カテゴリ: リング誌から

リング誌をはじめ数多くのメディアで、1992年から2001年までPFPをクルーズしたリカルド・ロペスをアンダーカードに従えた女性ボクサー、クリスティー・マーティン。

この事実から、私のような頑迷なボクシングファンが読み取ったのは「軽量級は米国では女子以下の偏見で見られるキワモノ」ということが一つ。

そして、もう一つがクリスティー・マーティンが米国リングで、軽量級のトップでは前座に回るしかないスターだということでした。

野球でもサッカーでも、そしてボクシングでも男性の陰に隠れ、ときには好奇の目で見られながら女子のプロスポーツ選手は存在してきました。

女子サッカーはメジャースポーツに激しくアプローチしている米国だけでなく、欧州でもすでにスター選手が誕生しています。

麗しきスターたちの系譜、その黎明に大きな爪痕を残したのがクリスティー・マーティンでした。



本日、米国で封切られる「Christy」は、彼女を主人公にしたボクシング・ロマンです。

デヴィッド・ミショッドが監督、主演はシドニー・スウィーニー。トロント国際映画祭でも好評価を得ていることからも、来年のアカデミー賞でもひと暴れしそうな作品に思えます(私はまだ見ていませんが)。



それにしても、ボクシングを題材にした映画の多さは、メジャースポーツの野球やサッカーと比べても全く引けをとりません。

リングの中と外のドラマは、クリエーターたちの想像力を刺激してやまないからでしょう。

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来年、井上尚弥と中谷潤人が日本最強決戦の舞台で雌雄を決します。

欧米での関心が非常に低い階級だけに、マニアの注目度は高いものの、ポテンシャルオッズはほとんど見当たりません。

skybetやpaddy powerは井上尚の勝利が3/10(1.3倍)、中谷13/5(3.6倍)と明白にモンスター有利ですが「中谷に分がある」という見方も多く、実際のオッズが立ち上がればもっと接近した数字になるはずです。

そして、テレンス・クロフォードとオレクサンデル・ウシクの動向にも左右されますが、このビッグファイトの勝者がPFP1位の座をつかむ可能性があるばかりか、2026年のFighter Of The Yearの最有力候補に躍りでるはずです。

2020年代ディケイドのPFPでも勝者が1位は難しいかもしれませんがトップ5には数えられるのではないでしょうか?

というわけで、まだ丸4年を残している2020年代ですが、このディケイドのPFPを独断と偏見で考えてみます。

PFPは何の権威もない妄想のお遊びです。一部のお馬鹿さんたちが唱える「(販売不振と経営難とスキャンダルにまみれた)リング誌のPFPには権威がある」というのは、なんとも矛盾に満ちた非常に面白い言葉です。

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Boxing’s Pound-For-Pound list is already a mythical, mercurial concept given to contention and conflict.

その前に…1960年代PFPから2000年代までの5つのディケイドのトップ5を、リング誌90周年特集号(2012年2月号)から振り返ってみましょう(実際には10位まで発表されています)。


◾️1960年代◾️
①エデル・ジョフレ
②モハメド・アリ
③カルロス・オルチス
④エミール・グリフィス
⑤ファイティング・原田

※原田は超軽量級がフライ、バンタム、フェザーの三つしかなかった時代に、史上初の2階級制覇(もちろん、いずれもUndisputed champion)。それだけでもトップ10確実の偉業ですが、原田には「ジョフレに勝った唯一の男」という称号まで加わるのです。

「誰に勝ったのか?」という問いかけの前には、井上尚も中谷も原田に追いつくことは永遠に不可能かもしれません。



◾️1970年代◾️
①ロベルト・デュラン
②カルロス・モンソン
③ホセ・ナポレス
④アレクシス・アルゲリョ
⑤ミゲール・カント

※⑩位に具志堅用高。このディケイドは⑤カント(フライ級)、⑥ウィルフレド・ゴメス(ジュニアフェザー級)、⑦カルロス・サラテ(バンタム級)、そして⑩具志堅(ジュニアフライ級)とジュニアフェザー級以下から5人が雪崩打った「いかにもPFP」な10年間でした。

井上信者の中にはいまだに「PFPは軽量級に厳しい」となんの根拠もなく盲信している人がいそうですが、大間違いですよ。



◾️1980年代◾️
①シュガー・レイ・レナード
②マービン・ハグラー
③サルバドール・サンチェス
④マイケル・スピンクス
⑤トーマス・ハーンズ

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※トップ5のうち3人、①レナード、②ハグラー、⑤ハーンズがFOUR KINGS、残る1人のデュランは70年代の①位。液状化するはずの後世でこの高評価ですから、あのラウンドロビン(総当たり戦)がいかにスペクタクルであったか、当時を知らない人にも想像していただけるのでは?

10年後、20年後…いや5年後ですらクロフォードがどんな手の平返しにあっているか、想像するだけで可哀想になってしまいます。

クロフォードのキャリア、マッチアップには小さな小さなスペクタクルしか認識できません…早く、旬の本当に強い相手と戦わなければならないのですが…。



◾️1990年代◾️
①パーネル・ウイテカー
②ロイ・ジョーンズJr.
③ジェームス・トニー
④イベンダー・ホリフィールド
⑤フリオ・セサール・チャベス


※チャベスは80年代でも⑥位にランクイン。ロイも00年代の⑦位と、ディケイドまたぎで活躍したファイターは。この手の評価では不利です。


◾️2000年代◾️
①マニー・パッキャオ
②フロイド・メイウェザー
③バーナード・ホプキンス
④エリック・モラレス
⑤ジョー・カルザゲ

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※80年代の偉大なラウンドロビンが軽量級で具現化されたのが、この時代です。①パッキャオ、④モラレス、⑥ファン・マヌエル・マルケス、⑧アントニオ・マルコ・バレラ…なんとトップ10のうち4人が〝パッキャオと愉快な仲間たち〟という狂気の10年間でした。

ちなみに⑩位にポンサクレック・ウォンジョンカムの名前も。





ーーー2010年代はリング誌の販売不振と経営難がさらに深刻化、多くの企画がリストラの憂き目に遭ってしまいます。

そんなわけなので、2010年代は独断と偏見で考えます…!





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リング誌は、2022年に慢性的な販売不振と経営難から廃刊に追い込まれてしまいました。

しかし、サウジアラビア総合娯楽庁が買収、2024年12月号から復刊します。

本部はサウジアラビア、振込先はUAEのドバイ。当然のことながら、完全にサウジ資本がコントロール、スター選手を集めた集合写真ではオーナーのトゥルキ・アル=シャイフ長官が最前列の真ん中に立ち、表紙を飾ることも。

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この「The Ring magazine」という雑誌は、間違いなく総合娯楽庁の広報誌です。それでもそれなりに楽しめる人は定期購読してもいいんじゃないですかね。

私は長年の読者ですが、定期購読を更新しない予定です。

デジタル版は無料ですが、これはカネ取っちゃいかんです(個人の感想です)。

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「ウィリー・ペップvs井上尚弥」の仮想対決の記事も…面白くない…。←個人の感想ですよ。


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2022年11月&12月合併号で廃刊となったリング誌でしたが、サウジアラビア・総合娯楽庁が完全買収、2024年12月号から復刊してもうすぐ一年が経ちます。

デジタル版は無料で見れるはずなので、みなさまもすでに閲覧されていることと思います。

さらに、日本語にもすぐスイッチできる仕様になっていますが、こっちの訳は酷すぎます。

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⬆︎リング誌最終号。

⬇︎サウジ版のリング誌最新号。

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1922年創刊のリング誌は歴史はあっても権威はない、販売数も伸びない、今ひとつパッとしない専門誌でしたが、米国のサブカルチャーであるボクシングをとらえ続けた記事には非常に興味深いものも多く、高校時代からずっと愛読してきました。

私が年をとって耄碌したせいもあるのでしょうが、サウジ版リング誌は批判精神のカケラもないつまらない事後報告の記事に溢れています。

米国版リング誌の最期が「1922年の創刊号でロンズデール卿とテックス・リカード、2人のプロモーターを表紙にしてしまったが、本当はジャック・デンプシーにすべきだった」と、断末魔の悔恨を書き記していました。

しかし、サウジ版リング誌では〝長官〟があちこちで登場。それだけでも、あの悔恨を引き継いだ雑誌ではないことがよくわかります。

米国版ではほとんどなかった広告も、観光業を筆頭に中東の企業がファッション誌のようにあふれています。

サウジの雑誌で、振込先はUAEですから、当たり前ですが、この雑誌を「米国の老舗ボクシング専門誌」「権威あるリング誌」と表現している日本のメディアにはうんざりしてしまいます。

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米国版ではウィニングやレイジェス、アディダスなどボクシングのギアを作っているメーカーの広告が載っていましたが、そう言えばサウジ版では一つも見当たりません。

グローブやヘッドギア、シューズなどのメーカーの広告は全く見当たらないのに、旅行会社や航空会社など中東の企業広告は盛りだくさん…。

leftovers(強い王者が食い散らかした残飯)、cream puffにchump(穴王者)、cherry pick(雑魚狩り)…そんな批判精神に溢れた言葉を最初に見たのはリング誌でしたが。。。

そして、記事の質は地に落ちた…というよりもジャーナリズムの香りは完全無臭。アーカイブがいまだに公開されずcoming soon のままなのは「現在検閲中」ということですかね?



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2025-10-25
at  MGM Grand Garden Arena
in  Las Vegas, Nevada

brought to you by
Amazon Prime

  • 【Under-card】
  • O'SHAQUIE FOSTER VS STEPHEN FULTON
  • JESUS RAMOS JR. VS SHANE MOSLEY JR.
  • ISAAC LUCERO VS ROBERTO VALENZUELA JR.
  • FRANK MARTIN VS RANCES BARTHELEMY


27歳のWBCジュニアミドル級王者〝The Towering Inferno〟フンドラと、2019年にパッキャオにWBAウエルター級タイトルを奪われてから6年以上もタイトルから遠ざかり、そもそも2020年代になって2試合しかリングに上がっていない36歳のサーマン。

フンドラの勝利が2/9(1.22倍)、サーマン10/3(4.33倍)というウィリアム・ヒルの見立ては当然です。

ただ、PFPにも数えられたサーマンはよくまとまったボクシングをします。まだ、KO負けがないことからも一定のタフネス、装甲も持ち合わせています。




迎え打つフンドラは異形の長身が目を引きますが、攻撃力も防御も非常に中途半端なファイター。長いリーチが不利になるクロスレンジでの打撃戦に簡単に誘い込まれる不用意さから、エリクソン・ルービンに痛烈なダウンを喫し、ブライアン・メンドサにはテンカウントを数えられるKO負け。

長身とリーチを生かしたボクシングが全くできないため、その評価はタイトル奪取後も低迷していましたが、今年7月のティム・チューとの再戦で長い距離を使ったボクシングで快勝。ESPNとリング誌で2位と「最強ではないが最弱でもない」ポジションにつけています。

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⬆︎パイプ椅子に上がってタワーリングインフェルノを見下ろすサーマン。良い演出です。


ボクサーとしての実績はサーマンが断然上ですが、ボクサーとしての現在地点を考えると、やはりフンドラが有利。

サーマンは「フンドラが特殊なボクサーであるのは認める。しかし、五輪に出場するような才能か、といえばNOだ。パッキャオが繰り出すような複雑なフェイントも持っていない。ルービンに大苦戦し、メンドサにカウントアウトされたのが、彼の本当の姿」。

フンドラは「KOは狙わないが、私がサーマンを初めてストップするかもな。サーマン?正直、とっくに引退してたと思ったよ。この試合で心置きなく引退させてやる」。



サーマンにも十分チャンスがある試合ですが…はたして?

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WBAは井岡一翔をバンタム級9位にランクしました。

間違いなく、井岡サイドから転級に関するお知らせ、つまり〝魚心〟があってのWBAの〝水心〟です。ボクシングの世界では当たり前です。

WBAだって商売、貧乏国の選手よりも富裕国のスターにタイトルを獲って欲しいと考えるのは、当たり前です。

ボクシングの世界では当たり前の常識は、他のスポーツでは非常識ですが、それはボクシングをスポーツと考えるからであって、スポーツではない興行だという事実に気づけば非常識でもなんでもありません。

バンタム級でもアルファベット王座に就けば、日本人初の5階級制覇。井上尚弥と中谷潤人による絨毯爆撃を受けて焼け野原状態のバンタム級なら、チャンスは十二分にあるでしょう。



さて、その井岡に連勝したWBAジュニアバンタム級王者フェルナンド〝プーマ〟マルチネスが、さらなるビッグファイトに挑みます。

ときは11月22日、舞台はサウジアラビアの首都リヤドはANBアリーナ。統括コミッションは英国ボクシング管理委員会(BBBofC)。

イベントタイトルはNight of the Champions(王者たちの宴)。全く同じタイトル(興行の中心)でWWEもサウジで大興行を開催、世界的な注目度はボクシングの惨敗…というかボクシング界もUFCとWWEのグループ企業に牛耳られている時点で勝負の対象ではありませんが、DAZNが世界に配信してくれます(WWEはNetflix)。

ボクシング人気がゼロに等しいサウジでの開催、メインカードがどれになるのかわかりませんが、WBCライトヘビー級(©︎デビッド・ベナビデスvsアンソニー・ヤード)、WBOウエルター級(ブライアン・ノーマンJr.vsデビン・ヘイニー)に加えて、日本のボクシングファンが最も注目するのはジュニアバンタム級の3団体統一戦(WBA©︎マルチネスvsWBC /WBO©︎ジェシー〝バム〟ロドリゲス)です。

PFPトップ5を回遊し、今年のFighter Of The Yearの有力候補にも挙げられているバムは、現時点で井上に次ぐ軽量級の惑星。

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リング誌10月号では、34歳のアルゼンティーナが25歳のPFPファイターを相手に番狂せを起こすと、PFP入りはもちろん、アルゼンチンの伝説的なファイターに並ぶ評価を受けると特集しています。

パスカル・ペレス、ビクトル・ガリンデス、カルロス・モンソン、ニコリノ・ローチェ、セルヒオ・マルチネスーーーう〜ん、彼らと肩を並べるには井岡とバムに勝つくらいでは物足りない気もしますが…。

現在のオッズはバムの勝利が1/8(1.125倍)、プーマ5/1(6倍)。

圧倒的な掛け率の通りにバムが勝てばFighter Of The Yearは難しいかもしれませんが、PFPランキングはまたジャンプするでしょう。


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Saturday 25, October 2025
MGM Grand, Grand Garden Arena, Las Vegas, Nevada

commission:Nevada Athletic Commission

promoter:Tom Brown (TGB Promotions),
     Sampson Lewkowicz (Sampson Boxing)

matchmaker:Tom Brown,
         Whitfield Haydon

view on Amazon Prime Video PPV 



日本での放送はどうなるのか?気になるイベントです。

メインではWBCジュニアミドル級王者セバスチャン・フンドラが、古豪キース・サーマンを迎えます。

サーマンが番狂せを起こし、ティム・ブラッドリーに続く「パッキャオにしか負けなかった男」になれるか?

フンドラ勝利が1/4(1.25倍)、サーマン3/1(4倍)

アンダーカードでは、WBCジュニアライト級王者オシャーキー・フォスターにスティーブン・フルトンが3階級制覇をかけて挑みます。

スター候補と期待されながらスペクタクルな勝利がないフォスターにとってフルトンは格好の生贄(ESPN)ですが、意外にもオッズは拮抗してウィリアム・ヒルでは両者とも10/11(1.91倍)。


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今夜ご紹介するのは10年前の今頃に、我が家のポストに届いたTHE RING MAGAZINE NOVEMBER2015。

この年は6年以上も熱望され続けた「マニー・パッキャオvsフロイド・メイウェザー」がついに実現。

すでにボクシングは完全マイナースポーツでしたが、この試合だけは特別。ボクシングの枠を超えて、一般スポーツファンまでが興味を持った最後のボクシングマッチになりました。

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CNNスポーツなど一般スポーツメディアがボクシングの試合を報じるのは珍しいばかりか、試合決定からカウントダウンタイマーをセット、毎回両者の言動やチケット価格、ラスベガスのホテルや駐機場の価格が暴騰、空きがないことを大きくレポート。マイナースポーツのボクシングではありえない、異例の扱いでした。


この号のリング誌PFPの1位はもちろん、メイウェザー。

続いて2位:ローマン・ゴンサレス、3位:ウラジミル・クリチコ、4位:ゲンナジー・ゴロフキン、5位:ギレルモ・リゴンドー、6位:パッキャオ、7位:セルゲイ・コバレフ、8位:テレンス・クロフォード…そして9位が〝神の左〟山中慎介!10位が〝KOダイナマイト〟内山高志!







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日本時間の白昼に、私たちが見たUndisputed Super-Middle weight championship。番狂せが起きましたが大番狂せではありません。

専門家予想では最も多くの支持を集めた「テレンス・クロフォードの判定勝ち」に終わったのですから、ある意味で番狂せとも言えないかもしれません。

さて、この試合の事実だけを12ラウンド制で拾い上げると。。。。。

【ROUND1】2025年バージョンのカネロ・アルバレスとテレンス・クロフォードが対決した。

35歳のカネロに37歳のクロフォード。全盛期同士の対決と考える人は皆無。

しかし…カネロの鈍足は重い枷をはめられたようでしたが、クロフォードのフットワーク、ボディワークは見事でした。懸念された〝トムとジェリー〟ファイトではなく、打撃戦にも応じて科学的に戦って見せた。



【ROUND2】クロフォードは実質21ポンドも重い階級に挑戦し、成功した。

スーパーミドル級を主戦場にするカネロに、ジュニアミドル級で1試合しかこなしていない、クロフォードはウエルター級から数えると21ポンドも増量して挑んだ。

「スーパーミドルのリミットにこだわらず、軽く仕上げるべき」という多くの識者の意見を無視して、前日計量をカネロと同じ167ポンド1/2(75.97kg)で秤を降りたクロフォードの肉体改造はマイケル・スピンクスやマニー・パッキャオに並ぶ偉大な成功。



【ROUND3】ラスベガスは永遠にカネロを愛す。

サウジアラビアが主導するメガファイトは、オレクサンデル・ウシクのケースから「ジャッジは公正」と考えられていたが、オフィシャルのスコアはカネロに寄り添っていた。

115−113の1ラウンド差はもちろん、116−112のスコアも考えられない。



【ROUND4】クロフォードの対戦相手の質にはもう文句をつけられない。

クロフォードはエロール・スペンスJr.に続いて、2人目の現役PFPファイターも明白に撃破。カネロは2度のFighter Of TheYearにも選出され、PFPキングにも2年間君臨した文句なしの強豪。

スペンスもカネロも勢いを失った時期とはいえ、それを差し引いても明白な勝利を二つ並べたクロフォードの評価は爆上する。



【ROUND5】カネロはスーパーミドル級で初めて苦戦を強いられた末に、敗れた。

168ポンドで圧倒的な存在感を示してきたメキシカンが、何もできないままにアフリカーナ・アメリカンの軍門に降った。

フロイド・メイウェザー、ドミトリー・ビボル、そしてクロフォード。3つの黒星の中で、最もレガシーを傷つけられた敗北だった。



【ROUND6】10年ぶりの重要な試合だった。

クロフォードがスターかどうかはさておき、あらゆる意味で「フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ」以来のボクシング界の最高決定戦だった。

この勝利がクロフォードの評価にもたらす恩恵はあまりにも大きい。



【ROUND7】米国ボクシングは羅針盤を失った。

カネロが敗れたことで、米国ボクシング市場は最大のスターを失い、クロフォードでは後継者になれない。

モハメド・アリからシュガー・レイ・レナード、マイク・タイソン、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスーーー常にマーケットを牽引してきたスターの系譜がついに途絶えた。

スポーツライクなメガファイトは規模を縮小、茶番劇がますます横行する。



【ROUND8】カネロはデビッド・ベナビデスとは戦わない。

試合後に再戦を希望していたカネロだが、この試合で失ったものはもう取り返せない。カネロの価値は下落した。

長年、対戦を回避してきたベナビデスとのメキシコ対決の賞味期限(というか消費期限か?)は完全に切れた。



【ROUND9】クロフォードのムーンショットはこれ限り。

クロフォードは〝パッキャオ路線〟を走ってライトヘビー級に乗り込むには年を取り過ぎた。

カネロという勝てば現代最大のハイリターンを手にしたいま、ジャロン・エニスのようなハイリスク・超ローリターンとの対戦は全く意味がなくなった。

このまま勝ち逃げも考えられる。



【ROUND10】カネロ人気はこれが最後の大花火。

アレジアントスタジアムには想定以上の7万人以上が詰めかけた。カネロの久しぶりのKO劇を期待した多くの観客は、熱中時代の終焉を感じ取ったはず。カネロの夏は完全に終わった。

そして、井上信者は本物のラスベガスを見てしまった。



【ROUND11】クロフォードはPFPキングに返り咲く。

クロフォードの素晴らしいパフォーマンスは、ウシクのように圧倒的不利な現実の体重で見せたものではなく、スーパーミドル級の体重で鈍化したスーパーミドル級の王者を翻弄したもの。

しかし、ウシクが一度も倒していない現役PFPファイターを2人倒したクロフォードにはキング復帰への証明書が発行された。



【ROUND12】認定団体は追い詰められた。

「WBA、WBC、and IBF!Undisputed heavy weight champion of the world!」。マイク・タイソンらのリングコールのように、コレクションしたベルトの認定団体を紹介されるのが常でした。

しかし、今日の試合でコールされたのはRing magazineだけ。アルファベット団体のデタラメランキングと、デタラメタイトルマッチが、ボクシングの地位を貶めているのは明らかで、そこにメスを入れないと「ボクシングの復活」(トゥルキ・アル=シャイフ長官)など、おぼつきません。

いまだに「世界ランカーは強い」「世界1位は強い」と思い込んでいるファンもいますが、認定団体を喜ばせるだけです。また「階級が細分化されているのは正しい意味がある」というのも大間違いで、クルーザー級以外の水増し階級は廃止、UFCの8階級にクルーザーを加えた9階級が理想です。

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Saturday 13, September 2025
  
Allegiant Stadium, Las Vegas, Nevada, USA
commission Nevada Athletic Commission
matchmaker Charles Bosecker
media:Netflix

Undisputed Super Middle weight Championship

©︎Saul Alvarez vs Terence Crawford


舞台はアレジアントスタジアム。


プロモーターは表立ってはいませんが、サウジアラビア総合娯楽庁です。

前日計量と記者会見が行われたラスベガスの新名所フォンテンブローでトゥルキ・アル=シャイフ長官は、1億ドルとされるカネロの最低保証について質問されると途端に不機嫌になりました。

「どこからでた数字か知らないが、我々がカネロと契約したんおはそんなみみっちい数字ではない」と1億ドルを優に上回ることを示唆。

ネバダ州アスレティック・コミッションにはファイトマネーの3%、ネバダ州にも税金が収められるわけです。もちろん、クロフォードの報酬からも同様ですから、ネバダ州とラスベガスはウハウハです。

サウジアラビアの長官は、この試合はUFCのトップファイター同士の対決よりも注目を集めており「ボクシングはもいう人気がない」というのは間違った認識だとも。

「UFCファイターは選手寿命が短く、カネロやクロフォードのように長いキャリアを使ってレガシーを積み重ねることが出来ない。ボクシングがあらゆる面でUFCの下の格闘技というのは明らかに間違った認識だ。UFCとは今後も協力しあって、まともなランキングやチャンピオンシップ制度を取り戻し、ボクシングが失ったスポーツとしての威厳を回復させる」。

4人4色のデタラメランキングを作成する認定団体を業界から追放するのは難しいでしょうが、リング誌のランキングとチャンピオンシップを全面的に打ち出して、徐々に認定団体の存在を希薄化させていく方針です。



さて、前日計量は王者と挑戦者がともに167ポンド1/2(75.97kg)でクリア。

スーパーミドル級を主戦場とするカネロはいつも通り。

しかし、クロフォードはキャリア最重量、前戦(153ポンド1/2)からは14ポンド(6.35kg)、2試合前(146ポンド3/4)から20ポンド3/4(9.41kg)もバルクアップしてきました。

分母が違うとはいえ、14ポンドは井上尚弥がジュニアフライ級からジュニアフェザー級までの長旅で増量したのと同じ重さです。



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