カテゴリ: プロボクシングが好きなのである。

日本人ボクサーのディフェンス能力は高い?それとも低い?

またまた、何を基準に語るのかわからない、答えのないお話です。

BoxRecのカテゴリーに「OPPONENTS TOTAL CONNECT PERCENTAGE LOWEST」というのがあります。対戦相手のパンチ的中率が最も低い…なんて訳していても分かりにくいので、簡単にいうと「被弾率」です。

もちろん、これは低ければ低いほどいい。

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どの試合、どの期間を切り取るかで順位は全く変わってきますが、1位はドミトリー・ビボル。シャクール・スティーブンソンよりも上というのは意外な気もします。

相手の攻撃を空転させるのではなく、職人技のブロックが基本のビボルはディフェンスマスター映えはしませんが、相手のパンチを一番よく殺しているということです。

ブライアン・カスターニョがランキングされているのはさらに意外。

井岡一翔と寺地拳四朗が19.3%で同率4位というのも、2人の直近の敗戦を生々しく目撃した日本のボクシングファンには意外かも。

井上尚弥(20.5%)とムロジョン・アフマダリエフ(20.6%)が並んで9位と10位。

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14.2%のビボルと16.7%のシャクールは別格にして3位以下は横一線、そんな感じでしょうか。

ちなみに、井上のアフマダリエフ戦での被打率はシャクール並みの16.5%ですが、ジャブを「23ヒット/320:10.0%」に抑えたのが効いており、パワーパンチは146発中39発をもらって被弾率は26.7%に跳ね上がります。

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ジャッジペーパーはフルマークでも文句のない内容でしたが、被弾は目立ちました。

それでも「皆さん、ありがとうございました!アウトボクシングもいけるでしょ!誰が衰えたって?」の呼びかけに納得できたのは、連打を許さなかったから。

見事に黄信号(赤信号)を渡り切ったアウトボクシングでした。

それにしても、ビボルの14%台は出色に見えますが、アルツール・ベテルビエフ戦は被弾することが少なくありませんでした。

中谷潤人が他のカテゴリーでもほとんど顔を出していないのもまた、意外です。数字で見えてこないステルスですなあ。







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「ボクマガ青春情熱物語」といいつつ、リング誌ばかり取り上げてる気がしてきましたが、これでいいのだ。

ちょうど10年前のリング誌2015年9月号。

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表紙はライト級、ジュニアウエルター級を支配的に制覇したテレンス・クロフォード。

「メイウェザーとパッキャオの時代が終わり、彼が新しい時代のスターとなるだろう」…リング誌の予想はまたまたまたものの見事に外れました。

カネロ・アルバレスがすでにスーパースターの座に就いていましたが、ライバル不在。米国ボクシングの沈滞ムードはますます色濃くなる一方でした。

そんな中での暗中模索、リング誌は女子MMAファイターのロンダ・ラウジーを単独カバー、大特集を組み、軽量級の井上尚弥も表紙にするなど大胆な施策に走ります。

「なんでUFCの女子ファイター?リング誌でラウジーなんて見たくもない」「井上って誰???バンタム級とか誰も知らないし…ごめんなさい」などなど、数少ない読者には大不評。

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井上と同じように、カジュアルなボクシングファンのセンサーが反応しない軽量級ですが、ローマン・ゴンサレスが専門家やマニアから高い評価を集めていました。

この号のPFPは1位:フロイド・メイウェザー、2位:ローマン・ゴンサレス、3位:ウラジミール・クリチコ、4位:ゲンナジー・ゴロフキン、5位:ギレルモ・リゴンドー、6位:マニー・パッキャオ、7位:セルゲイ・コバレフ、8位:テレンス・クロフォード9位:山中慎介10位:内山高志

このあと、チョコラティトはPFP1位に2年以上も君臨、飛び抜けた評価を集め続けることになります。

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そして、井上尚弥もリストアップされた「KO ARTISTS」。

1位はクルーザー級のドミトリー・クドリャショフで18戦全勝18KO。2位にはアルツール・ベテルビエフ、3位にデオンティ・ワイルダー、4位にゴロフキン。

こりゃ〝マストシー・ファイター〟リストです。

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8月2日に後楽園ホールで行われたプロボクシングの興行で、それぞれ別の試合に出場した2人の選手が試合後に意識を失って都内の病院に救急搬送、一人が昨夜、帰らぬ人となってしまいました。


8月4日、日本ボクシングコミッション(JBC)の安河内剛本部事務局長は「また何が原因でという見極めが難しい両試合だった。原因を究明していくのが難しい事例になった。ただ、もう分からないから(何も対策を)やらないっていう場合じゃない」と語り、現在12回戦で行われている東洋太平洋王座戦を10回戦に短縮する方針を示し、主に12回戦で実施されているWBOアジア・パシフィック王座戦も10回戦に統一したいと意向を示しました。

JBCは東洋太平洋ボクシング連盟(OPBF)の本部国を務めており、萩原実JBCコミッショナーがOPBFの会長、安河内氏が事務局長を兼任、ルール改正に大きな障害はありません。

全国のジム会長らで組織する日本プロボクシング協会と話し合った上で、早急な変更を目指す方針です。


事故が起こりやすくなる原因の一つとして考えられている過度な水抜き減量を抑制するため、すべての試合で当日のリバウンド体重に制限をつけることも前向きに検討していく方針です。

過度な水抜きについては、やはり事故が重なったことから英国ボクシング管理委員会(BBBofC) が試合直前のサウナの使用を禁止しています。

3年前に当時のWBOバンタム級王者ジョンリール。カシメロが試合直前にサウナで「減量も順調!」と写真をSNSにアップしてしまい〝御用〟となりました。

ヘビー級を除く現代のボクサー、特に軽量級ではほとんどのボクサーがは直前に水抜きで一気に体重を落としています。

このメリットは長期の減量で心身ともに消耗するのを回避できること、前日計量後のリバウンド幅が大きく、当日の試合で優位な体重でリングに上がることができることなどがあげられます。

デメリットは一気に水分を抜いて生じる極端な脱水症状は肉体に大きな負担をかけ、前日計量クリア後に極度の体調不良を訴えたり、軽量に臨めないというケースも珍しくありません。

リミット105ポンド(47.62kg)のストロー級選手が10ポンド(4.54kg)を大きく超えてリバウンドすることもあります。

わずかな時間で、水抜きをした極度の脱水状態の体内に体重の10%以上の水分と食事を摂るわけですから、医学的にもありえない非常に危険な行為です。

青白い顔とこけた頬で秤に乗ったボクサーが、翌日には血色の良い表情でリングに上がるーーー井上尚弥をはじめ多くのボクサーで見られる光景です。


JBCは2023年12月の日本バンタム級タイトルマッチで起きたリング禍から、事故検証委員会を設置、再発防止に取り組んできましたが、抜本的な解決に向かう道筋はまだ見えていません。

相次ぐリングの事故について、亀田史郎は「JBCもラウンド数を減らすとか、レフェリーが止めるにしても、どこで止めるべきか難しい。そこの問題じゃないと思う」とし「そこ(ルールの変更)はそれでいいが、大きなグローブを使うジムでのスパーリングでダメージが蓄積されている。大きなグローブは面積広くなるから、揺れるダメージも大きい。スパーリングでダウンはあまりないから、ダメージが全部、蓄積する」と話しています。


一方の選手が大きなダメージを負っていると判断したならストップですが、激しい打撃戦の末に両者が大きなダメージを負って互角の戦いを繰り広げていたら?…「早く止めないと最悪の事態になる」と判断して引き分けストップなんて出来ません。そこまでのラウンド計算で判定というのが現実的でしょうが、やはりストップの判断が非常に難しい。

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グローブの問題についてはこのブログでも度々取り上げていますが「10オンスよりも6オンスの方が危険、ナックル部分が薄いレイジェスが危険」というのは大間違いです。

安河内事務局長は「原因を究明していくのが難しい事例になった」と語り、JBCの朝本俊司オフィシャルドクターも「運営側の瑕疵はほぼないだけに、対策が難しい」としています。

これは、大筋でその通りだと思います。

一方で、何が原因で〝それ〟が起きたのかはわかりませんが、ほとんどの事故で〝それ〟が何なのかははっきりわかっています。

頭蓋内出血から引き起こされる「硬膜下血腫」です。

「そんなのわかってるわい」と思われる方も多いかもしれませんが頭蓋内出血・硬膜下血腫がどんなものなのかは知らない人が多いのではないでしょうか?

「衝撃で脳が頭蓋骨内で回旋することで脳と硬膜をつなぐ静脈が切れて、脳を覆う硬膜とくも膜の間に血が溜まる」のが、硬膜下血腫です。

そして、硬膜下血腫はダメージの蓄積ではなく、多くの場合でたった一つの打撃で起きてしまうというのです。

つまり、それまでの試合やスパーリングで蓄積されたダメージでリスクが増大するなら、事前検査で脳内血管が痛んで、脳の回旋が起きやすい等の事前検査で予見できますが、そうではないのです。

また、どんな打撃によって脳が回旋しやすいのか、そのメカニズムもわかっていません。

井上尚弥のファン・カルロス・パヤノ戦、マニー・パッキャオのリッキー・ハットン戦のような一撃で相手を失神させる、いわゆる「スイッチを切る」ようなKOパンチは比較的安全(安全なKOパンチというのもおかしな表現ですが)と見られています。

ほとんど素手に近い4オンスのオープンフィンガー・グローブを使うMMAでボクシングよりも事故が少ないことを考えると、グローブの大型化は事故に一定の影響があると考えて良いでしょう。

しかし…。

そもそもの問題として顎、テンプル、頭部の急所を狙うボクシングの競技性格を考えると、重大事故のリスクを排除することは不可能なのかもしれません。

そして…。

もし、そうだとすると、これは、もはや「事故」とは呼ぶべきではないのかもしれません。




https://fushiananome.blog.jp/archives/10398894.html



https://fushiananome.blog.jp/archives/26232255.html
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10年前のThe Ring Magazine 2015年7月号。実際に我が家のポストまで届けられたのは5月初旬か4月(実際の◉号よりも早い時期に発行されるのは世界共通で、フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ(5月2日)の直前特集「MAYWEATHER VS. PACQUIAO A to Z=試合前にチェックすべき全て」も)。

10年一昔とはいうものの、当時も10年後の今も最も大きな関心を集め人気のあるファイターはメイウェザーとパッキャオ、カネロ・アルバレス。

今ではメイパックは引退しているというのに、カネロは完全にキャリアの黄昏を迎えているというのに。

表紙は5月9日にMLBヒューストン・アストロズの本拠地ミニッツメイド・パークでメガファイトのリングに上がるカネロ・アルバレス。ジュニアミドル級12回戦で、石田順裕が超大番狂せで転覆させたジェームス・カークランドを迎える一戦を12ページにわたってフューチャー。

カネロの進出がカウントダウンのミドル級にも「GREATEST MIDDLE WEIGHT?」(史上最強のミドル級は誰だ?)をトーナメント形式で分析。

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今回、ご紹介するのは「PERFECT RECORDS」(引き分けNGの全戦全勝無敗のままの連勝記録)。

リング誌でランキングされる180名の中でPERFECT RECORDを持つのは、なんと55人。なんと30.5%が無敗でした。

これは「2015年にものすごい選手が揃ったのではなく相手を選り好みでき、競合同士の激突を避けるプロモートが染み付いた結果」であり、その傾向はさらに色濃くなって現在まで脈々と受け継がれています。

現在のトップはテレンス・クロフォード(41戦全勝無敗)でしょうか?

中谷潤人(31戦全勝無敗)と井上尚弥(30戦全勝無敗)もPERFECT RECORDSリストに名前を連ねているはずです。


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ワタナベジムは、きょう30日未明に公式サイトで現在の状況を報告しました。




いつも温かいご声援をありがとうございます。

昨日、JBCより報告があり、重岡銀次朗選手は自発呼吸が可能な状態となりました。

回復に向けて良い経過をたどっており、本人も懸命に頑張っています。
今後も状況に応じて、随時ご報告させていただきます。

引き続き、温かく見守っていただけますようお願い申し上げます。

ワタナベボクシングジム
会長 渡辺均
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歴史上、最初に「ボクシングの世界チャンピオン(初代ヘビー級チャンピオン)」と認められたのは英国のジェームズ・フィグと言われています。

1713年に「円形競技場(リング)」と呼ばれる室内競技場を建設、オックスフォード・ロード(現在のオックスフォード・ストリート)の「アダムとイブ宮殿」のすぐ近くにボクシング・アカデミーを開校、スイート・サイエンスの礎を築きました。

そこでは、拳だけでなく投げ技は蹴りも使うだけでなく、こん棒や片刃の剣の扱いまで教える、現代ボクシングとは全く違う格闘技でした。

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また、フィグを「咬みつき熊」と呼ぶ文献も残っています。彼がアカデミーを開設したのは、ボクシングを咬みつきや目潰しの技も認められていた殺し合いから〝スポーツ〟に高める目的があったのかもしれません。

19世紀に入ると〝スポーツ化〟に向けたルールが続々と整備され、1867年のMarquess of Queensberry rulesが導入で一つの節目を迎えます。

①24フィート(約7.32メートル)四方のリングで、正しく立った姿勢で行う。

②レスリング(組み合い・掴み合い)は禁止。

③3分1ラウンド、インタバルは1分間とする。

④どちらかの選手がダウンした場合は、10秒以内に自力で立ち上がらなくてはならない。10秒以内に立ち上がれなければ主審はKO負けを宣言する。

⑤ロープにぶら下がって、つま先がカンバスを離れるとダウンとみなされる。

⑥3分間のラウンド中は、2人の選手と主審を除く3人以外は誰もリング内に立ち入ってはいけない。

⑦不可抗力によって試合が止められた場合は、そこまでの内容で主審が勝敗を決める。

⑧グローブは定められたサイズの新品でなければならない。

⑨グローブが破れたり、棄損した場合は取り替えなければならない。

⑩片膝を突いてもダウン。ダウンした選手に攻撃を加えると罰金が科せられる。

⑪釘やバネを仕込んだ靴やブーツの使用は禁止。

⑫その他のルールは改訂版のロンドン・プライズ・リング・ルール(ブロートン・ルール)に準拠する。

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「近代」の幕明けとなったクイーンズベリー・ルールが明文化したものの中で最も有名なのはグローブ着用ルールですが、クイーンズベリーが規律した12項目の中で〝何かを足した〟のはグローブを付けることくらいで、他は全て削ぎ落とす内容でした。

目潰し、咬みつきなどultimate(何でもあり)のルールから、どんどん〝引き算〟を重ねる中で研ぎ澄まされ、近代ボクシングが完成するのです。

MMAのスタイルが形づくられるまで、最強の格闘技は柔術だと思われていますが、近代前のボクシングの存在を考えると、そうではなかったのかもしれません。

引き算を重ねていくボクシングは世界中の格闘技の中で、攻撃する部位の面積、打撃が許される面積が最も狭い格闘技になりました。

攻撃出来るのは二つの拳、しかもナックルパートだけ。面積にしたら2㎝×10㎝=10㎠、左右合わせてもわずか20㎠もない、大袈裟ではなく〝猫の額〟です。

手刀や甲、掌での打撃は全て反則。打撃が許されるのは対戦相手の上半身・正面だけ。背面への打撃は禁止。

誤解を恐れず、他の格闘技への忖度を外して語ると、〝無駄〟を排除し、究極必要最小限までシンプルな形にしたからこそ、ボクシングの美しさ、芸術性は際立っているのです。

ボクシングが「スイート・サイエンス」と呼ばれる所以です。「美しい科学」を体現したボクサーが強いのは当たり前です。

まるで、最高の酒米を極限まで削って、磨いて、研いて、醸し出された純米大吟醸のように。


現代でも、アントニオ・マルガリートのように基本技術から逸脱し、ナックルパートをしっかり当てることの出来ない原始的なファイターも生き残っています。

また、やはり基本を習得できずに左右の拳を振り回すだけでなく、マルコス・マイダナのような手刀まで打ち下ろすファイターまでいます。

彼らは彼らで魅力的ですが、そこに洗練の香りを感じることはできません。彼らは日本酒で例えるとどぶろくか、日本酒以前の猿酒なのです。

それはそれで魅力的ですが、そこには科学も技の伝統も感じられません。

アカデミーを設立したフィグはもちろん、近代ボクシングの完成形を実演してみせたシュガー・レイ・ロビンソンの技術体型が後世に引き継がれていくのは当然です。

それでも、ボクシングが非常に危険なサイエンスであることは変わりません。攻撃に使えるのはナックルパートだけ、攻撃が許されるのは上半身正面だけ。そんな制限だらけにも関わらず、あらゆる格闘技の中で最も危険なのがボクシングです。

そして、科学を熟知したボクサーは、リングの中でファンを感動させてくれるだけでなく、きっと必ず優秀な指導者になるのも間違いありません。


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「最強とは?」。

それは人類がモノゴコロついてから、つまり文明が始まって以来の大命題であり続けています。



古代ローマで行われたグラディエーターの戦いは、人間同士はもちろん、人間と猛獣を戦わせた、荒唐無稽な〝エンターテイメント〟に思えますが、「地球上で最強の動物は何か?」という当時の命題に対して、これは当然のマッチメイクでした。

人間が武器を取るのも当たり前です。それは人間が動物としての自然な活動の中で作り、習得したものだからです。

コロッセオでの人間vs猛獣の戦いが廃れたのは、ローマ帝国が衰退したからではなく、人間の武器が進化し過ぎて、もはや猛獣でも立ち向かえなくなってしまったからというのが原因です(個人の意見です)。

そして、これを契機に「最強」の命題は人間限定で追求されることになり、著しい武器の進化の中で、生身であることが最強を決める唯一のルールとなりました。

宮本武蔵が二振りの日本刀を持って探し求めた最強は、唯物的な答えを求めた古代ローマ人とは全く違う「最強」てあったことは、すでに銃器が流通していた時代であることを考えるまでもなく明らかです。

ここでマナ板に乗せるのは、武蔵が追いかけた哲学的な要素も含む最強ではなく、生身の最強です。


私がモノゴコロついてから、この命題に対して大声で答を叫んだのはアントニオ猪木でした。

プロレスこそが最強である、と。

もちろん、諸説入り乱れていました。

「八百長のプロレスが最強なわけがない」。

「格闘技が重ければ重いほど有利であるなら、相撲は最強候補」。

「拳と蹴り、肘なども使うムエタイもヘビー級があるなら最強候補」

ーーーそれはあまりにも現実から離れ過ぎた空想の域を出ませんでした。


https://fushiananome.blog.jp/archives/20038248.html


UFC1THE BEGINNING。

しかし、1993年11月に米国コロラド州デンバーで行われた小さな格闘技大会で非常に説得力のある「解」が提示されました。

体重が大きくモノをいう打撃ではなく、体重や体格を超越して対戦相手を絞め落とす柔術です。

UFC1THE BEGINNING。

全てはそこから始まりました。

柔道ベースで戦う桜庭和志、柔道の五輪金メダリストの吉田秀彦や、やはりメダリストのロンダ・ラウジーらの活躍は、命題の解に近づいていることを実感させました。

五輪競技の柔道でもこれほど強いとしたら、柔術の使い手こそが最強だろう。



敵地プラジルのマラカナン・スタジアムでエリオ・グレイシーに圧勝した木村政彦の再評価が進みましたが、そもそもグレイシー柔術は前田光世(コンデ・コマ)が持ち込んだもの。

柔術にも長け、本場・最高峰の日本で「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」(史上最高)と讃えられた男に柔道や柔術で勝てるわけがありません。

しかし、柔道や柔術は打撃による攻撃と防御への意識が薄く、最強と呼ぶには補完しなければならない要素が残されています。

柔道や柔術のグラウンド技術に、ボクシングやキックボクシングの打撃をミックスしていく、それがまさに Mixed Martial Arts です。

現代のMMA競技はこのように〝いいとこ取り〟〝足し算〟によって最強のスタイルを確立したように見えます。

ただし、当然のことながら、現代のMMAは古代ローマ時代から連綿と続く格闘技の血脈を受け継いでいるわけではありません。

この血統を受け継いで、現代に生き残っている格闘技があります。

〝いいとこ取り〟〝足し算〟とは真逆の歴史を刻んできた格闘技です。

それは「最強」というテーマからはどんどん離れて、弱くなっています…。

19世紀に導入されたブロートンもクイーンズベリーも、それは〝引き算〟ルールでした。

その原型は?そして引き算を繰り返した挙句に何が残って、この格闘技はどんな形になったのか?


史上最強の格闘技は何だったのか?

ーーーもう少しお付き合い下さいませ。













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史上最強の格闘技から、史上最高の格闘技へ。

ボクシングの讃歌を、音痴な私に少しだけ歌わせて下さい。

そして、銀は必ず目覚めて立ち上がる、のです。


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https://abema.tv/channels/boxing/slots/Dfzxdhaz1f8E9d

配信でも見れるんですが、行って参ります。


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BEST I FACED  SUGAR RAY LEONARD

BEST DEFENSE:Floyd Mayweather Sr.
         That defensive style rubbed off on his son


最も優れた防御技術を持っていたのは、フロイド・メイウェザーSr.だ。そしてそれは彼の息子が完成させた。〜シュガー・レイ・レナード


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メイウェザーにとって後ろ手に手錠をかけられるのは、遺伝子レベルでも慣れたもの。サマになってます!


フロイド・メイウェザーは絶望には慣れている。

世の中なんて、人生なんて、ロクなことがないと、物心ついたころにはわかっていた。それは一種の悟りと言い切っても良いだろう。

ブッダは厳しい修行の果てに悟りを開いたが、フロイドの場合は頼んでもいないのに悟りの方からこっちにやって来たのだった。

この世界で信じることができるのは、自分だけだ。



銃撃された父親がまだ1歳の赤ん坊の自分を盾にしたことは、細胞レベルで記憶している。

少し大きくなってから父親が自分を抱き上げようとしたとき、無意識に大きな悲鳴をあげて拒んだ。

ドラッグで24時間ラリっている父親だったが、「まさかあのとき盾にしたのを覚えているのか?」と、ひどくバツの悪そうな苦笑いを浮かべていたことは、胸の中の一番奥の部屋に鍵をかけてしまっている。

母親は重度の麻薬中毒だったが、それでもまだマシだと思えた。やはり麻薬中毒だった叔母は不潔な注射針からエイズに感染して苦しみにのたうち回って死んでいた。



フロイドの生まれたミシガン州グランラピッツは、とにかく憂鬱な街だった。

気持ちよく晴れた日でも、通りのいたるところに注射器や注射針が落ちているのを目にすると気が滅入った。ハッパの匂いが充満して、夜も朝も昼もどこかで乾いた銃声が響いていた。

父親は麻薬の売人で、相手が望めば家族にでも商品を融通した。下劣で最低の男に見えたが〝副業〟ではその才能は誰からも認められていた。

フロイド・メイウェザーSrはプロボクシングの元世界ランカーだったのだ。

叔父の2人、ロジャーはWBAジュニアライト級とWBCジュニアウエルター級の2階級制覇王者、ジェフはIBFジュニアライト級王者というボクシングの名門一家だった。

それでも、メイウェザーの一族が呪われているとしか思えなかった。

シニアはレナードに、ロジャーはフリオ・セサール・チャベスに、ジェフはオスカー・デラホーヤにKOされた。

よく考えると、とんでもない偉業なはずだ。シニアもロジャーもジェフも、敗れたとはいえ、ボクシングシーンの頂点に挑んだのだから。

当然、メディアやカジュアルなボクシングファンの記憶にも彼らは焼きついている。

しかし、メディアやファンの記憶は賞賛や尊敬とは程遠い「メイウェザーは噛ませの脇役」「勝負弱い」「打たれ弱い」という烙印だった。



フロイド・メイウェザーJr.がアトランタ五輪でメダルを獲得、プロ転向のときに「レナードの後継者になる」と宣言したとき、周囲が冷ややかな反応を示したのはメダルの色が銅だったからでも、プロでは注目度の低いジュニアライト級でデビューするからだけではなかった。

「レナードの後継者?何を言ってるんだ。お前はレナードとは真逆の勝負弱くて打たれ弱いメイウェザーの一族のくせに」。

プロデビュー戦のファイトマネーはわずか2500ドル、当時のレートで25万円。トップランクと契約した五輪メダリストとしては、桁が違うんじゃないか?というほど信じられないほどの薄給だった。

無敗の快進撃を続けても、一度も効かされることがなくても「勝負弱い」「打たれ弱い」という不当な決めつけは拭い去ることが出来なかった。

傑出のパフォーマンスで強敵を斬り落としても、上がるのは専門家やマニアの評価であるPFPランキングだけ。ファイトマネーは思うように上がらなかった。

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「打たれ弱さは遺伝する」「打たれ強さは持って生まれたもの。練習ではどうにもならない」。

それが全くの偏見であることを、フロイドは過酷な練習で覆してみせたというのに。



人気階級のど真ん中、ウエルター級に打って出るには173㎝の体は小さすぎたが、そこで実力を見せつけるしか、一族が背負った十字架を降ろす方法はなかった。

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今からちょうど10年前の、リング誌2015年4月号。

Fighter Of The Yearはセルゲイ・コバレフに譲ったものの、フロイドJr.はBest Fighter Poll(年間PFP)で満票の1位。

ヘッドラインは「WHO ELSE?(PFPキングはメイウェザー以外に考えられない)」。



好かれる人気よりも、嫌悪される〝人気〟のほうが強烈。薬よりも毒の方が人々を遥かに刺激する。

マネー(銭ゲバ)となって人気階級に乗り込んだメイウェザーは、退屈なタッチボクシングを繰り広げてブーイングを浴びながらも、ファイトマネーを爆発的に膨張させた。

品性下劣な言動を繰り返すことで、誰からも激しく嫌悪される人物をスターと呼べるとしたら、全く新しいスター像を作り上げたメイウェザーは、間違いなく「セルフプロデュースの天才」だった。

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オッズと専門家予想は大きくメイウェザーに傾いていたというに、ファンの勝敗予想はなんと圧倒的に外国人のパッキャオ。

自国開催の五輪でメダル獲得、プロでも無敗の快進撃中の米国人のメイウェザーが「勧善懲悪の激突」(CNN)という構図で完全ヒールに回ったのだ。

こんな倒錯は、歴史上前代未聞の出来事で、もう2度と見ることはできないだろう。

プロレスならまだしも、真剣勝負のボクシングの世界で自らヒールの仮面を被って見せたフロイド・メイウェザー。

ヒーローになりたかったのに周囲に踊らされてヒールに貶められ、泣いて謝罪会見を開いたり、懺悔の言葉を絞り出した亀田一家とは全く対極の彼方に屹立する〝銭ゲバ〟メイウェザー。

彼は、亀田が翻弄された軽薄で暗愚なメディアやファンを、自分の思い通りに見事なまでに手玉にとって見せたのだ。


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