カテゴリ: トレーナー/プロモーター/舞台裏の主役たち

昨日、WBAの王者決定戦(横浜BUNTAI)の前日軽量でまさかのグローブゲート事件が起きました。

この手の事件は「フロイド・メイウェザーvsマルコス・マイダナ」のようにAサイドが心理的揺さぶりをかけるために、Bサイドの使用グローブにイチャモンをつける〝場外戦〟なのですが、昨日は趣が全く違いました。

2014-05-06T163415Z_1_MT1ACI12220957_RTRMADP_3_BOXING-ENGLAND


Bサイドがイチャモンをつけるのは例外中の例外ですが、両陣営のチェック前にグローブを開封した井上尚弥にノニト・ドネアが声を荒げて猛抗議したこともありました。あのケースはドネアの言い分が正しく、井上はルールを知らずにこれまでも同じことを繰り返していたと思われます。

しかし、Aサイドの機嫌を損ねると「試合はしない」と〝印籠〟を突きつけられる恐れがあるため、本来ならBサイドは黙って従うしかありません。

ルールを知らなかった井上が悪いという見方もありますが、交通費や宿泊費の手配・ファイトマネーまでを用意していただく立場にある隷属的なBサイドの分際で正論を持ち出したドネアは、身の程知らずです。

そして、昨日もBサイドがアクションを起こしたグローブゲートという点で、非常にレアなケースでした。

石井武志とストロー級暫定王座を争うウィルフレド・メンデスがルールミーティングで、使用グローブを「予定していたカナダ製のRIVALから日本製のWinningのものに変更したい」とリクエストしたのです。

JBCの安河内剛本部事務局長も「グローブのストックがあるので問題はまったくなかった」と説明しましたが、予定されていたグローブをBサイドが変更を申し出るのは異例です。

背景には、日本が好き勝手できる軽量級ビジネスの構図があります。

人気のWinningは海外で人気があり品薄状態、高額で取引されることも。ルイス・ネリもメンデスと同様に、日本で行った試合でREYESからWinningへの変更を要求したことも。

石井陣営も「(海外選手は)Winningを欲しがる」と、海外のグローブ非常を語っています。

「世界のトップ選手なんだから自分で調達しろよ」と思いますが、マイナースポーツの中のボクシング、その中でもマイナー階級である軽量級は世界王者でも格安航空とエコノミーで移動、宿泊先はビジネスホテルというのが定番です。

また、世界的な注目度が低いことからスポンサーもつきにくく、メンデスもRIVALとの契約で試合での使用義務はなく、製品の無償提供を受けているだけでしょう(もしかしたら購入しているかも)。

もし、マニー・パッキャオが高額契約を結んでいるREYESではない別のグローブを使い、NIKEとは違うシューズを履いて試合に出ると両ブランドから契約違反を激しく抗議され、間違いなく裁判沙汰になります。

石井の鮮やかな勝利を期待しますが、軽量級が「貧乏人をアウエーのリングに引っ張り上げてボコボコにする貧困ビジネス」であることが透けて見える、なんともやるせない話です。






このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

WBAバンタム級タイトルが揺れています。

6月13日にアントニオ・バルガスを屠って王座に就いたばかりのバム・ロドリゲスが、6月30日のランキングでスーパー王者に昇格。スーパー王者の設定で空位となったセカンド王者の決定戦を増田陸と比嘉大吾が7月20日に争い、増田が競り勝ちました。

そして、7月31日、WBAはランキングを更新、バンタム級の休養王者・堤聖也を1位へ降格。休養王者からタイトル剥奪したことで「休養王者でもうかうか休んでられない」という倒錯ワールドを見事に現出させました。


次に何が起きるのか?堤の降格で空位となった休養王者決定戦をオーダーするなら、呆れるのを通り越してもはやマンマミーア!の世界です。

そして、WBA /WBOジュニアフライ級王者レネ・サンティアゴが予定されていた吉良大弥との防衛戦について「ヒジの負傷でスケジュールが後ろ倒しになるが、今年中には対戦可能」とWBAに報告していたにもかかわらず、休養王者に降格されてしまいます。

さらに、9月2日に吉良とカルロス・カニサレスで暫定では無くレギュラー王者決定戦を組んだことに、サンティアゴは弁護士を通して正式に異議申し立てしました。

wba-logo-488x488-2

【あしたはあの日】。今回は、2021年8月25日です。

あしたでちょうど5年前となるこの日、WBAのヒルベルト・メンドサ会長が「選手ファーストの考えから多くのチャンスを与えたいとタイトルを増やしてきたが、ファンの意見も反映させることが大切」と、11人の暫定王者のタイトルを剥奪、王者よりも上に聞こえるゴールド王者も廃止する」と、発表しました。

まさか、選手のことを第一に考えていたとは…さすが思慮深い人です、メンドサ。

これまでも「タイトル削減、世界チャンピオンは17人が理想」と繰り返し主張していたWBAですが、ここまでの大鉈を振るったのは初めて。

それでも、世界中のボクシングファンとメディアが「絶対ウソやん」と冷ややかに受け止めたものです。

17階級にまで膨れ上がったクラスに最大で40人を超える〝世界チャンピオン〟を設けていたWBAに対するファンとメディアの非難は大きく、メンドサは〝とりあえずは改心の姿勢を見せる必要〟に迫られていました。

そうです、これはあくまで、ほとぼりが冷めるまでの〝とりあえず〟。

認定料を生業とする認定団体は、あくまで「タイトル・メーカー」。ここは忘れてはいけません。

認定団体に「タイトルを増やすな」というのは、トヨタ自動車に「これ以上、車を作るな」と言うのと同じです。

認定料の源泉である階級とタイトルを増やそうとするのは、彼らにとって極めて自然な営みなのです。そこを非難しても、彼らには何も響きません。

「無意味に細分化された軽量級にメスを入れ、ジュニア階級を廃止、8階級に戻す」とド正論を展開しているズッファ・ボクシングにしても、その後ろ盾となっているサウジアラビア総合娯楽庁とその機関誌The Ring がオレクサンデル・ウシクvsリコ・バーホーベンを事実上プロモートしたように、エンタメ路線を受け入れています。

プロボクシングの統括団体は英国ボクシング管理委員会やネバダ州アスレティック・コミッション、日本ボクシングコミッションなどのローカル団体。

そして、(自称)世界タイトルを認定する認定団体もローカル色が濃厚な組織です。米国のNBAから発展したWBAはパナマシティに本部を持ち、ベネスエラ人による家族経営。メキシコ人に機会を与えるべくWBAから分離独立したWBC、米国への復権を目指してやはりWBAから独立したIBF、やはりWBAから独立したWBOもボクシング大国でありながらその恩恵を十分に受けていないプエルトリコが拠点。

すでに、WBOレベルの勢力になっているIBOが4大メジャー(マイナースポーツの認定団体にメジャーというのもこれまた倒錯です)に続く団体と認められないのは「いくらなんでもこれ以上はタイトルを増やせない」という意識と、「WBAから分離独立」という血筋がないからとされています。

WBAと対立して分離独立した新団体は、ある程度認めざるを得ないという理屈です。

WBAとしては「〝暖簾分け〟した覚えはない!」でしょうが。

「昔はWBCはまともだった」「IBFやWBOはまだマシ」…そんな根本から間違っている意見もときどき耳にしますが、どれもが「タイトル・メーカー」を生業としていることに変わりはありません。

IBFやWBOは後発で勢力も弱いため、大きな声をあげにくいだけで、彼らも「タイトル・メーカー」であることに何ら変わりはありません。










このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

IBOのエド・レヴィン会長は英国ボクシングニューズ誌のインタビューに「5番目のメジャーを目指してはいない」と明言しました。

1960年代にWBAからWBCが分離独立、80年代にIBFとWBOがやはりWBAに造反して独立、現在の4団体体制が形成されました。

2671a6_be6198a526744f5db16fdbaedeae8b2f~mv2

認定団体の分裂で水増し階級も激増、17階級にまで細分化されてしまっています。また、認定団体よりもはるかに誠実なランキングでチャンピオンシップ制を敷くリング誌や、そのリング誌ランキングを活用して8階級制を目指すズッファ・ボクシングのタイトルもあります。

デタラメ認定団体は独自の理屈だけでランキングを作成、好き勝手にタイトルマッチを行っているのが現状です。

レヴィン会長は「団体の駆け引きや、スーパースターから距離を置いて、政治的影響力の小さな貧困国のボクサーにも実力があればチャンスがある、そんな健全な環境を整備したい」と、ボクシング界の構造を〝スポーツ化〟すると訴えています。

IBOは暫定やスーパー、休養などの王者を認定せず、ランキングもポイント制で恣意的な要素を極力排除し「当たり前だが世界王者は一人だけ」の常識を守っています。

しかし、ランキングのポイントは認定料の支払い実績の高い傘下の地域タイトルホルダーが有利になる仕組み。レノックス・ルイスやフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオを優遇してきた歴史は「スーパースターへの忖度」がちりばめられています。

IBOが第5のメジャー(5つもあったらメジャーとちゃうわ!)と認められない原因の一つは、本家(WBA)の血筋がないから。ボクシング界を混乱と堕落に導く認定団体に存在意義を認める人は少ないでしょう。

スクリーンショット 2026-08-15 12.54.38

もし私にボクシング界を変えるパワーがあれば、一つの統括組織、一つのチャンピオンシップを作る。WBAとかWBCなんか要らない。


WBAとWBCの2団体時代の初めは、対立王者もランキングに加えて、その序列は今と比較すると想像できないほど納得できるものでした。それでも、アリらは認定団体への嫌悪感を隠しませんでした。

認定団体は必要悪ではありません。不必要悪なのです。





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

IBFとWBOは12月9日から13日の5日間、合同総会を開催すると発表しました。

世界の統括団体が存在しないプロボクシングは、JBCやネバダ州アスレティック委員会のようなローカル・コミッションが統括、WBAなどのタイトル認定団体がチャンピオンを認定するという二重構造で運営されています。

デタラメランキングとデタラメチャンピオンシップを平気で作成している認定団体の総会は、セレモニー以上の意味は持ちません。

ただ、これまで認定団体が合同総会を開催するのは史上初めてのこと。

そして、サウジアラビア主導でプロモーション活動と認定ビジネスを手掛けるズッファ・ボクシングが「ボクシングのステイタスを貶めた認定団体の排除」「8階級制への回帰」によって、認定団体が存続の危機を迎えているタイミングでの合同総会。

IBFとWBOが完全合併することはないにしても、ズッファの侵略に対して共闘体制を確認、何らかの方向が示されるかもしれません。

主要4団体はWBAから分離独立したWBC(1966年に分離独立)、IBF(1983年に分離独立)、WBO(1988年に分離独立)する本家WBAに反旗を翻す形ではありましたが〝暖簾分け〟の事実から認知されました。

分離独立の動機は「ローカル」に絞ることができます。WBCは優秀なボクサーを多く抱えているにもかかわらず、WBAは前身のNBA時代から米国ボクサーが優遇されてきました。

これに、異を唱えてWBA内部で分離独立工作を画策したのが、第48代大統領のアドルフォ・ロペス・マテオス。WBCは、メキシコの国策で分離独立したと言っても良いかもしれません。

https://fushiananome.blog.jp/archives/22675529.html


そして、WBAがベネズエラを主力とする南米に本拠地が移されたことに対する反動として生まれたのが、IBFでした。WBOもボクシング利権から外されてきた米国とカリブ海地域の復権を図るために、プエルトリコで発足。

一方で、独立した動きの中で誕生したIBOは本拠地の米国だけでなく欧州でも一定の勢力を形成していますが〝暖簾分け〟ではないことから、主要の一角には数えられていません。

「世界」の認定団体が米国と周辺地域の権力争いの中で分離独立する「ローカル」の理論で派生してきた歴史を持ち、各国・米国各州の「ローカル」コミッションが〝世界〟タイトルマッチを統括する、それがボクシングの成り立ちです。

同時期に、米国で発展したプロレスが典型的なテリトリー・ビジネスだったことも、ボクシングと近似した力学が作用していましたが、それはまた別の話で進めましょう。

いずれにしても、認定団体は「自分の縄張りに利権を引き込もうとする「ローカル」を基調とするテリトリー・ビジネスです。

WBCが分離してしばらくは、WBAとのランキングに今ほど大きな違いはありませんでした。それどころか、互いの王者もランキングする常識的な思考も持っていました。

団体の分裂と対立が深まり、21世紀になると各団体が地域タイトルを乱立、自身の地域タイトルホルダーや人気スター、つまりこれまで認定料を支払って与信実績のあるボクサー、タイトルマッチで高額な認定料が期待できる選手を優先的にランキングさせることになり、デタラメぶりが加速します。

現在の4団体のランキングは一つ残らずデタラメにも程がある段階で、ESPNなど米国のまともなメディアはアルファベット団体のタイトルを「世界」と呼ぶことを控えるようにすらなっています。

もはやスポーツとしての体裁が崩壊した中に登場したのが、サウジが後押しするズッファ。サウジの広報機関誌となったとはいえ、現時点ではまともなリング誌ランキングをベースに8階級によるチャンピオンシップ制度を目指しています。

「リング誌ベルト」と「ズッファ・ベルト」をどう棲み分けるのか?リング誌に吸収合併するのがベストだと思いますがズッファのトップであるダナ・ホワイトとしては、独自創設でUFCのデザインと酷似したズッファ・ベルトへのこだわりがあるようです。

もっと本質的な部分では、トゥルキ・アルラシク長官が標榜した「ボクシングにスポーツとしての威厳を取り戻す」「(国民の権利とまでされる人気スポーツの主要な大会のように)PPVなどの課金なしで気軽の視聴できるボクシング」という二つの大義名分が、先日の「ウシクvsキックボクサー」では早くも完全に放擲されてしまいました。

現時点ではリング誌ヘビー級ランキングにリコ・バーホーベンの名前はありませんが、もはやリング誌ランキングがデタラメ化しても誰も驚かない状況が出来上がっています。

長官は「井上尚弥と中谷潤人やバム・ロドリゲスとの試合を前向きに評価していますが、ジュニアフェザー級などズッファが廃止した階級への思いを是非、お伺いしたいところです。もちろん、提灯雑誌リング誌をはじめ、どのメディアもそんな質問はしないでしょうが。

IBFとWBOが存続の危機を乗り越えようと踏み切った合同総会ですが「サウジアラビアは〝油水〟の蛇口を締める。そうなると、ズッファの構想もズッファそのものもフェイドアウトする」とも考えられていますが、サウジのサポートがなくてもホワイトの勢力は既存のボクシング界を一掃する資金力を擁しています。

マッチルーム、トップランク、PBC、GBPのボクシングのトッププロモーションが合併しても、UFC単体の25%のパワーにも届かない現実は、資産価値がほとんどない家内制零細アルファベット団体の提携や合併ごときでズッファに太刀打ちできない現実が横たわっています。

そこまで考えると、IBFとWBOの接近はズッファ対策ではなく、WBAとWBCに対抗、あるいは打倒を目指すアルファベット団体内の抗争と見るのが妥当なのかもしれません。

◾️2024年格闘技プロモーション資産価値ランキング(Forbes誌)◾️
①1兆7459億円 UFC
②1兆506億円 WWE
③3090億円 AEW
④2009億円 ONE
⑤1313億円 Matchroom Boxing
⑥1066億円 PFL
⑦973億円 Top Rank Boxing
⑧927億円 Premier Boxing
⑨695億円 Golden Boy Promotions
⑩185億円 Combate Global

※7位のトップランクは、井上尚弥をはじめとする軽量級選手との契約を更新しないなど米国市場での不採算部門の切り離しを進めていますが、長年の提携先ESPNがボクシングから撤退するなど資産価値は暴落しています。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

米国で大きな需要が見込めない軽量級や、ボクシングファンに馴染みのない異邦人など不採算のファイターの切り離しを進めているトップランク。

井上尚弥や中谷潤人は落ち目のトップランクから契約更新されなくても痛くも痒くもありませんが、母国にはもちろん、米国にもファンベースが薄いキューバ人の軽量級、ロベイシ・ラミレスは半年近くもフリーエージェント状態。ようやく先月になって、ウズベキスタンで設立されたばかりのプロモーションRaizd Boxing に拾われました。

しかし、日本時間のきょう5月30日にタシケントのHumoアリーナでRaizd Boxing 初の興行に組まれたラミレスの試合が、急遽中止になったというのです。


IMG_4052

知人が中東から中央アジアに出張中にはタシケントの地下鉄にもラミレスの試合広告が出ていましたが…


ラミレスがSNSに投稿した内容をまとめると「中止の理由はMRI検査を受けることができないからと、Raizd BoxingとWBCの関係者から伝えられた。今日受けても結果が出るまで3日かかるから、試合は中止するしかないと通告された」「Raizd Boxingから3試合契約とファイトマネーのオファーを受けたが拒否した」「MRI検査は試合の数時間前に実施され、検査結果も出ている」。


スクリーンショット 2026-05-30 17.57.40
スクリーンショット 2026-05-30 18.04.08


ラミレスはマウリシオ・スライマンに対して「世界の辺境でおかしなことが起きている。その原因を究明して欲しい」と要求、THAT’S IT, FAMILY. THE FIGHT HAS BEEN CANCELED BECAUSE OF THESE MOTHERF***ERS WHO DON’T RESPECT FIGHTERS.”(みんな聞いてくれたか?ファイターをリスペクトしないクソ野郎どものせいで私の試合が中止にされた)と捨て台詞も。

Raizd BoxingはWBCとも関係が深いようです。MRIの検査結果が出たのに、Raizd Boxingがどうして試合中止の判断をしたのかがラミレスの投稿からは分かりません。他の試合は予定通りに行われている模様です。

Raizd Boxingからの契約オファーを突き返した理由も、何が原因なのかがわかりません(普通に考えると「こんなはした金でやてられるか」や「タイトル返り咲きの道筋が見えない」とかですが)。

今月は、お隣のキルギスでも亀田プロモーションズの興行が急遽中止になるなど、中央アジアの興行が揺れています。


マウリシオは「メキシコにいて実態がまだわからない。調査に乗り出す」と声明を出しました。


続報を待ちたいと思います。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

プロボクシングの実態について、日本のプロボクシングファンが多くの誤解をしてしまっていることがあります。

「米国でも軽量級はそこそこ尊重されている」という誤解は、昨年の井上尚弥の〝興行事故〟と今年のデビッド・ビナビデスの大盛況というT−モバイル・アリーナの定点観測などから、大きな間違いであることはようやく浸透してきたようです。

しかし「ボクシングは世界においてメジャー競技」という誤解は、まだ拭えていないかもしれません。

この誤解に起因して「フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオは米国ではスポーツファンなら誰でも知っている」「リング誌は世界的に権威のあるスポーツ誌」「野球がメジャーなのは米国だけだから、大谷翔平よりも井上尚弥の方が世界的に有名」というトンデモ認識を刷り込まれてしまっている人もいます。

米国に行ったことがある人、友人・知人が住んでいる人ならボクシングが全く注目されていないことはよくわかるでしょう。

そんな経験がない人でも、米国の主要メディアでほとんど扱われていない現実はすぐにわかるはずなのですが、井上信者をはじめ日本のメディアのフィルターがかかった海外の情報しか見ない人が多いのも〝長年のボクシングファン〟の特徴です。英語は読めないし、そもそも米国の主要メディアがわからないという人が大きな誤解を脳内で拡大してしまう原因には、メディアのミスリードにも責任があります。

日本で紹介される海外メディアのほとんど全てが、ボクシング専門ネットニュースです。雑誌を発行しているのもリング誌と英国ボクシングニューズ(BN)誌だけ。リング誌とBN誌にしても、米国や英国で人気とは口が裂けても言えないレベルの超マイナー専門誌。専門ニュースサイトは、それ以下。

例外なのはESPNですが、今年からボクシング放送から撤退。斜陽のボクシングから、MMAとプロレスに大きく軸足を移しています。ボクシングと比較したら人気があるUFCやWWEにしても、メジャースポーツとはやはり口が裂けても言えません。

そして、そんなボクシングニュースサイトでも、当たり前の話で人気階級の報道がメインです。そこで取り上げられた軽量級の記事が、THE ANSWERなどによって〝提灯記事〟化されています。

一方で、野球はESPNはもちろん、CNNの一般ニュースやABC、CBS、NBCで当たり前に取り上げられています。

現在、米国限定のスポーツ報道ならESPNに代わって最も強力で鋭い取材能力を持っているのがニューヨーク・タイムズ参加のTHE ATHLETICですが、ここでもボクシングが取り上げられるのは極めてレア。4大スポーツの野球はレギュラーですが、大谷翔平はスターの中の1人にすぎません。

昨日の大谷の5勝目と本塁打は、日本では「圧巻」と報じられていますが、米国では「他の誰にも真似できないこと」と断りながらも「ノーヒットが不思議な不安定な制球。規定投球回数はシーズン後半で追いつくように調整するだろうが、そのときの防御率は大きく下落している可能性が高い」「打者としては全盛期の『この当たりがスタンドに届くのか!』という驚きの飛球は影を潜めた。そう、もはや彼は全盛期ではないのかもしれない」と非常に冷静な見方です。

一方で、驚異の44.2イニング連続無失点中のクリストファー・サンチェスが大きな注目を集めていますが、日本での報道はほとんどありません。

この偏向報道の行き着く先は、大谷翔平の衰えでNHKのMLB中継の視聴率が大きく下がり、年間35億円ともいわれる放映権料が予算として組まれなくなることでしょう。

現在の日本ボクシングが黄金時代ではないとは何度も書いてきましたが「井上尚弥の黄金時代、那須川天心の水銀時代」とは言えるかもしれません。しかし、井上と那須川がリングを去ったあとは氷河期が待ち構えているでしょう。

現在のMLBは〝ほぼイコール大谷人気〟であり、MLB人気ではありません。また、ボクシングも黄金時代ではなく〝ほぼイコール井上尚弥の黄金時代〟。ボクシングの場合はサウジ並みの採算度外視のネット配信企業の実験的・先行投資で潤っているだけともいえます。


i-1


前置きが長くなりました。


矛盾に満ちたプロボクシングの世界、そこに正論で迫ってきたズッファ・ボクシングという黒船。

20世紀には「団体統一戦など言語道断」という姿勢だった認定団体は、ボクシング産業の没落ととともに地域タイトルや暫定などセカンドタイトルの新設、自己増殖に走ります。また、ファイトマネーが大きくなる統一戦にもそれに比例する認定料が大きくなることから前向きになり、カネロ・アルバレスのような認定料が巨額になる人気選手にはそのままタイトルを預け、テレンス・クロフォードやオレクサンデル・ウシクのような不人気選手には指名試合を突きつけてタイトル剥奪という〝素晴らしい統一戦ビジネスモデル〟を確立します。

そこに出現したのが、サウジアラビアの資金力を背景とする「ボクシング復興の唯一の最適解は『世界タイトルは一つ、8階級』。ボクシングを堕落させた認定団体と欧米のプロモーターは去れ」というズッファ・ボクシング。

米国ボクシングが史上の低迷と、茶番劇横行の迷走、最悪の迷路に迷い込む中で、この国を出自とするIBFとWBOが急接近。今後、両団体の統一戦が増えるとみられています。

加盟国の85%が重なっている両団体の合併は認定料の激減を意味しますから、完全合併はありえないにしてもPremium Unified Championshipのような団体をまたいだ上位タイトルの創設を画策しているとも噂されています。

ズッファの侵略がどんな結末を招くのか?「サウジが本気なら、欺瞞に満ちた既存のボクシング界のレジームはズッファの正論の前に完全に破壊される」「サウジがゴルフのように無責任に撤退すると、人気スポーツのゴルフとは違うボクシングは選手報酬の暴落や、裏切り者選手の〝粛清〟など大混乱になる」…。

日本でのズッファは「第5の認定団体」のように軽く扱われていますが、メディアは彼らの正論を伝えなければなりません。「サウジアラビアが創設した団体で〝第5〟ではなく唯一を目指しているということ。ジュニアバンタム級以下の4階級は不要で、水増し階級も廃止して8階級制を標榜していること。そして、その資金力は主要4団体を合計しても遠く及ばないこと」を大きく伝えることで、世界における超軽量級の立ち位置などもよく理解できるでしょう。

そして「そんなことしたら日本から世界王者がいなくなる。ズッファ基準だと井上はまだバンタム級の1階級でしかタイトルを獲ってないなんて受け入れ難い。具志堅用高は世界王者になってないことになるの?」「THE ANSWERでは軽量級でも注目されてるって書いてたのに」「木村悠さんはPFPに入ったら軽量級でも20億円でラスベガスで日本では見れなくなるって書いてたけど?本当は人気がないならどうしてそんな嘘をつくの?」「正論はズッファにある。そもそも世界王者が日本人だけで何人もいるほうがおかしい」…ど正論が突きつけられたときは、突きつけられた方でいろんな意見が交わされることが重要です。


認定団体の成り立ちをおさらいして、WBOが認められてIBOが主要に数えられない理由などもからめながら、サウジが本気ならIBFとWBOの〝合併〟などドン・キホーテ(蟷螂の斧)に過ぎませんが、サウジがどこまで本気なのか?

サウジの支援が絶たれたとしてもUFCグループ単体でも4つの認定団体の資金力をはるかに上回りますが、米英のプロモーターや、超軽量級を無視された日本やタイの勢力も合わせた連合軍の息の根を止めるのは不可能です。

「ボクシングファンに1団体8階級の本当に価値あるチャンピオンシップを、PPVのような余計なお金をかけさせずに提供する」というのは、ど正論です。しかし、最近の「ウシクvsキックボクサー」は価値あるチャンピオンシップとは到底考えられず、DAZNに加入していても課金されるPPVでした。

サウジはボクシングから撤退はしていないものの、ボクシング復興とは真逆の「茶番劇とPPV」という安易なビジネスに舵を切っています。採算度外視のサウジの支援がなければ実現しなかった「アルツール・ベテルビエフvsドミトリー・ビボル」のような不人気だけど超絶実力者の激突は、マニアが涙を流して喜んだだけで興行としては大赤字。

サウジは開けっぱなしにしていた〝油水〟の蛇口を締めているのは、もう間違いありません。


















このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

7月11日(日本時間12日)にサンフランシスコ市庁舎前広場で開催される「History In The Making(ここで歴史が作られる)」で、WBOフライ級王者アンソニー・オラスクアガの6度目の防衛戦がメインイベントに抜擢、リヤドシーズンともタイアップしているプロモーターのiVisit Boxing(IVB)が米国の最多動員記録の更新を目指しています。

その記録というのが、今から85年前の1941年8月16日、ウィスコンシン州ミルウォーキーのジュノー公園に詰めかけた13万5,132人。



Saturday 16, August 1941
  
Juneau Park, Milwaukee, Wisconsin
promoterBilly Mitchell

referee:Jack Dempsey

◾️ノンタイトル・ミドル級10回戦◾️



ミルウォーキーといえば、MLBのブルワーズを出すまでもなく世界3大ビール産地の一つ。つまり酔っ払いの聖地です。ちなみに、残る二つはベルリンと札幌。

このビッグイベントをスポンサーどしたのがミルウォーキーで創業したthe Pabst Brewing Company(現在の本社はロスアンゼルス)の有名ブランドはPabst Blue Ribbon。

85年前の盛夏、ボクシングファンはビールを片手に観戦していたのでしょう。

スクリーンショット 2026-05-20 18.54.06

リング誌1954年4月号のPabst Blue Ribbon ビールの広告。毎週水曜日にテレビ放送されていた「Thrilling Blue Ribbon Bouts」の冠スポンサーになっていたようです。
1941年に行われた「ゼールvsプライヤー」がテレビ放送されたかどうか、時代的に微妙です。



ジュノー公園に特設されたリング、その周囲は関係者で埋まりましたが、後方は完全無料。

ノンタイトル戦でしたが、ゼールはNational Boxing Association (NBA=WBAの前身)ミドル級王者。当時はもちろん、オリジナル8の時代、そしてNBA王者ということはUndisputed champion のはずですが、もうひとつ世界王者を認定する有力団体がありました。

主に1920年代から1940年代にかけて世界タイトルを認定していたニューヨーク州アスレティック・コミッション(NYSAC)です(公式ジャッジはニューヨークタイムズ紙)。ライト級とヘビー級は1970年までNYSACが認定していました。

ニューヨーク州タイトルは連綿と続くLineal title ではありませんでしたが、ニューヨークは世界最大の都市というだけでなく、最大のボクシング市場でもありNYSACは一定の権威を持っていたようです。

〝鋼鉄の男〟ゼールはこの年の11月28日、NYSACミドル級王者ジョージー・エイブラムスを15ラウンド判定で下し、文句なしのUndisputed(他の誰にも王者を名乗らせない=議論する余地のない championと認められるのでした。





1941年、競馬と並んでボクシングがメジャースポーツだった時代から85年の歳月が流れ、ボクシングはマニアが支えるマイナースポーツの坂を転がり落ち続けています。

そんな現代だから〝鋼鉄の男〟の時代を思い焦がれてしまうのかもしれません。

7月11日のサンフランシスコ市庁舎前、スポンサーのビール会社はどこで、どんな銘柄のビールが提供されるのでしょうか?





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

米国で大きな需要が見込めない軽量級や、ボクシングファンに馴染みのない異邦人など不採算のファイターの切り離しを進めているトップランク。

井上尚弥や中谷潤人ら日本人ファイターとの契約打ち切り、キューバ人の軽量級であるロベイシ・ラミレスとの契約解消はその代表的な動きでした。

「軽量級のアジア人」という米国では完全〝ステルス〟の井上や中谷については、米国で手を挙げるプロモーターはいまだに現れず、今週末のTHE DAYの配信先もなかなか決まりませんでした(4月に入ってDAZNがPPVではなく無料配信することがようやく決定)。

さて、そのラミレス。2024年12月にラファエル・エスピノサに連敗してから試合枯れしていましたが、今年1月にトップランクを離れてようやく受け入れ先が見つかりました。

https://www.instagram.com/raizdboxing/



32歳のキューバ人が新たに所属するのは Raizd Boxing。ウズベキスタンに拠点を置く新興のプロモーターで、5月29日にタシケントの岩佐亮佑がムロジョン・アフマダリエフにストップされたHumoアリーナで初の興行を打ちます。

プロ入りしてからの敗戦は番狂せで3つだけですが、トップランクにはユリオルキス・ガンボアのように人気階級のスター候補に当てがわれる〝高級咬ませ犬〟としての使い道はあったはずですが、五輪2大会連続金メダリストにはそんな条件は飲めなかったのかもしれません。

契約金など待遇はかなり低い条件だったと思われますから、帝拳あたりでも手を出せそうですがあんなのとやりたい日本人は皆無。日本でも、別の意味で使い道がありません。

ちなみに5月29日のイベントには井上に敗れたムロジョン・アフマダリエフの復帰戦がメインにセットされる予定。

また、パリ五輪の7階級中5階級で金メダルを獲得したウズベキスタンで、ヘビー級を制したラジズベク・ムロヨノフもドーピングでUAEボクシング・コミッションから6月21日までの1年間のライセンス停止処分が課されていますが出場する見込み。

統括するのがUAEでないウズベキスタン・ボクシング連盟なので全く問題ないということです。JBCが永久追放したルイス・ネリもそうだったように世界的な統括団体がないということは、つまりこういうことです。






このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

【ご報告】
この度、大橋ボクシングジムを離れることになりました。
大橋会長と話し合いの上での決断です。
大橋ジムには長い間お世話になりました。
会長をはじめ、トレーナーの皆さん、スタッフの皆さん、そして同門の仲間たち。ここで過ごした時間が、今の自分を作ってくれました。
本当に感謝しております。
現時点で次の所属先は決まっていません。
ただ、ひとつだけ変わらないことがあります。
これからも世界と戦い続けます。
まだまだ自分には伸びしろがあると思っていますし、必ずベルトを巻きます。
これからも応援していただけたら嬉しいです。
お仕事やコラボレーション等のご相談はマネージャーアカウント( @andyjustice_manager )のDMまでお気軽にご連絡ください。
2026年3月29日
平岡アンディ


*****自由に移籍ができる。高額の契約金で縛られていない限り、当然の権利です。10年間お世話になってきた、選手とプロモーターの関係を超越した情もあったかもしれないジムを離れるのですから、それなりの理由があったと思います。

この発表を受けて大橋秀行会長は昨日、取材に応じ「(大切な世界初挑戦の試合前に)ビザの問題や、いろんな大変なことがあった。これからは自分で好きなように自由にやっていい。彼は実力的には世界王者になれるし、これからも協力する」と語りました.

大橋会長は開口一番、先月21日にWBA王者ゲイリー・アントゥアン・ラッセルに挑戦した際の「ビザの問題」に触れました。

世界初挑戦でビザ発給が遅れ、ラスベガス到着が試合2日前の午後までズレ込んだときに、大橋会長は「万全を期して試合10日前の現地入りを希望していたが、主催者や米国政府の事務手続きに時間がかかってしまった」と説明しましたが、国際情勢が荒れている状況でジム手続きが遅れる可能性は最初からわかりきっていたことです。

普通の民間会社は、事務手続きの遅れや空港で足止めされることも想定して準備と対応を進めています。時差や天候で大きな差がある米国西海岸への「10日前」の現地入りが万全かどうかは別にしても、穿った見方をすると大橋ジム側が手続き上の小さなミスを重ねてしまったのかもしれません。

もちろん、井上尚弥のように大きなスポンサーが付いているわけではなく「予算の範囲内」でやりくりしなければならない事情もあったでしょう。

90億円を超えるという井上尚の収入が事実なら、これを全額ファイトマネーとして井上尚だけで33.3%の30億円超が大橋ジムに入っているはずで、ある程度の予算は用意できるはずなのですが…。

別のジムなら、人気階級で世界に挑戦するアンディをもっと上手に世間に売り込んで、アントゥアンなら日本に呼べていたかもしれません。そもそも、海外遠征慣れしているような別のジムなら現状の国際情勢で事務手続きの遅れをアクシデントのように説明することはないかもしれません。

「現時点で次の所属先は決まっていません」とのことですが、軽量級とは違い米国で需要のあるクラスなので亀海喜寛や、石田順裕らのキャリアも一つのビジネスモデルでしょう。

もちろん、米国で需要のある人気階級とはいえアンディも亀海や石田と同じように〝村田諒太〟ではありません。米国のイベントに都合よく組み込まれ、対戦相手も選べません。

亀海も石田も大健闘はしましたが、大活躍したか?旋風を巻き起こしたか?となるとそうではありません。


>これからも世界と戦い続けます。
まだまだ自分には伸びしろがあると思っていますし、必ずベルトを巻きます。

これからも非常に難しいキャリアになりますが、応援しています!

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

世の中、おかしなことだらけです。

先月24日にルーベン・カスティージョが、白血球の中のリンパ球が癌化するホジキンリンパ腫で亡くなりました。享年68歳。

3月19日に葬儀、その前夜には通夜も執り行われました。

1975年にプロデビュー、1997年に引退したカスティージョを知る人はよほどのボクシングマニアです。

その余程のマニアは1980年1月にアレクシス・アルゲリョ(フェザー級)、同年4月にサルバドール・サンチェス(フェザー級)、1983年2月にファン・ラポルテ(フェザー級)、1985年4月にフリオ・セサール・チャベス(ジュニアライト級)のWBCタイトルに挑戦していずれも敗れた挑戦者の名前を記憶していたということになります。

タイトルに4度アタックしましたが、いずれも失敗に終わったWBCの元世界ランカーを記憶している人は普通はいません。

スクリーンショット 2026-03-30 17.22.48

リング誌の1976年アワードで ⬆︎Progress Award of the Year に輝いていますが…


“He may not have won his title fights, but Ruben was always recognized and respected by the WBC and his peers.


しかし、ボクシング記者のミッシェル・チョンは「世界タイトルには届かなかったが、ルーベンはいつもWBCと仲間たちから評価され、尊敬されていた」そうです。

そして、このカスティージョの葬儀費用は、WBCが全額負担したというのです。

ただでさえ存在意義がわからない承認団体がランキングだけでなく、葬儀費用まで独自の解釈でデタラメに支出してるのって…まともな感覚なら、JBCはWBCの認可取り消しです。人からわけのわからない承認料を徴取して、勝手に何に使ってるんだということです。

もちろん、WBCが「今後はランキング経験のあるボクサー全員の葬儀費用を負担します」というなら話は別です。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ