たちを楽しませてくれるはずです。








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