カテゴリ: トレーナー/プロモーター/舞台裏の主役たち



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どうしてベルトを売るのかな?


World Boxing Council(WBC)。

日本語で「世界ボクシング評議会」と訳されるこの認定団体を知ったボクシングファンは少し不思議な感覚にとらわれたに違いありません。

World Boxing Association(世界ボクシング協会)、International Boxing Federation(国際ボクシング連盟)、World Boxing Organization(世界ボクシング機構 )…協会や連盟、機構は理解できても「評議会」ってなんなの?という違和感です。

1963年にWBAとEBU(ヨーロッパボクシング連合)、BBBofC(英国ボクシング管理委員会)、LAPBU(ラテンアメリカプロボクシング連合)、OBF(東洋ボクシング連盟)が対等の立場で議論する評議会として設立されたのがWBCです。

わかりやすくいうと、WBA内部の不満分子が地域の統括認定団体を抱き込む形で分離独立を謀ったのです。


そもそも、WBAの内部で膨張していた不満の正体は「ボクシング大国メキシコのボクサーが、実力通りに世界タイトルに挑戦できずに不遇に追いやられている現状を打ち破るため」。

「評議会」という名で反乱の機会を窺っていた不満分子は、1966年8月27日のWBC総会で、独自ルールと、初のWBC世界ランキングを発表、WBAから完全に分裂しました。
https://fushiananome.blog.jp/archives/22675529.html

https://fushiananome.blog.jp/archives/22689655.html


1966年から、2025年の現在まで世界王者の数は増殖し続けています。

10年後の1976年、2団体並立がすっかり定着していましたが、そのランキングは非常に興味深いものでした。

WBAは12階級、WBCは13階級。かつて地球上に8人しか存在しなかった世界チャンピオンは25人までに肥満(ヘビー級のモハメド・アリとミドル級のカルロス・モンソンはUndispited champion だったので実際は23人)。

そして、ランキングの〝中身〟も今では考えられないほどすっきりしたもので「これなら団体分裂の弊害は最小限だったのでは?」と思えるほどでした。

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世界的な統括団体が存在せず、ローカル・コミッションと怪しさ満点の認定団体が蠢くプロボクシングの世界。

勝ち続ければ、より強い相手が待ち構えている、というスポーツの当たり前が全く通用しない世界であることは、井上尚弥の対戦相手を見ればよくわかります。

どうしてこんな狂ったシステムが出来上がってしまったのか?

Make boxing a sport again!


英国ボクシングニューズ誌の「The History Of Boxing」をベースに考察してゆきます。

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ボクシングの「形」を近代ボクシングから遡ると、1743年、英国でジャック・ブロートンによって制定された公式ルール〝ブロートン・ルール〟に行き着きます。

それ以前の「ボクシング」は、レスリングなどのちに他の格闘技に枝分かれする技術も包括された原始的なもので、公式ルールや統一ルールの概念はありませんでした。

まだ、ベアナックルの時代でしたが、マフラーと呼ばれるグローブの原型が実験的に導入されるなど、近代ボクシングの息吹きが芽生えていました。

人類の進化で例えると「原人」のステージでしょうか。

ボクシングを「形」にしようという動きは、この競技を護身術として認めていた英国貴族によって支持されます。

そして、1867年にクイーンズベリー・ルールが制定され、本格的な近代ボクシングの幕開けを迎えます。

ホモ・サピエンスの誕生です。

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「グローブ着用」だけでなく「3分1ラウンド/インタバル1分」「ダウンから10秒以内に立たないとKO負け」「ダウンを奪った選手は自陣のコーナー(現在はニュートラルコーナー)に下がらなければならない」…現代にそのまま残るルールが随所に見られます。


しかし、ボクシングファンなら誰でも知っているグローブ着用を義務付けたクイーンズベリー・ルールはすぐに定着したわけではありません。

当時のボクシングは貴族も積極的に関わっていたとはいえ、懸賞金(ファイトマネー)は観衆から集める賭け金と、貴族だけでなく資産家や富裕な商人などがパトロンとなって提供していました。

マッチメイクが決まり、懸賞金が集まるとこれを管理するコミッションのような組織が生まれます。

19世紀の後半には1人の興行主(プロモーター)と、一つの組織が試合を主催する形が出来上がりました。

1887年にはペリカン・クラブ、1891年には現在の英国ボクシング管理委員会の前身であるナショナル・スポーティング・クラブ(NSC)が誕生します。

NSCは吉本興業のNew Star Creationではありません、念のため。


ベアナックルの試合を中心に主催していたペリカン・クラブは1892年、わずか5年でNSCに飲み込まれるようにして消滅してしまいますが、このユニークな名前を持つ統括組織はボクシングの大衆化に大きな役割を果たしました。



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Make America Great Again はドナルド・トランプのオリジナルではなく、選挙スローガンとして最初に使ったのはロナルド・レーガンです。

トランプがボクシングの聖地を一時アトランタに築くなど、ボクシングにも深く関わっていたことはよく知られていますが、レーガンも大のボクシングファン、モハメド・アリのボクシングが大好きでした。

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さてさて。

シンコ・デ・マヨという、メキシカンたちのゴールデンウィークに考えるのは、ロナルドでもドナルドでもありません。

Make boxing a sport again!


ボクシングが再びスポーツとして認められる日が来るのか?!です。

1990年代にすでに叫ばれていたことですが、当時の関係者やファンもここまで〝堕ちる〟とは想像していませんでした。

「マイナーの坂道をさらに転げ落ち、マニアが愛好するニッチ・スポーツの色彩をどんどん色濃くしていく」と、1970年代までのメジャーへの返り咲きは望めないこと諦めていたものの、もはやスポーツとしてのステイタスまで自ら放擲してしまうとは思いもしなかったでしょう。


ファイト・ウィークの真っ只中、日本のボクシングファンの関心はもちろん、ラスベガス・Tモバ入りアリーナの井上尚弥とラモン・カルデナスの一戦です。

しかし、米国はもちろん世界的にも、ヘビー級とカネロ・アルバレスを除くと最大の人気者ライアン・ガルシアが登場するタイムズ・スクエアで初めて行われるボクシングマッチに集中しています。

ライアン・ガルシア。キャッチウェイトなどAサイドの立場を乱用するのはまだしも、全てが後出しのオスカー・デラホーヤとの確執、堂々と故意の体重超過を公言したデビン・ヘイニー戦のあとにはドーピングも発覚、そこでも「俺はステロイドが大好きだ」と言い放ちました。

普通に永久追放です。

2021年にメンタルヘルスに大きな問題があることを告白、休養宣言したときは同情しましたが、うつ病などの事象とはもう全く違う次元に入っています。



世界的統括団体が存在せず、JBCやネバダ州アスレティック・コミッション、BBBofC(英国ボクシング管理委員会)などがローカルルールを敷いて世界タイトルマッチを統括、怪しいにもほどがある認定団体が認定料をせしめる構造は誰が見ても狂っています。

もはや認定団体が4つもある、17階級もあるという以前の問題です。

世界タイトルマッチにおけるランカーがとんでもないデタラメなのも誰もが知っています。そんな認定団体よりも、ローカルのJBCやBBBofCのナショナルタイトルマッチやランカーの方がはるかに誠実で王者もたった一人、納得できるファイターがベルトを巻いています。

犯罪歴も豊かなガルシアが戦うのはローランド・ロメロ…。

WHのオッズは犯罪者が1/12(1.08倍)、ロメロ11/2(6.5倍)。


人気がないために敵地オーストラリアで2度もタイトル戦を行い、人気者のガルシアに翻弄されたデビン・ヘイニーが再起戦に選んだのはホセ・カルロス・ラミレス…。

ヘイニー1/12(1.08倍)、ラミレス13/2(7.5倍)。


ガルシアに次ぐ人気者テオフィモ・ロペスは自身が持つリング誌とWBOのジュニアウエルター級タイトルをかけてアーノルド・バルボサの挑戦を受けます。

テオが4/11(1.36倍)、バルボサ21/10(3.1倍)。

ナダレ式に番狂せが起きたら楽しいのですが…。

ご存知の通り、このイベントの唯一のアンダーカード、前座がプロデビューの堤麗斗。相手はレベール・ウィッティントン。タイムズ・スクエアでデビュー、ファンの記憶にも鮮明に残りそうです。

麗斗1/20(0.1倍)、ウィッティントン20/1(21倍)。

「フェザー級で世界狙い」と見られている麗斗ですが、将来はライト級以上の人気階級に殴り込む期待も膨らみます。



ルチャリブレなマスクマンに扮したテオフィモ。こういう演出は好きなんですが…


そして、ラスベガス。全盛期の季節が黄昏始める32歳の井上尚弥はラモン・カルデナスと戦います。こんなレベルの相手は勘弁してもらいたいです、

今朝方、ムロジョン・アフマダリエフを迎えての防衛戦が9月14日(日)東京で決定したというニュースが入りました。

マーロン・タパレスに足元をすくわれたとはいえ(あの試合はMJが勝っていたと言われてますが、余裕こいて戦ったツケ、負けに不思議の負けはナシです)、井上にとっては実績的にはキャリア最強。楽しみなファイトです。


さて、Make boxing a sport again…です。

https://fushiananome.blog.jp/archives/22377757.html

⬆︎このシリーズの続き…といっても時代はさらに遡りますが。

長い話になりそうですが、腐敗し切った認定団体が生まれる前の時代から、「世界王者」はどうなっていたのか?をおさらいしていきましょう。



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WBCがサウジアラビア総合娯楽庁の支援を受けて、リヤド・シーズンと共催するWBCボクシング・グランプリ」のルールが日本時間の今朝方発表されました。

フェザー級(126lb)、ジュニアライト級(130lb)、ミドル級(160lb)、ヘビー級(unlimited)の4階級でそれぞれ32人のファイターがトーナメント形式で争います。

プラットフォームはDAZN、独占配信。



「ワールド・グランプリ」という冠を付けていますが、マウリシオ・スライマンが「この大会から未来のスター選手が生まれてほしい」という〝6回戦で開催される新人王トーナメント〟。

ボクシング版W杯の看板通り、ミドル級には世界20カ国のホープ?が集結。

そして、今回の発表で注目されたのは革新的なルール。

トーナメントに混乱をもたらす引き分けが起きないように、ドローの結果が出た場合は「the WBC enhanced scoring system(WBC採点分析システム)」を起動させ、各ラウンドを数値化し「接戦」「やや優勢」「明白な優勢」「圧倒的優勢」の4段階に分類・集計、勝者を決定します。

その数値でも同点となった場合は、3人のスーパーバイザーによる特別パネルが協議して勝敗を決定、引き分けを認めないシステムです。

欧米では不評の採点公開は2、4ラインド終了時にアナウンス。

ドローを引き起こしやすい6回戦でなく5回戦や7回戦にしろ、最初からWBC採点分析システムでスコアリングしろ…ツッコミどころ満載です。

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ジャッジは、かつてジョー・コルテスが提案した「Elevate the judges(ジャッジを高く上げろ)」つまり、テニスのチェアアンパイアのように、高椅子に座り、視認性を広げます。

インスタント・リプレイも導入。各ラウンド終了30秒前にブザーを鳴らし、選手のラストスパートを促します。

この大会専用に開発されたレイジェスの12オンス「キング」が統一グローブに。

ボクシングのトーナメントで起こりやすい体重超過や故障による離脱に対しては、リザーブ選手を用意して対応。



開幕は4月17日…来週ですから、この時点でルール発表とは大阪万博並みに切羽詰まっています。

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WBCのマウリシオ・スライマン会長はサウジアラビアが主導、UFCのダナ・ホワイト代表が指揮を執るTKOボクシング・プロモーションについて「私たちとは関係のないことで、関心もない」と、ESPNのインタビューに答えました。

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On Friday, multiple WBC titleholders posted similar messages on social media about being "proud" champions with the Mexico City-based organization. 

不自然なまでに無関心を装うスライマンですが、先週の金曜日には複数のWBC王者が「メキシコに地盤を持つWBCの誇り高いチャンピオンである」とソーシャルメディアに投稿。

3月7日金曜日といえば、TKOボクシング・プロモーションの大々的な発表からわずか2日後。スライマンの本音は「私たちの商売に大きな影響を及ぼす脅威だ!奴らはこのあと何をするつもりだ!気になって夜も眠れない!」と、無関心どころか戦々恐々としているのは明らかです。

とにかくタイトルマッチを数多く開催したい、一本でも多くのベルトを売りたいというのが認定団体です。彼らにとって階級は多ければ多いほど良いし、一つの階級にも名誉、休養、ダイアモンド、フランチャイズさまざまな世界王者がひしめいている状況が望ましいのです。

ボクシングがなぜ没落したのかを熟知しているホワイトは「UFCで実践している男子8階級、女子4階級、もちろん世界王者は各階級に1人だけという価値ある世界をボクシングでも構築する」と宣言しました。

8階級で8人の世界王者はUFCの専売特許でもなんでもなく、ボクシングが尊敬されていた遥か昔のシステムをパクっただけです。階級の名前もボクシングからそのまんま拝借したもの。

まあ、ボクシング界が愚かなだけですが。



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サウジアラビアが何をしようとしているのか、誰にもわかりませんが、総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官が公表しているポイントは以下の二つ。


①ラスベガス、メキシコシチー、上海にボクシングの研究とトレーニング施設を建設し、若い才能の育成やスポーツ科学の発展に寄与する…崇高な理想ですが、ボクシングが盛んで選手や研究者が集めやすいのは上海よりもロンドンや東京だと知らないのでしょうか?

欧米の人気スポーツに触手を伸ばしているサウジですが、サッカーやゴルフなどのメジャースポーツでは十分な存在感を発揮できていない側面が目立ちます。

一方、マイナースポーツで産業構造的にも脆弱なボクシングではリング誌の買収も含めて格安で、思い通りにできる立場を簡単に獲得しました。

それにしても、こんな採算度外視の投資ではなく出費・浪費をいつまで続けるつもりでしょうか?

ボクシングが1970年代以前の世界ヘビー級王者が地球上で最も尊敬されるアスリートだった時代に戻ることなど出来るわけもありません。



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②世界王者を一つにして、ボクシングの失墜した地位を取り戻す。…現在、世界王者を認定しているのは主要(切除すべき腫瘍?)と呼ばれているだけでWBA、WBC、IBF、WBOの4団体に、欧州などで存在感を増しているIBOも加えると5つも跋扈している惨状が続いています。

この5つのアルファベット団体は独自のランキングを捏造して世界王者を決めていますが、The Ring magazine(リング誌)やESPNなどのメディアは多くのファンが納得できるランキングを発表、リング誌はチャンピオンシップ制を採用して王者を認定。

認定料とベルト販売を生業とするアルファベット団体と異なり、リング誌は認定料を徴収せず、ベルトも無償で贈与してきました。

プロボクシングは各国(米国では各州)のローカル・コミッションがワールド・チャンピオンシップを統括する歪なネジレ構造が完全に定着してきました。

サウジは認定団体の枠を超え世界的な統括団体を作ろうとしているとしたら、プロボクシング市場初の画期的なことです。



サウジが買収したリング誌は主要4団体をパートナー企業としていますが、先日行われたカネロ・アルバレスとウィリアム・スクールの会見イベントで、ステージに上がったのはリング誌とビデオゲームの宣伝用のベルトの2本で、アルファベット団体のベルトは壇下に戻されました。

これが何を意味するのか?

いずれにしても、アルファベット団体にとっては大きな危機感が膨張する非常事態です。

もし、サウジが国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)のような世界統括団体を創設するなら、認定団体もプロモーターも不要になります。

ボクシング関係者に激しいアレルギーを引き起こしてきたダナ・ホワイトがサウジとの提携に際して「UFCと同じ1つの団体が1つの階級に1人だけの世界王者という常識的な正義をボクシングの世界に導入する」とブチあげたのを聞いた認定団体やプロモーターは「俺たちが非常識な悪だとでも言いたいのか」と内心、怒り狂ったでしょう。

エディ・ハーンは「サウジに頼らなくてもビジネスを継続できる。ボクシングの複雑な仕組みの中で、新規参入が簡単に成功するとは考えられない。世界王者は世界に1人だけという理想はわかるが、彼らの目的が何なのかは私にはわかりません」と言うにとどめていますが、ハラワタは煮えくり返っているはずです。




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もし私がボクシング界で大きな権力を持てたなら、たった一つの団体を作る。WBAやWBCなんて要らない。世界チャンピオンは1人だけだ。


これはボクシング界を完全に変えてしまうかもしれません。

サウジとネンゴロになってたつもりのエディ・ハーンやフランク・ウォーレンは寝耳に水、大きなショックを受けていることでしょう。

トゥルキ・アラルシク総合娯楽庁長官が発表したのは、サウジの公共投資基金の企業セラがTKOグループホールディングスと複数年契約を結び、ボクシングのプロモート事業を立ち上げるというものです。

TKO はUFCとWWEの統合に伴い設立された、ボクシングも含めた格闘技界で飛び抜けた資金力と影響力を持っているEndeavor Group Holdings, Inc.傘下のエンタテインメント企業。

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私が死ぬ前に、このスポーツが世界チャンピオンは地球上に1人だけという当たり前の理想を取り戻してくれることを願う。

TKPのマーク・シャピロCOOは〝This is a strategic opportunity to reimagine the sport of boxing globally.(ボクシングというスポーツを世界的に考え直す大きなチャンスになる)〟〝Together, we can bring the sweet science back to its rightful place in the forefront of the global sports ecosystem.(この協力体制で、スイートサイエンスとまで呼ばれたボクシングを世界的なメジャースポーツに再び返り咲かせることができる〟とボクシング再興を宣言しました。

かねてからボクシング市場への進出を視野に入れていたUFCのダナ・ホワイトと、WEEのニック・カーン社長が指揮を執って運営の管理・監督のノウハウを提供していく計画です。

スポーツとしての地位が失墜しているボクシングに、UFCのような正しいランキングに基づいたタイトルマッチを実施、8階級に8人の世界チャンピオンというスポーツとして当たり前の理想を取り戻すというのです。

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 目指す方向は正しいのだが、なぜか闇を感じてしまう〝連合軍〟です。


この最強の連合軍は若い才能を育成・支援するアカデミー施設に、ラスベガス・メキシコシチー・上海の世界3大拠点に最新鋭のトレーニング環境を整備、スポーツ科学と栄養学の研究所を創設します。

リング誌がパートナー企業として提携した主要4団体や、これまで手を携えてきた米英の大手プロモーターとの関係はどうなるのか?

全く別のボクシングの世界を1から構築するほど過激なものにはならないでしょうが、旧世界の人々の目には巨大な黒船にしか見えないでしょう。

ーーー日本のボクシングファンの目にはどう映っているのでしょうか?




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1月27日、T -モバイル・アリーナでデビッド・ベナビデスvsデビッド・モレルの生配信をご覧になった方も(もちろん現地で見ていた方も)マイケル・カッツを追悼する哀悼の十点鐘を聞いたはずです。

ベレー帽にふさふさの顎髭、奇妙な首飾りで目を引いたリングサイドの住人は、ニューヨーク・ブルックリンの介護施設から天国に招かれました。

トレーナーやマネージャーではなく、もちろんファイターでもなく、彼がボクシングライターであることはその風貌からも容易に想像できました。

歯に衣着せぬ、という表現がありますが、カッツは真実ならどんなことでもペンをふるう正義漢でした。

しかし、今なら〝炎上〟の大問題になる〝事件〟も少なくありませんでした。


Not proper behavior. (彼の行動には共感するが、他にもやり方があるだろう)。


「雑魚を選ぶ偽物のスターども」「認定団体など一つ残らず廃止してしまえ」「ファンの希望に耳を貸さない愚かなプロモーター」…彼が紡いだ活字は、ときとしてファイターや関係者を激怒させ、ボブ・アラムから名誉毀損で訴えられるハメにもなりました。

ちょっと待てよ?アラムに名誉毀損で訴えられるということは、卑劣な極悪人を怒らせたということですから、至高の正義を貫いたということで、これ以上の名誉はないということですね。

カッツは、同じ報道仲間でもプロモーターやテレビ局に媚びへつらう記者には厳しく、そんな記者にはペットボトルを投げつけたり、後頭部を殴ったりもしました。

エプロンサイドに寄りかかるカメラマンと記者は100年以上にわたって戦い続けている怨敵ですが…普通の記者は「試合が見えないからロープの下で撮れ!」と怒鳴るまでですが、彼は言うことを聞かないカメラマンたちの頭をモグラ叩きのように杖で叩いたのです。


Not proper behavior.  (それ、今の時代にやったらアウトです)。



ニューヨークタイムズ、ニューヨーク・デイリーニュースのボクシング記者として活躍したカッツを師匠であり喧嘩相手だったと懐かしむのは、カッツをHasidic psychedelic(超正統派の狂人)と呼んだESPNの解説者マーク・クリーゲルです。

「リングサイドの記者席ですら、肘と肘が当たる狭さに怒りをぶちまけてたよ。こんなひどい記者席は他のスポーツではありえない、って。嘘やお世辞は絶対に書けない、昔気質のthe last angry man(最後の怒れる男)だった。もっと彼の話を聞きたかった」。




"The only real sports in the world are boxing and horse racing. But you can corrupt people more easily than horses, so horse racing is more honest."

この世界で本物のスポーツと呼べるのはボクシングと競馬しかない。他は全部、偽物だ。しかし、人間はあまりにも簡単に堕落するから、競馬の方がマシかもしれない。


"There are some great people in boxing. Fighters, in particular, have a certain nobility about them."

こんなボクシング界にも立派な人はいる。特にファイターは、ある種の高貴さを持っていることさえあるのだ。


"There are times when I get fed up with the bullshit and the way fighters are exploited, and I feel like walking away from it all. But when I’m covering a great fight - Leonard-Hearns, Pryor-Arguello, Holyfield-Tyson - you know which ones the great fights are -- I know in my heart that it’s an honor and a privilege to be at ringside writing about boxing." 

ボクシングを見ていると、ファイターを搾取する卑劣な話が溢れていて、もうこんな腐った世界からは離れようとうんざりすることがある。それでも、そんなファイターたち、レナード対ハーンズ、プライアー対アルゲリョ、ホリフィールド対タイソンのような素晴らしい試合をリングサイドで見てしまうと、このスポーツに携わり、このスポーツについて書けることの幸せを感じてしまうのだ。


"If you want to write about fighters, go to the gyms. Stop fucking around at press conferences and go to the gyms and talk to the fighters and trainers there."

ファイターについて何かを書くなら、ジムに行け。華やかな記者会見でふざけるのはやめて、ファイターとトレーナーから本音を聞き出せ。

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マイケル・カッツ(1939年〜2025年)。2012年、ボクシング名誉の殿堂入り。

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全米ボクシング記者協会が選んだ2024年の Fighter of the Year(年間最高選手賞=Sugar Ray Robinson Award)に選ばれたのは、オレクサンデル・ウシク。

日本からは中谷潤人もノミネート、昨年の井上尚弥に続く「2年連続日本人」の快挙とはなりませんでした。

もし、バンタム級の中谷が獲っていたなら「2年連続超軽量級」、井上とノニト・ドネア(2012年)が持つジュニアフェザー級の「最軽量」を〝更新〟する史上初のオマケ付きでした。

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中谷と、やはりノミネートされていたバム・ロドリゲスは今年以降でもFighter of the Yearに輝くチャンスは何度もあるでしょう。



さて、今回のテーマはFighter of the Yearでも中谷でもバムでもありません。

BWAA表彰の中でTrainer of the Year(年間最高トレーナー賞=Eddie Futch Award)に選ばれていても良い実績を積み重ねてきたロニー・シールズです。

最近では先週、デビッド・ベナビデスの軍門に降ってしまったデビッド・モレルや、エフェ・アジャグバ、少し時間を遡るとエリスランディ・ララ、ギレルモ・リゴンドー、チャーロ兄弟、バーネス・マーティロシュアン、ヘスス・チャベス、ファン・ディアス、アーツロ・ガッティ、バーノン・フォレスト、カーミット・シントロン、パーネル・ウイテカー、デビッド・トゥア、イベンダー・ホリフィールド、マイク・タイソンら錚々たるファイターたちを指導してきました。

21世紀を代表するトレーナーの1人、シールズは海外で成功したトレーナーとしては珍しい世界トップクラスの実績を持ったボクサーからの転身でした。

元世界チャンピオンのトレーナーというと、ロベルト・ガルシア(IBFフェザー級)とマーク・ブリーランド(WBAウエルター級)が真っ先に頭に浮かびますが、ゴールデングローブで何度もチャンピオンになったシールズも頂点にあと一歩と迫りました。

シールズは1958年6月6日、テキサス州ポートアーサーで生まれ育ち、そこを拠点にアマチュアの国内タイトルをコレクション。

幻となったモスクワ五輪の米国代表トーナメント・ライトウエルター級では決勝でジョニー・バンフス(のちのWBAジュニアウエルター級王者)に敗れるも241勝21敗のアマ戦績をひっさげて1980年8月にプロデビュー。

1980年代はじめという時代は、西海岸のボクシング市場が揺らいでいた時期。シュガー・レイ・レナードのような超トップを例外に、白人や黒人選手を中心としたボクシング人気に翳りが見え「メキシコの時代」も夜明け前。

メキシコとは縁もゆかりもないフロイド・メイウェザーがメキシコの祭日週間や記念日にソンブレロをかぶって試合リングに上がり、スペイン語も話せないのにメキシコ系だと主張するボクサーが溢れている現代では信じられないかもしれませんが、当時はメキシカンが敬遠される傾向もあったのです。

観客はすでにメキシコ人が主流になっていましたが「(選手は)残念ながら人気の薄い軽量級にタレントが集中」(ボクシングマガジン1986年11月号)していたために、プロモーターも積極的に売り出すことができませんでした。

レナードのような金看板もなく、地味なアマチュアスタイルのままリングに上がり続けたアフリカ系アメリカ人のシールズに人気が集まるわけがありません。

北米ジュニアウエルター級タイトルを争ってブルース・カリーに惜敗、相性的に有利と見られていた世界初挑戦(WBC王者ビル・コステロ戦)は3度のダウンを奪われた末に判定負け。

1986年5月に再び挑んだ北米ジュニアウエルター級のタイトル戦(王者決定戦)でも、身長160㎝のフランキー・ウォーレンのプレッシャーに距離を潰されて大差判定負け。

アマチュアでもプロでも、とにかく大事な試合を落としてしまうボクサー、それがロニー・シールズでした。

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2階指定席C:5000円〜1階特別リングサイド:50,000円。


ウォーレン戦で〝醜態〟をさらしてしまったシールズでしたが、12月2日にWBCジュニアウエルター級王者・浜田剛史とのタイトルマッチがセットされます。

帝拳や日本のメディアは「ランキング1位のロドルフォ〝ガトー〟ゴンサレスが浜田との対戦を逃げて挑戦者選びが難航」と喧伝し、オファーを受け入れた勇気ある挑戦者がシールズだったという、今でもよく聞くストーリーを作ります。

当時のWBCランキングは1位:ゴンサレス、2位:レネ・アルレドンド(7月24日に浜田に失神KO負け)、3位:ウォーレン、4位:安京徳、5位:シールズ、6位:ウーゴ・エルナンデス、7位:バディ・マクガート、8位:ロニー・スミス、9位:テリー・マーシュ、10位:ジョー・マンリー。

プレッシャーファイターに弱いことが直近の試合でも明らかになった非力で勝負弱いシールズは、浜田にとってまさに安全保障書付き。冴えわたる帝拳セレクションです。

試合当日までにランキングがなぜか4位に上がったシールズは大健闘、12ラウンド36分間をコントロールしたように見えましたが、攻勢を評価した2人のジャッジが浜田を支持、琉球のサムライは2−1で初防衛に成功します。

当時は「(常に攻め続けた)プロが(小手先のテクニックでかわす)アマチュアに勝った」という見方でしたが、今ならシールズのジャブで血まみれにされた浜田の明白な判定負けでしょう。

シールズは派手に抗議するわけでもなく、悲しそうな顔で呆然と立ち尽くすだけでした。

その後、3試合を戦いシールズは引退。

アマチュア時代に習得した高度なボクシング技術と、プロで経験した〝あと一歩〟。そして、どんな不条理に直面しても冷静を保てる俯瞰のバランス感覚。

トレーナーとしての技量が卓越したものであるのは、キューバのエリートアマがシールズのもとへ〝参拝〟していることからも明らかです。

そして、プロで辛酸を舐めた〝あと一歩〟を、どこまでも突き抜けるようなファイターをいつか必ず育て上げるでしょう。




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八村塁の日本バスケットボール協会への発言が物議を醸しています。 「僕らは日本男子のトップのプレーヤー。日本代表にふさわしい、男子のことを分かっている、アスリートとしてプロでもやっていた、そういう人がコーチになってほしかった。今回こうなってしまったのは僕としても残念」。  名指しこそしなかったものの、女子代表の指導経験しかないトム・ホーバス ヘッドコーチや、プロ選手経験のない佐々宜央コーチへの批判と見られています。 八村と協会のどちらが正しいかは、今回のテーマではありません。 名将の条件とは何か? いつの時代の誰にとっても名将、そんな普遍的な名将など存在しないのは当然として。 ーーー敢えて、問います。 名将とは何か? IMG_0898
そういえば⬆︎イチローは「一番搾り」「プレミアムモルツ」「スーパードライ」と結構浮気性にビールの宣伝キャラクターを変遷してきました。

監督やコーチに接するとき、選手はどうしても過去の実績を無視することは出来ません。
もし、イチローがNPBの監督になると、そのチームのどんな超一流選手でも「何が始まるのか?」と戦々恐々とするはずです。 それが良いか悪いかは、別にして。 一方で、馬淵史郎がNPBの監督になるなら、選手たちは「お手並み拝見」と余裕の構えになるかもしれません。 それが良いか悪いかは、別にして。 選手時代の実績と指導能力が、絶対的な比例関係にあるはずのないこと、そんなことくらい誰もがわかっていますが、やはりそこは人の子です。 中日の監督に就任した落合博満に、尋常ではない量の練習を突きつけられた選手たちがそれを受け入れたのは、落合の圧倒的な実績と無関係ではなかったでしょう。 あるいは、20年後に大谷翔平が指導者になるとして、彼が名監督、名コーチになるだろうと考える人は少数派かもしれません。 ジョゼ・モウリーニョは間違いなく名将ですが、栗山英樹はどうでしょうか? アナトリー・ロマチェンコは紛う事なき名トレーナーでも、井上慎吾や亀田史郎は? 7時から下の娘よりも若い内定女子たちを向こうに回して、こっちは一人で酒席…こんなシチュエーションを全く楽しめないのは、やはり俺は社会不適合者なのだ。
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