フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 減量とは何なのか?


憶測でものを言ってはいけません。

パッキャオの8階級制覇なんてありえない、ドーピングに決まってる…なんて典型です。一度でも検査に引っかかってたのならまだしも。



それでも、ときには憶測でものを言いたくなるときもあります。「ラスベガス20億円」とかの妄想大好きなネットの方々は、そういう憶測は出来ないようですが。



2018年5月25日、大田区総合体育館。もう3年前になります。

前日計量で自力で上着を着ることもできないほど弱っていたあなたは、きっと「体重超過でタイトル剥奪でいい」と主張したでしょう。

英国がボクシング黄金期を迎えていたにもかかわらず、ドサ回りを強いられていた人気の無いあなた。

それなのに、なぜかエディ・ハーンが日本に乗り込んでいました。

実はマクドネルを見込んでいた…なんてわけはなく、マッチルームの日本戦略への営業活動でした。

つまり、マクドネルは日本への贈答品。ネリ問題の直後ということもあり、粗相は許されません。

前日計量に向かったマクドネルのホテルの部屋は水びたし、血痕も残ってたと言います。

もしも、あの公式計量の現場にマーガレット・グッドマンがいたら、試合は即刻中止だったでしょう。

いや、グッドマンじゃなくても…。

ハーンが信じられないのは今に始まったことではありませんが、JBCがまともな統括機関でないことも今に始まったことではありません。

「前夜何があったのか?あんな過酷なことに耐えられたジェイミーを誇りに思う」と、涙ながらに白々しく語ったハーン。奴らは、傘下のボクサーに何を強いたのでしょうか?

全ては憶測ですが、下剤を大量に服用し、血も抜いたと考えられます。計量時に自力で着席も立ち上がりもできず、老人のように水気も生気もなかった理由は他に何が考えられるでしょうか?

もちろん、井上には何の瑕疵もありません。危篤状態の重病人を叩きのめすことになった彼は、むしろ被害者です。

そして、あの夜のマクドネルなら井上でなくても簡単に粉砕できたでしょう。
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オンライン飲み会。規制の無い岩手やら静岡やら山口やらのバカどもが居酒屋からの参加。

それに負けじと、お世話になってるお寿司やさんで「普段は出さない本マグロの腹身」「昆布じめ鯛」「生で売れなくなって冷凍したホタルイカ解凍」を一挙格安購入。そして、キンミヤ梅割。このフシ穴特製ランチョンマットは奴らに見えないというのもウフフな感じです。「これ誰?」とか言われたらめんどくさいですから。


ジェイミーがインスタで引退を発表しました。

井上との対戦時にフジテレビが掲げた「10年無敗の絶対王者」は35歳、超軽量級の選手として14年のキャリアは十分に長く、立派な歴史でした。

人気の無い階級とはいえ、英国でボクシング人気が沸騰する時代に恵まれましたが、クリス・エドワーズとのホープ対決に敗れ、直後にリー・ハスキンスにも負け、プロモーターが推すタレントではなくなりました。

それでも、世界戦線でスチュアート・ホール、フリオ・セハ、亀田和毅、リボリオ・ソリスとの戦いを勝ち抜きました。

リング誌でも評価の高かった初戦時31戦無敗の和毅とは再戦でも明白なアンダードッグ。しかし2戦連続で、番狂わせを起こしました。

そして、日本のファンには、井上戦で何もできずに1ラウンドで屠られた姿が印象に残っているでしょう。
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「35歳。今からリングでやり直すには年をとり過ぎました」。

「 私はボクサーになる前に思い描いた夢を一つずつ、最後まで叶えることができました。英国王者、英連邦王者、欧州王者、IBF世界王者、WBA(セカンド)王者。いくつもベルトを巻いて素晴らしい相手と戦うことができました」。

「母国では人気がなかったのかもしれないけど、おかげで米国や日本というもっと大きな舞台を経験できました。世界を旅して戦うことは素晴らしい経験でした」。


“I can truly say I have had a blast and lived the life!”


素晴らしいボクシング人生だった!本当に充実してた!これが今の気持ちの全てです!

母国がボクシング人気に沸く中でのサーカスライフは複雑だったでしょう。

そして世界王者になってもシュガー・レイ・レナードを知らなかった!ドンカスターの純朴。

間違いなく第二の人生でも成功するでしょう。

ありがとう、ジェイミー。
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昔は防衛回数が評価されたけど、今は複数階級制覇。

プロボクシングの世界でときどき耳にする言葉ですが、これは明らかに間違いです。

世界的な統括団体が存在しないだけでなく、承認団体という怪しい団体と、かつて8階級だったクラスは4団体17階級に膨れ上がっています。

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世界王者の価値は暴落し、複数階級制覇を狙って王座を返上するのは当たり前。それどころか体重超過によって体重計の上で王座を剥奪されるケースも後を絶ちません。

安易な王座返上と体重超過が「世界王座はいくらでもある」というナメた気分から引き起こされているのは明らかです。

世界に8つしか王座がなければ、挑戦のチャンスを掴み取るだけでもいくつものハードルをクリアしなければなりません。

せっかく掴んだ世界王座を軽々しく返上するなんてことも、まず考えられません。

かつて、ヘビー級には「王座は返り咲くことができない」「サウスポーは世界王者になれない」というジンクスがありましたが、他の階級でも「返り咲き」「サウスポー」が難しいことは同様でした。

オリジナル8のシステム下では、複数階級制覇するにも8階級しかありませんからチャンスが少ないだけでなく、階級間の体重差も大きく、倒さなければいけない王者はいずれも Undisputed Championです。

日本では「世界ランカーに弱い奴はいない」「世界王者は誰もが強い」という寝言をファンだけでなくメディアまでが垂れ流すことがありますが、笑止千万です。

そして、3−Belt Era までと4−Belt Eraの決定的な違いは、世界王者と世界ランクの価値暴落です。オリジナル8の時代から団体と階級が増え続けていつのだから「レベル3」から「レベル4」になっただけの継続的な暴落に過ぎないと考えているなら、それは大間違いです。

まったく違う価値暴落のステージに突入しているのです。

その原因は〝地域タイトル〟の病的なまでの増殖、に集約できるでしょう。

すでに80年代で、WBC傘下の東洋太平洋(OPBF)や、IBFの母体北米(NABF)のタイトルホルダーがそれぞれの世界ランクで優遇されあ世界挑戦への道筋が整備されるシステムが出来上がっていました。

もちろん、当時でも怪しい世界ランカーが散見されていました。 

また、承認団体の王者が防衛戦に失敗したり、タイトルを返上すると上の階級で上位にランクされるばかりか、ダイレクトで世界挑戦するケースもありました。

承認団体内でのタイトルタライ回しや、不可解なランキングは 4−Belt Eraの専売特許ではありません。

しかし、4−Belt Eraでは「地域タイトル」は〝地域タイトル〟に変質します。

北米を例にとっても北米、米大陸、カリブ、スペイン語圏など細分化が進む純粋な地域タイトルに加えて、インターナショナル、ユース、シルバー、ゴールド…各団体は好き勝手な名前を付けたWorld Champion を粗製乱造するのです。

これら〝地域タイトル〟にもシルバーやユース、暫定、休養まで存在し、それぞれの承認団体がランキングで優遇するのですから、マイケル・ダスマリナスやアブニ・イルディリムなど誰がどんな詭弁を弄しようが「最強挑戦者」とは言えない指名挑戦者が続々と産み落とされ、世界ランキングは実力の順番ではなく、承認料支払い能力の高い与信管理ランキングに変貌しているのです。

世界王者の価値はもちろん、防衛回数も複数階級制覇も単なる数字に落ちぶれた4−Belt Eraでは、本来なら最も注目されるべきUndisputedChampionも目立たない存在に追いやられています。

4−Belt Eraの王座のピースは、少なくともスターダムの頂点に立つボクサーから見ると4つをコンプリートする意味がないガラクタです。

不人気王者が自分に関心を向けさせるためにUndisputedChampionになるための道具として集めるだけのガラクタに成り下がっているのです。

バーナード・ホプキンスにジャーメイン・テイラー、テレンス・クロフォード、アレクサンダー・ウシク、 4−Belt Eraで生まれたUndisputedChampionが揃いも揃って、日陰の不人気選手であることは偶然ではありません。

一方で、 4−Belt Eraのスーパースターの系譜=オスカー・デラホーヤ/フロイド・メイウェザー/マニー・パッキャオ/カネロ・アルバレス=を振り返ると、誰一人としてUndisputedChampionへの執着は示さず、当然その座にも就いていません。

彼らが目指したのはガラクタではなく、栄光=カネです。コンプリートしても誰も注目してくれないガラクタ収集ではなく、より大きな試合、より有名な相手とのメガファイトです。

もはや完全統一ではスターの頂点に立てない、いやむしろ完全統一にこだわるような不人気ボクサーではそもそもスターになれない時代になってしまったのです。

ゲンナディ・ゴロフキンは4−Belt Eraの時代に、オリジナル8の王者のごとく振る舞った愚か者です。対戦を避けるカネロを批判している間に、自分が劣化し、今ではカネロだけでなく村田諒太や多くのボクサーから狙われる〝死肉〟になってしまいました。

挑発してきたアンドレ・ウォードに答えて2階級制覇を狙っていたら?リング誌などの予想通りに完封負けや終盤KOされていたかもしれませんが、番狂わせを起こせば一気にスーパースターでした。

最凶を誇ったセルゲイ・コバレフに飛び級2階級制覇をかけて挑戦していたら、カザフスタン人の十字架は関係なく世界中のボクシングファンの注目と尊敬を集めたでしょう。もちろん、惨敗していたら今の地位はありません。

いずれにせよ、それをやらなかったのがGGGです。カネロとは「キャッチウェイトは絶対に受け入れない」という態度をとりながら「メイウェザーとできるならジュニアミドルに落とす」と発言していたのがGGGです。 

カネロや井上尚弥なら完全統一王者=UndisputedChampionを目指しても十分恩恵にあずかれますが、GGGやワシル・ロマチェンコのようなどこにあるかも誰も知らない国のボクサーがスターになるには、パッキャオ方式しかやり方はないのです。

ロマチェンコも「パッキャオに勝てる」と発言しながら「ジュニアウェルター級以上では戦わない」と実質逃亡宣言、テオフィモ・ロペスに押し切られる結末を迎えてしまいました。

GGGやロマの「プロボクシングの世界は狂ってる」という意見はある意味で正しいですが、ファンからしたら「泣き言を並べるのではなく、その狂った世界を打ち砕いて欲しかった」というのが本音です。

カネロとの初戦でGGGがメキシコ人を戦慄の失神KO劇で葬り去ってくれていたなら。ハイテクに翻弄されたテオフィモがコーナーで座りながら号泣して棄権していたなら。どんなにスカッとしたことでしょう。

厳しい期待であることは百も承知です。それでも「彼らなら」という期待があったのです。

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GGGが怯み、ロマがライト級で限界と諦めた複数階級制覇。

 4−Belt Eraにおいて、何をもって成功、何をもって失敗というのか?

正解の定義などありません。

ブローナーは成功、勝ち組か?

ヘビー級の試合が大変なことになってるので、一旦閉じます 
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ボクサーの健康・安全対策のために導入されたはずの前日計量ですが、不公平なリバウンドにより、ボクサーの健康・安全を脅かす新たな問題を浮き彫りにしています。
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日本では井上尚弥と井岡一翔のトップ2が〝リバウンドの達人〟として有名です。

世界でも、今日、ロンドンでIBFフライ級のピースを手放したモルティ・ムザラネのIBFルールにアジャストした体重管理は絶妙でした。

IBFルール範囲内の最高体重コントロールは「前日計量(公式)112ポンド=50.8㎏(リミットいっぱい)→当日朝計量(公式)121.9ポンド=55.3㎏(リバウンド制限10ポンドギリギリ)」です。

ムザラネはこの数字にぴったり合わせてきます。そして、当日試合前2−3時間前(参考計量)では129.5ポンド=58.74㎏とジュニアライト級の体重まで増やしてリングに上がるのです。

もちろん、ルールを目一杯活用しているのですからムザラネや井上、井岡は達人、名人です。リバウンドも含めた体重管理が重要な戦略になるのは当然です。

しかし、当日計量よりも当該選手の健康という意味では有効に思える前日計量ですが「ジェイミー・マクドネル」や「アートゥロ・ガッティ」のサンプルを出すまでもなく、より危険でより不公平な問題を孕んでいます。

前日計量から当日試合までの回復時間を考慮して、より過酷な減量が可能になり、ときとしてマクドネルのような重篤な状況に陥るケースも珍しくありません。

また、当日リバウンドは現実のリング内でとんでもない体重差を生み出し、ガッティやムザラネ、井上、井岡らの対戦相手はずっと上のクラスのボクサーと戦う羽目になっているのです。

リング誌などでもたびたび取り上げられ「リバウンドに上限を設けた当日計量をIBF以外の団体でも実施。当日朝ではなく試合前計量とする」という案から「前日計量と当日計量の係数で階級を再編する」というラジカルながらより公平な意見までさまざまなアイデアが寄せられています。

現在の前日計量が大きな問題を抱えていることは間違いありませんが、その改善のキモが「試合前計量」となると、プロモーターやテレビ局は「試合2時間前に体重超過でキャンセルなんてありえない」と強く反対しています。

興行側からしたら試合中止・マッチメイク変更の可能性が高まるようなシステムは極力避けたい、というのは当然です。



減量の目的はたった一つ。「より弱い相手と戦うため」です。それ以外にありません。もちろん表向きは「自分が最も強く輝ける場所で戦うため」ですが、そのために心身とも消耗して弱くなってるボクサーがほとんどです。

「自分も弱くなるけど、相手の方がより弱くなる階級で戦う」のが減量です。そのために頬がこけ、足が痙攣しても、弱い相手を追い求めるのが減量です。

もちろん、パックメイのように適正体重を明らかに上回るウェルター級で戦う変態もいますが、あいつらは例外中の例外中の極めて例外。二人の体重管理目的は「より弱い相手と戦うため」よりも「より注目されてカネが儲かる相手と戦うため」です。

ムザラネが巧妙な体重コントロールを駆使するのも、井上が過酷な減量に耐えるのも、ドネアがバンタム級に落ちてきたのも、全ては「より弱い相手と戦うため」です。

17階級の中であらゆる選手が「より弱い相手と戦うため」ではない体重管理をしているのが、ヘビー級です。
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https://www.youtube.com/watch?v=ebVe-tj7eSg&t=15s
 
明日、ヘビー級のメキシコ系米国人がWBA王座挑戦権をステイクして激突します。

40歳のクリス・アレオラは228.5ポンド=103.7㎏、31歳のアンディ・ルイスJr.はなんと256ポンド=116㎏で体重計を降りました。

かつて250ポンドオーバーが当たり前だったアレオラは18年45試合のキャリアで最軽量。この試合に賭ける意気込みが感じられます。腹回りが別人です。

アンソニー・ジョシュアとの再戦では283.5ポンド=128.6㎏で秤に乗ったメキシコのデストロイヤーも、そこから29.5ポンド=13.4㎏も減量したことになります。

29.5ポンド、バンタム級=118ポンドから見上げるとウェルター級=147ポンドまでの7階級がすっぽり収まる数字です。さすがヘビー級、スケールが違います。

女性レポーターの「キャリ最軽量!どうしたのですか?」という質問にアレオラは「体重は気にしていない。メイウェザーの助言でDedication and Hardwork(全身全霊でハードワークを追求)した結果だ」。

ルイスも「セクシー(な体型)」と褒められ「カネロ・アルバレスと共にDedication and Hardworkにつとめた結果」とビッグネームを絡めた同じ言葉を口にして周囲を笑わせました。

オッズはルイス勝利が1/20(1.05倍)、アレオラ13倍。

「オッズは圧倒的不利ですが?」という問いにも顔もスリムに引き締まったアレオラは「オッズも年齢も体重と同じだ。単なる数字に過ぎない」。

試合前のコメントではアレオラが中差判定勝ちですが…。好戦的な二人が殴り合う明日は、凄まじい試合になるはずです。
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それにしても。

ラスベガスとサンアントニオで軽量超過の残念で腹立たしいニュースが届いてしまいました。

まずはラスベガス。井上尚弥vsジェイソン・マロニーのセミファイナル、WBO女子ジュニアライト級=130ポンド=タイトルマッチ、王者エヴァ・ブロドニカが最初の計量を失敗。

ラストチャンスの2回目でも130ポンドのリミットを0.1ポンドオーバー。

この時点でブロドニカはリングではなく体重計の上でタイトルを失うという、ボクサーとして最も恥ずべき醜態を晒します。

挑戦者ミカエラ・メイヤーにのみ王座がステイク、勝てば新王者、負ければ空位。


そして、ShowTIMEのPPVイベント、ガーボンタ・デービスvsレオ・サンタクルスのアンダーカードに出場するレジス・プログレイスがジュニアウェルター級リミット=140=を1.6ポンドオーバー。

両陣営は交渉の末、試合決行で合意。プログレイスが報酬の一部を対戦相手エラルデスに差し出すことになった模様。

体重オーバーが最も懸念されたデービスは素っ裸になって129.75ポンドでクリア。

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減量の影響がどう出るか?このシーンはサンタクルスを勇気付けるに違いありません。番狂わせはあるのでしょうか?
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ワシル・ロマチェンコvsテオフィモ・ロペスのライト級頂上決戦。

ステイクされるベルトはロマチェンコが保持するリング誌とWBA、WBO 、そしてWBCが「最上位」と格付けするWBCフランチャイズに、テオフィモ・ロペスが腰に巻くIBFのストラップ。

本来「防衛義務がない」とWBCが表明して創設されたフランチャイズは、WBCの正統な王者とは認められていません。WBCの正統な王者はテビン・ハニーです。

このため、この試合の勝者は議論する余地の無い王者=完全統一王者(The Undisputed Champion)と見なされません。

ロマチェンコがフランチャイズ王者に「昇格」するために返上した王座を決定戦で勝ち獲ったハニーが正統な王者…理屈ではそうですが、ハニーはロマチェンコに勝ったわけではなく、ロマチェンコは誰にも負けたわけでも無いというのに正統王座でないなんて、やはり不条理しか感じません。

フランチャイズは「昇格」なんかではなく、事実上の「降格」です。 

前置きが長くなる前に、日本時間の早朝に前日計量が行われ、両者ともリミット一杯135ポンドで一発クリアしました。
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 “I tested negative, he tested negavite, let’s do it. I’m going to play it smart and now everyone gets to see it. We’re going to take over.”

「私もロマチェンコも新型コロナ検査で陰性だった。頭脳戦になる、それをみんなが目撃するだろう。我々は王位を継承する」(ロペス)


“I know what I need to do in the ring. I want to go 12 rounds, I don't want to finish this fight very fast.I want to fight in all 12 rounds.”

「リングの中でどう戦うべきかはわかっている。12ラウンドを戦う。早いラウンドで試合を終わらせるつもりはない。12ラウンドを目一杯使ってじっくり料理する」。 (ロマチェンコ)

「頭脳戦」「12ラウンド」。決戦前の両者が口にした言葉を真に受けて「チェスゲームになる」(ロマチェンコ)と予想する人は少数派でしょう。

今回、ESPNで生中継されますが「視聴者は200万人に届かないのではないか」(ルウ・ディベラ)と悲観的です。

この季節はメジャースポーツもメジャーリーグのプレーオフや、大学アメフト、NFLのファイナル4などが目白押しで、ESPN のHPを見るまでもなくマイナースポーツのボクシングは脇役以下です。

この状況下で、ESPNは+ESPNでのPPV配信など様々な施策を考えましたが、結論は放映権料を大幅に引き上げてボクシング界を盛り上げること、でした。

もちろん、フューリーという超大駒を持つトップランクとの関係をこじらせつ必要はないという打算ですが、ボブ・アラムは「ESPNは我々の要望を全て受け入れてくれた。感謝しか無い。ボクシングを救済する選択をしてくれた」と感激。

「視聴者300万人」とぶち上げていた強気の数字についてアラムは「メジャースポーツがクライマックスを迎えているこの時期に、私の希望的観測はかなわないだろう。しかし、誰もが視聴できるESPNで放送されることに大きな意味がある。この試合がきっかけでボクシングファンになる人もいるだろう」。


今年に入ってからのESPNボクシングで最も多くの視聴者を記録したのは2月22日の「タイソン・フューリーvsデオンティ・ワイルダー」の下位のアンダーカードで平均87万人(上位アンダーカードとメインイベントはFOXがPPV)。

パンデミック以降では The Bubble 興行のオープニングを飾った6月9日のシャクール・スティーブンソンvsフェリックス・カラバリョの60万9000人(平均ではなく瞬間最大)。

ロマチェンコの過去の視聴者数は2018年のホセ・ペドラサ(11月)201万3000人、ホルヘ・リナレス(143万9000人)ですから、相手がテオフィモとなるとメジャースポーツとのバッティングさえなければ300万視聴者もクリア出来たかもしれませんが…。

いずれにしても、ボクシングファンにとっては目の離せない今年一番のビッグファイト、明日のゴングが楽しみです!
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健康を維持しながらの減量とリバウンド。

それが理想ですが、実際には井上尚弥らが告白しているように「(脱水症状で)足が痙攣する」ことは。ボクサーの減量では珍しくありません。

適正体重は、まさに個体差があるものの典型ですから、多くの指標は絶対的な意味を持ちません。

それを踏まえながら、ざざっと「指標」を並べると…。

BMI=体重(Kg)÷(身長m)の二乗
例えば…
18.5未満 → 痩せ型
18.5~25 → 普通体重
25以上 → 肥満


標準体重(Kg)=22×(身長m)の二乗
身長150cm → 体重 49.5Kg
身長160cm → 体重 56.3Kg
身長170cm → 体重 63.6Kg 


美容体重=BMIが20となる体重。
身長150cm → 体重 45Kg
身長160cm → 体重 51.2Kg
身長170cm → 体重 58.8Kg 


モデル体重=BMIが19となる体重
身長150cm → 体重 42.8Kg
身長160cm → 体重 48.6Kg
身長170cm → 体重 54.9Kg


それでは、ここでデオンティ・ワイルダーとアンディ・ルイスJr.という、両極端なサンプルをBMIで〝診て〟みましょう。

ワイルダーは身長201㎝の長身ですがタイソン・フューリー第1戦(212.5ポンド=96.4kg)のように100kgを大きく下回る体重で計量することも珍しくありません。

一方のアンディ。身長188㎝と巨人の森では埋もれてしまう小人ですが、アンソニー・ジョシュアとのリマッチではなんと283.7ポンド=128.7kgで体重計を軋ませました。

BMIを当てはめるとワイルダーは「23.86」で、意外かもしれませんが「瘦せ型」ではなく「普通体重」なのです。
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ワイルダーは、幼い頃に川で溺れかけたところをクジラに助けられたそうです。

「信じられないなら信じなくていい。ただし!信じた方がハッピーになれるぜ!」。…おっしゃる通りです。だから私も信じてます、淡水の川にクジラがいたということを!
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ボクサーとしては「瘦せ型」に見えるワイルダーでも、BMIは適正体重とはいえ「重め」。骨皮筋男に見えても、やはり筋肉の塊です。


そして、きっと、軽量級ボクサーは「瘦せ型」だろうなと思いきや、井上尚弥で前日計量(つまりバンタムリミット)のBMIは「19.47」。

ギリギリとはいえ「適正体重」なのです。それで、減量が厳しいということは井上もまた、118ポンドの筋肉の塊ということです。

BMIをボクシングの適正体重と考えるのは愚の骨頂ですが、健康体の目安としては井上は59.9kgがど真ん中。

もし、井上がサッカー選手など無理な減量と無縁のアスリートならフェザー(126ポンド=57.15kg)〜ライト(135ポンド=61.23kg)が 最もスタミナとキレを高次元で結晶できるウエイトレンジと考えられます。

もちろん、この領域に踏み入れるということは相手のタフネスやパワーもバンタムとは桁外れになるわけですが…。
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そして、注目のルイスJr.。真打登場!です。

BMIでは適正体重77.76kgに対してなんと51.24kgオーバー。

BMIは「36.5」で「肥満3度」です↓ 。いや、今度は「肥満4度」を突破して欲しいですね、ここまできたら。
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適正体重とのギャップが+51.24kgって…フライ級より重いやん.…。

BMIで「19.47」の井上、「23.86」のワイルダー、そして「36.5」のルイスJr.が〝同居〟しているスポーツなんて、他に例はありえません。

「アンディさんが特別なだけでボクシングが特別じゃないだろ!」という声も聞こえてきますが、他のスポーツにアンディさんみたいなのは出現しません。

サッカーW杯のフィールドにあんなのが姿を現したら、スタジアムは悲鳴(歓声?)に包まれるでしょう。

ボクシングファンは普通にビールを飲みながら「バタービーンはもう少し産まれるのが遅ければ 世界王者になれたのに」と笑うだけです。
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ヘビー級の大型化は今に始まったことではありません。

ヘビー級が始まってから、ずっとこの傾向が続いています。

それが無差別級である限り、彼らは永遠に巨大化していくでしょう。



では…。



ジャック・デンプシーやロッキー・マルシアノのような、185ポンド(84kg)の世界ヘビー級チャンピオンを私たちが目撃する機会はもうありえないのでしょうか?
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「アリが現代に生まれていたらクルーザー級で戦っていた」という見方は見当はずれもいいところ。アリが無差別級以外で戦うわけがない!


確かにベスト体重が185ポンドのデンプシーやマルシアノが現代に生きていたら、クルーザー級(200ポンド)で戦っていたでしょう。

それにしても良かったです!デンプシーがクルーザー級がない時代に生まれてくれて!

しかし、デンプシーやマルシアノが、2メートル/250ポンド(113kg)を超える巨人の森となってしまった現代のヘビー級に迷い込むと、多くのファンが考えるように跡形もなく粉砕されるだけなのでしょうか?


おそらく、それも思い違いです。


「現在のボクシングシーンは『17』階級だが、実際には20階級はある」という見方があります。

もちろん、「18」「19」「20」の3階級は「スーパーヘビー」「スーパー*2ヘビー」「スーパー*3ヘビー」です。

現状の「17」(ヘビー級)はもちろん「16」(クルーザー)でも小さく軽いデンプシーやマルシアノが「20」で通用するわけがない…これは一見、正論に聞こえてきます。

デンプシーやマルシアノがそのフレームだけなら「Boxing−20」はおろか「17」のクラスの住民票すら持っていないことは誰にだってわかります。

マイケル・スピンクスやイベンダー・ホリフィールドは「17」の通行手形を手に入れましたが、そこで待ち構えていたのは「18」「19」「20」の洗礼でした。

体重85kgは、そもそもがクルーザー級(90.7kg)にすら10ポンド以上もショートしているわけですから、そんな才能がもしいたとしてもヘビー級に挑戦することは常識ではありえません。


そう、normal(日常)では。


しかし、ボクシングはパンデミック以前からabnormal(非日常)の世界です。

そして、私たちはすでに〝85kgでヘビー級を無双する〟レベルの現実をついこの間まで、目の当たりにしていたのです。

もしも、彼らのような傑出した才能が185ポンドなら、躊躇なく無差別級に挑んだことでしょう。

185ポンド(84kg)の世界ヘビー級チャンピオンを私たちが目撃する機会は、十分ありえます。



世界的にも「ヘビー級回帰」が顕著な時期です。いろいろな持ち札から〝85kgでヘビー級を無双する〟を考えていきます。
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現在のPFPキングはカネロ・アルバレスです。

井上尚弥をPFP1位とする boxing scene.com など素っ頓狂なカルト・メディアも一部存在しますが、カネロ1位が世界の共通認識です。

しかし、私もそうですが素直に受け止めることは出来ません。 

その理由は、公平であるはずのスポーツの試合に自分が有利になるようなキャッチウェイト等の奇天烈で見苦しい手枷足枷を、立場の弱い対戦相手に飲ませるからです。

階級性のボクシングでは「どの体重でやるのか」は勝敗に直結する重要問題です。

なぜ、井上尚弥は約10kgもの過酷な減量をして、わざわざ層が薄く人気もないバンタム級で戦うのか?

ヘビー級を制覇することが最も注目され、歴史的な評価も得られるのにどうしてマニー・パッキャオはそこに足を踏み入れないのか?

理由はたった一つです。 


リング誌電子版のDOUGIE’S MONDAY MAILBAGから「WEIGHT CLAUSES(体重契約)について考える」を拙訳、ご紹介です。


Qマニー・パッキャオとの第2戦でエリック・モラレスは過酷な減量に疲弊していた。あの試合の契約には、何らかの形で体重の項目が盛り込まれていたのではないか?

パッキャオの歴史的な勝利には、キャッチウェイトによって相手の戦力を減退させた裏側がある。

パッキャオvsモラレス2の事実と、過去にあった体重契約について教えて欲しい。

〜マイク @ソルトレイクシティ

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Aパッキャオvsモラレス第二戦に体重契約はなかった。第一戦と同じ純粋な130ポンド、ジュニアライト級の試合だった。 

確かに、計量時のモラレスは脱水状態だったように見えた。ただし、それは El Terrible(恐怖の男)にとってはいつものこと。

ジュニアフェザー級で戦っていた20代でも、彼が健康な状態で計量に臨んだことはなかった。いつも減量に疲れていた。

 It’s not like Pacquiao demanded that he fight at a catchweight or limit how much weight he could put on following the weigh-in. 

パッキャオがモラレスにキャッチウェイトや、計量後のリバウンド制限などの体重契約を飲ませた事実はない。

それどころか、モラレスとの初戦ではパックマンが愛してやまないレイジェスのグローブを付けることも許されない契約だったのだ。

パッキャオは最初からAサイドだったのではない。彼がAサイド(ダークサイド?)に回ったのは、2008年にオスカー・デラホーヤを破ってから。

「キャッチウェイトでタイトルを懸けるのはおかしい」と拒むコミゲール・コットにリミットを2ポンド下回る145ポンドを無理やり飲ませた。

アントニオ・マルガリートと争った空位のWBCジュニアミドル級では4ポンドも少ない150ポンド契約だった。ちなみに二人とも「ジュニアミドルでは一度も戦ったことがない」という「これぞWBC」というタイトルマッチでもあった。

そして、あれほどキャッチウェイトを唾棄していたコットはセルヒオ・マルチネス、ダニエル・ギールにミドル級リミットを下回るキャッチウェイトを突きつけ、当日のリバウンド制限まで契約に盛り込んだ。

カネロ・アルバレスとの試合では、カネロが要求したもので、ミドル級リミットを5ポンドも下回るご存知のカネロ・ウェイト(155ポンド)で戦ったが、それはコットにとっても心地良い重さだった。

大きな違和感を覚えたのは、ミドル級タイトル戦(160)をカネロ級155ポンドで見せられたファンだ。

フロイド・メイウェザーはそれまで135ポンドまでしか戦った経験のないファン・マヌエル・マルケスに144ポンドのキャッチウェイトでは珍しい大増量を受け入れさせた。さらに、自らは60万ドルの罰金まで払って146ポンドにビルドアップしてリングに上がった。

これを卑劣と呼ばないなら、何を卑劣と呼ぶのだろうか。

メイウェザーはカネロとのリング誌/WBC/WBAのタイトルを懸けたジュニアミドル級戦でも152ポンドを飲ませた。

体重契約は、本来なら実現が難しいメガファイトの〝免罪符〟ではない。Aサイドのスーパースターが立場の弱い相手に突きつける、悪魔の所業だ。

リングの中でなく、観客の見えない場所で対戦相手を痛めつける卑劣な契約だ。

バーナード・ホプキンスはオスカー・デラホーヤとのミドル級完全統一戦で157ポンドのキャッチウェイトを快諾「ミドル級がそんなに怖いなら156にしてあげようか?」と挑発した。

シュガー・レイ・レナードはもはや犯罪的だった。ライトヘビー級のドニー・ラロンデにスーパーミドル級の168ポンドを飲ませて、1試合で二つのタイトルを手にいれた。あれが許されるなら「デビュー戦で17階級制覇」もありになる。 

カネロは直近のコバレフ戦では「キャッチウェイトではない」と公言しながら、当日のリバウンド制限を設定した。

しかも、あのときのコバレフは劣化版であるばかりか、個人的な訴訟問題が深刻化、とてもリングに集中出来る状況ではなかった。そして、その情報をカネロ陣営は我々よりも詳細に把握していたはずだ。
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キャッチウェイトであったことを忘れがちになるのは、その試合が議論を呼ぶ判定になったときだろう。キャッチウェイトと不可解な判定は、Aサイドお得意のAセットでもある。

パーネル・ウイテカーvsフリオ・セサール・チャベスのWBCウェルター級戦は145ポンド、トーマス・ハーンズvsシュガー・レイ・レナード第二戦のWBO/WBCスーパーミドル級団体統一戦は164ポンドのキャッチウェイトで行われ、いずれもBサイドが優勢の内容だったが結果は引き分け。

あのとき、ハーンズは162ポンド1/2、レナードは160ポンドを作ったが、ミドル級(160ポンド)でやれば良かったんじゃないのか?あまりにも倒錯しすぎている。

レナードはロベルト・デュランとの第三戦でも162ポンドのキャッチウェイトでWBCスーパーミドル級タイトルマッチを行ったが、これは両者にメリットがある体重だった。とはいえ、168ポンドのスーパーミドル級を162ポンドで無理やり行う意味は誰にも理解できない。

もし、1989年前後にもインターネットが発達していたら、レナードは今以上の悪者にされて、あれほどあからさまなキャッチウェイトや1試合2階級制覇などの狂乱行為は出来なかったかもしれない。

ただ、ボクシングの世界では不平等や不条理が当たり前に横行している。その中でパッキャオやホプキンスは、完全BサイドでありながらAサイドをひっくり返したから意味がある。

ましてや、時代のことを言い出したらキリがない。

レナードは今週(日本時間5月18日)、誕生日を迎えて64歳になった。

モントリオールで米国に金メダルを持ち帰り、プロでも素晴らしいパフォーマンスを披露したレナードは多くの米国人にとって今なおアイドルだ。

最後のボクシングヒーローと言っても良いかもしれない。

それは私にとっても変わらない。

おめでとう、レナード。
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ファイティング原田、ガッツ石松、長谷川穂積、井上尚弥…日本ボクシング史上を彩ってきたスター選手の多くが、減量の過酷さを口にして来ました。
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記憶に新しい長谷川や井上は、減量の影響で試合中に足が痙攣してしまう緊急事態も何度か経験しています。

井上がドネアのパンチを頬骨に受けた衝撃で右目上が裂けたというのも、厳しい減量による皮膚の薄化・皮下脂肪の減少が影響しているのかもしれません。

輪島功一は「減量が厳しいなんて自慢しちゃいけない。だったら上のクラスでやりゃいいんだから。どうして上でやらないの?上の方が強いから、負けるからでしょ」と皮肉っていました。

確かに、パックメイらを例外にして、減量はより弱い相手と戦うために自分も弱体化する矛盾した行為です。

この矛盾が肥大化すると、比嘉大吾やジェイミー・マクドネルのように体重超過・重病人状態という破滅を迎えてしまいます。

輪島の言うように「減量が厳しい」と口にすることは悪印象です。

しかし、あらゆる減量は弱者の言い訳・逃げ道でしかないのでしょうか?

ウンベルト・ゴンザレスらの対戦要求を拒否してストロー級にしがみついたリカルド・ロペスは、小心者の弱者だったのでしょうか?

軽量級ではありえない〝PFPパラダイス〟となったジュニアバンタム級を減量苦を理由に去った井上は卑怯な逃亡者なのでしょうか?

減量苦がほとんどなかったロペスと、常に過酷な減量と向き合っている井上を同列に語るのは違和感があるかもしれませんが、2人は絶対的な強さではなく、相対的な強さ、自分が最も傑出できる階級で戦おうとしていたことでは共通しているかもしれません。

絶対的強さはヘビー級は当然として、やフリオ・セサール・チャベス、シュガー・レイ・レナード、カネロ・アルバレスら無茶な減量をしないスーパースターが挙げられます。

日本の内山高志も過酷な減量とは無縁に自分のフレームにあった絶対的な強さを求めた一人です。

※相対的にも絶対的にも強さを求めず、ひたすらカネと栄光だけを貪るパックメイのようなケースもありますが、彼らは特殊過ぎるサンプルです。

表層的に最もカッコいいのはパックメイです。明らかに適正階級より重いにもかかわらず、注目度・報酬の高いウェルター級を主戦場とする彼らは浅ましいまでにカネと栄光の亡者ですが、あそこまで割り切った姿勢には逆に清々しさまで感じます。

骨や肉を削るような減量はしないで、当然リバウンド・アドバンテージも少ないにもかかわらずパワーボクシングを魅せた内山もカッコいい、です。

では、過酷な減量とリバウンドを効率良くミックスさせる術に長けた井上や井岡は、弱い階級で弱い相手を求めるために自らも弱体化させているカッコ悪いボクサーなのでしょうか?

当日計量時代の減量は、弱体化を最小限に抑えて健康的に体重を落とすことだけが課題でした。

そして、前日計量の現行ルール下では健康的にリバウンドすることも重要な戦略になっています。

長谷川や井岡、井上らはこの減量とリバウンドで卓越したマネジメント能力を発揮、井岡はストロー級時代から変わらぬパフォーマンスをキープ、長谷川と井上は「別の階級のパンチ力」と驚かれるパワーを見せつけました。

減量とリバウンドを器用に操る彼らを卑屈と片付けることは簡単ですが、ルイス・ネリのようにルールを逸脱して強さを発揮したわけではありません。

ルールを最大限に利用し、最高のパフォーマンスを見せる彼らは、プロの鑑とは言えないでしょうか?

適正階級をオーバーしたウェルター級で退屈な12ラウンドを排泄し続けたメイは下の階級では眼を見張るエキサイティングなボクサーでした。

内山が過酷な減量をくぐり抜けてジュニアフェザーやバンタム級で戦っていたなら、誰も見たことがない爆発的な光景を私たちに何度も提供してくれていたのではないでしょうか?

逆に長谷川や井上がナチュラルウェートに近いジュニアライトやライト級で戦っていたら、あの出色のパフォーマンスはありえなかったと考えるのは間違っているでしょうか。

より弱い相手を求めて自分も弱体化するのが減量ですが、その匙加減こそが重要で、比嘉のように弱い相手を求めて自分が病人状態までに衰弱するのはお笑い種です。

井上や井岡のように相手と自分の弱体化を絶妙のバランスでマネジメントすること、必ず一発でクリアすること、それこそが減量のキモです。

隅々まで知り尽くした小さな港湾でしかセール出来ないヨット乗りを馬鹿にするのは、彼のセーリングを見てからでも遅くはありません。

もちろん、小さなヨットで遠洋に悠々と漕ぎ出すパッキャオがカッコいいのは誰にでも分かります。
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「クルーザー級に落とすのは簡単」と前例のない〝逆2階級制覇〟に興味を見せたデオンティ・ワイルダー に覚えた違和感は「複数階級制覇なんて所詮はヘビー級で戦えないファイターの詭弁」と、誰もがわかっているからです。

しかし、だからといって過酷な減量によって発揮する相対的ながら圧倒的な強さを欺瞞だと決めつけることができるでしょうか?
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ファン・ゴッホです。

ファン・マヌエル・マルケスでもファン・フランシスコ・エストラーダでもありません。

37歳で自ら命を絶ったゴッホの絵は「赤い葡萄畑」の一枚しか売れませんでした(「一枚も売れなかった」「晩年は評価が高まり高額で何枚かが売れた」など諸説あり)。
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いずれにしても生前のゴッホは正当な評価を得ることができませんでした。

しかし、誰もが知っているように死後、その評価は急騰します。

もし、絵画の歴代PFPがあればゴッホがそのNo.1候補であることは疑うべくもありません。

 

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(増田俊也)は素晴らしい作品ですが、ノンフィクションでもドキュメンタリーでもありません。

しかし、木村政彦が強かったことは事実であり真実です。

MMAが登場するまで「最強の格闘技は何か?」は想像でしか語ることができませんでした。

「当たり前にボクシング」「足技もあるキックが最強」「力士が一番強い」「いやプロレスラーが一番強い」…。

しかし「柔道以前の柔術」がMMAに最も近いメソッドを持っていることなどの御託・理屈を並べなくとも、柔道が相当に強い格闘技であることは自明でした。

常識的に考えると、前田日明さんや高田延彦さんのような真剣勝負を一度も経験しなかったプロレスラーが強いわけなどないのですが、MMA前夜はそんな夢を見ることもできました。

高田さんは自著で「真剣勝負しかしてこなかったヒクソンのオーラに、一度もそれを経験していない自分では実力以前の問題だった」と告白し、前田さんはついにガチの勝負には一度も上がる勇気を示すことなく「カレリンから初めてエスケープを奪った男と書いてください」という恥晒しの迷言を残して虚飾のリングから退場しました。

全盛期の木村と全盛期(力士時代?)の力道山が戦えば、MMA的には不適格な大相撲ですらトップで通用しなかった力道山では勝ち目は無かったでしょう。

衰えた肉体と精神で、あの仕組まれた試合に挑み、惨敗した木村は「負け犬」として扱われ続けてきました。そして「プロレスが強い」という幻想の論拠にもなってきました。
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ゴッホや木村政彦を見るまでもなく、その時代で本質を見抜くのは至難の技です。

「あの頃は頭の悪い時代だったから」「今なら正確に評価できる」なんて笑い飛ばせるでしょうか?


マイク・タイソンやロイ・ジョーンズが史上最高の俎上に挙げられても、彼らが全盛期の時代では「弱い相手に圧勝してるだけ」という正当な意見は封殺されがちでした。

今、私たちや那須川天心さんらが高く評価しているフロイド・メイウェザーや、リング誌までもが再評価を進めているマニー・パッキャオは20年後、30年後も今と同じ評価を得ているのでしょうか。

それとも「パックメイは最も強い相手(つまりお互いの全盛期)と戦わなかった」愚かなボクサーとして記憶されているのでしょうか。

もしかしたら、タイソンやジョーンズを評価した過去を私たちが笑ったように、何十年か後には私たちもまた未来から嘲笑れているのかもしれません。
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