カテゴリ: プロボクシングが好きなのである。

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野球やサッカーの世界最高峰の舞台と比べてしまうと、ボクシングのメガファイトがみすぼらしく見えるのは仕方がありません。

それがメジャースポーツと、マイナースポーツの大きな差です。

映画「クリスティー」で主演をつとめるシドニー・スウィーニーらも大谷翔平の大ファン。セレブの間ではMLBやNFL、NBAといったメジャースポーツの最終決戦の観客席は〝花舞台〟の一つです。

もちろん、モハメド・アリの時代までヘビー級タイトルマッチは、世界最大のスポーツイベントの一つでした。

アリほどではないにせよ、10年前の「フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ」の観客席には錚々たる顔ぶれが集まっています。

ロバート・デニーロ、クリント・イーストウッド、デンゼル・ワシントン、マーク・ウォールバーグ、ビヨンセにジェイZ、マイケル・ジョーダン、トム・ブレイディ、シュテフィ・グラフとアンドレ・アガシ、のちの大統領ドナルド・トランプ…思いつくままで挙げましたが、まだまだいました。

ドジャースvsブルージェイズと比べても、観客席対決ではメイパックの圧勝でした。

ただ、もうあれほど注目される本当の意味でのメガファイトは2度と開催できないでしょう。スターが絶滅しているのですから。




さて、それでも個人的にはワールドシリーズやスーパーボウルの華やかなメジャースポーツの宴よりも、ボクシングのスーパーファイトの方がワクワクします。

村田諒太は引退してしまいましたが、ゲンナジー・ゴロフキンに勝って、当時のカネロ・アルバレスも撃破していたら、どれほど胸を振るわせたことか、想像もできません。

日本人が正真正銘、本物のスーパースターと戦えるチャンスは、次にいつ訪れるでしょうか?

カネロを最後にスターは絶滅したのですから、もうそんなチャンスは永遠に訪れないということでしょうか…。


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一発大逆転のスペクタクル。

え!まさか!信じられない!これは奇跡だ!…そんな驚きと、次の瞬間にはそれが必然だったと感じてしまう、不思議な恍惚。ボクシングのリングの上だけに現出される超常現象です。



今世紀に入って25年、このスパンで最も決定的な一撃を持つパンチャーはデオンティ・ワイルダーでしょう。

自分よりも遥かに重い、つまり打たれ強いタイソン・フューリーからも豪快にダウンを奪っているワイルダーは、ヘビー級以外の減量階級のパンチャーとは同列に考えるべきではありません。

そんな元WBCヘビー級王者のブロンズボマーは2019年11月23日、ルイス・オルティスとの再戦で圧倒的ビハインドを〝一発精算〟してみせました。

第6ラウンドまでのスコアは55-59が2人、56-58が1人と明らかなリードを許していました。

そして、第7ラウンドも残り10秒を切ったとき、ワイルダーの右ストレート一閃、この一撃でオルティスをノックアウト、10連続防衛を果たしました。

5年以上も経ったとはいえ、あの試合を鮮明に覚えているファンも多いはずです。

しかし「え!まさか!信じられない!これは奇跡だ!」という驚きで、あの結末を迎えた人は少数派かもしれません。

ほとんどの人は「ワイルダーの逆転の一撃がいつ火を噴くのか?」と期待を膨らませていたはずです。

多くの人がワクワクしながら予見していたという意味で、あの結末は「まさか」でも「奇跡」でもありませんでした。

想定通りの一発大逆転…言葉にすると、なんとも大きな矛盾を抱え込んでいます。

ワイルダーが経験した世界戦は13試合、その全てが自分よりも大きく重い相手でした。

アマチュア時代はヘルシンキ五輪のミドル級で金メダルを獲ったフロイド・パターソンは、164ポンドでプロデビュー。軽くて小さなヘビー級でしたが、ワイルダーのような爆発的なパンチャーではありませんでした。

身長179㎝/リーチ173㎝のロッキー・マルシアノも小さなヘビー級で、強烈なパンチャーでした。いつも自分より重い相手と戦っていましたが、その体重差はワイルダーほどではありませんでした。


デオンティ・ワイルダー。PFPに選ばれてもおかしくない〝理屈〟を持ったエンターテイナーでした。




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Only in boxing can a seemingly lost cause be rescued in a split second


昨日のMLBワールドシリーズ初戦。2−2の同点で迎えた6回裏、ブルージェイズが大量9点を入れて11−2としました。

ドジャーズは残り3イニングの攻撃を残していましたが、この時点で勝負あり。

スポーツの醍醐味は大逆転ですが、それにも限度というものがあります。満塁ホームラン2本でも追いつけない9点差。

この点差では、奇跡を起こしてひっくり返すにも時間がかかります。



しかし、ボクシングにおいてはどんな劣勢でも1秒もかからずひっくり返す、とんでもない奇跡がありえます。

英国ボクシングニューズ誌のOnly in boxing can a seemingly lost cause be rescued in a split secondから。

普通に訳すと「絶対絶命の劣勢を一瞬でひっくり返せるスポーツはボクシングだけ」。ぎゅぎゅっと圧縮して訳すと「Puncher’s Chance」。



*****一方の選手が終盤までリードしながらスタミナ切れで失速して大逆転を許す…ボクシングでも見られるスポーツの逆転パターンですが、ここで取り上げるのはもっと唐突で、予兆のない、劇的な大逆転です。

え!まさか!信じられない!これは奇跡だ!…そんな驚きと、次の瞬間にはそれが必然だったと感じてしまう、不思議な恍惚。ボクシングのリングの上だけに現出される超常現象です。


Only in boxing can!


1952年9月23日、フィラデルフィア・市立スタジアムで行われたNBA世界ヘビー級タイトルマッチ15回戦。王者ジャーシー・ジョー・ウォルコットの左フックで初回にダウンを喫したロッキー・マルシアノは12ラウンドまで8ラウンドを失っていました。

第13ラウンド開始から30秒、王者がカウンターを狙って挑戦者を引き寄せますが、マルシアノの強烈な右フックがウォルコットの顎に叩きつけられて、テンカウント。


1980年3月31日、テネシー州ノックスビル・ストークリーアスレティックセンター。WBAヘビー級王者ジョン・テートは最終15ラウンド、残り60秒まで優勢に試合を組み立てていました。

2位を大きく引き離し、あとはゴールするだけ。マラソン競技なら、そんな展開でしたが…。

試合を全米生中継していたABCは判定勝ちを確信して、試合終了後に流すニュースと広告を告知していましたが、ウィーバーの電撃の左フックで王者テートがダウン!

ABCは慌ただしく衝撃の瞬間のリプレイを用意、判定勝ちで進めていた番組プログラムはKO勝ちで放送時間をオーバーするという普通はあり得ない事態に見舞われました。



Only in boxing can!


1994年11月5日、ラスベガス・MGMグランドガーデン・アリーナ。WBA /IBFヘビー級タイトルマッチ12回戦。

サウスポーで史上初のヘビー級王者となったマイケル・モーラーは第9ラウンドまで88−83*2/85−86の2−1でリード。9歳も年上、45歳のジョージ・フォアマンに出来ることは12ラウンド終了のゴングを聞き、大差判定負けのコールを受けることだけに思えましたが…。

モーラーのパンチで左目が塞がったフォアマンでしたが250ポンドの巨体は、222ポンドの王者の心身を着実に削っていたことに多くの人は気づいていません。

唐突に訪れたかに見えたその瞬間は、必然でした。45歳の右は試合を終わらせるにはあまりにも遅く、短く、軽く打ったように見えましたが、それは「象をも倒す」と恐れられたジョージ・フォアマンの拳です。

人間マイケル・モーラーを昏倒するのには十分すぎる威力を秘めていました。


それまで積み重ねてきた大量リードが一瞬でひっくり返されて試合が終わるーーーそんな不条理、狂気の沙汰がときとして起きるのがボクシングです。

そして、そんな〝必然の奇跡〟はヘビー級だけで起こされてきたスペクタクルではありません。


Only in boxing can!


1991年5月10日、アイオワ州ダベンポートはジョン・オドネル野球場。ミシシッピ川のほとりに作られた小さなボールパークで奇跡が起きます。

IBFミドル級王者マイケル・ナンは5連続防衛中、36戦全勝24KOのスーパースター候補。

10ラウンドまでは99−91/98−92/97−93と3者ともナンを支持。

第11ラウンド、王者が左アッパーを突き上げてガードが空いた一瞬にトニーの左が炸裂。背中からキャンバスに叩きつけられた王者はナンとか立ち上がるだけで精一杯。再開後のトニーの猛攻に再び崩れ落ちたところでジ・エンド。

過大評価のナンと、フレディ・ローチが「マイク・タイソンやマニー・パッキャオも比較にならない才能」と認めることになるトニー。この結果も奇跡ではなく、必然でした。


Only in boxing can!

1994年12月10日、メキシコ・モンテレー。WBAミドル級王者ホルヘ・カストロは2度目の防衛戦にジョン・デビッド・ジャクソンを迎えます。

階級最弱と見られ、王者ながらアンダードッグのカストロでしたが、タフネスだけは怪物級。

挑戦者に一方的に打たれ続けて両目を負傷、何度もぐらつくアルゼンティーナは頼みの右フックを振り回しますが、空気をかき回すことしか出来ません。

8ラウンドまで80−71/80-73/79-74と大きくリードを許していたカストロでしたが、第9ラウンドで乱雑な右フックに狙い澄ました左フックをこっそり忍ばせます。

予想できないパンチにジャクソンは痛烈にダウン。さらに2度のダウンを追加して、ミドル級史上最も不安定な王者カストロが大逆転で防衛に成功しました。

リング誌の年間最高試合にも選ばれたこの試合、カストロが「死んだふりをしていた」と見るのは早計ですが、試合をひっくり返した左フックは無尽蔵のスタミナと、岩石のような顎という必然があったからこそ。


Only in boxing can a seemingly lost cause be rescued in a split second…スペクタクルはこれからも不規則な彗星のように私たちを楽しませてくれるはずです。








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「ボクマガ青春情熱物語」と謳っておきながら、ほとんどリング誌の紹介に終わってきたシリーズですが、今回はボクマガ。

1990年11月号ですから、今からちょうど35年前のボクシング・マガジンです。

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表紙の活字を拾うと「辰吉、4戦目で日本王座獲得」「レパードは初防衛戦に向けてキャンプ」「OHASHI vs LOPEZ 大橋のV2なるか」「DOUGLAS vs HOLYFIELD ダグラスは正念場」…なかなかエポックな時期だったことが伺えます。

巻頭特集は辰吉丈一郎vs岡部繁の日本バンタム級タイトルマッチと思いきや、ホリフィールドvsダグラスの統一ヘビー級戦。

ここでは「OHASHI vs LOPEZ 大橋のV2なるか」をご紹介。

リカルド・ロペスを「強敵」「難敵」としながらも「大橋にとって長期政権へのステッピングストーン(踏み台)」とヘッドラインしているように、WBC4位のメキシカンは過小評価されていました。

大橋秀行はロペスを選んだ理由を「指名挑戦者は李敬淵でしょ、初防衛戦がナパ・キャットワンチャイ。みんな井岡くんの対戦相手じゃないですか。井岡くんの後ばっかり追いかけてるみたいなのがイヤだったんですね。それに、チャンピオンを獲ったのも崔漸煥。せっかく世界の肩書きがあるのに、相手が東洋ばかりというのはおかしいと思って」と、井岡弘樹へのライバル心を隠しませんでした。

また、メキシコ史上最高の名伯楽クーヨ・エルナンデスの「最後にして最高傑作」とも評価されるロペスがカルロス・サラテに似ていると話を振られると、大橋は「いやあ、それはモノが違うでしょう」と笑い飛ばしました。

ロペスが「ウンベルト・ゴンザレスに勝てる」と豪語していることに対しては「ぼくに勝ってからデカいこと言えっていうの!」。

米倉健司会長も「怖いって感じはないねぇ。巧いといえば巧いけど、びっくりするほどでもない。スピードもねぇ」と、ロペスの実態をつかんでいませんでした。

彼らが入手したロペスのビデオは2試合だけで画像も悪く、途中で切れていたり、途中から始まったもの。華奢な体格と短いリーチだけが目立ち、卓越したテクニックは全く認められなかったのです。

楽勝ムードはなかったものの、大橋も陣営もファンも、当時はロペスが何者なのかを、誰ひとりとしてわかっていませんでした。

大橋との対戦前のロペスは26戦全勝ながら、母国を離れたのはテキサス州ダラスの小さなホテルで戦った1試合だけ。

ロペスが「日本のスター選手に選ばれた謎のメキシコ人」の域を出ていなかったのは、海外ブックメーカーのオッズが大橋有利と叩かれていたことからも窺えました。

しかし…1990年10月25日の後楽園ホール。私たちは何もできずに惨敗してしまう大橋を目の当たりにしてしまうのです。




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英国ボクシングニューズからOne bad night: How boxing turns on its fighters…「たった一度の不運な夜:ボクシングがファイターたちを弄ぶ」に思い切り私見を交えて。

https://boxingnewsonline.net/one-bad-night-how-boxing-turns-on-its-fighters/

⬆︎原文も十分に面白いのですが、もっといろんなサンプルを並べたり、無敗に意味はないことをしっかり伝えた方がお話として一貫すると思いました。

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ヘビー級にも関わらず、多くのメディアでPFPに数えられたアンソニー・ジョシュアでしたが、リング誌では21世紀になって特に濃厚になった「ヘビー級大好きだけど、PFPに入れない」という方針?からPFP10傑に入ることはありませんでした。

「英国ヘビー級のスターがニューヨーク上陸」…ジョシュアがどれほど強いのか、その顔見世興行になるはずでしたが…。


不運な一発を喰らったばかりに、その後のキャリアが暗転するーーー私たちはそんなファイターを何度目撃してきたことか…。

しかし、その残酷さもまた、ボクシングから漂う妖しい魅力の一つ。


野球やサッカーではこんなことはありえない。

痛烈なサヨナラ負けを喫したクローザーが、その試合を境に別人のように打ち込まれてしまう。一瞬の隙を突かれてまさかの敗北を経験したサッカーチームが、その後の試合で崩壊してしまう。

他のスポーツでは痛恨の敗北は何度も経験するもの。〝たった一度の夜〟は他のスポーツにはないのだ。

「アルフォンソ・サモラは過大評価だった。カルロス・サラテにKOされなくても落ちぶれていた」。もし、あなたがボクシングファンならそんなことは1ミリも思わないはずです。

アルフォンソ・サモラのカルロス・サラテ…ドナルド・カリーのロイド・ハニーガン…ロイ・ジョーンズJr.のアントニオ・ダーバー…。

それまで「史上最高」の声もあがっていたファイターがたった一晩でメディアやファンから「過大評価だった」「よく考えたら本当に強い相手に勝っていない」「あいつはもう終わった」…と手の平を返される。

みんな忘れてしまっているが、アンソニー・ジョシュアは、そんなファイターの典型だ。

「いや、私はジョシュアは過大評価だと思ってたよ」と言うなら、あなたは大嘘つきだ。ジョシュアは、〝史上最強〟とも推されているオレクサンデル・ウシクと24ラウンドにわたって互角の戦いを繰り広げたじゃないか?

ジョシュアは2019年に「何ラウンドでKOするか?」が焦点だったアンディ・ルイスJr.戦を衝撃的なKO負けで落としてしい、無敗のレコードはストップ。

ルイスとのダイレクトリマッチを完封で雪辱するも、神経質に距離を取るボクシングに徹したジョシュアは確かに何かを恐れていた…いや、何かを失っていた。

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The obsession with the “0” is something that has developed over time, becoming a valued legacy metric with the great Floyd “Money” Mayweather using his unbeaten record as a publicity statement in the lead-up to all of his biggest fights.



ボクシングは興行であり、無敗であることは一つの商品価値だ。

フロイド・メイウェザーは「0」に執着し、ジョー・カルザゲやリカルド・ロペスも無敗のままキャリアのゴールテープを切った。

無敗記録は悪いものではないが、ボクシングにおいての評価では後回しにされる項目だ。

永遠のGOAT、シュガー・レイ・ロビンソンは何敗したか?マニー・パッキャオは米国に乗り込んだとき、すでに〝傷モノ〟だったじゃないか。


先日、かつて史上最高とも言われたカネロ・アルバレスが2階級下で2つ年上のテレンス・クロフォードに完敗した。

カネロは3年前に圧倒的有利と見られたドミトリー・ビボル戦を落としてから6連勝していたが、それまでの決定力は完全に喪失していた。

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完全無欠のファイター…そう言われていましたカネロだったが…。


カネロはビボルに痛烈なKO負けを喫したわけではないが、あの試合を境にかつての輝きを失ってしまった。

それでも、カネロが2010年代後半から2020年代前半にかけて、最高のファイターであり続けた事実は揺らがない。


The crowd will always call for blood


メディアや解説者は煽動的で皮肉たっぷりに敗者を批判し、観客は常に残酷な血を求めて騒ぎ、敗者をさらに踏みつけようとする。

彼らは舌なめずりしているはずだ。

「次はクロフォードの番だ」と。

クロフォードがデビッド・ベナビデスに惨敗したら…「完全劣化版のカネロに判定勝ちしただけ」と言われるだろう。


ファイターは人生を賭けて戦っている。そこには勝者と敗者が必ず存在する。

そして、たった一つの敗北がファイターを別人にしてしまうのがボクシングだ。


こんな残酷極まるスポーツに全身全霊を捧げるファイターたちを、ほんの少しの慈しみをもって見守っていこうじゃないか?








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今夜ご紹介するのは10年前の今頃に、我が家のポストに届いたTHE RING MAGAZINE NOVEMBER2015。

この年は6年以上も熱望され続けた「マニー・パッキャオvsフロイド・メイウェザー」がついに実現。

すでにボクシングは完全マイナースポーツでしたが、この試合だけは特別。ボクシングの枠を超えて、一般スポーツファンまでが興味を持った最後のボクシングマッチになりました。

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CNNスポーツなど一般スポーツメディアがボクシングの試合を報じるのは珍しいばかりか、試合決定からカウントダウンタイマーをセット、毎回両者の言動やチケット価格、ラスベガスのホテルや駐機場の価格が暴騰、空きがないことを大きくレポート。マイナースポーツのボクシングではありえない、異例の扱いでした。


この号のリング誌PFPの1位はもちろん、メイウェザー。

続いて2位:ローマン・ゴンサレス、3位:ウラジミル・クリチコ、4位:ゲンナジー・ゴロフキン、5位:ギレルモ・リゴンドー、6位:パッキャオ、7位:セルゲイ・コバレフ、8位:テレンス・クロフォード…そして9位が〝神の左〟山中慎介!10位が〝KOダイナマイト〟内山高志!







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日本人ボクサーのディフェンス能力は高い?それとも低い?

またまた、何を基準に語るのかわからない、答えのないお話です。

BoxRecのカテゴリーに「OPPONENTS TOTAL CONNECT PERCENTAGE LOWEST」というのがあります。対戦相手のパンチ的中率が最も低い…なんて訳していても分かりにくいので、簡単にいうと「被弾率」です。

もちろん、これは低ければ低いほどいい。

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どの試合、どの期間を切り取るかで順位は全く変わってきますが、1位はドミトリー・ビボル。シャクール・スティーブンソンよりも上というのは意外な気もします。

相手の攻撃を空転させるのではなく、職人技のブロックが基本のビボルはディフェンスマスター映えはしませんが、相手のパンチを一番よく殺しているということです。

ブライアン・カスターニョがランキングされているのはさらに意外。

井岡一翔と寺地拳四朗が19.3%で同率4位というのも、2人の直近の敗戦を生々しく目撃した日本のボクシングファンには意外かも。

井上尚弥(20.5%)とムロジョン・アフマダリエフ(20.6%)が並んで9位と10位。

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14.2%のビボルと16.7%のシャクールは別格にして3位以下は横一線、そんな感じでしょうか。

ちなみに、井上のアフマダリエフ戦での被打率はシャクール並みの16.5%ですが、ジャブを「23ヒット/320:10.0%」に抑えたのが効いており、パワーパンチは146発中39発をもらって被弾率は26.7%に跳ね上がります。

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ジャッジペーパーはフルマークでも文句のない内容でしたが、被弾は目立ちました。

それでも「皆さん、ありがとうございました!アウトボクシングもいけるでしょ!誰が衰えたって?」の呼びかけに納得できたのは、連打を許さなかったから。

見事に黄信号(赤信号)を渡り切ったアウトボクシングでした。

それにしても、ビボルの14%台は出色に見えますが、アルツール・ベテルビエフ戦は被弾することが少なくありませんでした。

中谷潤人が他のカテゴリーでもほとんど顔を出していないのもまた、意外です。数字で見えてこないステルスですなあ。







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「ボクマガ青春情熱物語」といいつつ、リング誌ばかり取り上げてる気がしてきましたが、これでいいのだ。

ちょうど10年前のリング誌2015年9月号。

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表紙はライト級、ジュニアウエルター級を支配的に制覇したテレンス・クロフォード。

「メイウェザーとパッキャオの時代が終わり、彼が新しい時代のスターとなるだろう」…リング誌の予想はまたまたまたものの見事に外れました。

カネロ・アルバレスがすでにスーパースターの座に就いていましたが、ライバル不在。米国ボクシングの沈滞ムードはますます色濃くなる一方でした。

そんな中での暗中模索、リング誌は女子MMAファイターのロンダ・ラウジーを単独カバー、大特集を組み、軽量級の井上尚弥も表紙にするなど大胆な施策に走ります。

「なんでUFCの女子ファイター?リング誌でラウジーなんて見たくもない」「井上って誰???バンタム級とか誰も知らないし…ごめんなさい」などなど、数少ない読者には大不評。

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井上と同じように、カジュアルなボクシングファンのセンサーが反応しない軽量級ですが、ローマン・ゴンサレスが専門家やマニアから高い評価を集めていました。

この号のPFPは1位:フロイド・メイウェザー、2位:ローマン・ゴンサレス、3位:ウラジミール・クリチコ、4位:ゲンナジー・ゴロフキン、5位:ギレルモ・リゴンドー、6位:マニー・パッキャオ、7位:セルゲイ・コバレフ、8位:テレンス・クロフォード9位:山中慎介10位:内山高志

このあと、チョコラティトはPFP1位に2年以上も君臨、飛び抜けた評価を集め続けることになります。

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そして、井上尚弥もリストアップされた「KO ARTISTS」。

1位はクルーザー級のドミトリー・クドリャショフで18戦全勝18KO。2位にはアルツール・ベテルビエフ、3位にデオンティ・ワイルダー、4位にゴロフキン。

こりゃ〝マストシー・ファイター〟リストです。

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8月2日に後楽園ホールで行われたプロボクシングの興行で、それぞれ別の試合に出場した2人の選手が試合後に意識を失って都内の病院に救急搬送、一人が昨夜、帰らぬ人となってしまいました。


8月4日、日本ボクシングコミッション(JBC)の安河内剛本部事務局長は「また何が原因でという見極めが難しい両試合だった。原因を究明していくのが難しい事例になった。ただ、もう分からないから(何も対策を)やらないっていう場合じゃない」と語り、現在12回戦で行われている東洋太平洋王座戦を10回戦に短縮する方針を示し、主に12回戦で実施されているWBOアジア・パシフィック王座戦も10回戦に統一したいと意向を示しました。

JBCは東洋太平洋ボクシング連盟(OPBF)の本部国を務めており、萩原実JBCコミッショナーがOPBFの会長、安河内氏が事務局長を兼任、ルール改正に大きな障害はありません。

全国のジム会長らで組織する日本プロボクシング協会と話し合った上で、早急な変更を目指す方針です。


事故が起こりやすくなる原因の一つとして考えられている過度な水抜き減量を抑制するため、すべての試合で当日のリバウンド体重に制限をつけることも前向きに検討していく方針です。

過度な水抜きについては、やはり事故が重なったことから英国ボクシング管理委員会(BBBofC) が試合直前のサウナの使用を禁止しています。

3年前に当時のWBOバンタム級王者ジョンリール。カシメロが試合直前にサウナで「減量も順調!」と写真をSNSにアップしてしまい〝御用〟となりました。

ヘビー級を除く現代のボクサー、特に軽量級ではほとんどのボクサーがは直前に水抜きで一気に体重を落としています。

このメリットは長期の減量で心身ともに消耗するのを回避できること、前日計量後のリバウンド幅が大きく、当日の試合で優位な体重でリングに上がることができることなどがあげられます。

デメリットは一気に水分を抜いて生じる極端な脱水症状は肉体に大きな負担をかけ、前日計量クリア後に極度の体調不良を訴えたり、軽量に臨めないというケースも珍しくありません。

リミット105ポンド(47.62kg)のストロー級選手が10ポンド(4.54kg)を大きく超えてリバウンドすることもあります。

わずかな時間で、水抜きをした極度の脱水状態の体内に体重の10%以上の水分と食事を摂るわけですから、医学的にもありえない非常に危険な行為です。

青白い顔とこけた頬で秤に乗ったボクサーが、翌日には血色の良い表情でリングに上がるーーー井上尚弥をはじめ多くのボクサーで見られる光景です。


JBCは2023年12月の日本バンタム級タイトルマッチで起きたリング禍から、事故検証委員会を設置、再発防止に取り組んできましたが、抜本的な解決に向かう道筋はまだ見えていません。

相次ぐリングの事故について、亀田史郎は「JBCもラウンド数を減らすとか、レフェリーが止めるにしても、どこで止めるべきか難しい。そこの問題じゃないと思う」とし「そこ(ルールの変更)はそれでいいが、大きなグローブを使うジムでのスパーリングでダメージが蓄積されている。大きなグローブは面積広くなるから、揺れるダメージも大きい。スパーリングでダウンはあまりないから、ダメージが全部、蓄積する」と話しています。


一方の選手が大きなダメージを負っていると判断したならストップですが、激しい打撃戦の末に両者が大きなダメージを負って互角の戦いを繰り広げていたら?…「早く止めないと最悪の事態になる」と判断して引き分けストップなんて出来ません。そこまでのラウンド計算で判定というのが現実的でしょうが、やはりストップの判断が非常に難しい。

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グローブの問題についてはこのブログでも度々取り上げていますが「10オンスよりも6オンスの方が危険、ナックル部分が薄いレイジェスが危険」というのは大間違いです。

安河内事務局長は「原因を究明していくのが難しい事例になった」と語り、JBCの朝本俊司オフィシャルドクターも「運営側の瑕疵はほぼないだけに、対策が難しい」としています。

これは、大筋でその通りだと思います。

一方で、何が原因で〝それ〟が起きたのかはわかりませんが、ほとんどの事故で〝それ〟が何なのかははっきりわかっています。

頭蓋内出血から引き起こされる「硬膜下血腫」です。

「そんなのわかってるわい」と思われる方も多いかもしれませんが頭蓋内出血・硬膜下血腫がどんなものなのかは知らない人が多いのではないでしょうか?

「衝撃で脳が頭蓋骨内で回旋することで脳と硬膜をつなぐ静脈が切れて、脳を覆う硬膜とくも膜の間に血が溜まる」のが、硬膜下血腫です。

そして、硬膜下血腫はダメージの蓄積ではなく、多くの場合でたった一つの打撃で起きてしまうというのです。

つまり、それまでの試合やスパーリングで蓄積されたダメージでリスクが増大するなら、事前検査で脳内血管が痛んで、脳の回旋が起きやすい等の事前検査で予見できますが、そうではないのです。

また、どんな打撃によって脳が回旋しやすいのか、そのメカニズムもわかっていません。

井上尚弥のファン・カルロス・パヤノ戦、マニー・パッキャオのリッキー・ハットン戦のような一撃で相手を失神させる、いわゆる「スイッチを切る」ようなKOパンチは比較的安全(安全なKOパンチというのもおかしな表現ですが)と見られています。

ほとんど素手に近い4オンスのオープンフィンガー・グローブを使うMMAでボクシングよりも事故が少ないことを考えると、グローブの大型化は事故に一定の影響があると考えて良いでしょう。

しかし…。

そもそもの問題として顎、テンプル、頭部の急所を狙うボクシングの競技性格を考えると、重大事故のリスクを排除することは不可能なのかもしれません。

そして…。

もし、そうだとすると、これは、もはや「事故」とは呼ぶべきではないのかもしれません。




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10年前のThe Ring Magazine 2015年7月号。実際に我が家のポストまで届けられたのは5月初旬か4月(実際の◉号よりも早い時期に発行されるのは世界共通で、フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ(5月2日)の直前特集「MAYWEATHER VS. PACQUIAO A to Z=試合前にチェックすべき全て」も)。

10年一昔とはいうものの、当時も10年後の今も最も大きな関心を集め人気のあるファイターはメイウェザーとパッキャオ、カネロ・アルバレス。

今ではメイパックは引退しているというのに、カネロは完全にキャリアの黄昏を迎えているというのに。

表紙は5月9日にMLBヒューストン・アストロズの本拠地ミニッツメイド・パークでメガファイトのリングに上がるカネロ・アルバレス。ジュニアミドル級12回戦で、石田順裕が超大番狂せで転覆させたジェームス・カークランドを迎える一戦を12ページにわたってフューチャー。

カネロの進出がカウントダウンのミドル級にも「GREATEST MIDDLE WEIGHT?」(史上最強のミドル級は誰だ?)をトーナメント形式で分析。

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今回、ご紹介するのは「PERFECT RECORDS」(引き分けNGの全戦全勝無敗のままの連勝記録)。

リング誌でランキングされる180名の中でPERFECT RECORDを持つのは、なんと55人。なんと30.5%が無敗でした。

これは「2015年にものすごい選手が揃ったのではなく相手を選り好みでき、競合同士の激突を避けるプロモートが染み付いた結果」であり、その傾向はさらに色濃くなって現在まで脈々と受け継がれています。

現在のトップはテレンス・クロフォード(41戦全勝無敗)でしょうか?

中谷潤人(31戦全勝無敗)と井上尚弥(30戦全勝無敗)もPERFECT RECORDSリストに名前を連ねているはずです。


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