カテゴリ: Styles Make Fights

五輪で金メダルを獲得したボクサーは米国のシンボルになれる。

それが2大会連続となると、もはや前人未到の偉業だ。

プロに転向してからはジュニアミドル級、ミドル級、スーパーミドル級、ライトヘビー級、ヘビー級の5階級を制覇、ミドル級とヘビー級ではUndisputed Champion(他の誰にも王者を名乗らせない文句なしの王者)。

これはもはや、神聖にして侵すべからずの領域。シュガー・レイ・ロビンソンを玉座から引き摺り下ろすのに十分なレガシーだ。

さらにその生い立ちは、このスポーツにはうってつけ。

生まれ育ったミシガン州フリントはゼネラルモータース発祥の地。つまりはラストベルト、錆びついた町だ。父親はなんとアンダーグラウンドのプロボクサーで、未来の金メダリストが2歳のときから7年間、刑務所の塀の中で過ごした。

最初の五輪金メダルを獲ったときは、まだ17歳。映画のようなサクセスストーリーだ。

これで「スーパースターになるな」という方が難しい。

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ーーーところが、そうはならなかった。

21世紀、五輪ボクシングは地上波テレビから追放され、プロボクシングに至っては社会的地位の地盤沈下が止まらないばかりか、かろうじて踏みとどまっていたマイナースポーツとしての足元も怪しくなっている…。

だが、彼女が「そうはならなかった」原因はそれだけではない。

そう、彼女。「彼女」だからだ。

クラレッサ〝The GWOAT〟シールズは女性だったのだ。

では、ボクシング黄金時代の1950年〜60年代なら米国の英雄になれていたか?…というと、当時の五輪に女子種目はない、そもそも女子ボクシングなど存在していなかったのだから。


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14歳の頃には「私より強い者など地球上のどこにもいない」と自信に満ち溢れていた少女は、2012年のロンドン五輪から女子ボクシングが採用されると知ってから、モチベーションをさらに燃え上がらせた。

ジムでは、男子選手しか練習相手にならなかった。いや、正確には男子選手も相手にならなかった。女子にボコボコに殴られる、その屈辱もあって彼女がリングに上がると男子たちは下を向きながらリングを降りるようになった。

のちに彼女は「ゲンナジー・ゴロフキンにも勝てる」と豪語したが、彼女を知る人でそれを冗談や行きすぎた挑発で片付ける者はいなかった。

誰もが、彼女がロンドンで金メダルを首にかけ、星条旗を肩から羽織ると確信していた。そして、その通りになった。

まだ17歳だった。

しかし、そこで夢の機関車は急停車してしまう。

彼女がやってのけたことは、1990年代を席捲したクリスティン・マーティンをはるかに凌駕することだったが、スポンサー契約を結ぶ企業は現れなかった。

「他の種目の女子選手たちがメダルも獲れていないのに雑誌の表紙を飾ったり、ナイキやアディダス、アンダーアーマーと契約した話を聞いて、どうして私じゃダメなの?」と呆然とした。

80年代前半までは注目されていたボクシングはとっくの昔に没落したから?女子ボクシングだから?クリスティーとは肌の色が違うから?

金メダルの報奨金5万ドルは家を借りて車を買うと無くなった。

それでも、シールズは動かなくなった機関車を力づくで再発進させる。

2016年のリオデジャネイロ。オランダのヌーシュカ・フォンティンを破ったシールズは笑顔を爆発させ、大きな体を軽々と側転させると星条旗を手にしてリングを駆け回った。

4年前に彼女を無視したブランドが契約を申し込んできた。アンダーアーマー、パワーエイド、ディックス・スポーティング…。

しかし、いくつかのCM撮影が終わると、また静かな日々に戻った。束の間の熱狂だった。

それでも、彼女は新しい機関車に薪をくべる。心を折ることはなかった。

プロに転向して天下を獲る。

「私より強い者などこの地球上にいない」。その自信はプロのリングでも証明された。

それなのに、ビッグファイトはアイルランドやプエルトリコ、メキシコなどボクシングのファンベースが強固な母国を持つケイティ・テイラーやアマンダ・セラノにもっていかれた。

米国人が米国で輝けないなんて、おかしくない?…肌の色のせい?時代が悪いの?

女子ボクシングの扱いに失望した彼女は2021年、オープンフィンガー・グローブをはめて総合格闘技へ。英国の大手スポーツチャンネル・スカイスポーツと契約、BOXXERプロモーションズのイベントに出場したが、そこで突きつけられたのは脇役、Bサイドだった。

そして、MMAで2試合(1勝1敗)をこなすと、1年でボクシングのリングに戻る。それでも、誰も彼女にスポットライトを向けなかった。

2024年11月、テキサス州アーリントン・AT&Tスタジアムでテーラーvsセラノのメガファイトを開催するとNetflixから発表された。巨大スタジアムでメインを張る、男子でもそんなことができるのは北米ではカネロ・アルバレスだけという興行規模だ。

ミシガン州フリントで生まれ育ったシールズはやりきれない思いに身を焦がし、ボクシングを習った一人の男に電話をかけた。

その男はS.O.G. (Son of God、神の子)と呼ばれ、無敗のまま引退したPFPキング、彼女のデビュー戦は、ラスベガス・Tモバイル-アリーナで彼がメインを務めたビッグファイトのアンダーカードだった。

アンドレ・ウォードだ。

「私はいつまで待てば大観衆の前で戦えるの?」。

恐竜のように強い〝T−Rex〟シールズが意気消沈しているなんてボクシングファンは信じられないかもしれないが、ウォードに連絡するときは決まってヘコんでいた。

このときもそうだった。


ウォードは彼女をThe GWOAT(史上最強の女)、 T-Rex(ティラノサウルス)と呼んだことはない。〝Ress〟とごく親しい友人だけが使う彼女のニックネームで語りかけた。

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 ⬆︎村田諒太の愛読書でもあります。

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"When a man finds that it's in his destiny to suffer, he will have to accept his suffering as his task. He will have to accept the fact that even in suffering he is unique and alone in the universe," 

君は苦難に直面したとき、それを宿命として受け入れなければならない。どんなに大きな苦しみであろうとも、君はこの世界で唯一無二の存在としてそれに向き合うしかないのだ。


それは、ホロコースト生還者の精神科医・心理学者ヴィクトール・フランクルが著した体験記「夜と霧」の一説だった。

そして、優しく告げた。"Your time will come." と。

「彼女の時間」は予想以上に早くやってきた。

彼女の前に運命の男性、パプースが現れた。ウィンレコードの幹部でもあるパプースは2025年7月にフリーエージェントとなったシールズの代理人として、有力プロモーターのドミトリー・サリタと女子ボクシング史上最大の大型契約をまとめあげた。

She also announced a new goal: a $50 million payday for a single fight. Just like Floyd Mayweather.


契約金300万ドル、複数契約試合で最低保証800万ドル。右の脇腹にパプースの名前をタトゥーしたシールズは記者会見で「1試合で5000万ドル稼ぐ、そんなプロボクサーになる。メイウェザーのように」。

五輪で初めて金メダルを勝ち獲ってから14年、30歳になったシールズは女子ボクサーとしてはかつてないほどの名声を浴びている。

勝ち続けるその先に、何が起きるのかもわかってきた。

「マイケル・ジョーダン、レブロン・ジェームス、コービー・ブライアント…勝ち続けるとファンの中に興味深い欲求が芽生えてくるの。負けるところが見たいってね」。

「セリーナ・ウィリアムズをずっと応援してきた。でも、彼女が強さを見せつければ見せつけるほど人々は彼女の容姿を揶揄して、男みたいだとか猿みたいだとか、関係のないことで騒ぎたてていった。私にも同じようなことが起き始めてる」。

シールズは、SNSに溢れる自分を侮辱するコメントを冷静に見ることができた。

「誹謗中傷する奴らには笑っちゃう。それがボクシングに無関係なことで私の容姿や恋愛のことやら、尚更。そこまで私に興味があるの?って気持ち悪いときもあるけど、嫌いなら無視したらいいだけなのに彼らにとって無視できないものを感じてしまってるってことでしょう。面白いじゃない」。



クラレッサ・マリア・シールズは4つの逆風に晒され続けてきた。

女性であること、黒い肌を持つこと、ボクシング界が没落していること、そして強すぎること。

しかし、勝ち続けること、強さを見せ続けることで、全てがひっくり返ろうとしている。

女性であること、黒い肌を持つこと、ボクシング界が没落していること、そして強すぎること…これら4つ全てがいまや彼女のストロングポイントに変わった。


カネロ・アルバレスが誰に渡して良いのか狼狽えている、火が消えかけたスターのトーチはもしかしたらシールズに渡されているのかもしれない。

ずいぶん頼りなくなったその炎を再び燃え上がらせるのは、並大抵のことじゃない。なにしろ、彼女は4つも十字架を背負っているのだ。

女性であること、黒い肌を持つこと、ボクシング界が没落していること、そして強すぎること・・・









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男やなくて、女やけどな。


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ミラノ・コルティナ五輪フリースタイルスキー女子で金メダル1個、銀メダル2個を獲得したEileen Gu(谷愛凌)を巡る騒動がおさまりません。

米国生まれ・米国育ち、米国住まいながら五輪には中国籍で出場したアイリーン・グー。日本では「誰、それ?」程度の知名度かもしれませんが、欧米スポーツシーンでは最も有名なアスリートの1人です。

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Called a traitor
〜裏切り者の名を受けて。

先週、共和党のアンディ・オグルス議員が「外国の敵対勢力と協力する米国人は、我が国を裏切っただけでなく、その行為から得られる利益を剥奪されるべき。私はアイリーン・グーのようなアスリートが稼いだ収入100%全てをIRS(合衆国内国歳入庁)に没収させる法案を提案している」と主張しました。

Any American who works with a foreign adversary has not only betrayed our country, but must be stripped of all benefits from doing so. That is why I am ensuring that the IRS takes every dollar earned by athletes like Eileen Gu," 

Andy Ogles Bill Takes Aim At Eileen Gu〜
「アイリーン・グー以外にも対象となりそうなアスリートはいるのか?」と聞かれて、オグルスが言葉に窮したように、この実現知るわけのない法案が22歳のフリースタイルスキーヤーだけを標的にしたものであることは明らか。

また「外国の敵対勢と協力する米国人」の定義については「米国市民だけでなくグリーンカード保持者も対象に、五輪などの国際大会に対象となる外国の代表として出場した場合」というぼんやりしたこと以上は答えることができませんでした。

WBCに出場するキューバやベネズエラ、メキシコは敵対国ではないのでしょうか?

フォーブス誌はグーが2025年度に手にした競技で獲得した賞金とスポンサー広告収入を合わせて2,300万ドル(約36億円)に達すると報道、グーへの逆風が強まりました。

しかし、このお金がグーの中国の口座に振り込まれているわけもなく、彼女は米国で稼ぎ、米国で消費しているのです。彼女に対して、北京体育局は100万ドル単位の支援をしていますが、これも彼女の米国口座にドルで振り込まれ、彼女は米国で使っているのです。

アイリーン・グーを介して米中の貿易収支を見た場合、中国が一方的に赤字の負担を抱えているのは明らか。

それどころか、米国でティファニーやルイ・ヴィトン、フェンディなどの広告塔となり、ほぼ全ての主要ファッション誌の表紙を飾っているスタンフォード大学に通う22歳の〝中国人〟は、共産党にとって非常に複雑で対応の難しい存在であることも間違いありません。

Who knows, maybe she's an American plant. ~(彼女が中国のスパイ?彼女がやっていることを考えると)どう見ても米国の対中工作員だろう。…ESPNがそう例えて、グーへのバッシングを笑って見せたのは的確な指摘でした。

さらに、米中の〝問題児〟が2003年9月3日に谷が米カリフォルニア州サンフランシスコにあるカリフォルニア・パシフィック・メディカルセンターで誕生したときの出生証明書には母親ヤン・グーの名前だけが記載されており、父親の欄は空白だったことも明るみにされました。

グーが中国籍を選んだのは仕方がなかったのではないか?という見方もある中で、父親が米国人であることはすでに確認されていることから、五輪には米国代表として出場する資格を有していたにもかかわらず、グーが米国を捨てて中国を選んだことに変わりはないという主張の方が大きな声となっています。

現実には、どちらの国籍も選べる立場にあったのだと思います。

ところが、中国は二重国籍を認めていません。そして、グーが米国籍を放棄していないのも間違いありません。



アイリーン・グー、谷愛凌は、米国の体制から苛烈に敵対視された米国人という点で、モハメド・アリに並びます。

性別も肌の色も違いますが、2人は五輪の金メダリストという共通項も持っています。

そして、米国から激しくバッシングを受けながらも、巨大な重圧に押しつぶされることなく結果を残し続けているという鋼鉄のメンタルでも2人は共有しているのです。


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私が米国のボクシングに夢中になる、その少し前の時代。

とんでもない人が、いた。
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ESPNの特集記事から離れて、新華社通信の記事をご紹介。

冬奥会|夺银被问丢金,谷爱凌回击外媒“很荒谬”

ビッグエア決勝後の記者会見。(米国で非難の的となっている)アイリーン・グーに、ある外国人記者が「不当な採点だ」という不満の言葉を引き出そうと「銀メダルを2個獲得したと感じてるか?それとも、金メダルを2個奪われたと感じているのか?」と質問した。

浅はかな欧米の記者の挑発に乗るには聡明すぎる22歳は、質問に隠された意図を簡単に読み取った。「それは馬鹿げた質問。私は最も成功したフリースタイルのスキーヤーで、(4年ぶりのビッグエアに)全力を尽くした。そこに満足しているし、メダルの色は関係ない」。




さて、ESPNとタイム誌の特集に戻りましょう。

Called a traitor
〜裏切り者の名を受けて。



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国籍の問題はどんな場合でも微妙で繊細な問題だが、移民の国である米国では珍しいものではない。

米国代表チームにはカナダ代表として3度の五輪出場経験があるボブスレー選手や、ウクライナとカナダ出身のアイスダンスチームなど、多数の〝異邦人〟が所属している。

男子サッカーの米国代表では、外国出身の二重国籍の選手を積極的に迎えている。

女子フィギュアスケート金メダリストのアリサ・リウや、スノーボード女子ハーフタイプのクロエ・キムは、グーと同じくアジア系移民の血を引くカリフォルニア生まれの選手だが、米国代表として戦っている。

「米国で生まれたから、米国で充足した環境に恵まれたから活躍できた彼らが星条旗を誇りに戦うのは当たり前で、それが彼らのあるべき姿。他の選択はありえない」という意見には、グーに対する強烈な憎悪も含まれている。

グーが中国の人権問題について一言も語らないことをあげて、彼女を「悪」だと断言する人もいる。

五輪開幕前、グーはタイム誌のインタビューに「米国には米国の代表がいる。米国には女性のスター選手がたくさんいる。でも、そうじゃない国もある。もし、そんな国の若い女性に勇気を与える方法があって、私にそれが出来るなら、素敵なことだと思いませんか?」と答えた。


米国の恩恵を受けて莫大なカネと名声を手にした彼女は、中国共産党の手先…。

しかし、彼女がタイム誌に語った(母国の)若い女性たちのロールモデルになりたいという思いは、共産党の思惑から逸脱したとんでもない危険思想につながる。

米国で教育を受け、西洋文化の学問とファッションとスポーツを極めるグーの生き方に、中国に住む多くの若者たちが憧れてしまうとしたら?

彼女は中国の国民的英雄になってしまったから、共産党は彼女を否定できない。そして、中国からの支援は、米国に居住するアイリーン・グーの銀行口座に振り込まれているのだ。

そして、グーはそれを米国で自分の成長のために使う。

米国や、グーを起用している国際企業は彼女のおかげで儲かっている。欧米のメディアも彼女のおかげで潤っている。

彼女は米国を利用する共産党の手先?

量子物理学的に事実関係を整理したら、そんな発想が出てくる前に、次の仮説の方が有力だろう。

Who knows, maybe she's an American plant. ~彼女は米国の対中工作員だ。

新華社通信の報道が抑制されているのを見るまでもなく、中国はアイリーン・グーをさらなる英雄に祭り上げることには消極的だ。

それこそ、中国の方がアイリーン・グーのことを米国が作り上げた完全無欠の対中工作員だと疑ってるかもしれない。




「アイリーン・グー、それとも谷愛凌?あなたは共産党のスパイなのか?米国のスパイか?あるいはダブル・スパイか?」。

今のタイミングなら、彼女は「五輪が終わったら大学のフォーマル・パーティーと量子物理学の期末試験で忙しい。少し落ち着いて、気が向いたらその空想話に付き合ってもいいけど、ずっと忙しいし、気が向くこともなさそうだから、謝っておくね」と笑うだろう。


アメリカは自由の国だ。自由を認める国だ。そして、努力と才能によって手に入れた成功を全面的に評価する国だ。


Eileen Gu's all-American choice to ski for China


その意味で、アイリーン・グーが中国代表を選択したことは、まさしくこれぞアメリカ人!というものだった。

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Called a traitor
〜裏切り者の名を受けて。



彼女は、SAT(米国の高校生を対象にした1600点満点の共通テスト)で1560点をマークしてスタンフォード大学に進学、量子物理学に熱中しながら国際関係学も専攻している。


"What I really love about quantum physics, [is] it's very conceptual and makes you question the nature of reality."

私が量子物理学をこよなく愛する理由は、とにかく筋道が立っていて、物事の本質を考えさせてくれるから。


世の中というやつは、全く不公平で、彼女は頭脳明晰なだけでなく、22歳の現在までにティファニーなどの企業と契約し、その美貌からヴォーグ誌などのファッション誌の表紙も飾ってきた。

明晰な頭脳と美貌と若さ。

それだけでも、嫉妬深い人たちの攻撃材料になるのは十分なのに、彼女はトップアスリートという4つ目の才能まで持っている。

SATで1560点を叩き出しながら、ダブルコーク1620を決めてアルプスの空を飛ぶことまでやってのけるのだ。

天は彼女に、二物どころか四物を与えた。

そして、彼女は暗愚な人々が妬み、攻撃する5つ目の強烈な材料まで持っていた。

米国生まれ、米国育ちの米国人アイリーン・グーは15歳で中国国籍も選択した、谷愛凌でもあったのだ。

米国の単細胞たちは声を合わせて中国の英雄を激しく非難し続けている。



ミラノ・コルティナ五輪期間中には、トランプ政権への擦り寄りを鮮明にしているFOX NewsでJ.D.バンス副大統領が「米国で生まれ育ち、この国の教育制度や自由と権利の恩恵を受けてきた人間なのだから、米国代表として競技に参加すべき。それが常識だ」と発言、グーに対する批判がさらに燃え盛った。



「北京体育局から過去3年間だけで1400万ドルの支援を受け、巨大市場を抱える中国の国籍をもつことで自身の商品価値を高めることに成功している」

「フォーブス誌によると、グーは2025年だけで女性アスリートで世界4位に相当する2310万ドルを荒稼ぎ」。

「偉大な米国の手厚い〝教育と福利厚生〟を利用しながら、五輪を舞台に星条旗ではなく中国国旗を振り回し、中国でセンセーションを巻き起こしている裏切り者を許すな」。




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ESPNから「Eileen Gu's all-American choice to ski for China」。


普通に考えたら、それこそ量子物理学的に筋道を整理することができたなら、どんなバカでも本当のことが見えてくるのに、どうしてそれができない人がいるのでしょうか?

彼らは何も考えずに妬み、成功した誰かを攻撃することに快感を覚える、正真正銘のクズたちです。

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どうして私たちは、トップアスリートたちの激突に惹きつけられるのでしょうか?

長い歳月を重ねて自己研鑽を続けた超人たちが、白黒つける瞬間を見たいからです。

そう、単純にいうと白黒ですが、それはいっときの勝敗だけを指しているわけではありません。

これがハリウッド映画なら安心して見ていられますが、スポーツの世界に台本は用意されていません。

勝利の歓喜と、敗北の絶望は、スーパースターにもダークホースにも平等ではなく、残酷に分配されます。

おそらく、私たちはトップアスリートの素晴らしいパフォーマンスと同じくらいに、この残酷さも見てみたい、そんな欲求も心の奥底にしまっています。

そして、映画や音楽、文学や学問と同じように、スポーツの世界もまた、物語を抱え込んでいます。

特にオリンピックともなると、今日一軍に上がったばかりの選手がヒーローインタビューを受けているなんてことは、起きません。

オリンピックではその意味で本当のシンデレラ・ストーリーなどあり得ないのです。

そこには、例外なく長い物語が横たわっています。



高梨沙羅も、近藤心音も、、三浦璃来/木原龍一ペアも、フォルティウスも台本の無い物語を紡ぎながら、この舞台に辿り着きました。

彼らに、その場限りの非難を口にする、書き込むような、スポーツを物語として見れない人は可哀想です。

酒場や個人ブログではなく、匿名で直接書き込むというのは可哀想を通り越して卑怯ですが。



彼らにとっての逆境は、演出効果を高めるための舞台装置にすぎません。

もちろん、舞台装置が物語に沿って作動しないこともあるでしょう。

それどころか、作動しないまま、逆境の泥沼に沈んでしまうことの方が圧倒的に多いのか現実です。

しかし、よくよく考えればしょっちゅう発動する舞台装置なんて大した演出効果を期待できません。




ーーーそして、舞台装置が動かないまま、逆境の泥沼に沈んだアスリートが見るのは地獄だけではありません。

あれほどちやほやしてきた人たちが潮が引くようにいなくなる中て、彼らは本当に大切な人が誰なのかをはっきり見えることになります。

それは、大谷翔平にはまだ見えない人生で最も大切なことの一つかもしれません。


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しかし、ミラノ・コルティナ、面白すぎる!

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リング誌2月号「FIGHT DOCTOR」に補足・修正。

A CUT ABOVE〜ワンランク上(のカットマンは何が違うのか)

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筆者はVADAのファウンダー、マーガレット・グッドマン博士。


ボクシングの試合でカットは付きものといっても良いが、試合を止めるほど危険な状態なのかを判断するのは難しい。

出血や腫れを抑える技術がカットマンによって大きな差があるのはご存知の通り。

コネチカット州の格闘技を統括するボクシング委員会で主任のリングドクターをつとめるマイケル・シュワルツ博士は30年近くもこの仕事に携わってきた。

「どこをどれだけカットしたのか?それは非常に重要だ。目の上をカットして出血してしまうと視界が妨げられ、適切な防御がとれない。カットが深すぎると、治癒してもまたカットしやすくなることもある。鼻の側面、内側をカットし大量出血した場合は、骨折の疑いがあり注意が必要だ。額や頭皮のカット(多くの場合はバッティングによって引き起こされる)は血管を傷つけていなければ、骨まで届く深いカットでない限り危険ではない。

リングドクターはカットがファイターの防御能力に影響しない限り、試合を止めるべきではないと考える。

試合中にコーナーが使用を許される化学物質は「ワセリン」と総称される、アドレナリン(エピネフリン)濃度1/1000、アビテン、トロンビンの三つだけ。

アドレナリンは血管を収縮させ出血を軽減する働きがある。コラーゲンで構成されるアビテンには、血小板を活性化させ、短い時間で血栓を作る。トロンビンは出血を遅らせる効果がある局所酵素。



今年、殿堂入りを果たすカットマンとして有名なトレーナー、ラス・アンバーはオレクサンデル・ウシクやワシル・ロマチェンコ、デオンティ・ワイルダー、ジャン・パスカル、チャド・ドーソンらのコーナーを守ってきた。

アンバーは語る。「カットマンには、60秒の時間しか与えられない。そこで何をするのが効果的かを冷静に、そして瞬時に判断しなければならないのだ。私が使うのはアドレナリン1/1000だけ。アビテンやトロンビンと使い分けるカットマンがいるが、選択肢が増えることは迷いにつながる」。

さらに、64歳のカナダ人のカットマンは綿棒を自分で作っている。小さな綿棒で何度も塗るのは時間のロスだけでなく、傷口をさらに痛めかねない。

「市販の綿棒は小さすぎる。大きな傷口にもフィット、より多くのアドレナリンを塗布できるように心がけている。傷口を乾燥させ、圧迫し、それから塗布する」。

「凝固効果は数分で現れるが、その間に対戦相手から追撃を受けると事態は変わってしまう。賢いファイターは、コーナーマンの意図を読み取ってくれるが『カットしたから止められる前に総攻撃を仕掛けなければならない』と打撃戦に突っ込んでいくファイターには困ってしまう」。

「十分な環境が用意されないクラブファイターはカットマンを雇う余裕がなく、コーナーは綿棒しか持っていない1人だけということもある。これは非常に危険な事態だ」。

「リヤドシーズンのイベントでは、使い捨てのアドレナリンボトルが用意されている。コストはかかるが入手しやすく、同じボトルを複数のファイターで使い回すことで引き起こされる感染リスクも回避できる。

使い捨てボトルはニューヨーク州アスレティック・コミッションなども義務付けており、資金力のある州から徐々に広がりを見せている。

カリフォルニア州アスレティック・コミッションの主任医師ポール・ウォレス博士は「1%ルール」を推奨。カットを1日あたり1%、100日計画で治癒するプログラムだ。

皮膚が治療に耐えられるだけの伸縮強度を取り戻してから施術を進めるのだ。

「止血」「炎症」「増殖(新しい組織で再構築される)」「成熟(裂傷箇所の組織が強化される)」という4つの段階を踏んで治療は完結する。

新しい血管が形成される時期は最も大切で、この時期に焦って練習をして再びカットしてしまうのは最悪の事態。いわゆる「カットが癖になる」皮膚のまま、完治しない危険を孕む。

もちろん「100日」というのは一つの目安に過ぎない。

カットの程度だけでなく、加齢に伴う皮膚の状態、遺伝や解剖学的な身体構造、過去のカット経験、高血圧や糖尿病などの既往症…様々な個体差を考慮、さらにそれぞれの段階での回復具合を見ながら慎重に進める必要がある。

また、一部で誤解されているが、アスピリンやモトリン、アリーブ、などの抗炎症薬は試合直前に服用すると出血を悪化させる危険がある。

禁止物質のアナボリックステロイドなどパフォーマンス向上薬、アルコールも出血や顔面の腫れを助長する。

そして、どんなことにも共通しているが、最も大事なことは予防だ。

健康的な食生活を普段から心がけること。十分な栄養を摂取すること。

過酷な減量で痩せ衰えた肉体で試合前日に秤に乗り、たった10時間ちょっとで一気に水分を取り戻す、それは目の前の試合への帳尻合わせでしかない。





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グッシー・ナザロフ…いやさ、オルズベック・ナザロフが人気階級でどれほど強いファイターだったのかは、ここでは別の話。

このキルギスの拳の嵐に曝されながらも、OPBFライト級王者の大友巌は12ラウンド36分間を、一度も倒れることなく立ち続けました。


大友は1984年7月6日にプロデビュー。2戦目で敗北を喫してしまいますが、持ち前のタフネスと強打で、そこから1引き分けを挟んで9連勝(8KO)をマーク。

そして1987年1月22日、シャイアン山本を9ラウンドでストップして奪った日本ライト級タイトルは9連続防衛。1989年6月19日には朴奉春をKOしてOPBFライト級王者に。

しかし、大友は日本から東洋へと単純にステップアップしたわけではありませんでした。

OPBF王座を獲得する4ヶ月前、2月13日に日本王座を追われているのです。

9度の防衛戦のうち7度をKOで片付けている大友を王座から引き摺り下ろしたのは五代登。

圧倒的不利と見られた五代は強打の大友と真っ向から撃ち合い、2−1で10ラウンド判定勝ちを手繰り寄せました。

五代はフェザー級、ジュニアライト級に続く、史上初の日本タイトル3階級制覇を達成。

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勝利を告げられて拳を突き上げる五代。トーア・ファイティングボクシングジムの原田政彦会長も両手を挙げて拍手。


…「五代登が日本タイトル3階級制覇」。その表現は正確ではないのかもしれません。

まず、タイトルを獲ったのはフェザー級が田中敏之、ジュニアライト級が田中健友、そしてライト級を獲ったのが五代登でした。


人が名前を変える理由は、必ず生まれ変わると強く意識したからです。

その意味で、この男は3度生まれ変わったことになります。

本名の田中敏之で1977年にヨネクラジムからプロデビュー。1982年、抜群のボクシングセンスで桑原邦吉と争った日本フェザー級王者決定戦を勝ち抜きました。

しかし翌年、天才肌にありがちな放蕩な生活もあって来馬英二郎に敗れて初防衛戦に失敗。

米倉健司会長の「健」と、後援会からのサポートを意味する「友」をもらって田中健友として再出発。

空位の日本ジュニアライト級王者決定戦を藤本将吉に勝利、二つ目のタイトルを手にしました。

しかし、彼はまたしても周囲の期待を裏切ってしまいます。

2度目の防衛戦でウルフ佐藤にKO負け、タイトルを手放してしまったのはしかたがないにせよ、1987年1月20日、覚醒剤取締法違反で逮捕されるのです。

日本ボクシングコミッションは6か月間の出場停止処分を決定。執行猶予が付いたとはいえ、私生活の乱れからたびたびブランクを作ってきた田中のボクシング人生は今度こそ終わったと思われました。

それでも、トーア・ファイティングボクシングジムへ移籍、五代登としてリング復帰。

3度目の心機一転で、彼は名前だけではなく、スタイリッシュなボクシングまで捨てました。

打撃戦を上等とするファイターに変身した男は、3階級目で初めて決定戦ではない、9連続防衛中の強打のチャンピオンに挑み勝利を掴み獲ったのでした。





ーーーそして。田中健友の時代に〝天才対決〟で五代登が敗れたのが、古口哲。

物語はまだまだ続きます。

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1992年5月11日、私は後楽園ホールのリングサイド席にいました。

メインイベントは東洋太平洋ライト級タイトルマッチ。

王者の大友巌はこれが6度目の防衛戦。5度連続防衛しているとはいえ、その内容は2勝3分。2つの勝利は一つがKOでしたが、もう一つはスプリットデジション。

けして安定した政権とは言えませんでしたが、6度目の防衛戦が絶望的な目で見られてたのは全く別の理由からでした。

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大友の前に立ち塞がった挑戦者が、グッシー・ナザロフだったからです。

試合後、ジムの大川寛会長が「3回までという(大友との)約束だったが、これが最後と思ってラストまでやらせた」と公言したように、大友は王者にもかかわらず、陣営までが序盤で粉砕されると覚悟したリングでした。

当時、大友の戦績は22勝19KO4敗5分。まだ28歳の若さでしたが、典型的な激闘型ファイターで肉体的ダメージの蓄積が深かっただけでなく、ライト級という世界戦を組むのが非常に難しいクラスであったこともモチベーションをキープするのに苦労したはずです。

当時はすでに4団体時代でしたが、JBCが認めていたのはWBAとWBCの2団体のみ。

ライト級タイトル挑戦には、今以上にカネもコネも莫大なコストがかかる時代でした。

当時、すでに「ボクシング人気は落ちた」と嘆かれていました。1970年代までの「世界王者>>>プロ野球のトップ選手」という絶対の不等式はもはや絶対ではなくなり「6回戦でも食うだけなら食っていける」なんて時代からファイトマネーの保証は据え置かれたまま…世界王者になっても読売ジャイアンツのレギュラー選手よりもはるかに無名…。

それでも、全体市場は沈下一方でも、辰吉丈一郎や畑山隆則、亀田興毅、長谷川穂積、西岡利晃、井岡一翔、井上尚弥と間歇的にヒーローが生まれてきました。

また、ボクシングファンに支持される世界とは無縁でも大友巌のような後楽園ホールのヒーローたちは水道橋にマニアックな熱気をもたらしてくれました。

そして…。後楽園ホールのヒーローたちはいつの間にか絶滅してしまいます。

後楽園ホールを熱くした拳を、大友巌から縦横無尽に辿っていきます。


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