フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 村田諒太

明日、カナダのモントリオール・カジノで、カナダ人同士で争われるNABF北米ミドル級王者決定戦。

村田諒太にも挑戦した元WBO1位のスティーブン・バトラーが、ブランドン・ブリューワと激突します。

Butler, 26, has fought at the highest level but came up short against Ryota Murata for the WBA 160-pound title in December 2019, while Brewer has toiled just below the world-class level, all the while waiting for his big opportunity.

バトラーは2019年にWBA王者・村田諒太に挑戦、高いレベルの試合を経験しているが、村田には通用しなかった。〜リング誌から

26歳のバトラーは2019年12月23日に村田諒太のWBAセカンドタイトルに挑戦、5ラウンドで沈められてしまいます。

その後は2試合を戦い1勝1敗。

対するブリューワは37歳にして、これが初めてのタイトルマッチ。これまでの戦績は25勝11KO1敗2分。

世界ミドル級という次元の高い世界から見ると、カナディアンによるローカルファイトに過ぎません。

NABFランキングで1位はハイメ・ムンギア、3位にエスキバ・ファルカオと日本人にも馴染みのある名前を見つけることができます。

ロンドン五輪決勝で村田に惜敗したファルカオ、無敗の進撃を続けていますが、いまだに世界戦が組まれないまま、時間だけが過ぎ去っています。

これを金の村田と銀のファルカオの差だという人は誰もいません。日本の村田とブラジルのファルカオの差です。

この不条理なボクシング界。〝BANG BANG〟バトラーにとっては、再び世界戦線に浮上するために敗北が許されない一戦です。

まだ26歳とはいえ、この階級で大きなチャンスを掴むには、勝ち続けること、どこかでビッグネームを食うことが求められます。

明日のブリューワは〝勝ち続けなければならない相手〟の1人。

村田諒太と拳を交えたバトラー、世界トップ戦線に繰り出て欲しいところですが…。
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9日放送の「スポーツ×ヒューマン『俺は誰だ?ボクシング 村田諒太』」を5日遅れで視聴。

すでにご覧になった方もいらっしゃるでしょうが、これはスポーツドキュメンタリーではありません。

村田諒太は、アマとプロで大きな結果を残した卓越したボクサーというだけでなく、優れた哲学者です。

ゲンナジー・ゴロフキン戦に向けたメンタルトレーニングの中で「自分」を語っているのですが、その言葉が深い。特別な人間が発しているのに、あらゆる人に共感できるのです。

それはつまり、哲学です。
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激戦直後で傷ついた顔の、まあ格好良いこと。

現役続行にも含みを持たせる言葉もありました。「ゴロフキンまで辿り着いたんだから十分」というのがファンの多数意見かもしれませんが、個人的には見てみたいです。

20日(金)夜中の1時30分から総合テレビで再放送もあるようです。見逃された方は是非。
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アマチュアとプロの違いはどこにあるのでしょうか?

アマチュアは3ラウンド制、同じ呼称の階級でもプロとは重さが違う。採点基準が違う…数えきれない違いがあります。

リングの中で言うと、アマチュアは勝ち進めば勝ち進むほど、強い相手と戦えるトーナメントです。

世界選手権やオリンピックでは、世界の強豪と拳を合わせて勝ち進まなければなりません。

そして、世界選手権やオリンピックの開催地はカネとコネを持つ富裕国ですが、極端な偏りはありません。

一方で、プロは安易なマッチメイクで世界王者になることが出来ます。世界王者は世界最強とは限らないというわけのわからない世界がプロです。

長谷川穂積や内山高志、山中慎介らは、勝ち続けるに比例してどんどん強い相手が現れるという、スポーツなら当たり前の風景を見ることが出来ませんでした。

タイトルマッチの舞台も、富裕国のボクサーのホームに大きく偏ります。そして、そこでは当然、地元判定と思われるジャッジが下されることもあります。

これらの違いに加えて、選手側には「練習環境」という大きな問題が横たわっています。

実力があれば、国際大会でトップレベルの真剣勝負が体験出来るアマチュアに対して、アルファベットの世界王者としてどんなに勝ち抜いても本物のトップと拳を交えることが出来ない悲劇がプロでは起こり得ます。

そして、それは日本のライト級以上の選手にとって、より深刻にのしかかってきます。

例えば日本のミドル級の選手は、練習相手にも困ります。

村田諒太は日本人の五輪金メダリストであるが故にさまざまな恩恵に浴しましたが、それはベターであってもベストではありませんでした。

もし米国人やメキシコ人に生まれて金メダルなら、中量級のボクサーを育成するノウハウに長けた大手プロモーターが村田に最高の環境を整えたでしょう。

もちろん、練習相手に困ることもありません。

プロ向きでないと言われたジョージ・フォアマンが〝フォアマン方式〟で自信をつけるマッチメイクを消化して怪物化、アンドレ・ウォードも対戦相手の質が低いと批判されながらも着実にプロのスタイルを習得、スーパー6を大番狂わせで優勝しました。

フォアマンやウォードは、プロでも最初から別格だったわけではありません。

村田のマッチメイクが、金メダリストに自信とプロの流儀を学ばせるプログラムとして合格点だったと言う人は少数派かもしれません。

しかし「日本を拠点にして」という条件付きなら、100点満点です。帝拳は出来ることは全てやり尽くしてくれました。

まだ、進退は表明していませんが、ここまでのキャリアは素晴らしいの一言に尽きます。

清水聡や井上尚弥らもそうですが、アマチュア時代から応援していたボクサーがプロでも活躍してくれるのは、嬉しいものです。

そして、そして、村田は対戦相手にも本当に恵まれました。

当初ターゲットにしていたビリー・ジョー・サンダースとの交渉は難航、ESPNの年間最高KO賞に輝いたばかりのアッサン・エンダムに決まったときは少し嫌な予感がしたものです。

しかし、あの疑惑の判定負けも、今となっては村田とエンダムの人間的な魅力を演出してくれました。

そして、ゲンナジー・ゴロフキン、です。

それにしても。

実力だけでなく、運まで持ってる人っているもんですね。









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アマチュアスポーツは「実力」と「勝敗」を競うもの。

ブロスポーツとなれば、そこに「人気」も複雑に入り込んで来るものです。

野球における甲子園で大活躍した選手がドラフト1位でプロ入り、そこでも大活躍するのは一つの理想型です。

しかし、ボクシングではアマチュアの頂点、五輪金メダルはブロで世界王者になるよりも遥かに難しく、ましてや欧米の人気階級ともなると、日本人には夢物語でした。

ボクシングの世界では〝甲子園型〟のヒーローはあり得ない…そのはずでした。

「日本人にはミドル級は絶対無理?いつまで同じことゆうとんねん。日本人には無理でも村田諒太には無理ちゃうんじゃ」。

アマチュアで頂点を目指す村田は、記者のネガティブな発言に苛立っていました。

誰のためでもなく、己のために戦う良い意味でのエゴを、その発言や面構えから発散していました。

そんな奔放でやんちゃな青年が、日本人には絶対無理の五輪ミドル級で見事優勝。

プロ転向からは、多くの人の献身と応援に感応しながら、世界ミドル級王座に2度も就き、王座防衛も果たしました。

大勝負を終えた日本史上最強の男は、何を語ってくれるのでしょうか。
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https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/61X1V7JGKW/

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日本史上最大の試合。

選手の報酬や、世界の関心という点ではまさにその通りでした。

しかし、このイベントは「カネロ・アルバレス」のような高収益のビジネスではありません。一部では、赤字という報道もあります。

ビジネスという意味では、6月に東京ドームで行われる那須川天心vs武尊のキックボクシングが〝日本史上最大の試合〟かもしれません。

ただ、そもそも、この試合は最初から商売抜きで生命が吹き込まれた、完全無欠の夢でした。

その意味では「日本史上最大の試合」ではなく、正確には「日本史上最大の夢」だったのです。

この舞台は、2012年のロンドンで村田が金メダルを獲った瞬間から、日本のボクシングファンにとって〝約束の場所〟だったのです。

当初は「プロ転向はない」と明言していた村田を、業界の垣根を越えて説得に走り、チームを立ち上げた人たちの〝プロジェクトX〟は、私たちの夢を乗せて2013年にデビュー戦を迎えます。

あれから、ちょうど10年の節目の年に、彼らはついに約束を果たしました。

そして、村田は私たちの夢を賭けるのにふさわしいファイターであったことを、その舞台で証明してくれました。

村田もまた、約束を果たしてくれたのです。


2019年には「12月にカネロ・アルバレス戦が内定」とも報じられました。2021年12月29日には「ゴロフキン戦が決定」、チケットまで販売されたというのに。

日本側が主導権を握るにはあまりにも巨大な資金が必要で、深いコネクションが蠢く世界ミドル級タイトル。

そこに、パンデミックまでが覆いかぶさり紆余曲折、波乱万丈の10年間でした。

試合が決まった時点で、プロジェクトチームと日本のボクシングファンは勝利を手にしました。

そして、私たちの夢を乗せて最後まで堂々と戦った村田もまた、単なる敗者であるわけがありません。
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ゴロフキンがリングから降りると、向かった先は自身ではなく村田のドレッシングルーム。

「ムラタ!ムラタ!」と呼びながら、金メダリストの姿を見つけるとWBAベルトを「これは君のものだ。君とは何かを奪ったり奪われたりする関係じゃない」。

ゴロフキンは、対戦相手のことが好きで好きでたまらないのでしょう。

彼の中でリングの中で拳を交えることは、すなわち刎頸の交わりになる、ということなのです、きっと(カネロ以外)。

だったら、なんであんな残酷な強打を全く躊躇なく打ち込むんだ!?と私なんかは思ってしまいますが、拳を〝交え終えた〟ら、刎頸の交わりに変わるのかもしれません。

なんという恐ろしいゴロフキン・ルール。

そして、なんという素晴らしいゴロフキン・ルール。

ベルトも返してくれるし、ゴロフキンしか似合わない変な柄のガウンももらえます。

私もゴロフキンと戦ってみたくなりました(大嘘)。




ゴロフキンと村田、そしてこの試合の成立に尽力、奔走した方々には感謝と尊敬しかありません。

私たちは2022年4月9日の夜を一生忘れません。 
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ボクシングファンの皆様に対しては釈迦に説法ですが、CompuBOXは試合の実像を映す鏡ではありません。

参考数字としても使えないケースも、よくあります。

ただ、今回の「ゲンナジー・ゴロフキンvs村田諒太」に関しては、現実の試合をなぞる数字になっていました。

PUNCHESGOLOVKIN MURATA
Total landed257144
Total thrown629592
Percent41%24%
Jabs landed10722
Jabs thrown308233
Percent35%9%
Power landed150122
Power thrown321359
Percent47%34%
-- Courtesy of CompuBox
 

ゲンナジー・ゴロフキンのパンチスタッツは257/629、的中率は41%。村田諒太は144/592、24.3%。パンチの精度は2倍近くも引き離されてしまいました。

内訳をみると、パワーパンチ(利き手)ではゴロフキン150/321、46.7%。村田は122/359、34%と差は縮まりますが、ジャブになるとゴロフキン107/308、34.7%。村田は22/232、9.4%と4倍の差。

ジャブは全てのラウンドでゴロフキンが手数・精度ともに上回りました。

そしてパワーパンチは6ラウンドまで村田の手数が上回り、7ラウンドに逆転されると8、9ラウンドは一方的に。

トータルの手数は、4ラウンドまでは村田がリードする流れでしたが、5ラウンドで逆転。

村田が明白にラウンドを支配したのは第3ラウンドでしたが、直後の4ラウンドでゴロフキンがギアを上げ、第5ラウンドにはペースを掌握するという、実際の試合の流れをスタッツの数字も反映していました。
スクリーンショット 2022-04-09 22.43.31

3ラウンドまでの流れにゴロフキンが危機感を覚えて攻勢に出たのか、あるいは3ラウンドまでで村田の攻撃パターンを読みきったのか、あるいはその両方なのかはわかりませんが、勝負への嗅覚の鋭さは流石としか表現できません。

そして、敗れた村田。上田晋也は「再戦が見たい」と語りましたが、村田サイドに再戦条項があるわけもありません。

再戦が見たいか?と聞かれると、正直、微妙です。

しかし、村田はこれで引退か?と考えると、引退して欲しくない気持ちが強いのですが、世界ミドル級です。簡単に、また挑戦とはいきません。

ゴロフキンと戦い、ゴロフキンに敗れた今、村田に引退して欲しくないと思っても、ではここから何を目指すのか?となると、答えに詰まってしまいます。
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Middle Contest, 12 Rounds
 
World Boxing Association Super World Middle Title (supervisor: Jose Gomez)
 
International Boxing Federation World Middle Title (supervisor: Ben Keilty)
 

Gennadiy Golovkin vs Ryota Murata 
スクリーンショット 2022-03-03 20.39.42

いよいよです。三次会から一時?離脱して、しっかり見ます。

パイレーツ・オブ・カリビアン、来たぁ!!!

どんな酔いも吹っ飛ぶわ!

そして、セブンネーションズ・アーミー!会場にいる人が羨ましい。

二人とも良い表情してます。

ステイクされないIBOのベルトもリングに上がっています。あれも欲しいです。

さあ、注目のオープニングラウンドです!!!!!


Round

ゴロフキンは左を突いて、いつも通りの偵察戦。

村田は左から右につなぐ。村田のプレッシャーはかかっていないが、ゴロフキンを下がらせる上々の立ち上がり。

10−10


Round② 

村田のボディにゴロフキンの動きが止まる。ゴロフキンのコンビネーションで村田が鼻血。

村田の前進をゴロフキンは止められないが、まだペースは握っていない。

10−9村田


Round③

ゴロフキンがゴング同時に一気に攻勢に。GGGが焦ってる。

村田のボディをゴロフキンがあからさまに嫌がる。

どっちも打たれ強い。

明白に10−9村田


Round④

火を吹く撃ち合い。ゴロフキンは巧いが、一発の威力は村田。

10−10


Round⑤

ラウンド中ばにゴロフキンがクリーンヒット。

しかし、村田もボディから反撃。

10−9ゴロフキン


Round⑥

このラウンドは村田が先に手を出す。

ゴロフキンのアッパーで村田のマウスピースが飛ぶ。ゴロフキンがペースを手繰り寄せつつある。

10−9ゴロフキン


Round⑦

村田が初めてロープに詰められる。

ゴロフキンも疲れているが、村田も疲れた。

10−9ゴロフキン
 

 

 Round⑧

打撃戦は完全にゴロフキン。村田が効かされたのを初めて見た。

10−9ゴロフキン


Round⑨

2分11秒。村田のコーナーからタオルが投げられました。

素晴らしい敢闘でした。感動しました。
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「総合力で上をいかれてる、感じがしました」(村田)。確かにそういう試合でした。

 ゴロフキンが自慢のガウンを村田にプレゼント。日本ボクシング史上最大の試合は、日本史上最も美しい試合でもありました。
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ついに今日という日がやって来ました。

NHKでも朝から村田諒太のメンタルトレーニングの様子が長尺で特集されていました。

読売新聞は特別面を割いて、今夜の試合が何を意味するのかを、わかりやすく噛み砕いてくれました。

月曜夜も〝舞台裏〟をテーマにしたクローズアップ現代+が放送されます。

村田のホームリング、会場が暗転してパイレーツ・オブ・カリビアンが流れると大きな声援が湧き上がるでしょう。

しかし、何故この試合がここまで注目されるのかというと、ゲンナジー・ゴロフキンが日本のリングに上がるからです。

ある意味で、ゴロフキンが主役。

「お手並み拝見と行きますかな」という相手ではありません。お手並みは、もう嫌というほど拝見させていただいて来ました。

会場の空気が一番張り詰め、尊敬と歓迎の拍手が送られるのは、セブンネーション・アーミーのイントロが流れるときです。

会場にいたら、その時点で泣いてしまいそうです。
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ESPNの解説者がすっかり板についたティム・ブラッドリーが、明日の大一番を予想。

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▶︎間違いなく良い試合になる。

二人ともよく似たファイトスタイルで、オリンピックでゲンナジー・ゴロフキンは銀メダル、村田は金メダル。

エリートらしく二人ともガードを高く上げて、プレッシャーをかけるのが基本だ。そして、爆発的なパンチャーというのも共通している。

ただ、GGGはジャブと左フック、リードブローを起点に多彩な攻撃を仕掛けるのに対して、村田のリードは右の一撃につなげる仕掛けだ。

一発の威力は村田だが、GGGの攻撃パターンの方が確率が高く、オプションも多い。

そして、GGGとカネロ・アルバレスの第3戦が合意に達して日程まで決まっていていることも、この試合に影響を与えるはずだ。

GGGは「カネロとは何も決まっていないし、村田のことしか考えていない」というが、そんなことは絶対無理。

この試合をなんとか安全に乗り切って、9月のカネロ戦を迎えたいというのは当たり前の心理。

村田がこの試合に勝つために必要なことは、①アグレッシブ(前進と攻撃)。ただし、攻めて良い場面と、そうではない局面は正確に把握しなければならない。②ゴロフキンのリードを遮断すること。村田は左回りを徹底しなければならない。右に動くのは悪くはないが、右に動かされてはならない。

そして、GGGのボディにパンチをメリ込ませることを常に意識すること。村田のボディは右も左も強烈だ。40歳のゴロフキンがタンクに残しているエネルギーは多くはない。ラウンドを追うごとに削っていけば、終盤に大きなチャンスが訪れるだろう。

しかし、村田にはその戦略を器用に戦略を選択・遂行するversatility(引き出しの多さ)は無いと思う。

逆に、ゴロフキンは必要とあればバックステップを踏んでボクシングも出来る。獰猛な闘牛にも、狡猾なマタドールにもなれるんだ。

村田は獰猛な闘牛、しかしだからこそ注意が必要だ。一つのミスが致命傷になるのは、ゴロフキンの方かもしれない。

カネロ戦を見据えたゴロフキンが、いつも以上に慎重に戦う可能性は大きい。 村田というリスクを最小限に抑える戦い方をするだろう。村田が非常に危険な相手であることは、GGGが一番よくわかっている。

3万5000人(実際は自主的な入場制限のためフルハウスで1万6000人) の大観衆が一人残らず村田に大声援を送ることも、知っている。

勝敗予想?ゴロフキンは長い間ブランクがあり、全盛期の強さは影を潜めている。しかし、村田も長いブランク明けで、36歳。村田もspring chicken (若く怖いもの知らずの全盛期)ではない。

ゴロフキンは強い相手とは戦っていないというが、カネロやダニエル・ジェイコブスと苦戦したとはいえ、互角以上に渡り合っている。村田は、そのレベルの相手との対戦経験がない。

前半は村田の攻勢にゴロフキンが慎重に対応するスリリングな展開になるだろう。しかし、後半にはゴロフキンの経験値が、前半飛ばした村田の隙を突く。

ゴロフキンが終盤に村田をストップする。
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計量後の最後の会見も淡々と進み、2人の場違いに穏やかな表情が印象的でした。

ゲンナジー・ゴロフキンも村田諒太も、互いをリスペクトする気持ちが滲み出る言葉を紡ぎました。

フェイスオフの睨み合いこそポーズを決めていましたが、終わると微笑みを交換。

この世界ミドル級屈指の強打者2人が、明日の夜に互いの急所目掛けて殴り合うなんて信じられません。

モハメド・アリやロベルト・デュラン、フロイド・メイウェザー、辰吉丈一郎、リカルド・マヨルガ、若き日のノニト・ドネア、亀田興毅、キース・サーマン、ジョンリール・カシメロ…トラッシュトーカーの言葉や振る舞いは、このスポーツを盛り上げる重要な役割を果たしてきました。

トラッシュトーク、私も嫌いじゃありません。なにしろ、ラップの源流はアリのトラッシュトークです。

もしかしたら、ゴロフキンと村田も罵声を飛ばし合い、フェイスオフでつかみ合いのパフォーマンスを仕込んだ方が、さらに話題を呼んだのかもしれません。

しかし、エリートの血統を持つ、五輪で金と銀のメダルを獲った2人の間には尊敬の念以外には何物も入り込む余地がないように見えました。



8年前、ゴロフキンのキャンプに参加した村田には日本からの取材クルーがゾロゾロ付いてきました。

彼らは邪魔で気が散る存在でしかなく、あからさまに嫌な顔や態度を取る選手もいたそうです。

しかし、このキャンプの主人であるゴロフキンは通路を塞ぐクルーの間を通るとき「excuse me(ちょっとごめんなさいね))」と、村田やクルーに微笑みかけたそうです。

そういうことが何度もあると、他の選手たちは、誰一人として村田やクルーに嫌な顔一つしなくなりました。

そういえば、この人、リングを降りるといつも微笑んでいます。全然、強く見えない。

スパーリングをしたあと、他の選手から「村田には手を抜いている」という声を聞くと「プロに慣れていない金メダリストに荒っぽいマネはしない。そもそもスパーリングは試合じゃない。プロに慣れるには少し時間がかかるもの。私がそうだったように」と、村田を慮ったといいます。

もしかしたら、一番最初の尊敬はゴロフキンから村田に向けられたのかもしれません。

今回、来日してスパーリングした8年前のことを聞かれると「当時から強かった」と、ゴロフキンが答えたと伝え聞いた村田は、村田で「(お世辞を言ってくれて)ありがとうございましたって感じですね」と、よくわきまえていました。

今の村田はゴロフキンに対して「ここまで辿り着きました」という気持ちかもしれません。

昨日の記者会見、先に座ってる村田の後ろを通るときに、ゴロフキンはポンと日本人のライバル王者の肩を叩きました。

「やっぱり強くなったな」とでも言うように。

村田とワシル・ロマチェンコのような国際大会で何度も顔を合わせた〝戦友〟とは違い、ゴロフキンは2004年アテネで銀メダル、村田は2012年ロンドンで金メダルと、2人は階級こそ同じでも〝すれ違い〟〝入れ違い〟の〝先輩と後輩〟のような関係にも見えました。

実際にはスパーリングや会話した時間は全部合わせても1時間もないはずですが、気心の知れた仲であることは、多くの人がテレビ画面を通じても感じ取ることができたのではないでしょうか?

それにしても、人間の急所に拳を叩き込むことにかけては世界最高の技術を持った者同士が戦うのです。

気心の知れた尊敬し合う者同士が戦うというのは、常人には理解の及ばない世界です。

それが出来る村田とゴロフキンは、あまりにも当たり前すぎて2人には失礼すぎる表現ですが、プロフェッショナルです。

特に、ゴロフキンは異常に映ります。

淵上誠がゴロフキンとの試合に敗れたあと。ホテルのロビーでゴロフキンがコーヒーを振る舞いながら、淵上の奥様を通訳に何時間も話し込んだなんてエピソードは、ちょっと信じられません。

もし、私が淵上なら受け入れ難いかもしれません。それよりも、もし私がゴロフキンなら相手のことも考えて、ロビーで顔を合わせても健闘を讃える挨拶くらいしか出来ません。

故意に相手を脳震盪たらしめるために拳を振るうボクシングは、本当はスポーツなんかじゃありません。

殺し合いです。村田やゴロフキンの拳なんて、大袈裟でもなんでもなく凶器そのものです。

だというのに…ゲンナジー・ゴロフキンという男は、まるで野球やテニスの試合をするように、殺し合いをしているようにも見えてきます。

ゴロフキンは、人間離れした男です。

そんなゴロフキンに挑むのは誰もが「日本人離れした」と認める村田諒太です。

日本人がどこまで戦えるのか、その大きな山を越えられるのか、それを見せてくれる村田諒太という絶好の才能に私たちは恵まれたのです。

ボクシングファンにとって、こんな幸運が他にありますか?

明日の今頃は、どちらかの名前が勝者としてコールされているでしょう。

読み上げるのはジミー・レノンJr.でしょうか?

そういえば、明日も天気は晴れるんでしたっけ?

台風1号は今、どのあたり?

さいたまスーパーアリーナあたりの桜も、もう散っているのでしょうか?



なにはともあれ、きっと2人は素晴らしい試合を見せてくれるでしょう。

なんだか、もう勝敗はどうでも良くなってきました。


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