カテゴリ: 日本でも馴染深い拳闘家達の生き様

Thursday 13, November 2025

Montreal Casino, Montreal, Quebec
commission:Quebec Boxing Commission
promoter:Camille Estephan (Eye of the Tiger)
matchmaker:Jordan Mathieu
official in charge:Jean Gauthier

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モントリオール・カジノ⬆︎は、1967年のモントリオール万博が行われたノートルダム島の跡地に建設されました。

ノートルダム島は人工島、万博とカジノ…まさに夢洲の大阪万博と同じ浮世のワンダーランドです。


さて、2019年12月23日。横浜アリーナのリングに上がったとき、彼の戦績は30戦24KO1敗1分。10連勝(うち9KO)と勢いに乗って世界タイトル初挑戦に漕ぎ着けました。

ロンドン五輪金メダリストで右の強打と固いブロックを持つWBAミドル級王者に挑むには実力不足と見られていましたが、BANG BANGの異名を持つ24歳のカナダ人は「パワーは私の方が上。ベルトを地元モントリオールに持ち帰る」と自信満々でしたが…。

試合は村田諒太の圧力に追い詰められて、第5ラウンドに痛烈に叩きのめされてTKO負け。

この試合の結果はカナダのCBCニュースでも大きく報じられたことからも、〝BANG BANG〟スティーブン・バトラーがボクシングの関心が高いとは言えない母国でも一定の注目を集めていることを窺わせました。

「人気階級の白人ファイター」は特別です。

しかし、強豪がひしめき層も厚い人気階級で頂上に登るのは白人でなくとも至難の業。

カナダに強力なファンベースとスポンサーを持つバトラーはWBO王者ジャニベク・アリムハヌリへも挑戦しますが、2ラウンドKO負けで惨敗。

それでも、モントリオールでは人気者。11月13日に美しいカジノに内蔵されたアリーナで行われるイベントのメインを飾ります。

当初は同じカナダ人のエリック・バジニャンと対戦する予定でしたが、バジニャンが負傷。カメルーンのステファン・フォンジョが代役に送り込まれました。

フォンジョは2020年9月デビュー。ここまで14勝9KO1敗1分。WBC暫定スーパーミドル級王者クリスチャン・エムビリのスパーリングパートナー。これがキャリア初の10回戦になります。

バジニャン戦はアンダードッグだったバトラーですが、フォンジョ相手でどうでしょうか?

一つ確かのことは、5敗のうち4つがKO負けのバトラーがこの試合でもストップされたとしても、またチャンスをもらえるということです。

逆に、ここ数試合をカナダで戦っているフォンジョがバトラーに勝っても世界路線には簡単には乗せてもらえません。



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Friday 15, August 2025
  
ProBox TV Events Center, Plant City, Florida, USA

commission:Florida Athletic Commission
event name:PROBOX TV
promoter:Garry Jonas (Pro Box Promotions)
matchmaker:Ramiro Hernandez, Melvin Rivas, Daniel Rubin


ゲイリー・アントニオ・ラッセル
vs
デビン・ロドリゲス


明日、フロリダ州プラントシティのProBox TV Events Centerで開催される興行。そのアンダーカードにアントニオ・ラッセルが登場、デビン・ロドリゲスと123ポンド契約8回戦を戦います。

ラッセルにとってはタイトルアタックに向けた調整試合。

この試合に勝利すると、11月にテキサス州で開催予定のプレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)のイベントでラモン・カルデナスとのサバイバルマッチに挑みます。

ファン・カルロス・パヤノ、エマヌエル・ロドリゲス、アレハンドロ・サンチアゴ…日本でもお馴染みのファイターたちとシノギを削ってきたラッセル兄弟の〝切り札〟も32歳。



圧倒的有利と見られたロドリゲスとの初戦は第1ラウンドわずか16秒で偶然のバッティングによりノーコンテスト。

再戦も有利と見られていたラッセルでしたが、ロドリゲスが完封ペースで試合を進め、10回負傷判定でまさかの完敗。評価は暴落してしまいます。

https://fushiananome.blog.jp/archives/30537703.html

この試合をクリアして11月にカルデナス戦…となると、一部の日本メディアで報道されている12月27日にサウジアラビアで「中谷潤人vsカルデナス」はどうなるのでしょうか。

そもそも、ラッセルはカルデナス相手なら完全に有利と見られるはずで、敗れたカルデナスが翌月に中谷の待つリングに上がるとは思えません。

では、ラッセルが中谷と戦えるのか?となると、カルデナスを井上との大一番に向けたチューンナップと位置付けている中谷はオーソドックスの相手を希望しており、サウスポーのラッセルは対象外。

カルデナスをマネジメントするマイク・ミラーは「2026年に井上との再戦、中谷との試合を成立させたい」と昨日の段階で語っていることから「サウジで中谷」は交渉すら進んでいないムード。

中谷のジュニアフェザー級初戦の相手は、はたして誰になるのでしょうか?




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Saturday 15, March 2025

Echo Arena, Liverpool, Merseyside, United Kingdom
commission:British Boxing Board of Control
event name:Hard Days Night
promoter:Frank Warren (Queensberry Promotions)
matchmaker:Lee Eaton, Steve Furness
   United Kingdom BT Sport

◾️WBAフェザー級12回戦



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試合前にボールの勝利が1/14(1.07倍)、ドヘニー7/1(8倍)と一方的だった掛け率は試合が始まるとさらに一方的に。

キャリア最高の勝利が岩佐亮佑、傑出した技術は何も持たず、ウエルター級にリバウンドさせた体でパワー勝負を仕掛けるのが唯一の武器というドヘニー。

ジャフェスリー・ラミドに勝った試合はその典型でしたが、ラミドは「井上尚弥のスパーリングパートナー」というのが評価の全てという、世界基準では雑魚。

あのレベルのボクサー相手に「圧倒的不利」と見られていたのが、ドヘニーの本当の実力です。

ドヘニー得意のリバウンドを支えているのは試合直前に行う水抜きと、計量後に行こなう水分補給。しかし、それに不可欠のサウナを試合前1週間での使用を禁じているのが英国ボクシング管理委員会(BBBofC)。

唯一最大の武器リバウンドを封じられたドヘニーに勝ち目はなく、前日計量では干からびた肉体と焦燥した精神状態を晒け出してしまいます。

ドヘニーはいつものように勇敢でしたが、いつものように不器用です。そして、いつもと違ってスムーズなリバウンドは出来ず、体が重そうです。

初回から試合は荒れます。会見や計量後のパフォーマンスと試合は全く別物という、この世界のルールを知らない大馬鹿者2人の対戦となりました。

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ヘッドロックにローキック…ボールの行為は敵地なら反則負け。醜悪なものでした。

若さで老ドヘニーを押し切ったボールはタフでパンチも重そうですが、それが世界レベルかというとそうではありません。

誰もが認める階級最弱王者ボールは、精神的も軽蔑すべき最弱でした。

井上尚弥が戦うべき相手ではありません。あんなのに勝っても誰も評価してくれません。





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Saturday 15, March 2025

Echo Arena, Liverpool, Merseyside, United Kingdom
commission:British Boxing Board of Control
event name:Hard Days Night
promoter:Frank Warren (Queensberry Promotions)
matchmaker:Lee Eaton, Steve Furness
        United Kingdom BT Sport


サウジが「(腐った)ボクシング界にかつての威厳を取り戻す」と宣言、その旗頭に任命したのは、ダナ・ホワイト。

「階級の名称もラウンド制も何もかもがボクシングのパクリ」(ボブ・アラム)という非難も虚しいほど、UFCをメジャーとするMMAと、グダグダズブズブのボクシングの米国でのステイタスは完全に逆転してしまっています。

最初にオイルにまみれたのは英国のエディ・ハーンとフランク・ウォーレンでした。そして、いま、彼らはサウジから急な三行半を突きつけられています。


◾️WBAフェザー級12回戦




王者の直近の試合は、28歳のリバプールっ子のボールがフェザー級の門番ロニー・リオスに完勝。

ボールよりちょうど10歳年上の流浪のアイルランド人ドヘニーは、相手がPFPファイターの井上尚弥とはいえ、有明アリーナで醜態を晒して惨敗。

英国でマッチルームに並ぶメジャー、クイーンズベリー・プロモーションズのフランク・ウォーレンは「ニックが何者かを見せる試合。ドヘニーは評価が低いというかもしれないが(井上がストップした)7ラウンドよりも短い時間で(井上ができなかった)ダウンまでさせて勝てばどうかな?」。

この試合は、ボールと井上との決戦前の〝生贄の儀式〟。

ウィリアム・ヒルの見立てはボールの勝利が1/14(1.07倍)、ドヘニー7/1(8倍)と一方的です。

もちろん、ドヘニーは4Belt eraだからストラップにありつけたファイターで、それはボールも同じ。

ただ、ボールには二重のアドバンテージがあります。

一つはもちろん、英国の完全ホームにアイルランドのドヘニーを引っ張り上げる〝地政学〟。

もう一つは、ドヘニーの強さの源泉、というよりもそれしかない驚異的なリバウンド・アドバンテージに不可欠に不可欠な(サウナでの)水抜きを禁じるBritish Boxing Board of Controlルールです。

ドヘニーは、前日計量でもかなり神経質になっていただけに心配です。結局、全裸で秤に乗ってクリア。いつもの水抜きができなかったのは明らかです。38歳ではなく58歳、還暦前にも見えてしまうやつれかたです。

ここから、どこまでリバウンドできるのか。

プロボクシングにおいて、仕組まれた試合は珍しくありません。日本人の世界戦は王者であれ挑戦者であれ、まず国内で開催されるのがデフォルトです。

一方で、ドヘニーやマニー・パッキャオのように母国を離れて〝敵地巡礼〟をヨシとする冒険王もリングに上がってきます。

ドヘニーはパッキャオではありません。

いやなものを見せられそうです。










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今夜の有明アリーナ。

赤井英五郎が番狂せに泣き、那須川天心が空転(というと可哀想か?)、堤聖也と比嘉大吾はThis is BOXINGを体現、中谷潤人も期待を大きく上回るスペクタルを見せてくれました。

〝ビッグバン〟中谷が破壊したダビド・クエジャルは、リング誌ランキングで8位評価を受ける本物の世界ランカーでした。

中谷に惨敗してもクエジャルのランクは8位のまま。軽量級の層が薄いということを差し引いても、中谷の評価の高さが窺える事実です。

さて、今夜から始まるお話の主人公はクエジャルでも中谷でもありません。

リング誌バンタム級ランキングで10位に入っている、ハビエル・シントロンです。

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2019年12月31日、大田区総合体育館。

重岡兄弟が出場するワタナベジムの主催興行でしたが、主役は井岡一翔。

当時30歳のWBOジュニアバンタム級王者が初防衛戦に迎えたのは、24歳のハビエル・シントロン。

Perrito(子犬)と渾名されるプエルトリカンで、このときの戦績は11戦全勝5KO無敗。

同じ年の5月に伊藤雅雪がジャメル・へリングにWBOジュニアライト級のタイトルを奪われたフロリダ州キスミーのイベントでセミファイナルをつとめたシントロンは、江藤光喜に幻の初回KO負け(ノーコンテスト)を喫しながら、再戦でしっかり雪辱、この日を迎えていました。

2016年のロンドン2012、リオデジャネイロ2016と2大会連続で五輪に出場したプエルトリコのホープ。

PerritoはWBO1位で指名挑戦者として東京に乗り込んできたのです。

しかし、結果は4階級制覇王者の経験と技巧の前にUDで判定負け。

試合後のロッカールームでは「井岡は経験豊かな王者だった。多くのことを学んだ」と語っていたシントロンでしたが…。

失意のホープは、なんと4年6ヶ月余りもリングを離れてしまうのです。

ホープは30歳になり、階級はバンタム級へ。

そして、再び世界戦線に浮上してきました。



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全米ボクシング記者協会が選んだ2024年の Fighter of the Year(年間最高選手賞=Sugar Ray Robinson Award)に選ばれたのは、オレクサンデル・ウシク。

日本からは中谷潤人もノミネート、昨年の井上尚弥に続く「2年連続日本人」の快挙とはなりませんでした。

もし、バンタム級の中谷が獲っていたなら「2年連続超軽量級」、井上とノニト・ドネア(2012年)が持つジュニアフェザー級の「最軽量」を〝更新〟する史上初のオマケ付きでした。

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中谷と、やはりノミネートされていたバム・ロドリゲスは今年以降でもFighter of the Yearに輝くチャンスは何度もあるでしょう。



さて、今回のテーマはFighter of the Yearでも中谷でもバムでもありません。

BWAA表彰の中でTrainer of the Year(年間最高トレーナー賞=Eddie Futch Award)に選ばれていても良い実績を積み重ねてきたロニー・シールズです。

最近では先週、デビッド・ベナビデスの軍門に降ってしまったデビッド・モレルや、エフェ・アジャグバ、少し時間を遡るとエリスランディ・ララ、ギレルモ・リゴンドー、チャーロ兄弟、バーネス・マーティロシュアン、ヘスス・チャベス、ファン・ディアス、アーツロ・ガッティ、バーノン・フォレスト、カーミット・シントロン、パーネル・ウイテカー、デビッド・トゥア、イベンダー・ホリフィールド、マイク・タイソンら錚々たるファイターたちを指導してきました。

21世紀を代表するトレーナーの1人、シールズは海外で成功したトレーナーとしては珍しい世界トップクラスの実績を持ったボクサーからの転身でした。

元世界チャンピオンのトレーナーというと、ロベルト・ガルシア(IBFフェザー級)とマーク・ブリーランド(WBAウエルター級)が真っ先に頭に浮かびますが、ゴールデングローブで何度もチャンピオンになったシールズも頂点にあと一歩と迫りました。

シールズは1958年6月6日、テキサス州ポートアーサーで生まれ育ち、そこを拠点にアマチュアの国内タイトルをコレクション。

幻となったモスクワ五輪の米国代表トーナメント・ライトウエルター級では決勝でジョニー・バンフス(のちのWBAジュニアウエルター級王者)に敗れるも241勝21敗のアマ戦績をひっさげて1980年8月にプロデビュー。

1980年代はじめという時代は、西海岸のボクシング市場が揺らいでいた時期。シュガー・レイ・レナードのような超トップを例外に、白人や黒人選手を中心としたボクシング人気に翳りが見え「メキシコの時代」も夜明け前。

メキシコとは縁もゆかりもないフロイド・メイウェザーがメキシコの祭日週間や記念日にソンブレロをかぶって試合リングに上がり、スペイン語も話せないのにメキシコ系だと主張するボクサーが溢れている現代では信じられないかもしれませんが、当時はメキシカンが敬遠される傾向もあったのです。

観客はすでにメキシコ人が主流になっていましたが「(選手は)残念ながら人気の薄い軽量級にタレントが集中」(ボクシングマガジン1986年11月号)していたために、プロモーターも積極的に売り出すことができませんでした。

レナードのような金看板もなく、地味なアマチュアスタイルのままリングに上がり続けたアフリカ系アメリカ人のシールズに人気が集まるわけがありません。

北米ジュニアウエルター級タイトルを争ってブルース・カリーに惜敗、相性的に有利と見られていた世界初挑戦(WBC王者ビル・コステロ戦)は3度のダウンを奪われた末に判定負け。

1986年5月に再び挑んだ北米ジュニアウエルター級のタイトル戦(王者決定戦)でも、身長160㎝のフランキー・ウォーレンのプレッシャーに距離を潰されて大差判定負け。

アマチュアでもプロでも、とにかく大事な試合を落としてしまうボクサー、それがロニー・シールズでした。

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2階指定席C:5000円〜1階特別リングサイド:50,000円。


ウォーレン戦で〝醜態〟をさらしてしまったシールズでしたが、12月2日にWBCジュニアウエルター級王者・浜田剛史とのタイトルマッチがセットされます。

帝拳や日本のメディアは「ランキング1位のロドルフォ〝ガトー〟ゴンサレスが浜田との対戦を逃げて挑戦者選びが難航」と喧伝し、オファーを受け入れた勇気ある挑戦者がシールズだったという、今でもよく聞くストーリーを作ります。

当時のWBCランキングは1位:ゴンサレス、2位:レネ・アルレドンド(7月24日に浜田に失神KO負け)、3位:ウォーレン、4位:安京徳、5位:シールズ、6位:ウーゴ・エルナンデス、7位:バディ・マクガート、8位:ロニー・スミス、9位:テリー・マーシュ、10位:ジョー・マンリー。

プレッシャーファイターに弱いことが直近の試合でも明らかになった非力で勝負弱いシールズは、浜田にとってまさに安全保障書付き。冴えわたる帝拳セレクションです。

試合当日までにランキングがなぜか4位に上がったシールズは大健闘、12ラウンド36分間をコントロールしたように見えましたが、攻勢を評価した2人のジャッジが浜田を支持、琉球のサムライは2−1で初防衛に成功します。

当時は「(常に攻め続けた)プロが(小手先のテクニックでかわす)アマチュアに勝った」という見方でしたが、今ならシールズのジャブで血まみれにされた浜田の明白な判定負けでしょう。

シールズは派手に抗議するわけでもなく、悲しそうな顔で呆然と立ち尽くすだけでした。

その後、3試合を戦いシールズは引退。

アマチュア時代に習得した高度なボクシング技術と、プロで経験した〝あと一歩〟。そして、どんな不条理に直面しても冷静を保てる俯瞰のバランス感覚。

トレーナーとしての技量が卓越したものであるのは、キューバのエリートアマがシールズのもとへ〝参拝〟していることからも明らかです。

そして、プロで辛酸を舐めた〝あと一歩〟を、どこまでも突き抜けるようなファイターをいつか必ず育て上げるでしょう。




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「私がノックアウトされると予想しているみたいだが、それが間違っていることを証明する」。

プロキャリア16年9ヶ月、47戦で一度もストップされたことのないペドロ・ゲバラが判定の声を聞くことなくKO負けを喫するーーーそれは誰もが確信していました。

井上尚弥が同じように仕留めたTJドヘニーやスティーブン・フルトンもKO負けの経験がありませんでしたが、彼らが倒されるのは分かりきっていたように。

要するに、彼らはCompuBoxなどのデータを見るまでもなく、ディフェンスに致命的な欠陥を抱える、いつKOされてもおかしくない、4団体17階級時代だから刹那の間ストラップにありつけただけの凡才でした。

しかし、それにしても。

フィラデルフィアのウェルズ・ファーゴセンターでバム・ロドリゲスは結果こそ大方の予想通りでしたが、オペレーションに費やした時間とやり方は想定以上でした。

パンチの多彩さと角度は、現在のボクシング界で頭抜けています。


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身長/リーチは両者とも同じ163㎝/170㎝と全く同じ。年齢は24歳と35歳と11歳も離れていましたが、それは2人を分け隔てる最も大きな要素ではありませんでした。

ボクシングの技術、センス、スピード、パワー…このスポーツに必要な要素の全てにおいてバムが上回っていました。

リング上でクリス・マニックスに「次の試合は誰?」と聞かれたバムは「統一戦をやりたい。もしそれが出来ないならローマン・ゴンサレスかな。チョコラティトとの試合は統一戦ではないけど、それが物足りないとは誰も思わないでしょ?」。


“You saw tonight who I am.”

今夜、私が何者であるかがお分かりになったでしょう。


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プロボクシングは日本を含む先進国で、スポーツとしての社会的地位が凋落し続けています。

女性や子供も観戦スポーツを楽しむ時代に、ボクシングはその競技特性からふさわしくないのは当然です。もちろん、団体と階級の増殖、同一団体の同一階級でも世界王者が複数存在するなど、メチャクチャな構造からも信用を失い続けてきました。

Undisputed champion、議論する余地のない=文句なしの世界王者…こんな言葉が当たり前に横行すること自体が、常識から大きく逸脱した異常自体であり、滅亡への道であるというのに、もはや歯止めはかかりません。

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21世紀になってスポーツ・イラストレイテッド誌の表紙を飾るボクサーは激減。2015年のメイウェザーとパッキャオが最後となってしまいました。


世界の統括団体があれば、こんな事態は回避できたでしょうが、現実にこのスポーツを動かしているのはローカルコミッションとプロモーター、放映権料を支払うメディア。

「ボクシングってどうなってるの?ランキングも明らかにおかしいし、階級と王者は数え切れないし」という一般スポーツファンの意見は無視され続けてきました。

そんな、世界王者になっても無名であるのが当たり前の完全マイナースポーツ、ボクシングの中でも注目度が低い軽量級、米国ではコアなマニアのレーダーでも潜り抜けてしまう元ジュニアフェザー級王者スティーブン・フルトンのお話しです。

昨年、シュガー・レイ・ロビンソン賞をはじめ、主要メディアのFighter Of The Year を総ナメにした井上尚弥も米国では全く無名。

アジアの軽量級選手では、ボクシングという小さなコップの中でもさざ波を立てるのは至難の業で、もしそれが出来るなら、めったに出現しない軽量級のスター選手、対戦相手に恵まれるしかありません。

井上の不幸は5階級にまたがり、4階級でタイトルホルダーになりながらもスター選手は皆無、まともな強豪との対戦もないということに尽きます。

井上に敗れたボクサーたちは、その後のキャリアでさらに馬脚を露わす〝失態〟を繰り返すばかり。唯一の例外は田口良一(のちのリング誌/WBA・IBFジュニアフライ級王者)ですが、それはもう11年前の日本ジュニアフライ級タイトルマッチの話です。



2人とも頬はこけ、肌はカサカサ…より弱い相手を求めて自分まで弱体化する貧困ビジネス対決は井上の圧勝!


そして、例外ではない〝がっかり組〟の1人が元ジュニアフェザー級王者スティーブン・フルトン。井上との対決前は、名勝負を期待して私もさまざまな記事を集めようとしましたが、そこから浮かび上がってきたのは想像を絶する人気の無さ。

そして何よりも、攻撃力が世界基準以下で悲惨なのはわかっていたものの、BoxRecの数値では防御までザル、このブログでも「こんなのが井上に勝てるわけがない」と、途中で記事をやめてしまいました。

やる前から惨敗が決まっている、井上が対戦後に「顔面を打たれるのを極端に怖がる」と失望したチキン、それがフルトンです。

そんな、チキンなスクーターが12月14日、モンスターに沈められてからの復帰第2戦のリングに上がります。舞台はテキサス州ヒューストンはトヨタセンター。

対戦相手は3年ぶりの再戦となるWBCフェザー級王者ブランドン・フィゲロア。

WBAライト級王者ガーボンタ・デービスがラモント・ローチを迎えるビッグファイトのアンダーカードにセット。

ジュニアフェザー級の団体統一戦となった初戦はフルトンが2−0のマジョリティデジションで白票の勝利を収めましたが、多くのメディアやファンがフィゲロアを支持する議論を呼ぶ判定で、フルトンは「再戦では誰にも文句を言わせない勝ち方をする」と意気込んでいます。

そういう決定力が絶望的に欠落しているのがフルトン。

直近のカルロス・カストロ戦もぐだぐだの試合で、多くの人がフルトンの負けと見ましたが…。




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シーサケット・ソールンビサイ

WBCジュニアバンタム級のタイトルを2度獲得、リング誌王者にも就き、多くのメディアがPFPランキング中位まで評価したグレートです。

そんなシーサケットも現在37歳。軽量級では引退してるのが当たり前の年齢です。

八重樫東の噛ませ犬として後楽園ホールでプロデビュー(3ラウンドTKO負け)したタイ人は、2戦目で屋富祖裕信(3ラウンドKO負け)、5戦目で大庭 健司(3−0判定勝ち)と日本御用達の踏み台としてキャリアをスタート。

そして、大庭戦の敗北を最後に13連勝してWBCジュニアバンタム級王者・佐藤洋太に挑戦。

佐藤は3度目の防衛戦、シーサケットは安牌と見られ、タイでの世界戦連敗記録にストップがかかると期待されていました。

しかし、日本で晒した脆弱なかませ犬の印象は完全に払拭され、世界基準の重戦車に変貌していたシーサケットに8ラウンドで粉砕されてしまいます。

日本のメディアは「勝負に絶対はない。それでもまさか、まさかの結末」(ボクシング・マガジン)と的外れな見方が目立ちましたが、あの試合を目の当たりにしたボクシングファンはシーサケットの見方を180度変えました。

WBCストラップは、帝拳のカルロス・クアドラスに敵地メキシコで惜敗、手放してしまいます。

それでも、2017年にPFPキングのローマン・ゴンサレスに勝利、大方の予想を引っくり返してタイトル奪還。

欧米のマニアは「Massive upset(大番狂せ)」と騒ぎ立てましたが、日本のファンから見ると十分起こりうる「Mild upset」。

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母国に帰国したシーサケットは、国王から宮殿に招かれ祝福を受け、国民的英雄に登り詰めます

2年前に3度目の王座返り咲きを狙ったバム・ロドリゲスとの一戦は惨敗に終わり、物語は終わったと誰もが思いましたが…。

8月30日(金)、バンコクのラチャダフィセーク・バザール特設リングで6回戦を戦いユナニマスデジション(3者とも59−54)で勝利したシーサケットは「3度目の返り咲きを狙う」と、世界戦を渇望しました。

今回の対戦相手ウッティチャイ・ウラチャイは、今年プロデビューして、1勝1敗この試合が3戦目ですが、アマチュア経験が豊富な30歳で、1ヶ月前にはナワーポン・ソー・ルンビサイと対戦(0−3判定負け)しています。

2ラウンドに2度ダウンを奪うなど圧勝したシーサケットの実力を、この試合で見極めるのは難しい。

波乱万丈のシーサケットが三度タイトルを獲れるのか?それ以前に、タイトルマッチまで漕ぎ着けるのか?

それは、誰にもわかりません。そう、仏様でもご存知あるまい、です。



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元WBOバンタム級/元WBA・IBFジュニアフェザー級王者マーロン・タパレスが9月7日、保持するWBCアジア大陸ジュニアフェザー級タイトルの初防衛戦のリングに上がります。

32歳のナイトメアが迎え撃つ28歳のサウラブ・クマルは、何とインド人。そして、舞台は何とカンボジアの首都プノンペン。

BoxRecによるとインドのプロボクサー人口は745人(8月25日現在)。ストロー級からヘビー級までのフルラインでファイターを取り揃えています。

クマルは、中国の刘中と空位のWBOオリエンタル王座を争ってTKO負けしたのが唯一の黒星。再起戦を2勝1敗の相手と泥試合の末に引き分け。続く試合はTKO勝ちを収めるも、相手は0勝1敗のプロ2戦目。



摩訶不思議なリズムのBGMは試合中に流れていたのか?

私たちの知っているボクシングとは全く違う拳の使い方、身のこなし…。
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