カテゴリ: またあの冬がやって来る!

それにしても、ロコ・ソラーレは不思議なチームです。

国内の代表決定戦でも、土壇場からの大逆転で五輪切符をつかみ取り、北京でも逆転デンマーク、ROCに劇的な逆転勝ち。

本当にしぶといチームですが、昨日は韓国に敗北。それにしても、日韓戦はいつもターニングポイントです。

1位スイスがスウェーデンに不覚を取られただけに、勝ちたかった。

それでも、一次リーグ2位につけるロコ。

残るは1位のスイス、星勘定で日本とスウェーデンに並ぶ2位の米国、5位の英国との対戦。

準決勝に進む上位4チームに入れるか?

残り3試合、七転八倒しながら最後の最後に生き残ってきたロコの本領発揮を期待します!
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羽生結弦。

まず、偉大なアスリートであること。震災から立ち上がる東北のアイコンということ。

問答無用で尊敬するしかない対象であることは認めますが、正直いうと好きなアスリートではありませんでした。

「採点競技」で「おばちゃん」が騒ぐ斎藤佑樹や石川遼と同じ臭いがする。

男子のスポーツなのにヒラヒラしてて「キモい」。

「採点競技」「おばちゃん」「キモい」…全部、私の主観です。

愛読するSports Illustrated誌などの記事を読むと、彼がどういう存在なのかを客観的に知ることができましたが、それでもやはり私が惹きつけられるアスリートではない、と決めつけたいました。

彼が今日、午後6時半から記者会見を開き、フリーの前日に捻挫をして、歩くのもままならない状態だったことも明らかにしました。

このタイミングで、何が目的なのかはっきりさせないまま、27歳の五輪連覇王者が開いた会見には、多くの人が戸惑ったり、敗者の言い訳に聞こえた人もいたでしょう。

彼のことを全く知らない、むしろ遠ざけていた私がこんなこと書くのはおかしな話ですが、あの会見は100%言い訳を目的にしたものではありません。

あの次元の人が、そんなつまらないことするわけがないのです。

大きな故障をしていたことを試合後に明らかにする、なんていうのはどうしても言い訳にしか聞こえません。
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「減量苦で立ってるのも精一杯だった」(メッグン・3Kバッテリー)。「肩を怪我していたのに、ドーピング検査に引っ掛かるから痛み止めも飲めなかったん」(フロイド・メイウェザー戦)。「風邪をひいててずっと調子が悪かった」(ジェフ・ホーン戦)。

ロベルト・デュランは論外にしても、マニー・パッキャオや高橋尚子も〝言い訳の百貨店〟でした。

予定されていた記者会見で言い訳した彼らと、自分で記者会見を開いた今日の羽生でしたが、彼らは同じ種類のスーパースターです。

自分をずっと応援してくれている人たちに、普通に何があったのかを報告する、そんな気持ちだったに違いありません。

だから「負けた言い訳」と受け止められるかもしれないことをわかっていても、全く恐れずに平然と話すのです。

普通のアスリートは、怪我は隠します。ましてや、試合直後にそれを、自分から口にすることはありません。

普通なら。

しかし、彼らは普通ではありません。

パッキャオはフィリピンの王様で、高橋は日本の女王様で、羽生は王子様です。

下界の人間とは感覚も感性も神経も、全く違うのです。
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羽生についていうと、勇気の極彩色を重ね塗りしたフリーの演技、あれは「SPで出遅れたから一発逆転を狙ったのか?」それとも「SPで1位だったとしても4Aに挑んだのか」、こんなことが気になるのは野暮にもほどがありますが、もし、後者だとしたら…。

私は、羽生結弦の本質を知るのが遅すぎたことを激しく後悔するしかありません。

彼は〝パッキャオ〟だったのかもしれません。

「SPで1位だったとしても4Aに挑む」。

それは、こういうことに似ています↓。

「SP(軽量級:マルコ・アントニオ・バレラやエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスら)で1位だったとしても、4A(オスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザーら)に挑む」。

実は、羽生の記者会見はオンタイムで見れませんでした。

会社のバカどもらが「何がしたかったんですか?」というから「羽生の動機や目的がお前にわかるか」と答え、別のバカの「あれ。言い訳ですよね?」という問いには「お前が言ったら言い訳。では羽生が言ったらどうなる?」と禅問答。

負けた後に、また良い意味でモロモロ引きずる…ってのはスーパースターの特権ですわ。 
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22:00~【スピードスケート】

出場予定:女子500m 小平奈緒、高木美帆、郷亜里砂。

高木美帆、自己ベストの37秒12を叩き出して暫定1位!





高木、銀メダル!お見事です!!!

郷は15位、小平は17位。

小平がレースを終えたのを見たイ・サンファが泣いていたのも印象的でした。



それにしても、金のエリン・ジャクソン。見るからに速そうで、実際速かった…。 

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冬のオリンピックでジャッジやルールの問題が目立って噴出するのは、今に始まったことではありません。

採点競技が多い大会の宿命です。

試合以前の選手選考でも「瀬古利彦」のソウル1988や、有森裕子のバルセロナ1992などのマラソン、最近でも、2枠の東海地区代表に東海大会で準優勝した聖隷クリストファー高校が選ばれなかったことが大きな波紋を巻き起こしました。

選考や不可解な採点への不満は、その基準が明確でないことだけでなく、主催者や有力選手への忖度が透けて見えたときに爆発します。

ボクシングにおけるカネロ・アルバレスの〝ラスベガス判定〟や〝タイの秤〟に、球技で目につく〝中東の笛〟。

北京の平野歩夢の採点や、高梨沙羅の失格はジャッジの能力不足や、検査方法がブレブレだったことから混乱を招きましたが、スピードスケートショートトラックなどでは〝中華採点〟だという非難が沸き起こっています。

ラスベガスのジャッジがカネロに買収されているとは思えませんし、〝中東の笛〟〝中華採点〟などの地元判定に明白な力が作用しているとは、状況証拠もない段階では考えたくありません。

どんな環境でも公正な判断を下すのがプロのジャッジですが、地元選手への大声援に代表される会場の空気を完全に遮断するのは非常に難しい作業です。

議論を呼ぶスコアが出てしまうのは採点競技の宿命、ボクシングでは採点だけでなくレフェリーストップのタイミングで異論反論が巻き起こることも珍しくありません。
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「平野歩夢の2回目」では、米国メディアが怒りもにじませた異議を爆発させたのに対して、日本の解説陣とメディアの反応は非常に穏やかなもので、「あの採点にも一理ある」というような説明までなされました。

第三国である米国があれほど強い声を上げてるんだから、当事国なら日本はもっと抗議の姿勢を明白にすべきだった、韓国のように、という意見もあります。

個人的には日本の性善説を大前提とした良い意味での寛容さ、悪い意味での曖昧さは嫌いではありません。

マニー・パッキャオは「判定になればあとは神の思し召し。どんな結果であろうと受け入れる」と語り、村田諒太はアッサン・エンダム第1戦で性善説に依拠した「そのスコアもありうる」という潔さを見せました。

パッキャオや村田の姿勢は素晴らしいと思います。

しかし、アジア的な寛容や曖昧が当たり前にまかり通るルールや採点基準、検査体制を野放しにして良いわけがありません。

まずありき、なのは公正明確なルールと採点基準、検査体制です。

平野の言葉が問題解決の道筋を正確に示してくれています。

「スノーボードは幅広くて、色んなスタイルあるからこその魅力、自由さが1つのかっこ良さとしてあるが、それはそれとして切り分けるべき」

「競技の部分では競技の高さ、グラブ、そういうものを(誰がジャッジしても同じように)計れるように整えていくべき。ジャッジの評価は、そういう意味でまだまだちゃんとしていない」。

「選手が最大のリスクを抱えてやっているものに対して、もっと明確でわかりやすい評価基準でジャッジするべき。他の競技のように新しいもの(ビデオやAIなど)の導入も考えていい。大会と大会ではないものきりわけた上で、しっかりするべき時代になってきたんだと思う」。

「競技が終わった瞬間に誰の目にも勝者がわかるのが常識」だという、スポーツの原点を「採点競技だから仕方がない」と諦めてはいけません。

競技を終えたフィギュア選手やボクサー、チームが、心配な顔でスコアが読み上げられたり、出場校発表の知らせを待って、結果が出た瞬間に喜びを爆発させたり、落胆に沈む、なんて不条理な光景はスポーツではありません。

〝採点競技〟でも競技が終わった瞬間に、選手も観客も勝者が誰なのかが確信できなければなりません。そうでなければ、どうしたらそこに辿り着けるのか、どうしたら近づけるのかを追求しなければなりません。
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6日のノーマルヒル(NH)で金メダルを獲得した小林陵侑が、今夜ラージヒル(LH)に出場、日本人初で世界でも過去に3人しか成功していないジャンプ2冠に挑戦します。

2冠王を掴んだ3人は1988年カルガリーの〝鳥人〟マッチ・ニッカネン(フィンランド)、2002年ソルトレークと2010年バンクーバーのシモン・アマン(スイス)、2014年ソチのカミル・ストッフ(ポーランド)。

日本では1972年札幌の笠谷幸生がNHで金、LHで7位。1998年長野の船木和喜はNHで銀、LHで金と2冠を逃しています。

そもそも、五輪のジャンプ競技はNH・LHともに日本を例外にフィンランド、ノルウェー、ポーランド、スイス、オーストリア、ドイツ、チェコスロバキア、ロシア(ソ連)のヨーロッパ8カ国しか金メダルを獲っていない(メダルも日本とこの9カ国しか手にしていません)という排他的な超エリートリーグです。

歴代メダリストのリストを見ると、日本は北欧のどこかにある国だと勘違いしてしまうかもしれません。

日本のジャンプ、凄すぎます。

11日の予選は9位通過の小林ですが、ジャンプ台について「NHと比べたら攻略は簡単だと思う」と自信を見せています。

今季のW杯で7勝を挙げて個人2位につける小林の強敵は、予選ワンツーのマリウス・リンビクとハルボルエグネル・グラネルのノルウェー人。

ジャンプは風が大きく影響する競技。小林のジャンプのときにどんな風が吹くのか、気になって仕方がありません。

大きく不利になるような風さえ吹かなければ、日本人初の大偉業は十二分に期待できます。

飛べ!跳べ!翔んでくれ! 小林陵侑!!!
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他の国ではありえないレベルで、人種と価値観が入り乱れている米国での「日本人アスリート知名度番付を勝手に作ってみる」なんて、馬鹿にもほどがあります。

しかし、馬鹿なのでアメリカ合衆国を強引に均質化したつもりになって、独断でランキングしてみました。
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第1位:大坂なおみ…これはどうしようもありません。文句無し。

米国という国境を超えた「地球」で見ても、最も有名な日本人アスリートは彼女です。



第2位:平野歩夢…「←これが言いたかっただけだろう?お前」と問い詰められれば、その通りです。米国メディアがショーン・ホワイトの引退を名残惜しみまくる中で、ホワイト最後の大会で金メダルを取った日本人。

ショーン効果と言われるとそれまでですが、瞬間的とはいえ露出度最大風速は大。


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第3位:松山英樹…日本での知名度も含めて過小評価されていますが、世界的メジャー競技のトップ選手。



第4位:八村塁…米国No.1人気競技のスター選手。今後の活躍によっては、大坂を超える可能性もあり。

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第5位:大谷翔平…野球ファン限定なら1位も窺えたかもしれません。日本での存在感は大坂をも大きく凌駕する超人。


英国BBCでも「米国野球界のセンセーション」と紹介されましたが、欧州のスポーツファンにとっては「誰、それ?」です。



第6位:錦織圭…メジャー競技の恩恵を受ける、報酬だけなら大坂に次ぐ日本人アスリートセレブ。米国を超えて欧米基準ならさらに順位が上がるはずです。

4大大会で優勝するようなことがあると、テニス選手で1位、2位独占も十分ありえます。



第7位:ダルビッシュ有…アーリントン(テキサス州)、ロスアンゼルス、シカゴ、サンディエゴと米国各地でプレーしている変化球マニアは、2020年に最多勝タイトル獲得。米国野球ファンで知らない人はいません。



第8位:前田健太…メジャー6年間で59勝を挙げている、いくつものスライダーを操るスターター。米国野球ファンで知らない人は少数派でしょう。



第9位: 羽生結弦…ネーサン・チェンを知るスポーツファンなら彼の名前も知っているでしょう。ただし、フィギュアの人気はアジアと欧米はシーソー関係。

そして、この種目は伝統的に女子の方が大きな注目を集めてきました。



第10位:笹生優花…フィギュアとは逆にゴルフは男子が〝メジャー〟ですが、ESPNの扉ページを飾るなど露出度は大。
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スノーボード 男子ハーフパイプ決勝。

平昌五輪銀メダルの平野歩夢が1440を3度飛ぶ史上最高難易度の構成を成功、スノーボード日本史上初の金メダルの大偉業を成し遂げました。
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平野は縦3回転・横4回転の超大技「トリプルコーク1440」を五輪史上初めて成功。

競技後のインタビューで平野は「最後の最後で出しきれて、2本目の点数が納得していなかったので、そういう怒りが自分の気持ちの中で、最後の力になったのかなと」とコメントしました。

今大会でショーン・ホワイトが引退とあって、特に米国の報道はスーパースターの話題で持ちきりでしたが、決勝2本目の平野のスコアが2位だったことに批判が巻き起こっています。

「23歳の日本人は2本目、ハーフパイプで最も難しいトリックであるトリプルコークを含む、最高のパフォーマンスを見せたにもかかわらず、豪州のスコット・ジェームズに次ぐ2位のスコアしか与えられなかった。明らかな誤審。ジャッジは何を見ていたのか?」とESPNのコメンテーターやソーシャルメディアの怒りは沸騰、Twitterでは#robbedや#triplegateがトレンドとなりました。

平昌で銅メダル、Xゲームでも5度メダルを獲得しているアリエル・ゴールドもThat is quite possibly the worst judging I’ve ever seen (こんな酷い採点は見たことがない)と非難。

それでも平野は3本目にさらに素晴らしいパフォーマンスを披露、ジャッジをねじ伏せて96.00点をスコア、金メダルを獲得しました。

採点競技に議論を呼ぶスコアは付き物とはいえ…。平野が〝逆転〟したから良かったものの、問題は根深いです。
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まず、ネーサン・チェンが素晴らしかった、強かった。

4年前の平昌では勢いだけだった18歳が、母方のルーツの地である北京で躍動しました。

フリーで使ったエルトン・ジョンの「ロケットマン」も力強いリズムで舞うチェンにピッタリでした。

日本勢は銀メダルに鍵山優真、3位に宇野昌磨、4位に羽生結弦。

SPの〝事故〟がなければ羽生が勝ててたか?なんてイフは無意味です。圧巻のレベンジを果たしたチェンの金メダルには拍手を送るしかありません。

チェンの後、2〜4位を日本勢三人が占めたのは期待はしていたとはいえ「嬉しい驚き」「史上最強」(荒川静香)にふさわしいパフォーマンスでした。
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清々しい風が吹いたような男子フィギュアに対して、女子は団体戦の表彰式がサスペンドされる異常の事態に揺れています。

ロシアのコメルサント紙が「優勝したロシアのカミラ・ワリエワがドーピング検査で陽性反応を示した」と報じ、多くのメディアも追随しています。

コメルサント紙は複数の関係者への取材で、15歳の妖精が大会前に提出したサンプルから禁止物質にリストアップされているトリメタジジン(TMZ)が検出されたとしています。

TMZは心臓病の薬として使われるのが一般的で、冠動脈を拡張して心臓へ流れる血液の量を増加させ、心肺機能を上げる効果があるため、競技力向上につながります。

国際オリンピック委員会(IOC)が昨日開いた記者会見で、マーク・アダムス広報は「継続中の法的案件で、現在話せることは何もない。多くの報道は憶測の域を出ない」とだけ語っています。
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ロシアは国家ぐるみのドーピングを進めていたことで、2019年から4年間、国際競技から追放されました。ロシアの選手はドーピングに潔白であることを条件に中立的な「ロシアオリンピック委員会(ROC)」の旗のもとで参加されることが認められています。

潔白な選手を救済するのは当然の処置ですが、今回のロシアは最大規模の214名を北京に送り込んでいます。

「ROCの選手は母国の国旗を背負えず、肩身の狭い思いをしてそう」という同情は、間違っているのかもしれません。

「ロシアに対するペナルティは形だけのもの、国旗をROCにしただけ」(ESPN)という指摘は、間違いではありません。

IOCが「継続中」というのは、ワリエワのサンプルが陽性反応を示したのが本当にTMZなのかどうか?という点も含めた世界アンチドーピング委員会(WADA)の検査結果かもしれません。

WADAによると、TMZが、許可されている片頭痛治療薬ロメリジンが偽陽性反応を示して尿検体に現れる可能性があるということです。

ただ、これが五輪開催直前に採取されたサンプルなら、白か黒かを時間をかけて調査するのはわかります。

しかし、AP通信は、このサンプルについて「先月エストニアで開催されたヨーロッパ選手権でワリエワが優勝する前、12月に採取された」と報じ「五輪の最中に、どうして去年12月のサンプルの陽性反応が降って湧いてくるのか?」と疑問を投げかけています。

国際スポーツ専門弁護士ポール・グリーンは「検査結果を一定期間内に報告しなければならないという義務はない。検体が研究室に投げ込まれ、誰かの悪意ではなく放置されることがないとは言えない」と、「偶然放置され、偶然五輪中にサンプルを検査した可能性も否定できない」とESPNに語りました。

今後、事態はどう進展するのか?

グリーンは「ワリエワとIOCは、メダル剥奪には至らない警告を含む制裁を彼女が受け入れることで合意に達する可能性」を挙げています。

もし、IOCが持ちかけた妥協点にワリエワが納得しないなら「現地で緊急案件を審理するスポーツ仲裁裁判所(CAS)のアンチ・ドーピング部門のパネルに問題が持ち込まれることになる」(グリーン)。

中国とロシアとIOC。そして、検査機関のWADAと、裁判所のCAS。非常に複雑な問題が絡み合っていますが、IOCは迅速に見解を発表するしかありません。

女子個人戦は来週に迫っています。

15歳の神業に感動した一人としては、残念すぎる展開です。そう、15歳です。

16歳以下は"protected person"(保護対象者)です。この点も「進行中の法的案件」をより複雑なものにしているのでしょう。

ワリエワが失格なら?

日本が銀メダルに繰り上げですが、素直に喜べるはずもありません。
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スポーツは不思議です。

「やる人」と「見る人」で、全く価値観が違うことがときに起きるのです。こんなに摩訶不思議な世界はありません。

映画や絵画、音楽、他のジャンルの芸術では「やる人」は自分の価値観を「見る人」に伝えます。

スポーツでも、大谷翔平のように自分の価値観、自分の宇宙を見る人に伝える場合もよくあることです。

勝利とカネと栄光をひたすら追求したフロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオも、そんな自分の価値観を「見る人」に突きつけてくるアスリートでした。

勝利とカネと栄光を求めないアスリートはいませんから、3つのドリルでそれをエグりまくったマネーやパックマンは実に分かりやすいアスリートでした。

勝利はアスリートの本質、カネは贅沢と成功の対価、栄光は人に尊敬されたい自己顕示、です。

空を翔んだ彼女も、氷上を舞った彼も、カネはともかく、勝利と栄光をひたすら渇望した美しい求道者です。

彼らはメイウェザーと同じ価値観を「見る人」に、メイウェザーよりも美しく清潔に、ずっと長い間、提供してきました。



彼女は競技を離れたところで失格を言い渡されます。これが個人競技なら、受け止め方は全く違っていたかもしれません。

彼女から発せられたのはチームメイトと「見る人」への謝罪でした。



彼は、文字通り小さな陥穽に完璧な流れを崩され「氷に嫌われちゃったな」と微笑みました。

そして「自分の感覚の中でミスじゃない」と言い放ちました。



彼女は二回目もK点を超えるとんでもないジャンプを見せました。

そして、なんと、あろうことが着地してすぐに泣き崩れました。

普通なら、あれほど感情が痛めつけられたら、先に泣き崩れて飛ぶことなど、絶対にできないはずです。

人間業ではありません。


彼もまた、大きな減点を全く引きずることなく、そのあとの演技を完璧に仕上げました。全く動揺がなかった、なんてありえないはずなのに。

人間業ではありません。


アスリートが届けたい価値観は勝利と栄光です。それしかありません。

スポーツという枠の中を精一杯使って表現する、勝利と栄光です。

しかし、本当に優れたアスリートはときに、勝利と栄光を超えた感動を突きつけて来ます。

スポーツの醍醐味が人間業ではない、何かを見てしまうことだとしたら、私たちは確かにそれを目の当たりにしました。

彼女に「敗れざるもの」なんて安易な言葉を使うことべきじゃない、なんて前にも書きましたが、敗者ではない、どこからどう見ても敗者ではないという事実を考えると、やはり彼女も彼もThe Undefeatedです。

あれが本物のアスリートです。あれが本当の強さです。

二人とも「本当の強さなんて要らないから勝利と栄光が欲しかった」というかもしれません。

しかし「見る人」はスポーツを見ていたのに、スポーツを超えた人間の強さを、二人から突然、贈られました。

他の芸術ではまずあり得ない「やる人」の価値観ではなく、運命が奏でた全く別の価値観に感動することが出来ました。

二人が一番嫌うのは同情されることでしょうが、あれを見た人が同情するわけありません。

身震いするほど、恐ろしいものを見てしまったのですから。

本物の強さを大舞台で見せつけた二人には、大きな尊敬と深い畏怖の感情しかありません。

私たちは、ほんの短い時間で、本当の化け物を、二人も見てしまったのです。
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オリンピックには魔物が棲んでいる。

大きな舞台に、魔物が棲んでいるのは当たり前です。

しかし、これほどオリンピックの女神から嫌われたアスリートは見たことがありません。

どうして、オリンピックは彼女をここまで残酷な目に遭わせるのか。 

2014年のソチ五輪から、ずっと、ずっと不思議に思っていました。

そして、今日のスキージャンプ混合団体戦。

1回目で大ジャンプを飛んだ高梨。

しかし、まさか、まさか、スーツの規定違反で失格。

それでも、2回目。K点越えの素晴らしいジャンプを見せてくれました。普通なら、飛べません。

どんなスポーツでも、本物の強さが発揮される状況は同じです。

打ちのめされたとき、傷つき倒されたとき、そこからどう立ち上がるのか。

高梨沙羅は、まともな人間じゃない。怪物です。

そりゃ、オリンピックの女神が妬むはずです。

敗れざる者、なんて安易な言葉で片付けるのも失礼な、10年以上もの長きにわたって世界のトップで勝利を重ねてきた小さな巨人。

スポーツという小さな世界の卑小なルールに照らせば、今日の高梨は確かに敗者なのかもしれません。

しかし、綺麗事でもなんでもなく、今日の高梨、正確には2回目も大ジャンプを飛んだ高梨は、どう見ても、どう考えても、敗者ではありません。
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