フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 井上尚弥

井上尚弥の言葉。

「パッキャオの見た風景が見たい」。

そして、そのためには「最低でもフェザー」「メキシカンのライバルが必要」。

「最低でも」と口にしてるので、常識的に考えれば見据えているのはその先だとわかります。

ただし「今年、一つベルトを増やして2022年に完全統一。それからジュニアフェザーへ」というデザインを描いているようですから「最低でもフェザー」と「その先」はまだまだ未来のお話です。
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フレームに大差ない?

 「メキシカンのライバル」。下克上のドラマです。

このワードもパッキャオから影響を受けた部分が大きなワードですが、こちらも二つの意味で非常に難しい状況です。

一つ目は、現在のバンタム、ジュニアフェザーでビッグネームと呼べるメキシカンが1人もいないという現実です。

そして、二つ目は報酬が低い軽量級にあって井上の報酬はすでに破格で、下克上のダイナミズムが希釈されてしまうということです。

パッキャオのレガシーのハイライトはアントニオ・マルコ・バレラとエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスの一発殿堂・包囲網をかいくぐったことですが、クライマックスはやはり一発殿堂オスカー・デラホーヤ戦でした。

こんなことがあるのか?というぐらいに、見事にメキシコ(系)です。しかも揃いも揃って全員が文句無しの一発殿堂。しかし、これはパッキャオが単純に幸運なだけです。

そして、井上は単純に不運です。

4団体統一を目指すバンタム級の標的はWBOのジョンリール・カシメロとWBCのノルディーヌ・ウバーリ。どちらも、井上とは雲泥の差の貧困王者で非メキシカン。

ジュニアフェザーにメキシカンやビッグネームを探すと、無敗の元WBC王者レイ・バルガスが昨年は一度もリングに上がらず。

アル・ヘイモン傘下、バルガスの後釜に座ったルイス・ネリとの対戦に障害はないものの、井上の言う「メキシカン」としては物足りません。

そして、やはり無敗のネリ。こちらも決して人気が高いファイターではありませんが、日本開催なら「メキシカン」というキーワードは関係なしに、とんでもないメガファイトになるのは確実です。

日本でボクシングを統括するJBCから事実上の永久追放処分を科せられていますが、ビジネスを考えたら〝恩赦〟を与えるべきでしょう。

「日本でメガファイト」という点では、然るべき状況が整わない限り井上が拒否しそうですが亀田和毅戦も、実現したらメガファイトです。

WBOのストラップを持つ26歳のアンジェロ・レオと、24歳のブランドン・フィゲロアもやはり無敗。ニューメキシコ・アルバカーキとテキサス生まれの二人、井上にとってはオーダーメイドに見えます。

人気と迫力で小ぶりなIBF/WBA王者ムロジョン・アフマダリエフも無敗。ダニエル・ローマン戦を見る限り期待はずれな匂いが漂っていますが、やりにくい相手でしょう。

今月23日にレオに挑戦するステファン・フルトンもまた無敗。この試合はどちらが勝つかわからない50-50の激突ですが、どうなりますやら。

ただ、こうしてバンタムとジュニアフェザーを見渡すと、明らかにジュニアフェザーの方が豊穣です。 

完全統一へのこだわりが無ければ、すぐにでも上げて欲しいところですが…。

バンタムを完全統一すると、殿堂入りも近づきます。オマケでリング誌かESPNでのPFP1位もあるかもしれません。

しかし、考えてみるとジュニアフェザーで強豪を倒しても殿堂入り、PFP1位は視野に入りますね。カネロやクロフォードが負けないとすると、彼らを競り落とすことを考えるとジュニアフェザー上げの方がインパクトがあるはずです。
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「4団体全部獲りましょう」(宮根誠司)。

「あ、それはもう近々の目標なんで」(井上尚弥)。

「近々の目標なんで」。つまり「議論する余地のない王者」になるのは、大きな目標のずっと手前ということでしょうか。「もっと大きな目標があります」ということでしょうか。

「バンタム級完全統一」の先に見据えるものは何でしょうか?
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もし、それが「パッキャオが見た風景」を拝みに行くというのなら、今までの減量はもちろん、練習は全部考え直さなければなりません。

伝統(因習)的で過酷な減量と、一気のリバウンド。そこに合わせた練習。

その体重マネジメントが井上尚弥の強さの一端を担っていることも間違いありません。

計量が終わるとコンビニ前でカップ麺をすする(今回は「フラペチーノ」)。

この一連のサイクルが健康に悪影響を及ぼさないわけがありません。すでにコメント欄でもいただいていますが、こんなことを繰り返すと代謝や神経に異常が生じて、感覚の狂いを進行させ、劣化を早めるだけです。

本格的な減量に入る試合前1ヶ月のナチュラルな体重が約62㎏とされている井上ですが、66㎏のウェルター級までバルクアップすることは至難の業ではあっても、絶対不可能ではありません。

もちろん、これまでの練習パターンは大きく塗り替えられます。

事実、ボクシングの歴史では多くのボクサーが「至難」と見られた増量に成功してきました。

マイケル・スピンクスにイベンダー・ホリフィールド、マニー・パッキャオ、ファン・マヌエル・マルケス、マイキー・ガルシア…。

彼ら全てに当てはまることは、それまで陣営に加わっていなかった「増量に関して特殊な知見に長けた専門家、strength and conditioning coach 」に体重コントロールを100%委ねたということです。

もちろん、トップ選手のほとんど全員が技術面を指導するトレーナーに加えてstrength and conditioning coach を抱えていますが、増量の場合はさらに特別な知見が求められます。

減量が大前提のボクサーのダイエットを野放しにしてしまうと、大変な事態になるのは当たり前です。

比嘉大吾はもちろん、井上尚弥もこのあたりのマネジメントに、世界トップの実力に見合ったstrength and conditioning coach が付いているとは思えません。

誤解を恐れずに言うと「天才は育てるものじゃない、生まれてくるもの」です。

技術なら、より専門知識に長けた名匠に委ねるよりも、素人でも良い意味での相思相愛のトレーナーが付くことで、技術的にマイナス影響は出ないこともあります。

ウクライナの五輪代表チームを率いて大きな成果を残し続けているアナトリー・ロマチェンコは別格にして、日本では特に顕著ですが世界的にも多くの親族(父親)トレーナーに汎用性が乏しいのはそのためです。

父親トレーナーは技術よりも心で選手を支えているのです。技術的なことは選手もよくわかっているケースが多いのです。

しかし、これが栄養管理、コンディション調整になると伝統的・直感的な方法論に終始してしまうのが日本のボクシング界です。そして、技術と違い選手の知識と経験は貧弱で浅い。

ジーコが日本サッカーの中に入って最も驚いたのは「選手が夜中にスナック菓子と甘いジュースを飲む」ことでした。「食べるべきものを、食べるべきタイミングで、食べるべき量を食べて、しっかり睡眠をとる」。そんな常識が全くない世界に驚愕したのです。

今は内田篤人が「引退して好きなものを好きな時間に食べられる」と大喜びしているように、劇的に改善されました。

プロ野球は食事も練習も遅れていますね。これは悪しき伝統がそのままです。

日本野球は今でも試合前の練習を、試合後の練習(クーリングダウンも兼ねたウェイトトレーニング)よりも長く濃密なケースがありますが、これは「大切な試合を疲れて臨む愚行」です。もちろん、一番先にグラウンドに来て一番後に帰るイチローのような前後の練習どちらも濃密な変態もいます。

最近のボクシングではテオフィモ・ロペスのダイエットが有名でしょう。

かつて「試合前1週間は絶食することもあった」「エディス・タトリ戦前は何をしても体重が落ちず4度も中止を考えた」ロペスでしたが、ワシル・ロマチェンコ戦の前日計量当日は「ボクサーになってから初めて朝食を摂った」というのです。

そして「長いラウンドを戦っても足が痺れることがなくなった。それに、疲れにくくなっている」とも。
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日本的・因習的な減量で毎度疲弊したいたマイク・アルバラード。翌日のリングには別人のようにふっくらして上がるのですが、リングドクターからは「身体中が重度に酸化している」と厳重注意を受けます。もちろん、この過酷な減量のおかげで「より小さくより弱い相手と戦える」のですが…計量前の井上の〝コケ方〟も心配です。

現在、ロペスが取り入れているダイエットとコンディショニングのプログラムはPerfecting Athletes社のメソッドです。

同社の創業者でもあるミッシェル・イングルスが直々にロペスを担当、従来の「計量後にバーガーキングとオレオクッキーを味わうのが最高の楽しみ」(ロペス)という間違った減量プログラムにメスを入れます。

減量期間でも基本的に1日3食を守り、2度デザートも用意します。メニューと量はトレーニングの内容から緻密に計算されます。

ロペスは「Perfecting Athletes社が信じられないくらいに細かいダイエットを要求してくるのは知っていたから嫌いな食べ物も食べなきゃいけないと覚悟を決めていた。でも、現実はそれまでの減量が嘘のように楽なプログラムで、嫌いな素材も一切出てこなかった」と良いこと尽くしだったと喜んでいます。

イングルスは「私の仕事は前日計量の秤に完全で最高の健康体で乗せること。脱水症状で秤に乗るなんて許さない。テオフィモは初日に『(大嫌いな)寿司でも食べる』と神妙な顔で挨拶して来たけど、ストレスがかかるものを食べさせるわけがない。好き嫌いを聞いて、好きな素材と味付けを基本に、嫌いなものは一切出さない」と健康と選手の嗜好を最優先するポリシーを語ります。

「ただし、食べる時間とタイミング(多くの場合は練習直後の20分以内)は守ってもらう。私のメニュー以外にオレオが食べたいなら用意はするけど、その場合は練習も追加になる。そして私の目を盗んでの外食は絶対禁止。それをされると全てがご破算。だからどうしても食べたい物、飲み物があれば、言ってくれたら、練習メニューも含めてこちらで計算し直す」。

イングルスは「アスリートの肉体を最も蝕むのは脱水。誰もがわかってるのに平気で水分摂取を控えるのは狂ってる。テオフィモには毎日4.5リットルのアルカリイオン水を飲ませたけど、それでも激しい練習に対応するギリギリの量」。

Perfecting Athletes社は「井上vsマロニー」の co-featureで登場したミカエラ・メイヤーやテレンス・クロフォード、ジャメル・ヘリング、シャクール・スティーブンソンらの栄養・食事の管理も担っています。

話は戻って「増量」に関して特殊な知見に長けた専門家、strength and conditioning coach です。こちらは「減量」とは真逆の結果を目的としますが、緻密な計算で組み立てられたメソッドである事は同じです。

パッキャオの場合はトレーニングメニューに合わせて1日7〜8食、5000〜8000kcalを摂取していきます。「すぐに食事時間が来て、しかも全部食べなければならない。ある意味、減量よりもキツい」。

このパッキャオの〝増量〟strength and conditioning coach に就いてライト級(デビッド・ディアス)、ウェルター級(オスカー・デラホーヤ)を粉砕させたのがアレックス・アリザでした。

増量トレーナーの「元祖」マッキー・シルストーンは175ポンドのマイケル・スピンクスを200ポンドにスムースに「拡大」する魔法を見せました。スピンクスは「筋トレが多くなるのはわかっていたが、スプリントや反射を徹底的に鍛えてスピードが落ちる危険を排除してくれた」と評価しています。

シルストーンはMLBやテニスのトップ選手の栄養管理も担当、ボクシングでもロマチェンコらがその指導を仰いでいます。

ファン・マヌエル・マルケスの緩んだ肉体を短期間でボディビルダーのように仕上げたアンヘル・ギレルモ・ヘレディアもちょっと怪しい〝増量の魔術師〟です。

そして、ドーピングに詳しいヘレディアが証人台に立った「バルコ事件」の首謀者が〝ドーピング・グル〟〝ステロイド・プロフェッサー〟のビクター・コンテ。

コンテが司法取引で社会復帰するや、ノニト・ドネアらが行列を作ってstrength and conditioning coach契約を結びました。
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井上には、ドーピングに手を染めた経験のあるヘレディアやコンテの門は叩いて欲しくありませんが「パッキャオが見た風景」を本気で見たいのなら、先進的な増量専門のstrength and conditioning coachを新たに雇用する必要が、早い段階で必要でしょう。
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米国で真のビッグネームになるために。

スターダムの頂点に駆け上がるためには、以下の3つの必要条件を無視することは出来ません。



Popularity Class(人気階級)◉

「ビッグネーム」に具体的な定義はありません。

PFPファイターをビッグネームと呼ぶなら、井上尚弥やファン・フランシスコ・エストラーダはビッグネーム、主要団体の王者をそう呼ぶならムロジョン・アフダマリエフやノックアウトCPフレッシュマートもビッグネームです。

「ビッグネーム」はそういう「ボクサー」への使われ方です。

では「メガファイト」となるとどうでしょうか?

「パックメイ」に代表される、ファイトマネーが1000万ドルを軽く超え、ときには1億ドルも突破することまである「メガファイト」は、視聴者から課金するPPVによって成立してきました。

この年に数回しかないハレのイベントPPVは、選手層の厚いウェルター級やミドル級、ヘビー級のスター選手によって展開されてきました。

「人気階級=選手層が厚い=有名選手が多い=大きな興行になりうる」というのは当然の等式です。

「人気者対決」が最も大きな興行になるのは当たり前です。

選手層が薄く、有名選手がいない、人気のない軽量級では「ビッグネーム」はいても「人気者」はいません。つまり「ビッグイベント」は存在しないという矛盾が渦巻いているのです。

いずれにしても、人気階級で戦わなければ注目度も報酬も約束されません。

パックメイが明らかに適正階級よりも重いウェルターを主戦場にした理由は「注目とカネ」のためだけです。「ベストのパフォーマンスができる適正階級で戦う」なんて純粋なアスレティズムは彼らの脳内にはヒトカケラもありません。

しかし、Popularity Classから逸脱した軽量級でも昨日の井上尚弥や、ジュニアフェザー〜フェザー級のレオ・サンタクルス、アブネル・マレス、カール・フランプトンといった100万ドルファイターが、現代でも出現してきました。

一方で、実績・実力で彼らを上回るノニト・ドネアやローマン・ゴンザレスはついにホームと呼べるリングに辿り着くことなく、流浪と不遇のキャリアを閉じようとしています。

軽量級は不人気階級ですが、井上にはジャパンマネーという後ろ盾があります。マニー・パッキャオの報酬の源泉は米国ですが、井上の場合は太平洋を挟んだ母国です。ESPNにとって「同一国の二つのテレビ局が放映権料を支払ってくれる」なんてまずありえない経験ですが、村田諒太や井上の場合はそれが起こるのです。

フィリピンやニカラグアの選手には母国の厚いバックアップなど期待すべくもありません。ドネアやロマゴンにとって、米国での扱いはいくら不遇でも母国で戦うよりも何倍もの報酬を手に出来るのですから。

そして、サンタクルスやマレスが持っているのが、井上も村田も持っていないBlood Books (血統書)です。
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マニー・パッキャオの素晴らしさのほとんどは、信じられないような幸運によって形成されている。

Blood Books (血統書)◉

悲しいかな、プロボクシングは実力だけがまかり通るスポーツライクな世界ではありません。

人気のない軽量級ではなく、人気のウェルターやミドル級で活躍したら注目度も報酬も、スターダムの頂点も手に入る、わけではないのです。

ゲンナディ・ゴロフキンを見れば一目瞭然です。

GGGの報酬が200万ドル以下から6000万ドルと信じられない振れ幅を示すのは、簡単な理屈です。後者はカネロ・アルバレスと戦った場合、前者はカネロ以外。

もちろん、軽量級よりははるかにマシですが、それでもカザフスタン人という出自では単独の人気ではPPVは惨敗、HBOにとっても「報酬の割に視聴者数が伸びない」お荷物でした。

もちろん、実力No.1でない大坂なおみや錦織圭がアスリート長者番付で上位にランクされるのを見るまでもなく、プロボクシングに限らずプロスポーツはどこで生まれたかが人気=報酬に直結します。

錦織圭がウクライナ人だったら世界長者番付35位どころか100位にすらカスりません。

そして、米国では全人口の20%に迫り、アフリカ系米国人を抜いて最大のマイノリティとなったヒスパニックがボクシング市場の基盤を支えています。

近い将来白人を抜いてマジョリティになることが確実視されているヒスパニックの最大勢力がメキシコ系で、なんとその構成比は65%を超えています。

ボクシング市場で西のメキシコに対する、東のプエルトリコが現実はヒスパニック内構成が10%に満たず「ヒスパニックの正体はメキシコ」と言い切っても良いほどです。

また、ボクシングではお馴染みのキューバやベネズエラは米国リングでもっと存在感があっても良いイメージがありますが、革命以前は大きな貿易・ビジネスが行われていたキューバでわずか3.5%、ホルヘ・リナレスらで親近感の強いベネスエラに至っては0.4%に過ぎません。

キューバ人コミュニティのあるフロリダなどではこの数字はもっと引きあがるとはいえ、メキシコに対抗する軸ではありません。

「キューバからカネロは生まれないのです」。

カネロに代表されるメキシコ(系)、フェリックス・トリニダードやミゲール・コットがつないできたプエルトリコ(系)がBlood books の二大血統です。

テオフィモ・ロペスは越境移民の〝主役〟ホンジュラス系で、ブルックリン生まれ。東海岸で人気を集めるプエルトリコ系の亜流ともとらえられます。
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ドネアやロマゴンが、その実力評価に反比例する不遇に泣いたのは、不人気階級から抜け出せなかったことも一因ですが、それが最大の理由ではありません。

もし、彼らがメキシカンで、年間最高選手賞に輝き、PFPキングに2年も君臨していたならば…全く違う人生が用意されていたはずです。

これは「メキシカン」を「日本人」に置き換えても良いでしょう。彼らが日本人でなかった恩恵を最も受けているのは井上尚弥でしょう。

井上は彼らの足跡をトレース、日本人二人目の最高選手賞やPFP1位を目指す〝二番煎じ〟で、その存在感や期待は今ほど大きなものではなかったかもしれません。

その意味では、井上もまたスペシャルなBlood Booksを持っていると言えます。

中東のアラブマネーでHBOを〝買い占める〟形でスター選手の仲間入りを果たしたナジーム・ハメドの成功例は、今後の井上が倣うべき方向でしょう。もちろん、成功には選手の実力が大前提です。

人気階級で戦うメキシカンでも試合が面白くないと、スター選手どまりです。

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そんな薄汚い現代ボクシングの世界で、スターダムの頂点に登る必要条件「人気階級のメキシカン」を完璧に揃えて具現化したのが、カネロです。

では、Popularity ClassとBlood Booksを持たないボクサーはスターダムの頂点に立つ資格も可能性もないのでしょうか?

Popularity ClassとBlood Books、いずれも公明正大であって欲しい「スポーツ」の世界では聞きたくない言葉です。

常識的にはこの二つのどちらかでも欠けると、ハメドのようにスターにはなれても、スターダムの頂点には登れません。

ただ、どんな薄汚い世界にも例外や突然変異、ド変態は存在します。

どうしてあの二人は血統書はもちろん、人気階級で戦う体格も持たないのに、ウェルター級を主戦場に、スターダムの頂点に立つことができたのでしょうか?


そして3つ目。LUCK and FORCE(途轍もない幸運と途轍もない実力)


LUCK and FORCE(途轍もない幸運と途轍もない実力)◉

なぜ、マニー・パッキャオは、GGGやワシル・ロマチェンコのような〝異邦人の不遇〟を強いられなかったのか?

なぜ、フロイド・メイウェザーはバーナード・ホプキンスやアンドレ・ウォードのような地味な存在に陥らなかったのか?   


LUCK and FORCEを持っていれば、カザフスタン人でもウクライナ人でもキューバ人でもスターダムの頂点に立てます。 

メキシカンでないと人気が出ないボクシングは、スポーツライクじゃない薄汚い世界…。

冗談じゃない、ボクシングほど実力が純粋評価される世界はありません。

「軽量級は不遇すぎる」(エストラーダ)なんて、とどのつまりは実力のないボクサーの泣き言です。軽量級がダメなのをそこまで理解してるなら、上に行きゃいいんです。

下で沈殿してるのは、実力がないからです。

「メキシカンじゃないから人気が出ない」「コットが逃げる」「カネロが逃げる」(GGG)。それも実力が中途半端だから悪いんです。ミドル級でカネロやビッグネームから対戦を回避されたなら、上から煽ってきたウォードをやっつけたら良かったんです。「ウォードは重い。メイウェザーとなら154に落とす」とか寝言に過ぎません。
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メキシコ料理を頬張りながら、なんやかんやで仲良くなった中高生とその親御さんと、ちょっとした懇親会。
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受験生の親御さんですから、そうなるのはわかってたものの、中学や高校、大学受験の話って、頑張ってる子、悩んでる子は本当に心の底から応援しますが、親御さんには共感は低いというか…うまく説明できないですが。

これ、神奈川横浜に住んでる人でも受験生でもない限り知らないと思いますが「サイフロ」ってわかります?難関校なんですって。

横浜サイエンスフロンティア高等学校や附属中学校、のことらしいのですが、そもそも「横浜サイエンスフロンティア」自体を知らんわ!

誰でも知ってると思う感覚がおかしいわッ!ここの読者の方も誰一人知らないでしょう。受験生かその親御さんでない限り。

あなたたちもデレク・チゾラはもちろん、マニー・パッキャオすら知らんだろうなあと、テキーラをぐびぐび流し込む日曜日の夜でありました。

野球部の中学生から広がった学校の宿題を教えてあげる程度の勉強会が、広がってしまって、私としてはそんな気はさらさらないので、今まで野球の練習後の1時間前後だったのも、先月は一度もやってないはずです。

「サイフロ、知らないんですか?」と言うお母さんを「知るわけないやろッ、ボケ!」とは罵りませんが、知ってる方がおかしいです。

「翠嵐高校は名前だけ知ってます」ともごもご口ごもる私に、子供たちは「隊長、ランダウン(挟殺)プレーと受験の話してあげてー」と援護射撃。

それは志望校選びの話なのですが、受験なんて深刻になったらダメ。15歳で人生決められてたまるか。

いろいろ大変です、子供たち。本当に子供がかわいそう。

以前から約束してたとはいえ、今日は未明からウシクの試合を見てもうヘロヘロ。

話が、誰も興味のない横浜受験事情に傾く前に…。



1. レミュー 2020年11月01日 20:31
カラカラの体に一気に高カロリーを突っ込んで膨張する、回数を重ねるほど内臓と骨は劣化するから軽量級の選手は30前半でロートルになってしまう、、「計量後にフラペチーノ」の文字列を見て、そらそうなるわと。つうか井上ですらそのレベルでコンディショニングしてるのかと。
早く勝負に出るべきです。あと3年もたてば井上の体は賞味期限切れになってしまいます。無敵の幻影よりも総身で限界を打ち破る姿が見たい。きっとカッコイイです。
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「パッキャオを超えるスタートとなる試合」。さすが150年に一人の天才、発想が常人離れしています。

VADAの創始者のマーガレット・グッドマンは、ネバダ州アスレティック・コミッションのリングドクター時代に「減量がいかに深刻な健康被害をもたらすか」について有名な論文を発表しています。

その結論は「ヘビー級を除く、ほとんどのボクサーの減量は人間としての健康を弱体化させている」ということです。

その悪しき例としてアジアの「減量信仰」が槍玉に挙げ、なんと若き日のマニー・パッキャオもサンプルの一人として「この少年は本来はジュニアフェザー(122)かフェザー級(126)で最高のパフォーマンスを発揮できるのに、10ポンド以上も軽い階級に肉と血を削られている」と糾弾していました。

もちろん、ヘビー級ボクサーも試合に向けて減量するケースもありますが、逆に増量して筋肉を増やすケースもあります。

対戦相手に合わせて体重をマネジメントするヘビー級ボクサーの減(増)量は「いかに強くなるか」という、真っ直ぐな一点を目掛けた〝純粋〟です。

一方で、ヘビー級以外のボクサーの体重マネジメントは「減」量に限られます。そして、それは多くの場合「弱い相手と戦うために自分も弱体化する」という倒錯の塩梅をいかに調整するか、という〝不純〟です。

ヘビー級以外のあらゆる体重マネジメントは、この二つに大別できますが、パックメイだけは例外です。彼らは「自分が弱体化してでもメジャーな階級で目立ちたい、ベストパフォーマンスなんてどうでもいいから、とにかく栄光とカネだけが欲しい」という栄光とカネの亡者です。

井上尚弥の「過酷な減量と激しいリバウンド」のセットが、彼の貴重な未来に二つの意味で災禍を残すことは明らかです。

一つ目の災禍は「健康被害」によって早期の劣化、引退を早めてしまうこと。

もう一つの災禍は、人気のない階級に固執することでプライムタイムを浪費すること。

特に、後者はファンだって見たい「パッキャオが見た風景」が賞味期限切れになってしまうということです。

テオフィモ・ロペスとの無敗PFP対決が実現したら、舞台は間違いなくニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンかバークレイズセンターです。

井上がスピードとテクニックでポイントをピックアップ、ロペスの攻撃を捌きながら最終ラウンドの終了ゴングを、日本中が歓喜のカウントダウンで待つ…。

その前にノックアウトしたら、もちろん最高ですが。


>無敵の幻影よりも総身で限界を打ち破る姿が見たい。きっとカッコイイです。

どうして異邦人のパッキャオが米国であれほどの人気を沸騰させることが出来たのか?

簡単な話です。「絶対負けるのに、カネ欲しさにオファーに応じた守銭奴」と言われた試合を勝ち抜いたからです。

もし、「テオフィモ・ロペスvs井上尚弥」が実現したら、日本のボクシングファンならその時点で史上最もカッコイイボクサー決定です。

仕事キャンセルして、ニューヨーク行きますよ。



2. GGG 2020年11月01日 21:14
実際問題、相手は誰がいるでしょうか?
一気に駆け上がるにはサンタクルス辺りでなければ無理です。
ナバレッテなんか勝った所で結局何にもならないような気がします。

サンタクルスがあんな酷い負け方をした今、32歳のメキシカンを倒す価値も暴落しています。

ナバレッテとの無名対決も、PFP評価などは押し上げるでしょうが、スターへの階段をいくつ登れるのか?となると極めて疑問です。

リング誌はWBAセカンド王者シュー・ツァンとの「バトル・オブ・イースト」を煽っていますが、日本のボクシングファンの意識とは相当なギャップがあります。

リング誌が井上を何度もカバーするのは「没落するボクシング史上の活路はアジアしかない」ということですが、井上信者をはじめ日本のファンは「米国市場で活躍する日本人が見たい」のであって「上海や東京の大会場で中国人との決戦、そしてリング誌が日本語版と中国語版を発行」というダグ・フィシャーの妄想は見当違いも甚だしいのです。

井上がリング誌を単独カバーしたのを日本経済新聞までが報じましたが、リング誌の方が「日本で最も権威のある新聞が画像付きで記事にした」と逆に舞い上がっていたのは、やはり違和感ありありでした。

もう、逆に米国の思惑に乗っかってツァンとのフェザー級戦でもいいかな、とも思います。WBAはサンタクルスが空けたスーパーを懸けるでしょうし、WBCもダイアモンドかフランチャイズを差し出すのは間違いありません。

試合はトップランクがプロモート、画像も動画も「©TOPRANK」で米国が美味しいジュースを楽しむ野球WBCと同じ構図です。
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あ、夜のニュースで井上がまた登場。大変ですね。

結構、打たれてたんですね、意外と。目が腫れてるんでしょう。

第6ラウンドのダウン、8時からのフジ録画では「ジャブのカウンター」と解説してましたが、ジャブの定義がわかってない…。電話入れた人もいたんでしょう。

あれは「ジャブ」じゃない。

今のニュースでは、同じフジでも「フック」。井上も「フック」。このあたりはきちんと解説してリードブローの「ジャブ」がどういう定義なのかを説明してもいいと思います。

フックのジャブはありえません、定義として。「左ジャブ」と「左ストレート」の違いですね。

パンチスタッツの「ジャブ」と「パワーパンチ」の定義はまた変わってくるから、そういうのを解説すると、視聴者も絶対面白いと思います。
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井上尚弥がジェイソン・マロニーを7ラウンドで仕留めてラスベガスデビューを飾りました。

これでデビューから20戦全勝17KO。現在の世界タイトルに価値は無い、なんていくらほざいても20戦のうち15試合で世界タイトルをステイクしたキャリアの濃密さにケチがつけられるわけがありません。

マロニーも井上と非常によく似た戦績を紡いで来ましたが、対戦相手の質があまりにも違いすぎます。

モンスターのベストファイトはファン・カルロス・パヤノを90秒で沈めたWBSS1回戦でしょうか。

パヤオ戦は高い実力だけでなく、いろんなタイミングが重なった再現性が低いスペクタクルでした。パヤノにとっては「やりたいことをする前に終わってしまった」という悔恨が残りました。

一方で、バンタム級でも十指に数えられる実力者マロニーは「やりたいことをやろうとしたが何も出来なかった。最後は万策尽きた」という完全白旗降伏でした。

マロニーには「あそこをああしていれば…」という後悔はないでしょう。

タフなオージーを丁寧に削って、7ラウンドで仕留められるボクサーは、バンタム級にはいません。

マロニー相手で、ノルディーヌ・ウバーリなら12ラウンド判定まで持ち込まれるでしょう。カシメロなら判定まで行ったら負け、下手したら雑になった終盤にストップされるかもしれません。
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しかし、リング誌の挿絵、どれも似てないです。私がアメコミ大嫌いだからなんでしょうが。日本の漫画とは一緒のジャンルにして欲しくないです。

井上自身の言葉から、今後もバンタム級の全てのベルトをコレクションする方針は変わらないようです。

他の誰にも王者を名乗らせない The Undisputed Champion。

「We are 〝A〟championの時代」に「The Undisputed Champion」に就くことは大きな意味があります。

もし、井上が来年4団体完全統一を実現すると、1984年にWBA王者・渡辺二郎がパヤオ・プーンタラトのWBCを吸収して以来、日本史上二人目の自力でのThe Undisputed Champion、37年ぶりの快挙となります。

4団体時代ではバーナード・ホプキンス、テレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシクに続く世界でも史上4人目、大きな爪痕を残すことになります。

テオフィモ・ロペスについては「試合前は完全統一では無い」と主要メディアが断り書きしていたにもかかわらず、いつの間にかUndisputed Championと認められているようですが、この辺りのいい加減さはどないなもんでっしゃろ?

ロペスまだ入れて先輩の4人が Fighter Of The Year を獲得していることから、よほどのライバル登場がない限り、井上がバンタム完全統一するとボクサーとして最高の名誉を手にする可能性が十分あります。

日本人が Fighter Of The Yearとなると、ファイティング原田もエデル・ジョフレも出来なかった大快挙です。

二人ともに帝拳がプロモートしていることからも、ボクサーの純粋な思いを全力でサポートする帝拳の高い志が見えてきます。そういえば、選手紹介では「帝拳」の方が「大橋」よりも先にアナウンスされました。

しかし…。

「We are 〝A〟championの時代」は倒錯と欺瞞に満ちています。

The Undisputed Championはメディアにこそ評価されていますが、先輩の3人は注目度・人気ではスターダムの頂点に立てませんでした。

テオフィモは不気味ですが…。

というのは話の順番が逆で、実は人気がないからThe Undisputed Championを目指したとも言えます。

4団体時代のスーパースターのテッペンは、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスが黄金のトーチをリレーして来ました。

そして、4人合わせてのべ23階級で王座になりながら、彼らは誰一人として The Undisputed Championの座に就いていません。

「4団体時代だからこそThe Undisputed Championの価値が輝く」 はずで、理屈に合っていると考えたいところですが、もう一つの現実は「4団体時代だから王座の価値が喜劇的に失墜している」のです。

王者の価値が暴落したから、体重超過も平気なのです。

メイウェザーに「鉄クズは要らない」とベルトを卑下にされたマウリシオ・スライマンは鉄クズでない「ウェルター級ベルト」や「マネーベルト」を製作して、メイウェザーに献上、ご機嫌取りに成功しました。

「全てのベルトにアリの肖像ではなく俺を使え」というリクエストも受けましたが、期待していた〝掲載料〟を支払う気がメイには全くなく、この話は破談に終わりましたが。

スーパースターにとっては4つの喜劇ベルトをコンプリートするよりも、茶番劇も含めた「誰と戦うのか」 が全てです。

そして、その座は「誰に勝ったのか」を積み重ねなければ辿り着けません。

The Undisputed Championの4本ベルトのコンプリートセットは、スターダムの頂点に登るパスポートたりえないのです。

マロニーは論外、ノニト・ドネアも「誰に勝ったのか」の「誰」の器ではありません。

そもそも「ライト級まで制覇してPPVスターになる」という目標を、ずっと手前で木っ端微塵に破壊され、バンタム級に出戻ったのがドネアです。

ドネアもまた「パッキャオが見た風景」を見ようと危険な橋を渡りましたが、その願いは叶わなかったのです。

普通の世界王者がThe Undisputed Championを追求するのなら、全力で応援します。

しかし、井上の場合は少なくともバンタム級では普通の世界王者ではありません。そして、毎試合過酷な減量と不健康なリバウンドを繰り返しています。

米国で関心が払われない軽量級が主戦場の日本人の場合「誰に勝ったのか」と問われても、そもそもそんなタレントはどこにもいないのがデフォルトです。

考えれば考えるほど、パッキャオの運の良さには呆れ果てるしかありません。メキシコの歴史的なスーパースターが軽量級にもかかわらず3人もひしめいている偶然なんて、そんな時代は未来永劫訪れることはないでしょう。

もちろん、どんなオファーでも蕎麦屋の出前のごとく二つ返事で引き受けたパッキャオの勇気もすごいのですが、どんなに勇気があっても注文が入らなければ出前はできません。

もしかしたら、井上にもそういうオファーが届いているのかもしれませんが、この世界は断られたら「あいつは逃げた」と騒いでも、断ったオファーをわざわざ明らかにするボクサーはいません。

井上は、足の不具合の原因については言及していませんでしたが、もし過酷な減量が影響しているならこのあたりのクラスにとどまる理由はさらに小さくなります。

「パッキャオが見た風景」。

それは4団体時代では地味な実力者の象徴に成り下がったThe Undisputed Championの座からは見えない景色なのかもしれません。

それは、きっと、もっとド派手でエゲツない景色です。

プロ20戦全勝17KO。素晴らしいキャリアが折り返しました。

そろそろ「パッキャオが見た風景」が拝めそうな場所を探すのに良い頃合いです。


「井上尚弥、圧倒的不利」。そんな下馬評が立つ試合を見たい。

そのリングで井上に対峙するのは、米国のボクシングファンなら誰でも知ってる人気者になるはずです。
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井上尚弥がファンや専門家、ブックメーカーの予想どおり、筋書きどおりにジェイソン・マロニーをノックアウトしました。
Punch Stats
PUNCHESINOUEMOLONEY
Total landed10762
Total thrown338334
Percent32%19%
Jabs landed4430
Jabs thrown164209
Percent27%14%
Power landed6332
Power thrown174125
Percent36%26%
-- Courtesy of CompuBox

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4団体時代で、史上4人目の自力での The Undisputed Championになる。

そのことに大きな意味があるのは間違いありません。

そして「誰が一番強いのかわからないなんておかしい」と声をあげ続けていた井上にとっても「自分以外の何者にも王を名乗らせない」という意味の「議論する余地のない王者= The Undisputed Champion」になることは究極の目標でしょう。

ボブ・アラムはArum told The Athletic that an Inoue-Casimero fight should be expected by March.と「来年3月までにカシメロ戦を組む」と語っているのは、楽しみですが…。

勝手なファンからしたら、もっとワクワクする試合が見たい。

恵まれない貧困なバンタム級ボクサーを、このクラスでは飛び抜けて裕福な井上が狩り続けるのは「パッキャオが見た風景」とは真逆の景色のような気もします。

ガーボンタ・デービスがわずか1時間前に、階級の壁がどういうものなのかを、一発の左スイングで見せつけたばかりで「冒険的な試合をしろ」というのは狂気の沙汰ですが。

人気があって、井上よりもリッチなビッグネームに挑む。

贅沢な狂言ですが、井上のレベルはそれを要求するところに達しています。

異邦人、日本人であることはどうしようもありませんが、バンタム級という十字架なら、叩き壊して、上のクラスを侵略することが出来ます。
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PFPは「体重同一時最強」と訳されることがあります。

そして、PFPは正当に評価されないシュガー・レイ・ロビンソンの偉大さを色付けするためのプリズム装置でもありました。

このPFPの基本概念、出自を振り返るまでもなく、PFPの前ではどの階級も平等でなければなりません。

しかし、2015年にローマン・ゴンザレスがPFPキングの座に就くまで、軽量級は負のフィルターを通した評価に甘んじてきました。

よく言われたことですが「ナジーム・ハメドやマルコ・アントニオ・バレラ、リカルド・ロペスがウェルター級やヘビー級で同じことをやっていたら間違いなくPFPキング」でした。

〝軽量級差別〟がメディアレベルでは希薄化した現代ですらも、井上尚弥がウェルター級で同じことをやっていたら今以上の評価に浴していたはずです。
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左手前は〝今は亡き〟英国ボクシングマンスリー誌の付録カレンダー(2019年版)。8月を飾ったのは井上vsジェイミー・マクドネルでした。


…もし、PFPを考えるにあたり、とことん平等公平を突き詰めるなら「競技人口」と「報酬格差」もランキングに反映させるべきかもしれません。

スポーツレベルの決定要素が「競技人口」と「報酬」、そしてそれらに必ず伴う「人気」にあることは明らかです。

野球とソフトボールのNo.1選手、どちらがレベルが高いのか?

バンタム級とウェルター級、どちらがレベルが上かを問うのと同じで、そもそも比べることなど出来ないのですから答えはありません。

しかし、野球もソフトボールも競技経験がない人でも「競技人口と報酬、人気が全く違うから野球の方がレベルが高い」と答えるでしょう。

「競技人口」は山の裾野ですから、広ければ広いほど頂上(レベル)は高くなります。

「報酬」は選手のモチベーションで生活基盤ですから、ここが莫大だとパックメイのような本物の怪物が産まれやすくなります。

6月20日現在の「競技人口」はバンタム級の1018人に対して、ウェルター級が2170人 (BoxRec)。係数は2.13。

さらに「報酬」。常時10万ドル以上のファイトマネーを稼げるバンタム級は井上尚弥ただ1人で、ビッグマネーを生み出すPPVに乗ったボクサーは1人もいません(PPVの前座選手はメガイベントの恩恵から報酬が高くなりがちですが、PPV歩合収入はゼロなので何の意味もありません)。

対して、ウェルター級はトップ選手のほとんどが100万ドルを稼ぎ、マニー・パッキャオは1000万ドルファイターです。

現代でただ1人のPPVスター(ほぼPPVのリングにしか上がらない)マニー・パッキャオを筆頭に、エロール・スペンスJr.、テレンス・クロフォードのタイトルホルダーはもちろん、マイキー・ガルシアやキース・サーマン、ショーン・ポーターらもPPVファイターです。

トップ選手かどうか微妙ながらも、ダニー・ガルシアやジェシー・バルガスも100万ドルファイトを何度も経験しています。トップですら10万ドルがほど遠いバンタムとは、まさに雲泥の差です。

「報酬」を係数化するのは難しいものの、ウェルター級ではバンタムの10倍以上、井上を例外とするなら20倍以上のファイトマネーが発生していることから「20.0」程度でしょうか。

クロフォードが「PFPなんて気にしないけど、軽量級の選手が私より上なんてありえない。そのうち女子も入れるんじゃないか?まあ、勝手にしてくれ」とボヤくのもわかる気がします。


しかし「ウェルター級やヘビー級は軽量級よりもレベルが高い。その理由は競技人口と報酬、以上」という絶対と思われた真理は、フライ級上がりのアジアの拳によってあっけなく打ち砕かれます。

とはいえ、軽量級の報酬で井上が例外という以上に、パッキャオは例外中の例外です。

ボクシング150年の歴史で、フライ級どころかフェザー級王者ですら、ウェルター級のアルファベット団体のピースも拾えていないのが現実です。

パッキャオは突然変異を通り越した、150年に一度現れるかどうかの超常現象と見なしていいでしょう。

そう考えると、やはり軽量級は層が薄く、待遇も悪いことからレベルも低い…そう考えざるをえません。

「競技人口」の2.13を当てはめるとリング誌3位の井上のランクは6.39位に、さらに「報酬」の20.0まで加重してしまうと…PFP128位にまで墜落してしまいます。

もちろん、これは数字遊びですし「報酬=レベルが高い」ならカネロ・アルバレスが歴代最高ボクサーになります。

「競技人口」でいえば、日本で1980年代にすでに野球を上回っていたサッカーが「競技人口が多いからレベルが高い」とは誰も思いませんでした。

「競技人口」と「報酬」はレベルを決める重要な決定要素の一つではありますが、その一つだけ、あるいは二つとも揃っても、あくまで数多くある決定要素の二つに過ぎません。

バンタム級のエデル・ジョフレ、ライト級時代のロベルト・デュラン、クルーザー級のイベンダー・ホリフィールド、ストロー級のリカルド・ロペスらはやはり PFPファイターに数えるべきグレートです。

そんなグレートと比べてしまうと、井上が勝った相手の質が、眼を覆うばかりに低いのは明らかです。

では、誰に勝てば良かったというのか?

BEST FIGHTER POLL (リング誌の〝年間PFP〟)で見ると、2012年プロデビューはドネアの全盛期で、軽量級でただ1人ランク入り(5位)。

しかし、フィリピーノフラッシュはジュニアフェザー級で、井上はジュニアフライで世界を目指してデビューしたばかり。対戦可能性はありませんでした。

2013年はドネアを圏外に蹴落としたギレルモ・リゴンドーが 8位に登場。この年、田口良一から日本フライ級タイトルを奪いましたが、リゴンドーはジュニアフェザー級、3階級も上のクラスでした。

2014年はついにフライ級のローマン・ゴンザレスがいきなり4位にランクイン。 井上のレーダーがようやく「文句無しの強豪」の姿をキャッチします。

この年、井上はロマゴンを待ち伏せするかのようにジュニアバンタム級に〝先乗り〟。

PFPなど世界評価からは一線を画するリングで二階級制覇・それぞれの階級で二桁防衛の〝数字魔人〟オマール・ナルバエスを、下馬評の「中盤から終盤KO」を上回る2ラウンドで粉砕したのです。

この試合を評価した boxing scene.com は井上を Fighter Of The Year に選出しました。

そして、2015年にロマゴンは軽量級史上初の1位に輝き、その座を2016年まで守りました。 井上もロマゴンと同じ、THE SUPER FLY のリングに登場、決戦を夢見ましたが…。

ロマゴンは井上の眼の前でシーサケット・ソールンビサイに2連敗、しかも4ラウンドKO負けの惨敗。

それでも、ロマゴン、井上に加えてシーサケットはもちろん、ファン・フランシスコ・エストラーダもPFP入りと、ジュニアバンタム級は軽量級ではありあないハイレベルな様相を呈します。

しかし、減量が限界の井上は、当時も不毛階級とはいえWBSS開催が決まっていたバンタム級に舵を切りました。

そこで、WBSSのドタバタ運営に翻弄され試合間隔を無駄に空けてしまうことになります。

もちろん、現状のバンタムには「文句無しの強豪」と呼べるボクサーは1人もいません。 

その中で、ジョンリール・カシメロの意外性は、それこそ全階級を通じて1、2位を争うものですが…。

これは、井上にとっては勝利しても「今日のカシメロは不発弾だった」で終わってしまう、危険なだけの仕事になってしまいます。

全ての原因は「軽量級」であるがゆえ、なのですが…タイミングは良くないですね。 
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日本のエース、井上尚弥の現時点での世界評価をおさらいする新シリーズです。

書きかけの話が滞留していますが、ふと思いついたもの優先で書き進めていくのが当ブログのスタイルです。

書きかけの話にも、続きはもちろん、いつか着地もありますので、思いついたら突発的に再開しますね。

It was just My turn.(それが俺のやり方、巡り合わせだ)、です。

↑最近感銘したイスラエル・バスケスの言葉を書きたかっただけやん!とバレてるかもしれませんが、それにしても、なんだか、もう、試合がないとどうしようもないです。欲求不満だけが蓄積されてしまいます。

無観客の試合が味気ないのは仕方がないにしても、パッとしない試合が続いてるし。ジョシュア・グリーアなんて日本タイトルも獲れるかどうかも怪しいバッタもんでした。ルーシー・ウォーレンをさらにスケールダウンした小物です。

誰かスカッとする試合を見せてくれーい!



「黒霧」と黄金千貫ふかし芋でほろ酔い気味の今夜、本題は「Is Monster Overrated?〜井上尚弥は過大評価か?」。

リング誌PFPで3位など世界評価が沸騰している27歳の日本人。彼がバンタム級推定最強ということに異論がある人はいないでしょう。

カシメロの野生や、リゴンドーの理詰めがモンスターを崩す可能性が無いとはいいませんが、所詮は喧嘩屋と老人です。

バンタム級シーンをどう見渡しても、いざ対戦となってオッズで井上を上回るボクサーは1人もいません。


さて、その井上の世界評価をPFP視点で見てゆきます。

年間最高選手賞(シュガー・レイ・ロビンソン トロフィー)を投票決定する全米ボクシング記者協会(BWAA)のPFPでは4位。

1. Canelo Alvarez (228 points)
Middleweight 53-1-2 (36 KOs)
 
2. Vasiliy Lomachenko (224)
Lightweight 14-1-0 (10 KOs)
 
3. Terence Crawford (195)
Welterweight 36-0-0 (27 KOs)
 
⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎
4. Naoya Inoue (159)
Bantamweight 19-0-0 (16 KOs)
 
5. Errol Spence Jr. (136)
Welterweight 26-0-0 (21 KOs)
 
6. Oleksandr Usyk (106)
Heavyweight 17-0-0 (13 KOs)
 
7. Gennadiy Golovkin (74)
Middleweight 40-1-1 (35 KOs)
 
8. Tyson Fury (74)
Heavyweight 30-0-1 (21 KOs)
 
9. Manny Pacquiao (58)
Welterweight 62-7-2 (39 KOs)
 
10. Juan Francisco Estrada (51)
Jr. Bantamweight 40-3-0 (27 KOs) 

殿堂入り投票も絡むBWAAのPFPが最も権威があるーーと言いたいところですが、2ヶ月に一回という間延びした更新、歴史の浅さ、ボクシングファンへの認知などを考えると到底そうは言い切れません。
 

現状では、様々な専門家の得点投票で順位を決めるESPNが最も権威あるPFPでしょう。

ESPNの井上はBWAAと同じく4位。

井上の上を行くトップ3は1位:ワシル・ロマチェンコ、2位:テレンス・クロフォード、3位:カネロ・アルバレスとなっています。
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米国ではマニアですら関心が低く、財政難に喘ぐイメージも悪いマイナーなWBSSだが、日本ではメガイベントに化ける。オリエンタルマジックだ。

そして、リング誌PFPでは、BWAAとESPNのトップ3からクロフォードを蹴落とす形で井上が3位。

井上は昨年、2月号と9月号でリング誌を単独カバーするなど、この自称〝ボクシングの聖書〟の寵愛を受けています。 

世界唯一のボクシング専門週刊誌、英国ボクシングニューズ誌でも3位。ここでもカネロ、ロマチェンコに続き、クロフォードを抑える形になっています。

世界唯一としていますがメキシコにもありそうです。もしかしたら日刊誌(日刊だともはや新聞なので日刊紙ですね)でもありそうです。

ここまでの4メディアを「大手」とすると、世界評価ではトップ2がカネロかロマチェンコで、3−4位が井上かクロフォードと「4強」は一致しています。

そして、boxing scene.comでは1位、BOXING NEWS24では2位と、ネットニュースではより高い評価を獲得しています。
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この漫画的なレーザービームの中でファイティングポーズをとる井上もリング誌からです。
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モンスターは、昨2019年に1月号で集合写真カバー、2月号と9月号で単独カバーと3度もリング誌表紙を飾りました。

4団体17階級時代になって30年余り、「階級PFP」なるわけのわからない言葉まで産まれる中で、PFPは広く知られるようになりました。

そして、その約30年間で最も高い世界評価を得た日本人が井上です。

井上がPFP3位まで登り詰めた…〝詰めた〟という表現は〝ここが行き止まり〟なニュアンスもあって良くないですね…「トップまであと2つ、3位まで登って来た」理由は、もちろん実力が認められたのですが、他にも複数考えられます。


①メイパックの没落でPFPは群雄割拠。
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PFPは脳内妄想です。その順位付けは十人十色、ESPNのスティーブ・キム記者のように井上を1位に推してくれる専門家もいます。

「満票」でPFPキングに輝くファイターがいないのも当然です、十人十色なのですから。

例えばESPNの1位はロマチェンコですが12人の専門家で1位票を投じたのは4人にとどまります。つまり、8人が「ロマは1位じゃない」と考えているのです。

8人の内、4人がカネロ、3人がクロフォード、1人が井上に1位としています。これが五輪の開催地投票なら上位4人で決選投票ですが、実際には1位10点、2位9点…のようにポイントを合算してランキングを完成させます。

こういう内実まで見るとPFPなんて当てにならないというか、よく言い換えられるMythical Ranking の名の通り、BWAAだろうがESPNだろうが、所詮は怪しいランキングです。

ところが…。かつて怪しくないPFPキングが存在したのです。当たり前のように「満票」のPFPキングが…。

ご察しの通りメイパックです。

彼らの全盛期はどのメディアも「満票」で「全階級通じて最高」と認めました。

「満票」です。つまり「十人十色の妄想」のはずのPFP が、完全に一致してしまったのです。

こうなると、事実として「十人十色」ではありません。そして、恐らくは…「妄想」でもありません。

そんなはっきり見えていた確かな世界が、ぐずぐずに液状化してしまったのが現在です。

いろんな意見、いろんな角度からPFP1位が語られ、再び「十人十色の妄想」に溶け込んでいったPFPの世界では、キム記者のような大胆な意見でも説得力を伴います。

もし、井上が産まれるのが10年早かったとして、10年前のパックマン全盛期にキム記者が「井上がPFP1位」と口走ったとすると、正常な判断が出来ない病に罹ったと救急車に乗せられたはずです。

 

②PFPの門戸は日本人にも軽量級にも開放された。

boxing scene.comやBOXING NEWS24などの米国ネットメディアで長谷川穂積や西岡利晃がPFP10傑入りを果たし、日本人に固く閉ざされていたESPNやリング誌PFPへつながる道を舗装してくれました。

そして、山中慎介と内山高志がついにリング誌とESPNのPFPメジャーの扉をこじ開け、井上尚弥が続いたのです。

さらに、ローマン・ゴンザレスが軽量級として史上初のPFPキングに就くと、その座を2年も守りました。



「アジアの偉大な軽量級ボクサーの評価が見直されたのは、YouTubeなどインターネットの普及でリアルタイムで観ることができるようになったことが大きい」というリング誌やESPNの説明(弁明?)は間違いではありませんが、彼らは巧妙に嘘をついています。

インターネット以前から、アジアのボクサーは評価されていました。カオサイ・ギャラクシーや張正九、柳明佑はPFPに数えられたばかりかモダン部門で殿堂入り。

クリス・ジョンやポンサクレック・ウォンジョンカムもPFPの常連でした。

正確には「アジア」ではなく「日本」のボクサーの評価が見直されたのです。

その背景には、米国ボクシングの没落という背景が横たわっています。



③リング誌は日本が大好き、WBSSも日本が大好き。

このブログでは「リング誌が斜陽産業の斜陽雑誌であること」を伝えて来ましたが、どうも世の中の大勢は勘違いしているようです(リング誌のダメダメなことも書いてますが、私、大の愛読者です)。

そして、井上よりもはるかに評価が高いノニト・ドネア(2012年シュガー・レイ・ロビンソン賞)やローマン・ゴンザレス(2015−2016年:Best Fighter Poll 1位)が一度も単独カバー出来なかった事実を知れば、リング誌が昨年の8ヶ月間で2度も井上を表紙に起用されたことに、大きな違和感を感じない人はいないでしょう。

「素直に喜ぶべき」なんて軟弱な発想は要りません。「ナメるなよ」ということです。

かくいう私も、2019年1月号で井上が集合写真の中で小さく表紙を飾ったときには素直に喜びましたが、さすがに単独カバーはまだ早いと思いましたし、それも短い期間で2度となると…。

もちろん、21世紀最大の過大評価、エイドリアン・ブローナーも単独カバー経験者ですし、 女子MMAファイターのロンダ・ラウジーも単独カバー&大特集されました。

エイ・ロンよりも井上の方がふさわしいとは思いますが…。
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ドネア…全盛期でもリング誌表紙を飾ったのはジェームズ・カークランド、マルコス・マイダナ、ウラジミル・クリチコ、ルシアン・ブテとの集合表紙だけ…井上との扱い格差は歴然です。

ドネアは富裕国のサポートもなく、米国で人気がないので仕方がありません。プロボクシングは人気ビジネスです。

しかし、逆の見方をすると、ドネアは実力だけでリング誌の表紙にちょこっとプリントされたのです。


①②③は独立した問題ではありません。全部つながっています。 

では、次にPFPのような評価の「結果」ではなく「過程」「プロセス」、つまり誰に勝ったのか?を再考してみます。

これは、すでにやってるはずですが、そのときと今では評価、感じ方が変わってるはずです。

まあ、大きくは変わりようはないですが…。



まだまだ、9月の試合日が発表されるまで、続きますが、すぐに書くとは限りません。

そうです、It was just My turn.(それが俺のやり方、巡り合わせだ)、です。いい言葉です。イスラエル・バスケス、最高です。

仕事で失敗したり、夫婦喧嘩で険悪な雰囲気になったときも使えますね。もちろん、相手に言っちゃうと火に油を注ぐだけですから、心の中で It was just My turn.をリフレインします。


ずっとバスケスに同情的な思いを募らせていた自分のフシ穴ぶりが恥ずかしく、申し訳ない。 
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現在27歳の井上尚弥のプライムタイムがいつなのか?

今なのか。それとも、もう少し先なのか。 

いずれにしても、キャリアのピークに差し掛かっているのは間違いないでしょう。

2018年から3年間で4試合、今年9月にジョンリール・カシメロ戦をこなして5試合というのは物足りない数字ですが、 軽量級としては十分すぎる報酬と評価を手にした井上のステイタスを考えると、年2試合は絶対的に少ないわけではありません。
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現状のバンタム級で井上の脅威となりうるのはカシメロとギレルモ・リゴンドーくらいです。ドネア戦でPFPランクが上がった一方で、カシメロとのオッズや専門家予想が接近するなど、現実の実力評価は液状化している井上ですが、バンタム級でハイリターンの相手は見当たりません。

ただ、問題はその「中身」です。

この5試合の相手はジェイミー・マクドネル、ファン・カルロス・パヤノ、エマヌエル・ロドリゲス、ノニト・ドネア、そしてカシメロ。 

ロドリゲスとドネア、カシメロは現役王者、マクドネルはセカンド王者、パヤノも元王者と5人ともバンタム級の強豪でした。 

これで「中身がない」とすると「現状のバンタム級が中身がない」というのと同じことになります。

しかし…残念ながらそういうことです。

井上のパフォーマンスがウェルターやミドル、ヘビー級で繰り広げられていたなら、とんでもないことになりますが…悲しいかなバンタム級です。

なぜウェルター級ではWBSSをやらないのかを考えればわかりますね…そういうことです。

PFP3位評価のファイターが戦うには、バンタム級はあまりにも薄っぺらい相手ばかりです。

もちろん、カシメロに勝てば3つのタイトルをコレクションすることになり、Udisputed Championに王手がかかります。

4団体を自力で完全統一してUdisputed Champion に就いたのは歴史上、バーナード・ホプキンスとテレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシクの3人だけ。日本人ではもちろん初の快挙。

ホプキンスら3人は、その圧倒的な実力に人気がついてこない地味なボクサーでしたが、団体乱立の時代に Udisputed Champion が特別な価値を持っていることは言うまでもありません。

ただ、これに拘り過ぎて試合枯れに陥るほどの価値が今のバンタム級にあるかとなると疑問符がいくつも湧いてきます。


そもそも、軽量級にウェルター級やヘビー級など人気階級でいう「ビッグネーム」なんて存在しません。もし存在したら、不人気階級ではありません。

ドネアは軽量級では〝ビッグネーム〟ですが欧米ではほとんど無名。

トップランクから契約満了を待たずに「不良債権」と放り出された不人気ボクサーで、敵地で戦うしかないドサ回りファイター、ロードウォリアーです。

軽量級ファンからしたらドネアの待遇はおかしいと思いますが、それが世界の現実です。

そこから目を背けて「ドネアは米国でも大人気で高額報酬を得ている」と何の根拠もなく思い込むと、真実は見えてきません。

ドネアと同じロードウォリアーのカシメロに至っては、3階級制覇しながらもキャリアハイの報酬が入札効果で得た7万5000ドルという有様です。

人気階級と比べて「報酬」「名前」が絶望的に小さくなるのは仕方がないにしても、バンタム級には井上を例外にして「評価」が高いタレントすらいません。

一つ下のジュニアバンタムもバンタムよりはマシとはいえ「報酬」「名前」のあるボクサーは皆無です。

ただし「評価」ではリング誌王者ファン・フランシスコ・エストラーダやシーサケット・ソールンビサイのPFPファイターに、元PFP1位のローマン・ゴンザレス、PFP予備軍の井岡一翔、ジェルウィン・アンカハスと軽量級には珍しい看板のあるファイターが名を連ねます。

しかし、井上が減量苦で脱出した115ポンド級に舞い戻ることは考えられません。

あるとしたら、彼らが階級を上げて来ることです。



今度は、一つ上のジュニアフェザー級シーンを見てみましょう。
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122ポンドもPFPファイターは見当たらないものの、1年足らずで5連続KO防衛に成功しているWBO王者エマヌエル・ナバレッテ、無敗のIBF/WBA王者ムロジョン・アフマダリエフは、評価の高いファイターです。

それだけに、オッズと予想はかなり接近するでしょうし、ナバレッテなら井上に不利予想が立ってもおかしくありません。

このクラスにはIBF暫定王者・岩佐亮佑に亀田和毅、勅使河原弘晶がリング誌ランクに食い込んでおり、和毅は先日「井上君との試合はみんな見たいでしょう」と発言、日本人対決の期待も膨らみます。

ただ、井上にとってメリットのある唯一の相手、ナバレッテはフェザー級転向を口にしており、6月20日にメキシコシチーのアステカTV内でウリエル・ロペスとフェザー級10回戦のリングに上がるため、ジュニアフェザー級に戻る可能性は薄くなっています。



そうなると…。「米国で注目されるには最低でもフェザー」(井上)のフェザー級、126ポンドです。
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ドネアが破壊された126ポンドですら「報酬」「名前」「評価」とも際立った選手はいません。

しかし、ボクシングファンがちょっと眺めればわかるように、ジュニアフェザー以下の不毛な砂漠階級とは明らかに異なる景色が見て取れます。

井上がこの10人と戦うとなれば「圧倒的有利」のフラグは、誰に対しても立ちません。

ジョシュ・ウォリントン、ゲイリー・ラッセルJr.、シャクール・スティーブンソン相手なら完全不利予想間違いなしです。

逆に言うと、この3人をぶっ倒せば井上が希望する「パッキャオが見た風景」の一端を拝めるはずです。

特に、ボブ・アラムとESPNが「メイウェザー2世」と売り出し中のスティーブンソンはいいですね。井上がコールしたらすぐにでもまとまりそうです。

カシメロ戦をクリアしたら、井上も口にしていいと思います。

井上が身長165㎝/リーチ171㎝、スティーブンソン173㎝/173㎝、ウォリントン170㎝/170㎝、ラッセルJr.164㎝/163㎝。

数字上はラッセルJr.より上というのは意外ですが…。

フレームで劣り、得意のリバウンド効果が激減してしまう126ポンドで井上がどこまで戦えるのかは未知数ですが「最低でもフェザー」と口にしたのは思いつきや他人事ではなく、覚悟の表れだったはずです。 

まずは、9月のカシメロ戦。ここは軽く突破しましょう。 
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井上尚弥が、ジョンリール・カシメロとのバンタム級3団体統一戦を下馬評通りにクリアすると、常識的に次のステップは完全統一、Undisputed Champion です。

自力での4団体完全統一 Undisputed Champion となると日本では史上初。

世界でもバーナード・ホプキンス、テレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシクに続く史上4人目の快挙となります。
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IBF/WBA王者の井上がカシメロのWBOを吸収すると、残るストラップはWBCのみ。

現在のタイトルホルダーは拓真を退けたノルディーヌ・ウバーリ

よくまとまったボクシングをする33歳のフランス人ですが、拓真戦でいくつも欠陥を晒したように、無敗の理由は強いからではありません。

After two months of negotiations, there was a purse bid, which was won by TGB Promotions. The winning bid was for $401,000 and split 60/40 in favor of Oubaali.

ウバーリはノニト・ドネアと初防衛戦が入札で決定していましたが、このパンデミックで開催日時・場所はいまだに発表されていません。

ちなみに入札金額は40万1000ドルで、ウバーリ60%(24万600ドル):ドネア40%(16万400ドル)の取り分で両者合意に達しています。ウバーリはキャリアハイ。ドネアも井上戦(報酬非公表)を除くとこの6〜7年で最高額。

テテvsカシメロもそうでしたが、井上vsドネアの「埼玉ショック」はバンタム級に異変を起こしています。

プロモーターは入札で少々の無理をしても傘下の選手に有利な条件でホームに試合を引っ張り込んで、井上との試合に駒を進めたいという思惑です。

できれば「ラスベガスではなく年末の日本で」というのが本音でしょう。

ただ、これは「ビフォー・コロナ」の話。

ウバーリvsドネアの入札は、ご破算になって、あらためて条件交渉が進んでいるはずです。

井上とのビッグファイトですら「客単価1万円*2万2000人」などもはや期待できない現状では、背伸びした入札は回収不能です。

いずれにしても、9月に井上がカシメロ戦をクリアしても、年内に完全統一戦を行うのは極めて難しい状況です。

井上がカシメロ戦を無傷でクリア、ウバーリがドネアに待機料を支払って、井上との試合を優先。それなら「年内」もありえますが…。

愚図つくようならUndisputed Champion にこだわる必要はないかもしれません…そもそも今の時代でUndisputed Champion は、スーパースターになれない地味なボクサーの実力証明のオプションです。

完全統一ではないオプションーーそっちの方がファンにとって面白いのは当然です。
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