カテゴリ: 東京2020

素晴らしい代表チームでした。
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頂点獲った入江聖奈、世界の舞台で銅の並木月海、やってくれました。

5階級しかない中で王者になった入江、銅メダルを掴み取った並木、本当にお見事でした。これからどういう進路を選ぶのかわかりませんが、5年後も10年後も応援し続けることができる道を進んでくれたら嬉しい…。

「カエル関係の就職」希望の入江なんて、プロ転向なら花形階級で鳴り物入りのデビューになるのですが…。

男子も東京2020は8階級(バンタム飛ばし)、狭き門を目指しました。

田中亮明は、大舞台でも攻撃的なスタイルのまま戦い抜いて銅メダルを勝ち取りました。ボクシングで五輪メダルの先生、格好良すぎです。
  
岡沢セオン、金メダルのロニエル・イグレシアスに敗れましたが、世界トップレベルの実力とトップを狙うポテンシャルは証明しました。アマチュアボクシングにこだわりを持つ岡沢ですが、プロとは体重が微妙に違うとはいえウエルター級でサウスポー、夢の続きを見たい!

自衛隊の森脇唯人は難しい階級でラウンド16進出、健闘してくれました。破れたオレクサンドル・ヒズニャクは銀メダル、プロ転向で先輩のロマチェンコばりのパフォーマンスを人気階級のミドル級で見せたら…。

一番応援していた成松大介は、負傷のため2回戦を棄権。残念ですが、31歳の成松のボクシング人生を「運が悪かった」とまだ決め付けたくありません。

「素晴らしいチーム」(入江)の男女6人は3つもメダルを獲得してくれた、史上最強の日の丸軍団でした。
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米国には全国区のスポーツヒーローは存在しない。

「全国区」なんて概念がない国なので、当たり前と言えば当たり前です。

それでも、Forbesのアスリート長者番付や、2018年にESPNマガジンが創刊20周年を記念して企画した「The Dominant20」などのランク付けから、米国でパワーを持つアスリートが誰なのかは少しは覗き込んだ気分になれます。

The Dominant20は米国に特化して知名度、新聞雑誌への露出、SNSのフォロワー、報酬などの視点から、1999〜2018年の20年間、米国スポーツ界で最も支配的に活躍したアスリートの20傑です。

ちなみに電子版では2018年の1年間でも選考基準はより恣意的になっていますが同様の企画を実施、下記がその順位です。

これを見て「羽生結弦は米国で11番目に有名なアスリート」と巨大な勘違いする人は皆無とは思いますが…。

20. Mike Trout – Baseball
19. James Harden – Basketball
18. Patrick Mahomes – Football
17. Alex Ovechkin – Hockey
16. Justify – Horse Racing
15. Drew Brees – Football
14. Mookie Betts – Baseball
13. Lebron James – Basketball
12. Lewis Hamilton – F1
11. Yuzuru Hanyu – Figure Skating
10. Novak Djokovic – Tennis
9. Simona Halep – Tennis
8. Luke Modric – Soccer
7. Breanna Stewart – Basketball
6. Chloe Kim – Snowboarding
5. Katie Ledecky – Swimming
4. Ariya Jutanugarn – Golf
3. Daniel Cormier – MMA
2. Eliud Kipchoge – Marathon
1. Simone Biles – Gymnastics
先ほど終わったばかりの東京2020の男子マラソンで圧勝したエリウド・キプチョゲが2位(マラソン世界記録樹立)、シモーン・バイルスが1位と五輪選手がワンツーでした。

そして、これ、2021年でやるとESPY大坂が最優秀女子選手賞、大谷が最優秀野球選手賞をすでに受賞していますから大谷翔平と大坂なおみのワンツーも十分ありえます。



前置きが長くなりましたが、1999〜2018のThe Dominant20です。

詳しいThe Dominant20はここをクリック

1. Tiger Woods, golf (17.0)
2. LeBron James, NBA (15.6)
3. Peyton Manning, NFL (12.7)
4. Jimmie Johnson, NASCAR (12.0)
5. Roger Federer, tennis (10.6)
6. Annika Sorenstam, golf (10.3)
7. Michael Schumacher, Formula 1 (10.2)
8. Floyd Mayweather, boxing (10.1)
9. Marta, soccer (9.8)
10. Usain Bolt, track (9.5)
11. Lionel Messi, soccer (8.9)
12. Serena Williams, tennis (8.9)
13. Lauren Jackson, WNBA (8.3)
14. Cristiano Rinaldo, soccer (8.2)
15. Novak Djokovic, tennis (8.0)
16. Alyson Felix, track (7.3)
17. Barry Bonds, MLB (7.1)
18. Mike Trout, MLB (7.1)
19. Manny Pacquiao, boxing (6.5)
20. Tom Brady, NFL (6.3)→The Dominant20には「ブレイディが20位なわけがない。デタラメ順位だ」という批判もありました。
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ESPNと米国、独断と偏見の二段重ねであることをまずお断りして、当該の20年間は「タイガー・ウッズ」の時代でした。

日本から見ると4位のジミー・ジョンソン(ナスカー)、9位のマルタ(女子サッカー)、13位のローレン・ジャクソン(女子バスケ)、16位のアリソン・フェリックス(陸上競技)、が「誰だ?」ってなりそうです。

ナスカーなんて、南部のちょっと懐古的右翼が楽しんでるイメージです。
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米国目線では8位のメイウェザーと19位のパッキャオが「この報酬要素だけでランキングされてるのは誰だ?」でしょう。

順位が上の方が大きなページを割いているのに、8位のメイと9位のマルタだけは〝逆転〟。メイやパックは知名度などではなく報酬のバロメーターが振れまくってることからランキングされました。

2028年の30周年でもこの企画があるのかどうかわかりませんが、大坂なおみが上位に入るどころか1位もあるかもしれません。

2021年限定なら、大谷翔平の1位は十分にありえますが、報酬の低さがネックになりそうです(公表されていませんが大谷のエンドースメントは選手年俸の数倍でしょうが)。
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米国人でもヨーロッパ人でもない、多くの米国人がどこにあるかも分かっていないアジアの島国という背景を考えると、大谷とパッキャオが米国に残している爪痕は途轍もないことです。

まあ、パッキャオは報酬だけ、大谷は現実のムーブメントを引き起こしているので、米国スポーツへの影響力という点では27歳の日本人が圧倒的に上です。 

といっても「大谷がホームラン王とMVP、スポーツイラストレイテッド誌とESPYの年間最高選手賞を受賞する」のと「村田諒太が東京ドームでカネロ・アルバレスを沈める」の、どっちが熱狂するかといえば、迷うことなく後者です。

アスリートに競技結果以外や、そもそも競技を超えて順位をつけるのは面白い試みですし、このブログでもさんざんやってます。

頭のおかしい平等主義者におもねって、タブーにすべきではありません。 

ただ、それはスポーツの楽しみ方の中でも最も瑣末でどうでもいい部分です。

米国ではボクシングは完全なマイナースポーツ、日本でのメジャー度も大谷と村田では国内外のメディアの取り上げ方や報道の質量は全く比較になりませんが、個人的には大谷がホームラン100本打って30勝しても、村田がカネロ沈める方がワクワクします。

もちろん、大谷の凄まじさや、米国でのステイタスは十分認めていますが、世界が認める高級ワインよりもピートの効いた暴力的なモルトウィスキーの方が好きなのと一緒です。 
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誰にでも、思い入れのあるアスリートがいるでしょう。

多くの場合、その理由は彼らがまだ若い学生時代からその才能と活躍を目にしてきたからです。

甲子園のヒーローが、プロで格別の注目を浴びるように。

海外のアスリートの場合、私たちが彼らを目撃するのは世界戦線に躍り出てからです。

桁外れに早熟の天才でない限り、この意味での思い入れのあるアスリートはまず出現してくれません。

また、実際には学生であってもその才能があまりに眩しくて、学生という性格をほとんど感じることができないケースがほとんどです。

彼らは例外なく怪物だからです。

怪物が学校に通って授業を受けるとか、食堂で友達と冗談を言い合うとか、甲子園のヒーローならまだしも海外の怪物アスリートでは想像しにくいということもあります。

しかし、どんな事例にも必ず例外があります。

アリソン・フェリックスは、そんな稀有なサンプルです。
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ESPNマガジンの「この20年間で最も支配的だったアスリート20人」にも数えられたアリソン。陸上競技で選ばれたのは、彼女とウサイン・ボルトだけでした。

ちなみにボクシングでも、メイパックの2人だけ。

まだ高校生だった少女が、マリオン・ジョーンズの持つ200メートルジュニア記録を更新したというニュースが飛び込んできたのは2004年でしたから、もう17年も前です。

その年に開催されたアテネ2004で、現役女子高生は評判通りの強さを見せてベロニカ・キャンベルに次ぐ2位、銀メダルに輝きます。

ゴールした後の柔らかい物腰に、お洒落な髪型、走ることを目一杯楽しんでいた彼女は普通の明るい高校生、とても怪物には見えませんでした。

当時、その後陸上競技をやることになるうちの子供とアテネのアリソンを応援した記憶があるのですが、それは私の記憶違いです。

アリソンよりも12歳年下の娘は当時、まだ6歳。一緒に五輪中継を長々と見る年齢ではありません。

娘から「2011年の大邱・世界陸上と翌年の2012ロンドンがアリソンをちゃんと応援してたときだ」と指摘されました。

世界デビュー当時から米国のアイドル、モデルの仕事もこなしていた彼女。

私はそんなアリソンの輝きを見ながら「陸上競技を長くは続けないだろうな」と勝手に決めつけていました。

しかし、陸上ファンは一人の怪物が少女から素敵な大人に、そして逞しい母親になるまでを見る幸運に恵まれました。

35歳になったアリソンは女子最多の6個の金メダルをコレクション。

東京2020でも400メートルで銅メダル。メダルの総数は10個と、カール・ルイスの最多記録に並びました。

そして今回のレースです。

ライバルたちを競り落とす絶妙に滑らかなコーナリングは高校生のときと変わらないように見えましたが、以前とは違いコーナーを抜けても先行するランナーを追いかける苦しい展開。

年齢を重ねるということは、そういうことです。

それでも、粘って3位に食い込みました。49秒46のシーズンベストを五輪決勝で持ってくる、何という勝負強さ!

年齢を重ねて、アスリートととして熟成されるとは、こういうことです。

「オリンピックは東京が最後」と美しく笑うアリソンですが「オリンピックは」ということは、来年の世界陸上には出場する気でしょう。

開催地は母国アメリカのオレゴン州。最後の勇姿を刻むのにこれ以上の場所はありません。
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有楽町東京スポーツスクエアから。

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田中亮明がフライ級のメダルを確定しました。

このクラスでは、ローマ1960の田辺清の銅メダルから61年ぶりの偉業です。

まだ生まれてもいない私は当時を肌感覚で知るわけもありませんが、田辺清については何度も読んだり聞かされてきました。

裸足のアベベやカシアス・クレイらが躍動したローマで、田辺は日本ボクシング史に大きな爪痕を残しました。

当時は、本物のボクシング黄金時代。

田辺にどれほど大きな期待がかけられたか、往年の新聞・雑誌からも簡単に伝わってきます。

そして、80年代にボクシングの魅力に取り憑かれた私が、田辺清について見聞きするとき、必ず「悲劇」という二文字がセットにされていました。

ローマでは不可解な判定で決勝進出を阻まれますが、三島由紀夫が「この不運はプロで必ず幸運の巡り合わせになる」と激励します。
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しかし…。

プロでは世界王者オラシオ・アカバリョをノンタイトルながらTKO、世界戦でのリマッチも決定していましたが、網膜剥離のため、引退。

アマチュアで115勝(30KO)5敗、プロ21勝5KO無敗1分。

間違いなく、日本史上最高のボクサーの一人でした。


そんな、田辺は80歳。

田中亮明に「金メダルを獲って」とエールを送り、好戦的な亮明のスタイルに「下がらなきゃいけない時は、次の攻撃につながるよう下がるのは半歩」とアドバイスも送っています。

お元気そうで、こっちも元気になります。
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異常な状況下で行なわれている東京2020。

それでも、世界中のアスリートが金メダルを目指して全身全霊を賭ける大舞台、感動的なパフォーマンスに胸を揺さぶられる毎日です。

サッカー、スペイン戦、胸が熱くなりました。堂々と最後まで戦い抜きました。



この五輪で、深刻な問題となっているのが、SNS上で選手個人に向けられた誹謗中傷です。

競技を離れて人格を否定するようなものや、選手の家族を貶めたり、競技とは無関係の私生活でのトラブルを不本意な結果に終わった原因にあげつらったり、なんていう卑劣で低次元の言葉は犯罪として扱うべき行為です。

では、採点競技で噴出しがちな「あの採点はおかしい」という批判はどうでしょうか?

採点への批判は、このブログでもしょっちゅう展開しています。

もちろん、大手メディアでもそれは同じです。

人格を否定したり、汚い言葉で罵ることをしないなら、採点や競技内容についての批判は許されるのでしょうか?

答えは簡単で、こういう場末のブログはもちろん、大手メディアでもそれは当たり前に許されます。


「あんなひどい採点をしたネルソン・バスケスは眼医者に行け」「戦う気持ちのないエマヌエル・ロドリゲスはすぐ転職すべき」「勝つ気のない生き残るためだけのボクシングをするオマール・ナルバエスは引退すべき」「フロイド・メイウェザーの試合は副作用のない睡眠薬」「強敵から逃げ続けたチキン、ナジーム・ハメドを殿堂選手として投票することはできない」…。

リング誌からニューヨークタイムズまで、どのメディアも不可解なジャッジや、ヘタレなボクサーには厳しい批判の矢を放ちます。

しかし、それを選手個人のSNSにわざわわざコメントを書き込んだとしたら、明らかに間違っています。

個人ブログや、新聞雑誌の記事は、わざわざ見る必要のないものです。そして、そこでの意見は、逆に自由な批判にさらされます。

個人のSNSに匿名で無責任なコメントを排出するのとは違います。


江川卓や桑田真澄は、一人きりになったとき、スマホの画面から卑劣な攻撃に襲われることはありませんでしたが、あれが現代に起きていたら、どれほどの批判、非難、罵詈雑言が集中していたでしょうか。

あそこまで、瞬間最大風速が甚大だと、逆にサポートする人も多く現れていたかもしれません。


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オメガのカウトダウンタイマーは、オリンピックのカウントを終えて、8月3日12時30分と時刻を伝える時計になりました。
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それにしても、今日も暑い。

昔々は、こんな暑くても一日中野球や陸上の練習してたなんてちょっと信じることが出来ません。
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東京駅で待ち人現れず。

電車遅延だそうです。
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東京2020に向け、9秒台ラッシュが続いていた男子100m。

日本記録を9秒95にまで更新した山縣亮太、自己ベスト9秒98を持つ小池祐貴、この二人に日本選手権で快勝した多田修平。

少なくとも3人のうちの誰かは、89年ぶりの日本選手決勝進出が期待されていました。

しかし、最も言い訳できないスポーツで、史上最強トリオは予選も突破できず、惨敗に終わります。

7組3着までが自動的に準決勝進出。4位以下の選手でタイムが良かった3人がプラスで拾われる、3着+3。

1組の多田は持ち味のスタートダッシュが不発に終わり、10秒22(追い風0.2m)の6着に沈みます。まだ1組目で6位ですから、後の組の4位以下で10秒22を上回るスプリンターが出た時点でゲームオーバー、万事休すです。

3組で走ったエースの山縣は、10秒15(+0.1m)で3人の中では最速のタイムで走ったものの、4着。

準決勝進出の3着以内に誰も入れなかった事実は、100mファイナリスト(決勝進出)を目指し、そこに期待していたファンたちにとって、惨敗だったと認めるしかありません。
FullSizeRender「自分のレースができなかったので、非常に悔しい。隣の選手にスタートで前に出られて、力んだ走りになってしまった」(多田)。
 

その「隣の選手」は9秒85の自己ベストを持つロニー・ベイカー(米国)でしたが、それを不運とは言えません。そういう並びになることは十分想定して練習してきたはずです。

 
「結構プレッシャーがかかったが、いまできる準備はしてきたので、これが実力」(小池)。

小池は、今シーズン調子が上がりきらないまま、大舞台を迎えてしまいましたが「プレッシャー」という言葉を何度も使いました。「これが実力」、その通りです。



 「準決勝、決勝を見据えて10秒0台は欲しい中で、そういうレースが出来なくて残念。スタートはもう少し楽に飛び出したかった。それも含めて調整の問題だった」(山縣)。

山縣は、同じ9秒95を自己ベストに持つラモントマルチェル・ジェイコブス(イタリア)との一騎打ち、予選突破は確実と見られていましたが、そのジェイコブスは9秒94で走り余裕のトップ通過。
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3人とも、自分の走りが出来なかったと悔やみました。


プラスで拾われた3人のタイムは10秒05、10秒10、10秒12。山縣はあと0秒3足りませんでしたが、それでギリギリの通過。

山縣が「(最初から想定していた)10秒0台を出していたら問題なかった」という言葉も、全く甘いとしか思えません。10秒0台なら3着通過、プラスでも拾われた可能性大ですが、それでギリギリです。

89年ぶりの決勝進出に必要だったのは10秒0台前半…私たちはこの舞台を完全に見誤ってしまいました。

一体、何が〝史上最強の3人〟を飲み込んでしまったのか。


①世界的なパンデミック下の中で、練習環境は悪化、リオデジャネイロ2016やドーハ世界陸上2019と比較しても、レベルは大きく上がらないと見られていました。

実際に参加選手のシーズンベストで山縣は6位。準決勝進出枠の18人に残れないことはない、と考えていました。

しかし、現実は予選から3人が9秒台で走り、プラスで拾われるラインはドーハの10秒23を0秒1も上回る史上最もハイレベルな予選となってしまいます。

山縣と予選3組を走ったジェイコブスは「最初の2組が予想以上に速かったから、簡単じゃないと気持ちを引き締めた」と、レベルが高いことを確信、9秒94で駆け抜けました。

敗退した後も「10秒0台で走っていたら」という山縣とは意識の差が大きかったように思われます。


②3人ともに語った「いつもの走りが出来なかった」という最大の原因は、決勝進出への重圧だったでしょう。

大谷翔平も「(地元の異様なまでの大声援は)ドーピング、普通じゃない力が出る」と語っているように、五輪でも地元開催がホームの選手に有利に働くのは当然です。

しかし、観客のいないスタジアムではそのメリットは少なく、苛烈に濾過された純度100%の嫌な重圧だけが3人の精神と肉体にのしかかっていたのかもしれません。

そして、そのプレッシャーが野球やサッカーのような団体競技よりも、個人競技の方が増幅されるであろうことは想像に難くありません。


これは、10秒で終わってしまう〝取り返しのつかない〟競技です。

自国開催の五輪。

大きな注目を浴びながらも、スタジアムは無人…。

そこで、いつも通りの走りをするなんて、超人技です。



③9秒台ラッシュで日本選手権にも大きな注目が集まる中で、世界へ向けるべき集中力が散漫になっていなかったか?

男子100mはメジャー種目です。さらに、原始的で爆発的な能力が求められることから「日本人が活躍するのが最も難しいスポーツ」と考えられてきました。

9秒台ラッシュの中で五輪切符をつかんだ3人が、何かをやってくれると期待するのは当然で、彼らも手応えを感じていました。

しかし、日本国内では一気にレベルが上がったとはいえ、世界との実力差は歴然としています。

強豪国としての長い歴史と経験を持ち、国内に世界的なライバルが存在する柔道とは全く違うのです。

淡々とインタビューに答えた彼らの誠実さと正確な自己分析は、さすがでした。

しかし、「銀メダルで申しわけありません」と悔しさに泣く柔道とは意識が違います。

この惨敗は、無駄ではありません。9秒台フィーバーでは、予選突破もおぼつかない現実を突きつけてくれました。

わたしも、五輪前に「レベルが下がったから活躍できたなんて言うなよ!」という趣旨のことを書きましたが、あれは男子100mを主に意識したものです。

3人とも準決勝には進むかもしれないと、期待していました。ただ、確信ではありません。

何よりも、この惨敗劇を目の当たりにしても、多くのメディアが使った「まさか」という思いは全くありませんでした。


「そういうことか」。

そんな思いでした。

甘かった。ただ、ただ、甘かった。
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シモーン・バイルスは「アメリカが東京2020に送り出した最大のスター選手」(ニューヨーク・タイムズ)ですが、この24歳の女性は、日本でほとんど無名といって差し支えないでしょう。

2013〜19年の世界選手権5大会で前人未到の金メダル19個を獲得、16年のリオデジャネイロ2016でも4つの金メダルに輝きます。

「史上最高の体操選手」(スーザン・ライス大統領補佐官)という表現は大袈裟ではありません。
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Simone Biles after pulling out of the women’s gymnastics team final on Tuesday.Credit...Doug Mills/The New York Times
 
そんな黄金のアスリートが、団体総合決勝で最初の跳馬を終えてまさかの棄権。

そして、その原因が肉体の負傷ではなく「自分を信じて体操を楽しめない。大きな重圧と期待に向き合えなくなってしまった」という心の問題だったことは衝撃的でした。

バイルスは「これまで不幸な事件や腎臓結石だけでなく、うつにも悩み苦しんでいたが、勝てば勝つほど巨大になる期待と重圧は耐え難いレベルに達していた。リオ五輪の後2年間競技から離れたことは正しい選択だった」(ESPN)と報道され、日本へ送り出されました。

しかし、バイルスが心と体を癒している間も、東京2020に向けて、彼女にのしかかる期待は軽くなるどころかどんどん増幅、蓄積されていました。

今年4月に「東京で五輪4種目2連覇を狙う」と宣言したのは、彼女の本意だったのでしょうか?

コロナ下で、家族や友人たちから遠く離れて戦うことになった海外の選手たちは、ただでさえ今までに経験したことがない孤独と不安の中で人生最大の大勝負に挑んでいます。

ロイター通信は大番狂わせに散った聖火リレー最終ランナーの大坂なおみにもふれ、スーパースターが抱える、あまりにも大きな重圧ついて「もっと踏み込んで考える時期だ」と問題提起。

人間の複雑な心の中の問題を、すべて同列に考えることは出来ませんが、一時競技を離れた競泳の萩野公介も「泳ぎたいのに、体が動かなかった」とその苦しみを告白しています。

もしかしたら…。

「泳がなければいけないのに、心も体も言うことを聞いてくれなかった」のではなかったのでしょうか。

心よりも肉体の方が「正直」なのかもしれません。

重圧の中には、純粋な期待とは真逆の、反吐が出るような悪意も少なくありません。

瀬戸大也に対して、プライベートな家庭内の問題と競技の結果を絡めてバカなことを言い出す、匿名の暇なバカがいますが、ああいうバカは何を考えているのでしょうか。

バカは自分がやってることが「匿名」という立場に乗っかった陰湿で愚かで、なによりも卑怯な行為であることに気づいているのでしょうか。


ボクシングの世界でも、やはりうつと戦っていたライアン・ガルシアが休養期間を経てリング復帰しますが、彼も、もっと休んでも良かったと思います。

競技を離れても、彼らが背負った巨大な期待という荷物は軽くなってくれません。

そして、彼らが「逃げ出してしまった」と後ろめたく感じているかもしれない競技の世界では、自分がいないまま新しい物語が粛々と進行してゆきます。

そんな彼らに「焦るな」という方が、無理です。

それでも、ゆっくり休めば良いのです。そのまま引退したって構わない。

また、やりたくなれば、戻れば良いだけです。
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本当の光を感じることが出来るのは、深い闇を見た彼らだけでしょう。

それは、競技に復帰して再び栄光を掴んで感じることが出来るなんて浅い話ではありません。

24歳のバイルスが世界選手権で戻ってくるのか、パリ2024で復活するのか、それは米国や体操ファンにとって注目と関心の的です。

でも、そんなこと、どうでもいいのです。一番大切なのは彼女の幸せで、それを犠牲にしてまで希求する価値など、金メダルごときにはありません。



バイルスの棄権を「悲劇」と報じるなんて、そんなの大間違いです。 

「自分を信じて体操を楽しめない 」のに、競技を続けること、それこそが、悲劇です。

彼女は、それに対して「NO 」と勇気の態度を示したのです。それは、悲劇なんかじゃありません。

シモーン・バイルスは、自分のために、前に向かって一歩踏み出したのです。
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プロで世界王者になるよりも遥かに難しい、五輪の金メダルを目指して出陣です!

応援していた堤駿斗が代表枠を獲得できなかったのは残念でしたが、頼もしい代表選手が揃いました。
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思いつくままに、書き出すとやっぱり成松大介か。

世界選手権や五輪ではあと一歩のイメージが強い成松ですが、東京でその一歩を踏み込むのだ!

腐敗を極めたアマチュアボクシングの騒動に巻き込まれて日本中の同情を集めた成松でしたが、ライト級の頂点に立って拍手喝采を浴びて下さい!


フライ級の田中亮明は恒成のお兄さん。メダル獲得なら、史上最強の兄弟誕生です。


ウェルター級の岡沢セオンは非常に評価の高いメダル候補。一番綺麗な色したメダルを目指します。


そして、ロンドン2012の村田諒太以来のミドル級での出場果たしたのが、森脇唯人。

「村田は不世出」「突然変異」と思い込んでいる私が、いかにつまらない既成概念にとらわれていたかを思い知らせてください!



世界選手権2018で銅メダルを獲得している女子フライ級の並木月海は、堂々の優勝候補。日本ボクシング史上初のヒロイン誕生の報を目撃しましょう!


真っ先に五輪切符を獲得した入江聖奈は、強豪ぞろいのフェザー級で金メダルを狙います。


地味な印象のあるアマチュアですが、代表選手はドキュメンタリーなどでしっかり取り上げられてきました。物語のフィナーレはもちろん、表彰台です!
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東京2020。

ここまでケチのついた五輪は、歴史上一度もありません。数え切れないケチがつきました。まだ出てくるかもしれません。

ホストの東京都も、IOCも最低です。

最悪のアルファベット団体はWBAとWBC、IBF、WBOの争いだと信じて疑いませんでしたが、IOCも堂々の参戦です。

世界的な影響という点では、IOCの圧勝です、最低最悪のアルファベット団体トーナメント。


それでも、開会式前の今日のソフトボールとサッカー。

この〝先鋒〟に日本が誇る女子競技をセットしたセンスは脱帽です。



そして、彼女たちは、素晴らしい!美しい!

日本らしさを存分に見せてくれました!

開会式もまだなのに、こんなに感動してていいのか。

「今からでも遅くない。中止にしろ」と、数日前に怒り狂ってたのに、もう前言撤回です。

頑張れ!日本!!!!!!!! 
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