カテゴリ: 複数階級制覇

122Lb

ジュニアフェザー級、あるいはスーパーバンタム級。

そう呼ばれる122ポンド級は、1975年に新設されたジュニアフライ級に続いて、1976年に誕生した水増し階級の走りでし ら

クルーザー級のように、大型化するヘビー級とライトヘビー級との乖離が無視できなくなったという大義名分がない軽量級の細分化は、メディアやボクシングファンから冷ややかな視線を向けられました。

しかし、この素晴らしい競技の中では歴史の浅い50年という歳月を経て「水増し」などという批判が馬鹿らしくなるほどの突き抜けたファイターを輩出してきましたのがジュニアフェザー級でした。

リング誌が年間表彰の1カテゴリーとして1980年から発表しているTHE BEST FIGHTER POLL(年間PFP:2017年で廃止)にウィルフレド・ゴメスが3位にランクイン。

シュガー・レイ・レナードを中核にした中量級への注目を謀る目的で企画されたTHE BEST Fighter POLLでロベルト・デュランとレナードに続く評価を受けたのです。

もし、THE BEST FIGHTER POLLがゴメスの全盛期、カルロス・サラテを粉砕した1978年にも存在していたなら、ゴメスの1位は当然、おそらく全ての票を集めたでしょう。

バンタム級からライト級で活躍したジェフ・フェネックが、貴公子サーマート・パヤクァルンを破壊して大番狂せを演じたのもジュニアフェザー級。

エリック・モラレスが最初のでっかい花火を打ち上げたのもジュニアフェザー級。

あのマニー・パッキャオが鮮烈な米国上陸をマーキングしたのも、やはりジュニアフェザー級。

ノニト・ドネアが Fighter of the year に選出される活躍を見せたのもジュニアフェザー級。

そのドネアにボクシングのレッスンを施したPFPランキングの常連、ギレルモ・リゴンドーも、もちろんジュニアフェザー級。

カール・フランプトンがFighter of the yearを獲るのは、フェザー級でレオ・サンタクルスとの軽量級では稀なビッグファイトを制したからてしたが、この小さなアイルランド人が最も鮮やかな印象を残したのもジュニアフェザー級。

そして、いま。愚かなまでにKOフェロモンを撒き散らしてボクシングマニアを虜ににしている井上尚弥もジュニアフェザー級。

ーーー掃き溜めに降りる鶴が最も美しい。

1980BFP




欧米では親近感の無い軽量級はオリジナル8の時代から注目度は低かった上に、現代では体重幅が小さく、3〜4ポンドで細切れされ、人気階級のメガファイトで前座をつとめるのが最大の晴れ舞台で、報酬的には日本人エースと日本で戦うのが手っ取り早くカネを稼ぐ方法です。

これが、井上のラスベガスへの片思い興行に付き合わされたラモン・カルデナスのようになると報酬は日本でやるよりもガクッと減ってしまいます。

「井上への挑戦が大筋合意」と伝えられたピカソが土壇場で対戦を拒否した事情は、おそらくそこにあります。

「え?全く無名のキム・イェジュンが50万ドルもらったと聞いていたのに、T−モバイルで戦うと言うのにこのファイトマネーは何なんだ?!」。

当たり前の話ですが、本当に逃げるつもりならドタキャンなんて無様な姿は見せません。最初から交渉のテーブルに付きません。

世界的な不人気と報酬の低さ。

世界王者でも1試合で10万ドル稼げないこともある軽量級。そこから、認定料やマネジメント料、トレーナーらコーナーマンたちに支払う日当、税金…などなどが差し引かれるわけです。

常識的に考えて、日本以外では専業ボクサーはほとんど存在しません。人気もない、報酬も良くない…。

軽量級には事実上、ビッグネームがいない。それは、すなわち、人気階級と比較して競技レベルが低いということです。

この掃き溜めには何羽もの美しい鶴が舞い降りましたが、その誰1人として人気階級のスーパースターの注目度や報酬の足元にも及ばないのが悲しい現実です。


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本文とは関係ありません。

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When Goliath Loses

大番狂せが起きるとき。

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下の階級のダビデが、上の階級のゴリアテに挑戦するーーー「階級を超えたメガファイト」ではダビデがベビーフェイス、ゴリアテがヒールの役回りを嵌め込まれる、勧善懲悪の構図になるのがデフォルトです。

そして〝善〟であるダビデがAサイドで「キャッチウエイト」や「リバウンド制限」をゴリ押しするケースが多いことを直視すると、見た目の勧善懲悪でくくるにはあまりにも複雑な事情が絡んでいることも見逃すべきではありません。

カネロ・アルバレスはゲンナジー・ゴロフキンやドミトリー・ビボルに対するダビデでしたが、彼を〝善〟と見たのはカネロのサポーターと一部のファンだけでした。

また、現在に至るAサイドによるスターシステムの基礎を築いたシュガー・レイ・レナードのドニー・ラロンデ戦は当時としても懐疑的な批判が少なくなく(日本はもちろんレナード礼賛)、現在ではその後のボクシング界を歪めた悪魔の所業と見なされています。


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やはり、カネロのフロイド・メイウェザー戦に至っては、世代の対決というスポーツファン大好きの〝定食〟に加えて、勧善懲悪ではなく〝悪vs悪〟という非常に珍しく、そして魅惑的な構図が浮かび上がったことも興行的な大成功をもたらしました。

来年にも実現が期待される「井上尚弥vs中谷潤人」はmission impossible の香りが立ち昇る「階級を超えるメガファイト」ではありませんが、世代の対決という大きなテーマが掲げられます。

そして井上と中谷のマッチングは〝善vs善〟の色合いが強く、一般的な興味・関心を巻き込む順位付けでは〝悪vs悪〟〝善vs悪〟に次ぐランクになります。

日本における〝悪〟はプラチナキャラ、彼らを例外にまず見当たりません。


次はボクシング界の矛盾がいくつも折り重なったメガファイト、ゲンナジー・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスの三部作を振り返りましょう。



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When Goliath Loses

大番狂せが起きるとき。


Saturday 21, September 1985
  
Riviera Hotel & Casino, Outdoor Arena, Las Vegas, Nevada
commission:Nevada Athletic Commission
promoter:Don King, Butch Lewis

inspector:Harold Buck

Lineal/リング誌/IBFヘビー級15回戦




ドン・キングとブッチ・ルイス…寓話に登場するような怪人2人がプロモートした歴史的な大勝負です。

「階級を超えたメガファイト」から滲み出しているのは、Mission Impossible のロマン。そして、この類のメガファイトで特徴的なのは、Mission Impossibleに挑戦する下の階級の選手がベビーフェイス、受けて立つ上の階級の王者がヒールになるケースが多いこと。

ゴリアテとダビデ、ゴリアテは常にヒールのレッテルを貼られがちなのです。

この試合でもライトヘビー級のUndisputed championマイケル・スピンクスが、ヘビー級の絶対王者ラリー・ホームズに勝てば史上初のヘビー級を制したライトヘビー級王者。

そして、大方の予想通りにホームズが勝利するとロッキー・マルシアノの連勝記録「49」に並ぶ大きな節目。

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29歳のスピンクスが27戦全勝19KO、35歳のホームズが48戦全勝34KOという無敗対決。そして、PFPファイター同士の対決でもありました。

当時、米国では五輪ボクシングに出場する自国選手の試合は地上波生中継されていた時代、スピンクスは1976年のモントリオール五輪ミドル級の金メダリスト。

一方のホームズは叩き上げ。もおもとが「アリのコピー」「試合が面白くない」と非難される憎まれ役。

計量は王者が221.5ポンド(100.5kg)、挑戦者は現在のクルーザー級リミットも割り込む199.25ポンド(90.4kg)。

このとき、スピンクスの増量を指導したのは女優リンダ・ハミルトンや、MLBのオジー・スミス、NFLのペイトン・マニング、テニスのセリーナ・ウィリアムズらスーパースターの肉体改造を手がけたマッキー・シルストーン

のちにワシル・ロマチェンコの栄養管理もサポートするシルストーンは、スピンクスのライトヘビー級(175ポンド)の肉体に約25ポンド(11.3kg)の筋肉を、柔軟性と反射、スピードはそのままキープさせて上乗せしました。

惨敗の予想もあったスピンクスは大健闘。ユナニマスデジションで、史上初めてヘビー級を制したライトヘビー級王者になります。

スピンクスとは反対に反射はもちろん、スピードや柔軟性で劣化を晒したホームズは「歴史を作られたヘビー級王者」という屈辱を受けなければなりませんでした。

7ヶ月後の再戦ではホームズの勝利と思えましたが、オフィシャルは1−2のSDで惜敗。

ホームズはモハメド・アリにもなれず、スピンクスに2連敗して2年のブランク明けにWBC/IBF王者マイク・タイソンに復帰・即挑戦しますが4ラウンドで葬り去られてしまいます。

「(調整試合を挟みたかったのに)ドン・キングに騙された」という、ホームズの泣き言に耳を貸す者は誰もいませんでした。


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ボクシングはスポーツではありません。

もし、ボクシングがスポーツなら「カネロ・アルバレスvsテレンス・クロフォード」なんて試合よりも「カネロvsデビッド・ベナビデス」「クロフォードvsジャロン・エニス」を優先しているはずです。

ボクシングはスポーツではありません。


1960年代以前となると地球上に世界王者は8人しかいない、1団体8階級時代。ボクシングはメジャースポーツの一つで、世界王者はあらゆるスポーツの中でも最も尊敬されるチャンピオンの1人でした。そんな時代があったなんて、いまでは絶対に信じられないでしょう。
1970年代でも複数階級制覇は「3」が最多。世界タイトルの価値がまだまだ高かった時代です。

そして…1980年代。団体と階級が増殖、タイトルの価値の暴落に歯止めはかからず、「階級を超えたメガファイト」が注目を浴びるようになりました。

安易な複数階級制覇に、階級を超えたメガファイト…そんなものがありがたがられるのは、タイトルの価値暴落が大前提でした。

そして、80年代以降のメガファイトには必ずAサイドとBサイドの色分けがなされていることも忘れてはいけません。スポーツじゃないから当然、といえばそれまでですが。

先日の井上尚弥の〝ラスベガス公演〟も、その典型です。複数の日本メディアがラスベガスを「井上にとってアウエー」と表現していましたが、正気の沙汰ではありません。

そして、あれはT−モバイル史上で飛び抜けて最悪の閑古鳥イベントでしたが、「チケット販売絶好調」という報道やそれを信じる馬鹿信者たちの声は試合が近づくと全く聞こえなくなってしまいました。どうしちゃったんでしょうか?あんなに威勢が良かったのに、いつものパターンです。

それにしても摩訶不思議な興行でした。運営側は超高額に設定した一時価格をメディアが報道してくれるだけで良かったのでしょうが、正確な情報が簡単に手に入る現代ではそうはいきません。どんどん下がる価格、上階席の完全封鎖はこのブログでも早い段階で指摘していたように確定事項でした。

そもそもPPVにもならないイベントだったのですから。

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パックマンだ!

先日、マニー・パッキャオの復帰即タイトルマッチが発表されましたが、あれも人気のあるAサイドは何をしても良いというとんでもない茶番です。

「井上のTモバ」は「人気のない日本限定のAサイドをラスベガスでも大人気に見せかける必死の努力」という複雑怪奇な興行でしたが、本質はAサイドの好き勝手放題です。



それでも、それでも…80年代からボクシングの魅力にとり憑かれた私にとって「階級を超えたメガファイト」には、いまでも特別な思いが込み上げてきてしまうのです。

「階級を超えたメガファイト」から滲み出しているのは、Mission Impossible のロマンです。

ーーーライトヘビー級のマイケル・スピンクスがヘビー級王者になれるわけがない。ましてや相手は史上最強とも言われるラリー・ホームズ。不可能だ。

ーーー実質5年のブランクからいきなりマービン・ハグラーに挑戦なんて、シュガー・レイ・レナードは気が狂ったのか?全盛期でもレナードはハグラーに勝てっこない。不可能だ。

ーーーフライ級上がりのマニー・パッキャオが、ミドル級王者にまでなったオスカー・デラホーヤと戦う?大事故が起きたらネバダ州アスレティック・コミッションは責任を取れるのか?不可能だ。

彼らが、モハメド・アリのように Impossible is Nothing. を証明した背後にはロマンとは真逆のカラクリが存在しました。

まずは、レコード・メーカーのジンクス、スピンクスからです。





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Undisputed super-middle weight championship、王者カネロ・アルバレスがテレンス・クロフォードを迎え撃つ正真正銘のメガファイトです。

9月12日、ラスベガス。舞台はNFLラスベガス・レイダースの本拠地アレジアント・スタジアム。

フットボール会場としては6万5000人を飲み込む巨大スタジアムですが、アリーナも設営するボクシングなら7万人以上のセットアップが可能。

カネロはジュニアミドル級からライトヘビー級でストラップをピックアップ、クロフォードもライト級からジュニアミドル級を制圧した、ともに4階級制覇で足跡を残したPFPファイター。

体重と年齢の問題から、予想もオッズも大きくカネロに傾いています。

【体重】カネロはジュニアミドル級で最初のタイトルを獲得、ライトヘビー級まで増量した一方、クロフォードはライト級がスタート地点、ようやくジュニアミドル級で1試合をこなしたばかり。

にもかかわらず、クロフォードはさらに2階級ジャンプしてカネロに挑戦することになるのです。


【年齢】カネロは1990年7月18日生まれの34歳、9月12日は35歳となってリングに上がります。クロフォードは1987年9月27日生まれの37歳、試合が行われる9月に38歳の誕生日を迎えます。

この年齢が何らかの影響を与えるのか、どちらに加齢の影響が重くのしかかるのか?

40前のクロフォードの方が加齢による衰えは深刻、という単純な問題ではないかもしれません。


さらに、興行的には、クロフォードの不人気が気掛かりですが、人気者カネロへの冒険的なチャレンジは大きな関心を集めるはずです。

巨大スタジアムをフルハウスに出来るかどうかは怪しいものの、半分も入らないなんてことはないでしょう。

ヘビー級と除くボクシングのメガファイトで、最も興味を掻き立てられるのが、無謀に映る下の階級から、上の階級へのアタックです。

過去のメガファイトを振り返りながら、9月12日の決戦を占ってゆきます。


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ドミトリー・ビボルとアルツール・ベテルビエフの再戦は、初戦同様の高度な技術戦が12ラウンド36分間にわたって繰り広げられました。

ビボルのリベンジとなった公式ジャッジは、116−112/115−113/114−114と勝者と敗者が入れ替わっただけで初戦と全く同じスコアのMD。

そして、サウジアラビア・総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官が「第3戦を用意する」と公言しているように、ラバーマッチ(決着戦)が期待されています。

しかし、個人的にはこの2試合に1勝1敗の感覚がありません。勝敗を決めた公式ジャッジの採点は納得できるものでしたが、どちらも負けていない、どちらも勝ちきれなかった2試合でした。

もし、ラバーマッチで明白な決着がつくとしたら、ビボルが致命的なミスを犯すか、ベテルビエフが加齢による劣化を露呈するかではないでしょうか。

高度な技術体系を完成させた両者のスタイルを考えると、ミスや劣化といった残念な要素が入り込まない限り、明白な決着はありえないように思えます。

さて、ポストファイト・カンファレンスでベテルビエフが決着戦を熱望した一方で、ビボルは「(第3戦が有力視される)12月の話をするのは早すぎる気がする」と態度を保留。

勝者の余裕と敗者の焦燥。ここでも初戦とは全く逆のやり取りがありました。


 白地のリング誌ベルト、カッコイイです…が、あの忌々しいロゴだけが気になります。

"Maybe we could talk about cruiserweight. I will think about it also, why not. I have belts here [at light heavyweight]. I need to check cruiserweight. Why not?"

ライトヘビー級のベルトを全て手に入れたビボルは「クルーザー級も視野に入れている。そうでない理由はそこにもないだろう?」と複数階級制覇にも関心を示しました。

ライトヘビー級(175ポンド)から、25ポンド(11.3kg)も彼方のクルーザー級(200ポンド)へ。

フロイド・メイウェザーの5階級制覇(130〜154の24ポンド幅)がすっぽり入る2階級制覇です。

隣接の2階級制覇で最も難しいのがクルーザー級からヘビー級であることは、論を俟ちません。そして、その次に困難な2階級制覇がライトヘビーからクルーザーであることを否定できる人はいないでしょう。

さらに、ビボルには、人気者のメキシカンとのメガファイトも選択肢にあります。

すでに米国で強固なファンベースを抱えるWBC暫定王者デビッド・ベナビデスに、人気だけは頭抜けているカネロ・アルバレスとの再戦は、大きな注目を集めるのは必至。興行的にサウジを離れて開催するのがベターです。

ボクシングの試合で初めてラスベガスのザ・スフィアが用意されても不思議ではありません。

…会場費はサウジ持ちなら、だけど。



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今週末にラファエル・エスピノサへリベンジ、WBOフェザー級タイトル奪還を狙うロベイシ・ラミレスが井上尚弥について「もし階級を上げて私と戦うなら何の問題もない」と語りました。

井上は早ければ来年にもフェザー級に進出すると考えられ、五輪連続金メダリストのキューバ人は「ジュニアライト級、ライト級まで抑えて3階級でチャンピオンになる計画だが、現時点で126ポンド(フェザー級)の体重を作るのに苦労はない。来年はこのクラスにとどまる」とし、「井上は素晴らしいファイターだが、フェザー級では小さい部類。私も小さい方だが、彼はさらに小さい」。

30歳のキューバ人は身長168㎝/リーチ173㎝。井上は165㎝/171㎝。

There is only one Manny Pacquiao . I feel that I can end Inoue’s history.
 


「どんなファイターにも限界がある。マニー・パッキャオは歴史上、ただ1人しかいない。誰も彼の真似はできない。私なら井上をストップすることができる」。

「井上を倒してジュニアライト級に上げ、ライト級でも王者になる。この3階級制覇は歴史の残るだろう」。

フェザー級からライト級までを制したのはパッキャオ、アレクシス・アルゲリョ、ファン・マヌエル・マルケス、ロバート・ゲレーロ、マイキー・ガルシアら。

(伝説にも程があるヘンリー・アームストロングは除外して)フライ級スタートのパッキャオ以外のここに挙げた4人はフェザー級を起点としており、最短距離での3階級制覇。

最短距離とはいえ、競技レベルや層の薄いフェザー級から、人気階級の入り口・ライト級への道は〝急勾配〟で、難易度が高い3階級制覇であることは間違いありません。

ラミレスが優秀なのは十分理解していますが、フェザー級で2度もダイヤ乱れを起こした〝電車〟がこの坂道を駆け上がることができるでしょうか???





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ストロー級からジュニアフライ級、フライ級、ジュニアバンタム級と取りこぼしなく4階級のストラップをピックアップしたパイオニアはレオ・ガメスでした。

ガメスに続いてローマン・ゴンサレス、ドニー・ニエテス、井岡一翔がストロー級(105ポンド)からジュニアバンタム級(115ポンド)までの4階級制覇に成功。
 
わずか10ポンドを4つに細切れさせたことで成立する4階級制覇は、同じ4階級制覇でもミドル級(160ポンド)からクルーザー級(200ポンド)までの体重スパンの10分の1。

小さな体重スパン、競技人口の少なさ、専業ボクサーが少ないという軽量級の背景を考えるまでもなく、ストロー級からジュニアバンタム級が最も簡単な4階級制覇と言い切って差し支えありません。

それでも、PFPにはキングに2年間も君臨したロマゴンに、井岡、ニエテスも10傑入りするなど、いずれも評価が高いボクサーたちです。

また、井岡に続いて田中恒成もストロー級からジュニアバンタム級までに4階級制覇に成功。29歳の恒成には5階級制覇の可能性も時間も十分に残されています。


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ストロー級を起点にしない4階級制覇になると、ジュニアフライ級からフライ級をスキップしてジュニアフェザー級までを制圧した井上尚弥、フライ級からジュニアバンタム級をスキップしてフェザー級まで抑えたノニト・ドネアが登場。

井上はフェザー級、ドネアは〝忘れ物〟のジュニアバンタム級にも興味を示しています。

※日本ではドネアを「5階級制覇」としているメディアが多いのですが、世界的には暫定王座は認められていません。

さらに、バンタム級起点ではレオ・サンタクルス、ジュニアフェザー級からではエリック・モラレスも顔を覗かせてきます。


さて「軽量級4階級制覇」の格付けは、スキップ階級を飲み込んでいる井上とドネアがAAAでトップ2。

ジュニアフェザー級からライト級をスキップしてジュニアウエルター級を獲っているモラレスは「軽量級」の枠を飛び出したので、今回は資格なし。

井上とドネアに肉薄するのが、ジュニアバンタムで輝きに翳りが出てきたもののフライ級までの実績十分のチョコラティトでAA。

先頭グループから離れてニエテスと井岡。

その後続にアルセ、恒成、ガメスか。


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テレンス・クロフォードが「4階級制覇クラブ」に新たに入部したことを記念して。

ここは日本、軽量級の国ということでジュニアフェザー級以下の超軽量級をスタート(世界初戴冠)クラスとして4階級制覇に成功したグレートたちを独断と偏見で格付けしてゆきます。

「下手な4階級制覇よりも3階級制覇でもジェフ・フェネックの方が遥かに評価が高いんだが?」とか「現時点で3階級制覇の中谷潤人は下手な4階級制覇よりも上でしょう」という当たり前な意見はここでは無視します。

このブログでも、プロボクシングでは全く意味のない「数字だけ」に一回くらいフォーカスしても良いでしょう。

というわけで、まずは「数字だけの人」にご登場願います。

まずは、最も安易な4階級制覇、ストロー級からジュニアバンタム級までの4つのクラスを最初に踏破したベネズエラの小さな巨人、レオ・ガメスです。

強い相手にはきっちり負ける〝最軽量級のマイク・タイソン〟。

色々マイナス評価を突きつけてますが、攻撃的で試合は面白い、個人的には嫌いなファイターではありません。このブログでもどっかで書いてるはず…中途半端で終わってるかもしれまあせんが、必ずいつか描き切りまっせ!

https://fushiananome.blog.jp/archives/18432984.html


そして、日本では5階級制覇ですが世界的には4階級制覇のホルヘ・アルセ

ものブログで繰り返しているように「軽量級でビッグネームは希少生物」ですが、アルセは間違いなく希少生物でした。

スターパワーが強烈で「日本が好き勝手できる階級」にもかかわらず、好き勝手できませんでした。いや、世が世なら井上尚弥や寺地拳四朗なら…。

アルセみたいなメキシカンのスター選手は次にいつ出現してくれるのでしょうか?




Aサイドにつける立場なのにチャレンジャー。アルセの魅力はそこでした。


ガメスとアルセ。ボクシングマニアは大好きなファイターですが、4階級制覇クラブの格付けとなるとB、Cレベルの評価しかできません。

二人とも殿堂入りとは無縁でしたが、アルセは〝サラゴサ・ガッティ枠〟で入神しても良いと思うのですが…。

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WBAジュニアミドル級/WBO暫定ジュニアミドル級(空位)

©︎イスライル・マドリモフ vs テレンス・クロフォード




いよいよ明後日に迫ったクロフォードの4階級制覇挑戦。

3番目の階級、ウエルター級(世界戦8戦全勝8KO)で最も強烈な輝きを放つクロフォードが圧倒的有利と考えられています。

1971年に戴冠した輪島功一から工藤政志を経て、1981年に王者についた三原正まで、10年間で3人の世界王者を輩出した154ポンド(69.85kg)=ジュニアミドル級は日本にとって馴染みのある階級でした。

しかし、29年後の2009年に石田順裕がWBA暫定王座に就いたときには、この階級の王者になることはたとえ暫定であっても「快挙」と表現されました。

1980年代始め頃まで身近だったジュニアミドル級は、いつのまにか「日本人には手が届かない」ハイレベルなクラスになっていたのです。

ジュニアウエルター級も同じように、けして馴染み深いとは言えない高嶺の花になってしまいましたが、ジュニアミドル級の方がより難関に感じるのは、全階級を通じて最もレベルが高いと言われるウエルター級の猛者が侵略して来るからでしょう。


ウエルター級からジュニアミドル級へ。

日本のボクシングファンにとっては、なんとも複雑な響きです。

70年の歴史をどんなに紐解いても、ウエルター級の世界王者はアルファベットの一つすら獲れていないのが現実なのです。

野球がMLBを、サッカーが欧州トップリーグを目指すようになりましたが、プロボクシングに限るとメジャーから目を逸らし続けているように思えて仕方がありません。

その傾向は、ますます強くなっているようにさえ思えますが、気のせいでしょうか?

プロボクシングもいつの日にか本物のメジャーを目指す時代が訪れるのでしょうか?

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