カテゴリ: 減量とは何なのか?

TJ・ドヘニーの体重が気になりますねぇ。

11kg増!ありえないです。これはまた別の話で詳しく迫ります。

すまいる
2024/09/03 20:12
井上尚弥62.7kgでドヘニー66.1kgだそうです。

ジミー・レノン…さすがに飽きてきたな。


オープニングラウンド!しかし、ドヘニー、ものすごい水腹です…。このラウンドを10−10にしないジャッジがいたら、アホです。

第2ラウンド、攻勢と手数で井上。20−19。

第3ラウンド。引き続きの展開で井上。30−28。

第4ラウンド。ドヘニーの左が数発ヒットも浅い。井上の超攻撃型スタイルに被弾はつきもの。井上のプレッシャーがかかってる、40−37。

第5ラウンド。アクションが増えてきましたが、井上の攻勢は変わらず。50−46。

第6ラウンド、井上もペースアップ。ドヘニーは大きなダメージはないが、終末が近そう。60-55。

ロートル水腹、腰を痛めてギブアップ。

もう50−1の相手とかやめましょう。一応「強い相手としかやらない」といってたんだし。

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被弾が多いのはいつものこと。静かな立ち上がりの1ラウンド以外は完全に支配していました。

「リバウンドしたらいいってもんじゃない」(井上尚弥)の言葉通りの試合だったとも言えます。
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東京ドームホテルで行われた前日計量。

那須川天心はか細くやつれて、別人のようでした。

下りエスカレーターの左右のベルトを掴んで「ああ、きつぅ」と呻いた神童は、病人にしか見えませんでした。

そして、過酷極まる「過去最軽量の減量」は〝骨肉〟を削っただけでなく、声帯にまで大きなダメージを与えていました。

声までが、別人でした。

愛嬌のある丸顔は顎先が尖り、井上尚弥のように頬がこけた天心は「いつも通りです」と殊勝に語りました。

「ここから回復します。試合のたびに体重を落としていって今回は過去最軽量。ここからさらに1kg落としたのがバンタム級(53.52kg)なので、身体も徐々に出来ている感じです」と、世界タイトルのターゲットとなるバンタム級を見据えました。




相当に消耗しているはずの天心でしたが「呪術廻戦」の印を結ぶポーズをサービス。両頬には「天」の漢字をモチーフにしたシールを張り「みんなもこれを付けて応援してほしい」と笑って見せました。

まだ、ボクシング転向から4試合目。徐々にボクシングの減量に適応しているのでしょうが、それにしてもあの健康的な格闘家が、会場に着くとカーペットの床に体を横たえてしまうほど弱体化する減量とは何なのでしょうか?

過酷な減量が精神も苛立たせることは、井上尚弥らの計量シーンでも明らかですが、そんな揺れは天心の言動から全く感じることができません。

骨の髄からエンターテイナーなのでしょう。





がんばれ!




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「後の祭り」ではありません。





7月15日、日本体操協会強化本部へ「通報」が入ります。16日にモナコ合宿に帯同していた原田コーチが本人に確認し、疑いが浮上。

もし事実なら「日本代表選手・役員の行動規範」に違反したこととなるため17日に帰国指示、18日夕方には日本に戻る。規定や規範などに違反する事実があったことを確認。協会と本人の話し合い、五輪への出場辞退を決めてしいました。

「日本代表選手・役員の行動規範」では、冒頭に「『体操ニッポン』という称号は長い栄光の歴史の中で、先人たちの競技成績だけでなく行動により培われたものである。一部の選手や役員の行動により、先人たちが築き上げた栄光の歴史を汚す行為は決して許されない」と【趣旨】が表明されています。

【趣旨】の下に【基本方針】が構成され、その具体的な内容がその下の18項目にわたる【行動規範】です。


8、日本代表チームとしての活動の場所においては、20 歳以上であっても原則的に喫煙は禁止する ※2016 年度から数年かけて段階的に全面禁止とする


9、日本代表チームとしての活動の場所においては、20 歳以上であっても飲酒は禁止とする ただし、合宿の打ち上げ、大会のフェアウェルパーティー等の場合は監督の許可を得て可能とする

「日本代表チームとしての活動の場所」ってどこに線引きがされているのでしょうか。

「原則的に喫煙は禁止」とは絶対禁止ではないという含みがあります。「数年かけて段階的に全面禁止」というのは、どんな段階を踏んでいくのか?達成年度はいつなのか?全くわかりません。

「飲酒は禁止とする ただし、合宿の打ち上げ、大会のフェアウェルパーティーの場合は監督の許可を得て可能」というのも訳がわかりません。「『協会が事前に定めた』打ち上げやフェアウェルパーティー等」なら理解できますが、この書き方では「等」はいくらでも拡大解釈が可能です。

極めてボヤッとした公益財団法人日本体操協会が作った「法律」です。「憲法」という方が正確かもしれません。

もちろん、本物の法律や憲法ではありません。「内規」に過ぎません。

そして、今回の件を複雑にしているのは19歳という数字です。


20歳未満の者の飲酒や喫煙は法律で同じ考え方で禁止されています。

飲酒を例にとると「未成年者飲酒禁止法」は未成年者に対する法律ではありません。


①親や親の代理をする者は、監督する未成年者(20歳未満の者)の飲酒を制止しなければならない、②酒類を扱う販売業者や飲食業者は、20歳未満の者が飲むことを知りながら酒類を販売・提供してはならないこととされており、①に違反した場合は科料、②に違反した場合は50万円以下の罰金が課されることになります。

基本的に「義務教育」と同じ考え方です。
「大きな重圧を抱えていた」と声を絞り出す原田睦巳コーチの涙は「泣いて馬謖を斬る」思いだったかもしれません。

また、昨今の目にあまる狭量なバッシング風潮を恐れて、協会側から発表、即時の決断を下したという背景もありそうです。

通報者がマスコミに情報を流す前に公表しなければならない、という姿勢はその通りですが、問題はその内容です。



【違反選手・役員に対する処分】は「行動規範」以上にさらにボヤッとしています。「 日本代表選手・役員が、前記の行動規範に違反した場合は、本会『倫理規程』の適用があるものとし、『倫理規程』予定の手続きによって処分を科する」。

この文章を読んで、その内容を想像できる人は誰もいません。おそらく書いた本人もよく理解していない、それだけが確実に伝わる文章です。





「後の祭り」ではありません。

もちろん、本人の中では決着してしまってるでしょうから、今から切り替えてパリは無理でしょう。

もっといろいろな方法を考えるべきなのです。

公表は仕方がありませんが「馬謖を斬らない」選択はなかったのでしょう。

誤解を招く表現ですが「飲酒と喫煙の科(とが)は五輪後に発表して協会と本人が負う。パリには行く。競技が終わるまで待って欲しい」という骨子で会見を開くこともできたはず。

もちろん、異論は噴出したでしょう。


協会は、何を恐れて軍法会議のスタイルで〝未成年の馬謖〟を斬ったのか?

19歳の夢を引き裂いたのは、日本体操協会ではありません。

「19歳の五輪選手」でも「たかが飲酒と喫煙」でも〝極刑〟に処さなければ、納得してもらえないと協会が恐れた、私たちが歪に捻じ曲げてしまった日本社会です。




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減量とは?

このブログでは、減量についてほとんどのケースで「より弱い相手と戦うために自分も弱体化する行為」と、冷ややかに見てきました。

計量をパスしたあと、特に軽量級ではほぼ全てのボクサーが翌日の試合まで「(減量のダメージからの)回復の時間」に充てます。

そもそも、試合前日にそこまでダメージを負ってるってどういうことなんでしょうか?

計量前のボクサーの多くは頬がこけ、肌はカサカサ、見るからに消耗しきっています。

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「あしたのジョー」のワンシーンのようにストーブをガンガン燃やした部屋で、最後の汗の一滴を絞り出そうと毛布をかぶっているボクサー。

ドラマのワンシーンではありません。

毛布の中で息を潜め、必死に汗を絞り出そうとしているのは、日本が世界に誇るPFPファイター、井上尚弥です。

より弱い相手と戦うために、自分も弱体化する。そのギリギリのバランスの上に張られたタイトロープを渡るのが減量です。

ファイティング原田や井上尚弥は過酷な減量について、特に憚ることなく語ります。

かつて、渡辺二郎は「減量がきついなんて人に泣きつくことじゃない。自慢なんかにならない。そんなに減量がキツいなら、上のクラスに上げたらいいだけ。なんであげへんの?そういうことでしょ」と、原田を名指して批判しました。

一方で、原田は減量がキツくなると対戦相手を思い浮かべる、とも語っていました。

「あいつも俺と戦うために厳しい練習と減量に耐えている。俺だって負けてたまるか」。

減量階級の計量と試合は、一つのセットです。

あいつは俺と戦う資格があるか?俺はあいつと戦う資格があるか?

リミット体重は、単なる数字ではありません。

バンタム級のファイターにとって118ポンドは約束の数字です。

105、108、112、115、118、122…単なる3桁の数字が、その軽さとは裏腹に、途轍もなく重く見えてしまうのは、それが男と男の約束の数字だからに他なりません。

それを反故にする人間を、私はファイターとは呼びません。

もちろん、誰しも過ちはあります。

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重い重圧にのしかかられた19歳の少女が一本のタバコに手を伸ばし、一杯の酒をすすったことがどれほどの罪になるというのでしょうか?

彼女はくだらない法律に抵触したかもしれません。協会の決めたルールを破ったという意味では約束を破ったのかもしれません。

しかし、それは絶対に嘘をついてはいけない対戦相手や、神聖な舞台に対する反故や侮辱ではありません、少なくとも私の考えでは。



体重超過やドーピングは、倒すべき相手を欺き、神聖な舞台を汚す、侮蔑すべき行為です。

絶対に破ってはいけない約束を、やぶってしまったのですから。

マニー・パッキャオは大きな過ちを犯しましたが、減量というキーワードを破壊するキャリアを築き上げました。

パックマンはこれ以上ない形で、禊を済ませてみせました。

力石徹がどうして神々しいのか?それは矢吹丈との約束を守り通したからです。

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きょう、幻滅と怒りを覚えるニュースが立て続けに飛び込んできました。

宮田笙子はいけないことをしてしまいましたが、それは対戦相手や大きな舞台を裏切る行為ではありません。

もし、そうだとしても些細な裏切りです。

19歳にのしかかる重圧がどれほど巨大なものか、想像できない人が多すぎます。

彼女はまだ19歳だというのに、自分が何者かを証明する大舞台を自分の手でつかみとりました。

誰か、教えて下さい。

その存在証明の大舞台を奪うほどの悪質な喫煙とは、一体どんなタバコの吸い方なのでしょうか?



約束を反故にされた田中恒成は、いまどんな思いでいるのでしょうか。

恒成には一片の非もありません。

約束を守るために過酷な減量で削られ哀しいほど美しく研ぎ澄まされた肉体を作ったというのに。

慰めにもならないでしょうが、恒成は今回も立派に約束を守りました。

そして、彼の持っているストラップは世界で最も注目されるメキシコ系米国人ファイターが狙っています。

恒成にもまた、存在証明に十分すぎる大舞台が待ち構えています。


がんばれ!




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フリオ・セサール・マルチネスがドーピングの疑いで、キャリアの中断を余儀なくされてしまいそうです。

3月30日にラスベガスT -モバイル・アリーナで開催されたPBCとアマゾンプライム・ビデオの提携イベント第一弾の前座で行われたWBCフライ級王者マルチネスのアンヘリノ・コルドバを迎えた6度目の防衛戦。

ネバダ州アスレティック・コミッション(NSAC)のドーピング検査で採取したマルチネスのサンプルが、複数の禁止薬物に陽性反応を示したというもの。

反応を示したのはS5利尿薬などで筋肉増強剤ではありませんでしたが「減量のために利尿薬を使った」というのは通用しません。

マルチネスの検体が反応したS5利尿薬やその他の化学物質は、いずれもドーピングの世界で「マスキング剤」と呼ばれる物質。

つまり、筋肉増強剤を使用したドーパーが禁止物質の尿中、血液中濃度を下げるために利用する隠蔽(マスキング)物質です。

そんなマスキング物質がゾロゾロ出てきたのです。

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マルチネスはタイトル返上、ジュニアバンタム級への転級を発表していますが、NSACによる追加検査や審問を受ける必要があり、その全てが終了するまでNSACも所属する全米ボクシング協会が管轄する試合に出場することができません。

つまり、米国での試合が出来ないということ。

一方で、米国以外ならライセンスが交付される可能性があるということで、メキシコシチーでタイトルマッチを行っても、それを禁止することは現時点ではできません。

世界的な統括団体が存在しない、ということはそういうことです。


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マルチネスは以前もドーピング検査で筋肉増強剤クレンブテロールが陽性反応を示した前科者。

当時WBCジュニアフェザー級王者だったレイ・バルガスも同じ物質で陽性でしたが「クレンブテロールが含まれた飼料で育った牛肉を食べたから」という二人の抗弁を認めてWBCはタイトル剥奪などのお咎めなし。


今回もメキシコでWBCの地域タイトル戦などを行いながら、米国でのライセンス交付停止期間(半年くらい?)を待つことになりそうです。

他の競技なら過去に遡って全てのタイトルを剥奪、永久追放もあり得ますが…もう、笑う気もありません。 THIS IS BOXING です。

そして、他の競技ならもっと上手くドーピングします。

医療機関や製薬会社に勤めてる私の友だちレベルでも「体に残った化学物質をマスキングしたり完全に排泄するのは3日もあれば出来る」と、ドネアが栄養アドバイザーとして信頼しているビクター・コンテと全く同じことを言っていました。

それもしない、この大胆不敵さ。メキシカンだけではありません。





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ヘビー級の完全統一王者オレクサンデル・ウシクは、12月に行われるタイソン・フューリーとの再戦のあと「クルーザー級に戻る」と語りました。

2018年にクルーザー級(200ポンド)からヘビー級に乗り込んで215ポンド〜233.5ポンドで戦ってきたウクライナ人は、WBSS優勝でクルーザー級を完全統一しており「4団体史上初のUndisputed champion返り咲きが目標」ということですが、ヘビー級の体を作るための「大量の食事がきつい」というのが〝出戻り〟の最大の動機です。

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マニー・パッキャオも「1日8食、8000kcal〜10,000kcalを採る毎日はキツ過ぎる」と、その苦しみを吐露していましたが、過酷な減量自慢が横行するボクシングの世界では極めて異例のこと。

ただ、パッキャオのケースは人気のない軽量級から、人気のあるウエルター級に向かう「栄光への脱出」でしたが、ウシクの場合は華やかなヘビー級から出戻るのです。

もちろん、ヘビー級で最強を証明したウシクは、史上最弱クラスのジョン・ルイスとの1試合だけを狙った姑息なロイ・ジョーンズとは違います。

しかし、ウシクの肉体に〝ロイ・ジョーンズ現象〟が起きない理由はどこにもありません。

年齢を重ねて階級を上げてから、軽い階級に出戻るーーーもっと分かりやすくいうとレベルの高い階級から低い階級に戻るのだからリスクは少ないはず、という本人の意識と肉体の間に生じる大きな〝齟齬〟は悲惨な形でファイターに襲いかかります。

ロイ、シュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤ…彼らの出戻り試合は圧倒的有利と考えられましたが、凄惨な結果に終わってしまいます。

稀少な例外はノニト・ドネアですが、フィリピンの閃光はそもそも軽量級の小さなコップの中で出戻っただけ。なにより、その減量幅はわずか8ポンド、さらにドーピング・グルの便利なサプリメントも大きな効果を発揮したかもしれません。

38歳のウシクは、食事で急ごしらえしたヘビー級から30ポンド以上も体重を落としてクルーザー級に帰るのです。

何も起こらない方が不思議にも思えてくるのですが…。




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東京ドーム決戦まで、あと1週間。

残念ながら、世間的にはあまり盛り上がってない気がします。元々、軽量級を大きく取り上げることがない海外メディアでもカネロ・アルバレスのメガファイトの話題で、東京ドームは完全にかき消されている状況です。

シンコ・デ・マヨに日本で大きな試合をぶつけるのは、世界的な興味・関心を引くという観点から、今後は控えるべきでしょう。軽量級の試合は、そもそも世界的な興味・関心がないから、そんなの関係ないと言われたらそれまでですが。

日本のボクシングファンの多くもシンコ・デ・マヨなんて気にしてないか、なんのことかも知らないかもしれませんし。

ただ、考えてみると万一、ルイス・ネリが大番狂せを起こすと、カネロの試合の余韻が残っているものの、メキシコでは結構な騒ぎになりそうです。



前置きが長くなる前に、本題です。

今回、WBCの「30日前〜計量」が日本のメディアにちらほら出ていますが、これに違和感を感じている人も多いのではないでしょうか?

ちなみにWBC規定の事前計量は、30日前がリミット55.3キロの10%(バンタム級なら60.83キロ)、15日前が5%(同58.065キロ)、7日前が3%(同56.959キロ)を上限に設定しています。

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厳格に適応されるとモンスターも〝アウト〟になる可能性があります。


これは、WBCが全てに試合に求める義務ではなく、公開採点などと同じオプションです。

まず、この事前計量が自己申告、自分の体重計で測って画像や動画を送るという「えーー?」と驚くいい加減さ。これで体重超過してしまう正直者は、まずいません。

さらに、この独自の事前計量に超過した場合(そんな正直者はいませんが)、WBCは「Failure on the part of those parties to comply with this rule’s requirements may result in the WBC taking such actions…(違反した場合WBCは以下の措置を取る可能性がある)」として罰金、出場停止、挑戦者資格やタイトルの剥奪を示唆していますが、これはmay(その可能性がある)ということで、現実には発動されないでしょう。

というか、違反者が出る可能性が限りなくゼロに近いのですから、そもそも発動する機会もありません。

先日のWBCジュニアウエルター級王者デビン・ヘイニーとライアン・ガルシアの後味の悪い試合にしても、ガルシアはいまだに7位にランキングされています。

この性善説に立脚した摩訶不思議な事前計量について、WBCは「急激な減量でボクサーの健康が損なわれるのを防ぐため」としていますが、オプションとしてしか採用していませんし、全くの詭弁です。

この種の事前計量の最も大きな目的は「水抜き減量の禁止」です。それを明記していないWBCは片手落ちどころじゃありません。もちろん、水抜き禁止となると多くのボクサーを大混乱に陥れてしまいますから、意図的に明記していないのでしょうが。

水抜きを厳格に禁止している英国ボクシング管理委員会(BBBofC)は、ファイトウィークに入ってからのサウナ使用でレッドカード。これに違反したジョンリール・カシメロは試合機会を失いました。

極端な水抜きの抑止になる尿比重の検査も含めて、有効な施作はいくらでもあります。

水抜き減量は、近年頻発している体重超過の原因の一つですが、最大の元凶はタイトルの価値暴落です。

ボクシングの世界チャンピオンには価値があるーーーそんな日はもう永遠に訪れないのだとしたら、水抜きを排除しても体重超過は無くなりません。


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明日、カリフォルニア州フレスコで行われる「バージス・オルティス vs トーマス・デュローメ」のアンダーカードに出場するWBA /WBC /WBO女子フライ級王者マーレン・エスパレサが前日計量でリミットを2ポンドオーバー。リングではなく秤の上で3つのベルトを失いました。



挑戦者のガブリエラ・セレステ・アラニスは112.2ポンドでクリア。タイトルはアラニスが勝利したときだけに発動します。

元WBO王者のアラニスは「エスパレサに奪われたタイトルを取り戻す復讐の試合。相手がリミットを守れなかったのは残念だけど、私は自分の仕事を全うするだけ」と、秤を降りる〝元王者〟に冷たい視線を送りました。

2012年ロンドン五輪で銅メダリストのエスピノサはプロ15戦14勝1KO1敗。

唯一の敗北は人気のストロー級Undisputed championシニーサ〝Super Bad〟エストラーダに喫したもの。





日本人の強豪選手も控えている階級だけに、エストラーダのような選手と絡みたいところですが…その話はまた別にして、それにしても減量超過の常態化です。

どんなに優しいボクシングファンでも許容範囲を超えたアルファベット団体のランキングとそれによって生み出される王者たち。

水抜きのように直前に一気に落とす減量法だけでなく、そもそもタイトルの価値が失墜していることこそが最も深刻な問題です。

「我々の時代なら水抜きのような一種バクチの減量は出来なかった。それでタイトルを失ったら悔やんでも悔やみきれないから」と言う浜田剛史らの言葉は重く響きます。

公然と体重オーバーをしたライアン・ガルシアは「ガーボンタ・デービスとの試合で無茶苦茶なリバウンド制限を強いられた私をメディアもファンも擁護しなかった。やったもん勝ちということがよくわかったよ。サンキュー!」と吐きました。

そして、まともなボクシングファンからしたら信じられないことですが、米国メディアとファンの多くはガルシアがデビン・ヘイニーに大番狂せで勝利したことを前向きに評価しています。

これは、ガルシアを責める話ではありません。

井上の階級すら知らないのは仕方がないにせよ、ガルシアのような欠陥商品がカネロ・アルバレスを例外に最も大きな興行になる米国ボクシング界は、もう終わっています。

アルファベット団体のタイトルには、まともな価値がないのです。ESPNが「世界タイトル」と呼ぶのをやめたように。

カネロに贈られるメキシコベルトなどは、総額10万ドルレベルの貴金属が使用されていると言っていますが、井上などに売られる普通のベルトは1000ドルの価値も怪しい鉄屑です。

井上尚弥がWBSSで優勝したとき、WBCはそれまで用意していたWBSS特製ベルトを用意せず、井上陣営が興行規模(ファイトマネー)を過少申告しているとクレームをつけましたが「ふざけるな!」です。

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https://fushiananome.blog.jp/archives/20821128.html


優勝トロフィーやベルトを販売すること自体が、そもそも狂ってることにそろそろ気づけ。

そして、軽量級が馬鹿にされナメられていることに日本のボクシングファンはもっと怒れ。



マイク・タイソンとジェイク・ポールの茶番劇を上回るまともな試合を、いまのボクシング界でいくつ組めるでしょうか?

私がボクシングの魅力に取り憑かれた80年代、多くの先達から「ヘビー級を尊敬しないなんて、もうボクシングは終わった」と言われました。

それでも、あの時代の4KINGsはヘビー級よりも断然面白かったと、個人的には言い切れます。

あれから40年余り、ボクシングは私の興味を繋ぎ止めてくれました。

マービン・ハグラーの絶対王政と、シュガー・レイ・レナードの光と影、そしてAサイドにしか許されないはずのスターダムにアジア人のマニー・パッキャオが登り詰めた歓喜。

今、少なくとも米国への興味は喪失しかかっています。

もちろん、欧米に向けてのクリーンな国だという国威発揚に興味を傾けるサウジアラビアも含めたメガファイトの舞台が、日本以外にあることは認めます。

サウジの意図がそこにあることを全く理解できない暗愚な井上信者たちは「もう井上は日本では見ることができない、次はラスベガス」と妄言を繰り返していたように、サウジに軽量級の需要があるようにまた、恥ずかしい勘違いをしています。

サウジが大赤字の興行をなぜ続けるのか?

カネが有り余ってるから、何にでも投資するわけではありません。欧米への影響力がゼロのボクシング軽量級をまともに扱うことはありません。

ラスベガスに恋焦がれていた井上尚弥も、流石に気付きました。

世界でボクシング軽量級の大きな需要があるのは、日本だけ、です。

みんなで盛り上げましょう、ガラパゴス軽量級の発展を!



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「昔はいなかったですからね、失敗する人なんて。意地でも死んでも落とすっていう気持ちがあった」と、話したセレス小林の根性論。

まず、後半の「意地でも死んでも落とすっていう気持ちがあった」は、組織の長なら今の時代で絶対口にしてはいけません。

マイナースポーツの地域団体の責任者とはいえ、その時点で小林はアウト。

もちろんマイナースポーツだから、大きな問題にはなりません。

しかし、前半の「昔はいなかったですからね、失敗する人なんて」というのも、また事実です。

ESPNが2年ほど前に、アルファベット団体のタイトルを世界タイトルと表現することを、やめて「WBAタイトル」のような表現にする方針を明言したのは正しい判断です。

アルファベット団体へのまともな批判を逡巡している日本のメディアの意図は、全く理解不能です。

ここまで、アルファベット団体に追従する思考停止メディアは日本ボクシング界だけ。

そんなメディアのミスリードが、暗愚な無知蒙昧な井上信者のような哀れな人々を生み出し、不憫な彼らを惑わせてしまうのでしょう。

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体重超過を嗤え!

つまりは、ボクシングを嗤え! です。

ネリも堤も、悪くない。

諸悪の根源はこのスポーツの間違った構造です。


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日本期待のフェザー級、WBC8位の堤駿斗が、WBA9位のアンセルモ・モレノを迎えた〝世界挑戦への足場固め〟の一戦でまさかの体重超過。

さらに日本時間の今朝早くには、WBCジュニアウエルター級王者デビン・ヘイニーに挑戦するライアン・ガルシアがやはりリミットを守れず。

堤はフェザー級(126ポンド)を3.5ポンド(約1.6kg)、ガルシアはジュニアウエルター級(140ポンド)を3.2ポンド(約1.45kg)もオーバーする大失態。

体重超過というと日本で最も悪名高いルイス・ネリが山中慎介との再戦に臨んだときに超過したのは、3ポンド(約1.36kg)でした。

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東日本ボクシング協会のセレス小林会長は堤の失態を受けて「異常事態。体重で区切られているスポーツの根本が揺らいじゃうと競技として成り立っていかない。昔はいなかったですからね、失敗する人なんて。意地でも死んでも落とすっていう気持ちがあった」と、根性論に立つコメント。

体重超過の大きな原因と考えられる水抜きについては「
水抜きはするなって言っても今は多分無理」と無責任に語ってしまいました。

堤のケースは直前にコロナに感染した不運はあったにしても、減量方法と意識に問題がなかったとは考えられません。

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ボクシングの世界チャンピオンが、プロ野球で活躍している選手よりも知名度やステイタスが下になってしまったのは90年代でしょうか?

いまや、世界チャンピオンというくくりで、ボクシングよりもステイタスの低いスポーツを探す方が難しいかもしれません。

このブログでは当初から繰り返しているように、減量とは、基本的に「より弱い相手を選ぶために自分も弱体化する行為」です。

長谷川穂積や井上尚弥のように、試合中に脱水の影響から足が痙攣するなんて、他のスポーツではあり得ません。

ボクシングでも軽量級でよく見られる、情けない現象です。


もう少し、踏み込んでお話を進めましょう。




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