フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 減量とは何なのか?

ドワイト・ムハマド・カウイはライトヘビー級でプロデビュー、WBCタイトルを獲得。その後、クルーザー級に上げてWBA王者になりました。

イベンダー・ホリフィールド(身長189㎝/リーチ198㎝)とクルーザー級のタイトル戦を2度戦い、ジョージ・フォアマン(190㎝/199㎝)とはヘビー級で拳を交えました。

この80年代の重量級で活躍したCamden Buzzsawは、なんと166㎝/180㎝でした。身長は数㎝サバを読んでいたという説もあり、それが事実なら井上尚弥と変わらなかったことになります。

しかし、ホリフィールドとの初戦ではカウイは189¾ポンド、リアルディールの186ポンドを大きく上回っていました(当時のクルーザー級リミットは190ポンド)。再戦でも、カウイ190ポンド、ホリフィールド187ポンド。

カウイは身長の低さとリーチの短さが目立っていたものの、その肉体は筋肉が圧縮された重戦車でした。

また、全盛期は220ポンド前後でリングに上がっていたマイク・タイソンは体格こそ178㎝/180㎝でしたが、決して軽量のヘビー級ではありませんでした。
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「アリよりも小さく、フレージャーよりも重い」。それがタイソンでした。

体格差は体重差とセットになったときにアドバンテージを発揮します。体重差がない場合は、体格差のある戦いは距離の戦いになります。

低い身長と短いリーチは同じ体重なら「体の分厚さ=体の強さ」を意味しています。そして「速さ」と「パンチの回転数」はインファイトで大きなアドバンテージになります。

高い身長と長いリーチは、十分な距離をとった場合に「相手の射程外からパンチを打ち込める」のであって、セバスチャン・フンドラのようにクロスレンジを好んでしまうとそのアドバンテージは消えてしまいます。

そして、何よりもその階級で目立って低い身長とリーチは、対戦相手にとって練習相手がいない、試合でいきなりぶっつけ本番という、スポーツの世界で最も威力を発揮する「異端の強さ」に昇華します。

このブログでも「タイソンやナジーム・ハメドは小さいのに頑張った。それを考慮したらもっと評価されるべき」という意見を何度か寄せていただきましたが、それを言い出すとカウイは歴代PFPキングで、ロベルト・デュランやヘクター・カマチョ、レオ・ガメス、カール・フランプトン、ガーボンタ・デービスらは、もっと高く評価されるべきです。

もし、タイソンやデュランらが当該階級で平均的な体格、あるいは高い身長と長いリーチを持っていたら、そのスタイルは全く違うものになっていたのは間違いありません。

彼らとは逆に、トーマス・ハーンズやフンドラらの体格は減点対象になりますが、同一体重の場合、彼らが欠点を抱えているのは明らかです。

ハーンズや中谷潤人の勝ちっぷりを見ると「身長は高い方が、リーチは長い方が絶対有利」と勘違いしてしまいますが、絶対有利ではありません。長距離を保てたとき、という条件付きで有利になるだけです。


ヘビー級以外の階級では、同じ体重でリングに上がるのが基本です(前日計量でこの大前提が大きく崩れていますが)。

つまり、ヘビー級では〝この理屈〟が当てはまります。

ヘビー級で体格と体重で大きな差がある場合、これは巨大なアドバンテージになります。
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その意味でオレクサンダー・ウシクがやってのけたことは、同じような体重で戦っていたタイソンとは全く意味が違うのです。しかもタイソンが勝ったのは、ものの見事に弱い相手ばかりでした。

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ジュニアミドル級戦を小さな体とウェルター級リミットも割り込む144ポンドで計量したマニー・パッキャオの怪物性も、ウシクと同じ距離を支配する機動力に裏付けられています。

フレームとは、ここでいう体格、身長とリーチのことです。

さらに、カウイやウシク、パッキャオのデータはありませんが、おそらく彼らは骨太です。ボクサーとしては過剰な筋肉を支える骨格が強いのは容易に想像できます。



井上尚弥はモンスターなどではありません。むしろ怪物とは最も縁遠い、自分の分際をわきまえた極めて慎み深い、ボクサーです。 

試合のたびに過酷な減量を繰り返していると、肉体が代謝を鈍らせることはすでに解明されています。

とっくに成人して完成した肉体の井上がどんどん減量が苦しくなるのは、もちろん成長期だからではありません。新陳代謝が鈍るのは加齢が主な原因ではなく、過酷な減量のせいです。

減量とは何か?フレームとは何か? 

過酷な減量は、肉体や骨にどんな悪影響を及ぼしているのか?

特に、日本のボクシング界に染み付いた減量の宿痾について考えてゆきます。 
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続きです。

「HOW TO BOXING〜渡辺二郎のボクシング講座」第21回の「ウェートコントロール②」(1990年11月号)。 

渡辺二郎は「かつてファイティング原田さんやガッツ石松さんは20㎏近い減量を経験したと聞いている」「私は試合と試合の間でも常に58㎏をこれないようにコントロールしていたが、それでも6㎏近い減量をしなければならなかった」と書き、それが「海外の選手から見ると行き過ぎた数字になるらしい」と日本(アジア)の常識的な減量が世界的には非常識だと指摘しています。

現在の井上尚弥はもはや手遅れですが、スタートがプロテストを受けたジュニアフェザーであったなら、もしかしたら日本のボクシングファンは「本物のラスベガス」を見ることができたかもしれません。

日本の常識は「より弱い相手と戦うために減量する。それをしないのは損」というセコい考えです。井上のデビューでも「ジュニアフライまで無理やりでも落とせるなら、そこで最初の世界を狙おう」「井岡一翔の最短記録を更新しよう」という目先の動機でした。

信者の方でも、これは受け入れることができるでしょう。

「井上はスタート階級を誤った」ということを。

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渡辺は米国を主戦場にするスター選手を例に「日本人は自分も含めて減量しすぎだ」と警告しています。

「身長166㎝が公称のヘクター・カマチョは実際には163㎝しかないのにジュニアライト(58.9㎏)〜ジュニアウェルター級(61.2㎏)で戦っている」「フリオ・セサール・チャベスは167㎝、メルドリック・テーラーは165㎝」。

トーマス・ハーンズやマニー・パッキャオは増量して栄光の階級を目指しました。

カマチョやチャベス、テーラーは日本ならフライ級の型に押し込まれていても不思議ではありません。

実際に井上は、ジュニアフライのカナ型に無理やり押し込められてしまいました。

身長165㎝の井上は最初から骨格・フレームが脆弱に瘦せ細っていたのではありません。痩せ細ってしまうような、過酷な減量に身を投じ続けて、こうなってしまったのです。

それでも、本人が最近語っているように「階級を上げて潰されるようなら意味がない」と、基本的に「より弱い相手を求める」姿勢を崩していません。

彼はかつて憧憬した「パッキャオが見た風景」など、本気で見ようとはしてなかったのでしょう。

冒険的な試合を続けるカネロ・アルバレスに関心がないのも、ドーピング云々の問題ではなく、とにかく冒険に対して全く興味がないのです。

このまま、メジャーでは相手にされない超マイナー階級で石橋を叩きながらキャリアを終える、それでも「上げて潰されるよりはマシ」と、何がなんでも絶対に冒険はしないという考えです。

それは、ウンベルト・ゴンザレスの挑発や、ファンの「(米国で)一度もメインを張れないばかりか、女子ボクサーの前座」という侮蔑にも全く動揺せずに、狭くて小さい自分の部屋に引きこもったリカルド・ロペスと同じ哲学です。

皮肉でもなんでもなく、サラリーマンの私にとって、井上やロペスの考え方には圧倒的共感を覚えます。

もちろん、パッキャオやハーンズに抱くのは尊敬で、井上やロペスに対しては共感ですが…。
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井上尚弥は2012年、7月2日に開かれたプロ転向の記者会見で井岡一翔の世界王座最短奪取記録の更新を宣言。プロテストはスーパーバンタム級B級ライセンスの受験でした。

もし…大橋秀行や 井上が「2012年7月2日」にタイムスリップしたなら、無理やりの減量で19歳の肉体をジュニアフライ級に削ることはいなかったかもしれません。


もし、ジュニアフェザー級からプロデビューしていたら…10年後の今はジュニアライト級はとっくに通過してライト級で戦っていたかもしれません。

もちろん、こんなことを言ってもどうにもなりません。

ジュニアフライ級でスタートしたから、今のステイタスにあるのでしょうし、もしジュニアフェザー級デビューなら何度も負けて、もう引退しているかもしれません。

さて、「井上vsドネア2」は「減量苦vs減量楽」の対決でもあります。

減量とは何なのか?
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今から35年前、ボクシングマガジン誌上では「HOW TO BOXING〜渡辺二郎のボクシング講座」の連載がスタートしました。

ときどきご紹介しているものです。

第20回は「ウェートコントロール①」(1990年10月号)。 

慧眼の拳闘家が、今読んでも全く古くない鋭利な洞察で減量について語ってくれています。

渡辺がまず伝えているのは「ボクサーが消費するエネルギーは想像を絶する」ということ。

「イベンダー・ホリフィールドがドワイト・カウイに勝利した世界クルーザー級戦 で、試合中に6.7㎏もの体重を失っていた例を挙げて「消費量に匹敵するエネルギー(カロリー)を補給する必要がある」と、「なにを」「いつ」「どのように」食べるかがいかに大切かを説いています。

非常に理路整然としたロジックです。
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そして、5大栄養素についてボクサーが避けがちな脂肪についても「他の栄養素と比較して熱量価が高い。体内のグリコーゲンが不足したとき、脂肪はこれを補うかたちでエネルギー源となる」「短時間でエネルギーに変化する炭水化物は最も大事な成分」。

「バランス良く摂取することが大切」としながらも「誰もが同じ体質ではないから、自分なりの食事を早く見つけること」と、いつものように「誰かが正解を与えてくれるわけじゃないから、自分で考えること」に行き着くのです。

そして「試合と試合の間でも58㎏を超えないようにキープしていた」「分銅のついた正規の秤で体重を管理することを怠らない」という渡辺は、炭水化物を中心にした減量でウェイトコントロールがスムースになったと言います。

プロデビュー当時はフライ級の体重を作るのに苦労し「空腹で眠れず腹にさらしをきつく巻いて眠った」「試合前日にサウナにこもった」とも。

渡辺にとって、水抜きとセットのサウナは〝禁じ手〟だったのかもしれません。  

それにしても、渡辺の言葉を読むにつけ、聞くにつけ、本人の自業自得とはいえ、残念です。

彼は間違いなく偉大な指導者になっていたでしょう。 
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井上尚弥vsノニト・ドネアのリマッチ。

井上はドネアに勝てば、WBO王者のポール・バトラー戦に進みUndisputed champion(完全統一王者)への意欲を示していますが、バトラー陣営との交渉がもつれるようなら、ジュニアフェザーに上げることを示唆しています。

ドネアもバンタム級でのUndisputed championを目指す意向ですが、ジュニアバンタムに下げる可能性も語っています。井上とは逆のベクトル、ジュニアバンタム級へ落とす可能性もほのめかしているのです。

井上がジュニアフェザーを目指すのは、減量苦も一因です。

108ポンドのジュニアライト級で最初の世界王者になったのは、一つでも多くの複数階級制覇をすることを意識しての無理やりの減量でした。

それにしても、10ポンド上のバンタム進出時には「減量苦から解放された」と語っていたのに、どうしてまた減量が苦しくなるのでしょうか?

成長期の少年ならわかりますが、そうではありません。

「年齢を重ねると新陳代謝が落ちるから」というのは一つの原因かもしれませんが、それではもっと大きな原因を見落としています。
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「若いボクサーの新陳代謝が落ちる原因で加齢は些末なこと。長らく減量を強いられ続けた肉体は、脂肪や水分を吐き出さないように溜め込むようになる。回復時間が多い前日計量システムは、選手により過酷な減量を強いるようになってしまった」(VADA創始者マーガレット・グッドマン)。

グッドマンはネバダ州アスレティック・コミッションでリングドクターをつとめていた頃から「Boxers should fight where they're comfortable instead of killing themselves to make weight.(ボクサーは、より強く戦える階級で戦うべきで、より弱い階級を求めて自分を殺すような減量はしてはならない)」と再三警鐘を鳴らしてきました。

ヘビー級のようにスピードを上げるための減量と、井上に代表される多くの軽量級選手の減量は全く意味が違います。

ヘビー級やマニー・パッキャオは対戦相手や戦略に合わせて体重をデザインしますが、井上らは階級リミットに落とすためだけの過酷な減量に自らを投じているのです。

パッキャオは、まさにより大きなカネと名誉が得られる階級、ツワモノひしめくウェルター級で戦うために、1日8食、8000kcalを摂取して増量しました。

あるいは、アマチュアで75㎏=ミドル級で戦っていた村田諒太がプロでスーパーミドル級(168ポンド=76.20㎏)ではなく、迷わずミドル級(プロでは160ポンド=約72.57㎏)を選んだのは、より弱い相手と戦うためではなく、強豪が間断なく出現する人気階級への挑戦を望んだからでしょう。

前日計量から試合当日の体重で、118ポンドの井上の方が160ポンドの村田よりも大きくリバウンドしているのは、いかに過酷な減量だったのかを示す一つの指標です。

より弱い相手を求めて、より層が薄い階級へと無理な減量をすることが、健康に良いわけがありません。スポーツ医学の世界でも、ボクシング軽量級の減量が危険であることはずっと指摘されてきました。

井上尚弥も118ポンドで戦うよりも、126ポンド(フェザー級)や130ポンド(ジュニアライト級)で戦う方が絶対的に強いのは間違いありません。 

しかし、スポーツの世界は常に相対評価、相対の勝負です。

軽量級ボクサーが過酷な減量に耐えるのは「みんながそうしているから」です。

より弱い相手を求めて下の階級リミットに肉体を削ることをしないで、絶対的な強さを求めてしまうと…より弱い相手を求めて肉体を削った餓えた大きな狼の群れに飛び込むことになります。

減量とは畢竟、より弱い相手と戦うために自分を弱体化させる行為に他なりません。「より弱い相手」と「自分も弱体化」の究極のバランスを求めるのが減量です。

井上やファイティング原田のように「過酷な減量」を軽々しく口にするのは、輪島功一や渡辺二郎が避難するように「どうして減量してるのか(より弱い相手と戦うため)を考えたら、減量がキツイなんて言うのは恥ずかしい」というのは筋が通っています。

そして、かつては井上と同様に過酷な減量と格闘していたドネアは「前日計量からのリバウンドがない」という信じられないほどナチュラルな体重コントロールを、妻レイチェルによる食事改善と、〝ドーピング・グル〟ビクター・コンテの処方箋によって習得しています。

減量が苦しくジュニアフェザーに上げることも考える井上と、ジュニアバンタムにも楽に下げることができると豪語するドネア。

二人が交錯するのはこの再戦が最後になるでしょう。

25日(水)の報道ステーションで内田篤人との対談がオンエアされた井上尚弥は「(リミットまで)8㎏以上」と、これから地獄の減量が始まると苦笑いしていました。

当日収録したとしたらもう12日前です。常人の肉体からでも12日で8㎏以上のダイエットは狂気の沙汰ですが、井上は激しい練習をこなしながらの残り8㎏以上。

実際にはインタビューを受ける余裕などない12日前ではなく、3〜4週間前でしょうが、それでも過酷な減量に変わりはありません。

内田の「あと8㎏くらいですか?」の質問に笑って答えての「いやいや8㎏以上」ですから、実際には10㎏近いのかもしれません。

29歳と39歳、減量苦と減量楽。

非常に対照的な二人のパンチャーが激突するまで、あと12日に迫りました。
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試合が終わると30ポンド近くも体を膨らませ、次の試合が近づくとほとんど絶食。その繰り返し。試合中は無茶な減量の影響で、関節の痛みや足の痙攣に悩まされる…。

井上尚弥のことではありません。かつてのノニト・ドネアです。

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「フィリピーノ・フラッシュは試合が終わるとフィリピーノ・ファット(フィリピンのデブ)になっていたんだよ」と本人が自虐する過酷な減量・コンディショニングは、テコンドー黒帯4段の妻レイチェルから「減量で消耗しきってリングに上がるなんて何をやってるんだかわからない!」と否定され、抜本的に改善させられます。

ドネアは大好きなコメを控え、食事と練習方法を大幅に変えました。

今では、試合がないときでも130(約59㎏)〜132ポンド(約60㎏)をキープ。

試合が決まると練習と軽い食事制限でバンタム級=118ポンド(53.52㎏)まで自然に落としているといいます。

2019年11月の井上との初戦では、前日計量を0.5ポンドアンダーの117.5ポンドで余裕のクリア。

驚くべきは当日体重。なんと116ポンドだったというのです。

現代の常識的なボクサーでは考えにくい、リバウンドどころかリミット割れ。

約5㎏(約11ポンド)リバウンドする井上は当日約130ポンドまでリバウンドしますから、ドネアとの差は14ポンド(6.35㎏)近かったことになります。

ドネアは、今回の再戦でもリバウンド無しでリングに上がるのでしょうか。

それにしても、信じられません。

ドネアが口にする肉体改善の話は、夫婦愛に溢れる2人きりのラブストーリーです。
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私たちが興味のあるのは、もう1人のビクター・コンテがどんな役割を演じているか、なのですが、それは秘密のようです。

どんなサプリメントを、どのタイミングで、どれくらいの量を服用するかは、もちろん企業秘密なので、そこまでオーブンにできないのはわかりますが…。

ヘビー級に挑戦したスピンクスとマッキー・シルストーンや、ウェルター級を主戦場にした8階級制覇のパッキャオとアレックス・アリザとは違い、ドネアは欧米の不人気階級にとどまっているから情報が少ないーーそういう一面もあるかもしれませんが…。

もちろん、コンテは世界のスポーツ界を揺るがした史上最大のドーピング犯罪の首謀者ですから、あまり表に出ないようにしているのかもしれません…。
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計量前日で体内の水分を抜く「水抜き」は、ボクシング界の主流になってします。

心身ともに消耗しきった状態で戦い抜き、11ラウンドTKOで散った石澤開は今回の減量で6.4㎏の水分を吐き出さなければならなかったことを告白しました。

従来は4㎏でしたが、高城正宏会長によると「足のケガで試合前の走り込みが出来ず」減量のスケジュールが狂ってしまったということです。
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リング誌などの専門メディアが警鐘を鳴らし続け、英国ボクシング管理員会(BBBofC)が試合前の「サウナ禁止」に踏み切ったのは、まさに今回のようなケースが後を絶たないからです。

「水抜きは契約体重の5%が限界。それ以上は危険」という医学的ガイダンスは、「個体差」や「3㎏」が一人歩きすることで無視され続けています。

水抜きは、サウナなどを利用することでしか成立しません。

例えば、計量前日にフルマラソンを走れば5%の水抜きは余裕でしょう。しかし、それでは翌日の試合を戦えません。

試合時間=ラウンド数が短い総合格闘技の選手はインタバルトレーニングも絡めて水抜きしますが、12ラウンド36分間戦うことを想定するボクシングでは過度の運動は禁物です。

石澤の「普段は4㎏」というのは、もし彼にメディカルコーチが付いていればありえない数字です。

ストロー級の47.6㎏に対して4㎏は8.4%。今回、石澤が抜こうとした6.4㎏なら13.4%。医学的に危険水域とされる5%は2.38㎏ですから、もはや狂気の沙汰です。

水抜きは、直前にケガや体調不良で減量がうまくいかなかった場合、今回の石澤のようにとんでもない負債を抱えて前日計量を迎えることになってしまいます。


水抜きの大前提は、体重の約60%(ストロー級なら28.56㎏)の水分が健康的に充填されていることです。

医学や生理に詳しくない人でも、28.56㎏から2.38㎏を抜くのですら非常に危険なことは直感的にわかるでしょう。

当たり前です。「5%」は立ちくらみや激しい倦怠感を伴う脱水症状を引き起こすラインなのですから。

「個人差」や「3㎏」という科学的根拠のない暗愚な減量を野放しにするから、体重超過が蔓延するのです。

体重超過だけで済むのなら、まだマシです。

BBBofCや米国の一部州のコミッション、格闘技団体が水抜きやサウナに厳しい姿勢で臨んでいるのは取り返しのつかない事故を起こしてしまったからです。

悲劇の事故は、その競技の廃止にも直結する死活問題。

それにもかかわらず、「個人差」を振り回す暗愚な指導者や低脳な選手はボクシングに対する破壊行為を行っていることに気づかなければなりません。

もちろん、禁止ルールがなければ選手はやります。一番悪いのは、ここまで危険性が明るみになっているにもかかわらず水抜きを野放しにしている統括団体です(WBAなどの承認団体には何の権限もありません)。 


すでに、このブログではご紹介済みですが、誰が聞いても理想の減量があります。

荒川仁人や、バンタムに出戻ってからのノニト・ドネアのような、オールドスクール型の減量法です。

目新しいものではありませんが、年に2〜3試合しかこなさない現代のボクサーにとっては高い次元で規律が求められる減量法です。

しかし、理想はそこにあります。
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近年、格闘技の減量で主流となっているのが「水抜き」です。

試合に向けて食事量を減らしながら、試合直前で水絶ち、サウナなどで体重を一気に落とすのが「水抜き」です。

人間の体は約60%が水分。抜くのは体重の5%。これは立ちくらみや強い喉の渇きなど脱水症状を引き起こすラインです。

水抜きは生存のために必要な水を体から抜くということですから、ダイエットなどに応用できるものではなく、前日計量というシステムも利用した、正確には減量ではなく、一時的に極端な脱水症状を起こして体重激減を図る、非常に危険な行為です。

ジョンリール・カシメロを失格とした英国ボクシング管理員会(BBBofC)のルールは、危険な水抜きとセットになっているサウナを排除する目的で近年発行されたものです。

基本的に減量の必要のないヘビー級選手が、スピードを重視する戦略でウェイトを軽く仕上げる場合は、当たり前ですが水抜きなどはしません。

計量後に十分な水分や食事を補充して、大きくリバウンドさせるのも水抜きの大きな特徴です。

効果的なリバウンドを行うには、当日計量では時間的に難しく、試合直前に一気に落とす水抜きは前日計量あっての減量法です。

誤解を恐れずにいうと、前日計量のときだけ規定の体重に落とし、計量前日はリミットよりも3㎏近くも重く、試合当日はバンタム級でも井上のように5㎏前後もリバンドする選手も珍しくありません。

水分量が落ちている時間を出来るだけ短くすることには、肉体的・精神的な負担を減らす効果もあります。
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当たり前の話ですが「5%ライン」は階級によって変わってきます。ストロー級の重岡銀次朗とミドル級の村田諒太では、水抜きする量は大きく異なります。

ストロー級なら47.62㎏*0.05=2.38㎏、ミドル級なら72.57㎏*0.05=3.63㎏。よく「水抜きは3㎏」と言われますが、大間違いです。

水抜きは試合7日〜10日から準備、水分は自由に飲む、というよりも多めに摂るのが基本です。体内に十分な水分が充填された状態を作るのです。

そして、試合3〜5日前からは塩分を減らして水抜きしやすい状態を整えます。塩分は水を体外に出さないような生理が働くのですが、十分な水分を摂ると塩分が欲しくなるのものです。

ちなみに、アルコールも水を体外に出さない生理が働きますから、特に試合前の飲酒は安全面はもちろん、減量においても厳禁。

そして、水抜きの大前提は体内に十分な水分が充填されていることです。体調不良などで体重の60%を割り込んでいる状態では、5%も水は抜けません。

体重超過の原因は、この水抜き失敗によるケースも多いと見られています。

世界タイトルの価値が暴落していることだけでなく、この計量直前に一気に体重を落とす水抜きも、体重超過の一因なのです。

格闘技団体によっては水抜きを禁止している団体もあります。水抜きしたかどうかの判断は前日計量までに段階的な計量を実施することで「水抜きなしでは落とせないリミット」を設けることや、ドクターチェックがあります。

こうした団体やBBBofCは「水抜き」をピンポイントで禁止しているというよりも、危険な脱水症状を伴う減量を禁止しているのです。

この流れがJBCにも波及する可能性は十分にあります。

それにしても。

安全が最優先されるのは当然とはいえ、ルールの変更は選手が可哀想に思えてきます。
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世界戦で体重超過が相次いでいる原因は、①世界タイトルの価値が暴落していること、②前日計量によって減量方法に悪しき革命がもたらされたこと、の2点に集約されます。

①と②は無関係ではなく、相互に絡み合っているプロボクシング界の暗部です。

世界タイトルの価値とは何か?もっと突き詰めた言い方をすると、モノの価値とは何で決まるのか?

価値を決める最も決定的な要素はレアであること、です。

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約60年前のオリジナル「8」の時代と、4団体17階級時代の「68」の時代で世界王者の権威が同じであるはずがありません。

ましてや、この60年でボクシングはマイナー競技に転落してしまっているのです。

しかも、4団体時代は同一団体が同一階級で世界王者を複数抱えることも珍しくない、「団体数*階級数=王者数」 という常識が通用しない時代です。実際は「68」以上に膨張しているのです。

オリジナル8の時代は世界王者に挑戦できる、そのチャンスもレア。せっかく掴んだ王座を、体重超過はもちろん、簡単に手放すなど、まともな神経では考えられませんでした。

翻って、現代。特にスター選手にとって、タイトル(承認団体)は向こうから擦り寄ってくるものです。そして、前日計量によって広がったウェイトコントロール幅は、安易な複数階級制覇を助長することになります。

①の世界タイトルの価値暴落が「無理に減量してキャリアに黒星を付けるくらいなら、スケールの上で王座を剥奪される方を選ぶ」という考えにつながるのは当然のことです。

そして、②の前日計量による減量方法の悪しき革命。現代のボクサーの多くは、より失敗の可能性を孕む減量方法を選んでいます。

世界的には、トップ選手の試合数の減少、つまり試合間隔が空きすぎることも、コンディション維持に問題が生じやすい状況を作ってしまっています。
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本来の減量とは「脂肪を減らすこと」と「水分を抜くこと」の二本立て。

減量が過酷を極めると、力石徹のようにボクサーは水を求めて半狂乱になることもあります。

しかし、そんな減量風景は今や昔になりつつあるのです。





 
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残念で怒りも覚えるニュースが入ってきました。

WBO世界ミニマム級タイトルマッチ前日計量が横浜市内のホテルで行われ、王者・谷口将隆はリミットいっぱいの47.6キロでパス。しかし、挑戦者・石澤開は50.1キロ、何と2.5㎏オーバー。

世界戦で日本人が体重超過したのは、2018年4月のWBC世界フライ級王者・比嘉大吾以来2人目

石澤は2時間の猶予が与えられていますが、2.5㎏を削れるとは思えません。

再計量後に取材に応じた石澤は「(減量は)途中までいつも通りだったが、昨日の午前中に突然体調を崩してしまい、こういう形になってしまった」とうつむき、神妙な面持ちで釈明。

試合の開催可否については、両陣営で協議されていると言いますが、この体重さはもちろん、石澤の体調不良が事実なら、中止以外に選択の余地はありません。
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日本人が世界戦で体重超過の罪を犯すのは2回目とはいえ、今後も無くならないでしょう。

そして、世界では日本以上に体重超過が横行しています。

原因はいくつも考えられますが、大きな要素は、①世界タイトルの価値が暴落していること、②前日計量による減量方法の悪しき革命、の2点に絞られます。



 
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Saturday 5, March 2022
Pechanga Arena, San Diego, California, USA  
Jr.Bantam weight 12R


前日計量で27歳のメキシカンが2ポンドもオーバーする大失態を演じました。6週間前に急遽代役に選ばれたという背景があるにせよ、試合を受けたのなら、最低限の約束は守らなければなりません。

カリフォルニア州アスレティックコミッション(CSAC)は規定通り、マルチネスに2時間の減量時間を与えましたが再計量でも116.4ポンドと0.6ポンドしか絞れなかった始末。

ふざけてます。

それでも、ゴンザレス陣営は試合を受け入れました。

もちろん、チョコラティトは114.8ポンドで一発クリア。

それにしても34歳のグレートは人間が出来ています。目の前で対戦相手が2ポンドオーバー、再計量でも約束の体重に落とせなかった愚か者と表情一つ変えずにフェイスオフして、健闘を誓いあうハグまで。

まともなスポーツなら統括団体のCSACが試合中止と、ゴンザレスの不戦勝、マルチネスの不戦敗を宣告すべき事態ですが、ボクシングの場合は両陣営の合意があれば試合決行。

おかしなスポーツです。それなのに、チョコラティトが試合を受け入れたこと、マルチネスに対する態度に感動している私がいます。

CSACルールでは明日の当日計量でリバウンド上限を設けています。ジュニアバンタム級リミット(115ポンド)を10%超える126.5ポンドを超過すると試合報酬から罰金が差し引かれ、15%超過(132.25ポンド)で試合は中止。

マルチネスもさすがに中止は避けたいでしょうが、罰金覚悟で126.5ポンドは超えてくるかもしれません。

オッズはチョコラティト8/11(1.73倍)、マルチネス11/10(2.1倍)。

美しいコンビネーションでふざけたメキシカンを破壊しましょう。

ちなみにこの試合、WBCダイアモンドタイトルがステイクされています…どうでもいい情報でした。
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co-featureにセットされているのはマウリシオ・ララvsエミリオ・サンチェスのフェザー級10回戦。

ジョシュ・ウォリントンを大番狂わせで沈めて、フェザー級トップ戦線に躍り出たララ。

そのララに勝って一旗挙げたいサンチェスは前戦でクリスチャン・エスキバル(山中慎介と空位のWBCバンタム級を争ったあのエスキバルです)を2ラウンドKOしていますが、エスキバルは1分を挟んで9連敗中(内8試合がKO負け)という、試合させちゃいかんだろという当時35歳でした。

ララ1/12(1.08倍)、サンチェス13/2(7.5倍)。


セミファイナルでは、エスキバル同様に日本のボクシングファンの記憶に残っている34歳のファン・カルロス・ブルゴスが、11歳年下のWBO北米ライト級王者アンヘル・フィエロに挑戦します。

ブルゴスは3度の世界挑戦経験がありますが、直近5試合は1勝4敗、ホープの踏み台に落ちています。それでもまだKO負けは一度もありません。

フィエロは「マイキー・ガルシアが倒せなかったブルゴスをノックアウトする」と意気込んでいます。

フィエロ1/7(1.14倍)、ブルゴス9/2(5.5倍)。
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