カテゴリ: 世界の軽量級,世界に挑む日本人

Tuesday 26, December 2023
  
Ariake Arena, Koto-Ku, Tokyo, Japan
commission:Japan Boxing Commission

promoter:Hideyuki Ohashi (Ohashi Promotions)

The Ring magazine
WBA/WBC/IBF/WBO Junior Feather weight




試合はLeminoが無料配信。米国ではESPN+が早朝5時頃からオンエア予定。

大方の予想通りに井上が勝つと、4団体時代でテレンス・クロフォードに次ぐ2人目となる2階級での〝他の誰にも王者を名乗らせない〟Undisputed championに就きます。

ウィリアム・ヒルが叩いたオッズは井上勝利が1/20(1.05倍)、タパレス7/1(8倍)。掛け率だけなら、ミスマッチの領域に深く突入しています。

1.05倍では誰も井上に賭けず、このあとオッズは接近するのは間違いありませんが、井上のキャリアの中でも「最も楽勝」という数字に落ち着くはずです。

どう見ても、31歳のサウスポーは、充実したプライムタイムを迎えている30歳のモンスターが破壊するために注文されたような実力とスタイルしか持ち合わせていません。

“We are witnessing an all-time great fighter in the prime of his career. He has a very difficult task at hand on December 26 against a tough, powerful Filipino champion in Marlon Tapales, but I am confident ‘The Monster’ will pass this test with flying colors.”

ボブ・アラムも「私たちは偉大なファイターの全盛期を目撃する証人だ。タフでパワフルなマーロン・タパレスは非常に難しい相手。それでも私はモンスターがこの大仕事を簡単にやってのけると確信している」とコメントを寄せています。

日程・会場・放送媒体ともに当初の予想通りに落ち着きましたが、12月26日は火曜日、また平日というのは残念。会場のスケジュールや会場費を考えると、平日のコスパが良いのは理解できますが…。

日本人初、アジア3人目のFighter Of The Yearについては、井上がタパレスに圧勝しても難しいでしょうか?

現状、ライバルとなるのは一足先に2階級でUndisputed championになったクロフォードだけですが、世界評価が低すぎるタパレスが相手ではどんな勝ち方をしても〝逆転〟は厳しそうです。
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MLBで打球の速度や角度、飛距離などの詳細なデータが瞬時に視聴者に届けられているように、メジャースポーツではデータ会社が精密なデータを提供することが当たり前になっています。

ボクシングでは、1985年に行われたWBA世界タイトルマッチ(リビングストン・ブランブルvsレイ・マンシーニ)を放送したHBOがBoxRec(当時はFightStat)を導入したのが始まりです。

あれから約40年、残念ながら米国ボクシング市場は衰退と縮小を余儀なくされ、データシステムもほとんど進化していません。

このブログでもCompuBoxのデータを紹介するときは「必ずしも試合の実態を反映しない」という文言とセットになってしまっています。

もちろん、野球ではフェアゾーンに大飛球を放てばホームランですが、ボクシングの場合は意外なほど小さなパンチが衝撃的なKO劇を生み出すことがあります。

井上尚弥がファン・カルロス・パヤノを背中からカンバスに落下させた、これ以上ない角度とタイミングのジャブクロスはその典型です。

さて、そのジャブのお話。

井上は、ノニト・ドネアとの第2戦で見せたように、ジャブはタイミングを取るだけで実際には打たずに右強打を炸裂させる、〝いきなりの右〟に見えるワンツーも使いこなしますが、井上のジャブの主な役割は、右の強打への導火線です。

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井上のジャブの的中率27%と、1ラウンド平均ヒット数9発は世界トップレベル。

同じ強打者のゲンナジー・ゴロフキンが的中率30%、1ラウンド平均のヒット数9.9発で1位で、数字的には酷似していますが、GGGとモンスターは同じ属性のパンチャーではありません。

GGGはリードパンチを距離を測ったり、相手の侵入を阻む触覚として使うこともあるジャバーの一面もありますが、井上はジャバーではありません。

ジャバーのジャブは距離を測り、保ち、相手のリズムを分断する触覚としての役割をもち、必ずしもヒットしたり、後ろ手の強打に繋げる目的ではなく、意味のある捨てパンチも絶妙にブレンドされているのです。

その意味で、生粋のジャバーと呼べるのが寺地拳四朗です。

矢吹正道戦でまさかの敗北を喫したことをきっかけに、ファイターとしての性格を色濃くしているベビーフェイス・アサシンですが、基本スタイルがジャバーであることは微塵も変わっていません。

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寺地は1ラウンド平均で40発近いジャブを放って1位ですが、ヒット数はわずか6.7発。的中率はわずか、16.9%に過ぎません。

しかし、これをもって「寺地はリードの精度が低い」と考えるのが大間違いなのは誰にでもわかるでしょう。

これほど低い精度にも関わらず、メディアもファンも「世界最高のジャバー」と認めていることこそが、寺地拳四朗の真髄です。

主題からズレますが、ゴロフキンや井上の強烈な左も「前の手」のパンチ、ジャブとしてカウントしているCompuBoxの数字を鵜呑みにするのは禁物で、「もうちょっと精度を上げてくれ〜!」と叫びたくなります。

まあ、考えてみるとジャブの定義も難しい。

一般的には手首を返さずに打てばジャブ、返せばストレートなんですが…手首を返してからさらに捻るようにして打ち下ろす山中慎介の〝神の左〟のようなパンチも新たにカテゴライズして欲しくなります。

井上のジャブクロス、あのフィニッシュの右もきっちり手首を返していないようにも見えますから、あれは左ジャブ→右ジャブのワンツーだったのかもしれません。
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重岡銀次朗が5ラウンドTKOでダニエル・バラダレスを破って、IBFストロー級王者に。

重岡優大はパンヤ・プラダブシーを12ラウンド圧倒して、WBCストロー級王者王者に。

素晴らしい試合でした。

「次はWBO王者(オスカー・コラーゾ)」(優大)。いいですね。

2人が激突することはないでしょうが、このまま強い相手を撃破してゆけば兄弟同時PFP入りもありそうです。

色々と忙しくて、追っかけ見。

亀田興毅の〝MC〟。3150FIGHT、こういうスタイルです。良いと思います。

もうメインだけか。亀田和毅vsレラト・ドラミニ

「世界戦がメイン」というのは、MCのコメントからも伺えたように、もうこだわる時代じゃないのかもしれません。

和毅の良いところはスピードとスタミナ。残念なところは相手が怖がってくれないこと。怖さがないから、相手は攻撃に意識を集中できる。

「彼を倒すことが最大のモチベーション」と語っていた井上尚弥は怖さを見せつけて、相手の意識を防御に閉じ込めます。

スタイルの違い、というだけでなく、誰がどう贔屓目に見てもレベルが違います。

ドラミニも全く怖がらずに、のびのびと戦っています。前半4ラウンド、2と3は完全に取られました。よく考えて2−2。最悪0−4。

前半6ラウンド終了。良くて2−4、最悪0−6。明白に勝つには倒すしかありません。

この選手は、自虐的に「ペチペチボクシングを極めます」のスタイルで良い。どうして「次はKO」「今回はパワーがついた」と、毎度毎度間違った方向に行くのか。

第9ラウンド、和毅の左でドラミ二が思わずクリンチ。続く第10ラウンド、和毅が攻勢。初めて明白に取ります。

後半盛り返しましたが、勝ちは難しい。

115−113/116−112*2。ドラミ二。

SDはどうかな、地元判定の許容範囲か。
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米国で生中継したESPNはもう一つの世界戦とともにわずか4行の記事でしかアップしなかった「寺地拳四朗vsアンソニー・オラスクアガ」

最近では井上尚弥の防衛戦も記事にしなかったこともあり、世界最大のスポーツメディアは取捨選択の「捨」としてボクシングを扱い、米国で特に関心の低い軽量級に至っては全くやる気なし。

どうでもいいことですが、拳四朗とLAのPrincesaは、そんなESPNとトップランクの看板台詞 「THIS IS BOXING」な試合を見せてくれました。

試合は、拳四朗が2度目のダウンを奪った9ラウンド58秒でマーク・ネルソン主審が試合をストップ。

8ラウンドまでの採点は3ラウンドに最初のダウンを与えた拳四朗のフルマーク80−71が一人、残る二人は79−72。

数字上は拳四朗のワンサイドゲームでしたが、非常に面白い試合だったことは、全てのボクシングファンがわかっています。

両者が勝利への剥き出しの根性をぶつけ合ったにも関わらず、綺麗な試合でした。


試合は立ち上がりから拳四朗の左ジャブが冴え渡ります。

京口紘人戦の前に拳四朗と6ラウンドのスパーリングを経験しているオラスクアガは「ジャブが優れているのはわかっているが、私もジャブには自信がある」と、語っていましたが、ジャブを差し合うには両者の技術差は大き過ぎました。

速さだけでなく、絶妙のタイミングと角度、昨年のスパーリングではそこまで見せる必要もなかったのでしょう。

早々にジャブの差し合いを見切ったのも、5戦のキャリアしかない24歳とは思えない冷静さです。

とはいえ、オープニングラウンドでBプランに切り替えなければならなかったオラスクアガは追い詰められました。
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那須川天心のデビュー戦。

まずは、与那覇勇気の男っぷり溢れる拳に、ありがとうございました!

そして、今夜の3分6ラウンド、18分間で私たちが学習すべき「6つのお題」です。


①「パワー」の問題?

天心は非力か?

KO勝利が期待されていたデビュー戦。ダウンは奪ったものの、決定的な場面は作れませんでした。

与那覇が「死んでもKOされない」と鋼鉄の意志でリングに上がったのは想像に難くありません。それでも、あれだけ前がかりに攻め込んでくる、隙だらけの相手を仕留められなかった天心は、パンチャーではない絵面を描いてキャリアを進むしかないのでしょうか?



②独特の「スタイル」?

他の格闘技からボクシングに転向してくる選手には、癖や特徴やアクがあります。

そして、それは多くの場合ボクサーとしては欠点と見做されることがほとんどです。

天心も亀田興毅とのエキシビションやプロテスト。公開練習ではほとんど見せませんでしたが、今夜の有明アリーナでは独特のスタイルと、リズムを見せつけました。

このブログでもすでに「空手の間合い」と指摘されている、独特のスタンスとリズムは世界で通用するのか?



③抜群の「目」 は世界最高レベルか?

誰もがわかりきっていたことですが、天心の最大の特徴は「目」の良さ。

「日本ランカーが相手」と否定的な人でも、この元キックボクサーの「目」が、アルファベットタイトルの王者ではない、本物の世界最高レベルにあることを感じたのではないでしょうか?



④恐るべき「防御

目の良さから派生した要素に思えますが、独特のボディワークと、相手のリズムを簡単に寸断できる技術が再確認できました。

圧倒的なスピードと、効率的なステップ、天心にクリーンヒットを当てる能力を有するボクサーはどのレベルまで引き上げれば現れるでしょうか?



⑤「スタミナ」を証明した?

6回戦でしたが、スタミナは問題ないでしょう。これから、もっともっと増強されていくのは間違いありません。

タフネスという点では、きれいな顔をしていますから古傷はないのかもしれません。

距離が近いボクシングではバッティングやカットは当たり前、出血で視界が塞がれたり、呼吸を制限される試合も待ち構えているでしょうが、そこでの対応力も、あると思います。



⑥隠せない「華」。 

もしかしたらかなり〝自主規制〟してましたかね?そうだとしたら「堅苦しいボクシング」の一ファンとしてお詫びします。

それでも、華がありました。さすがです。ボクシング界に遠慮しないで、もっともっと自由に振る舞ってください。

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…そして、プロ転向会見から本人は「まだそんなことを言える立場じゃない」と一貫して否定しているテーマです。

「井上尚弥」
です。

「僕の生き方は挑戦」と公言する天心が「まだ」と口にしてるのです。それでも「そこ」を見据えているのは誰にだってわかります。

「穴王者に勝ってバンザーイ」で終わろうなんて、ツユほども思ってないでしょう。

こんなこと言っちゃうとザワついちゃうでしょうが、井上拓真には勝つでしょう。 


しかし、もちろん、 井上尚はまだ先です。

あり得ませんが、もし井上尚が与那覇と戦わば、早いラウンドで100%ノックアウトしています。では、井上尚が天心もKOできるか?というとそうは思いません。

あれは、想像してた以上に厄介な異業種からの参入です。

井上尚がフランス料理のシェフだとしたら、与那覇は扱い慣れた(というか普段は扱わないカジュアルな)食材です。賄い飯として、簡単に料理するでしょう。

一方で、今日の天心は純和風料理の職人で、フランス料理も長らく勉強してきましたが、いきなりの食材がジビエでした。さばくのに手間取りました。

しかし、この18分間は素晴らしい勉強になったはずです。 
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12 rounds – junior bantamweights 
(for Teraji’s Ring/WBA/WBC titles) 


■寺地拳四朗1/6=1.17倍
 アンソニー・オラスクアガ11/2=6.5倍

これも当然の数字。帝拳が青田買いした24歳の才能ですが、いきなり寺地は厳しすぎます。

大番狂せを起こすようなら、ジェシー・ロドリゲスを追うスター候補の誕生ですが…。

さあ、メインディッシュです!!! 

ボクヲタ必見、寺地拳四朗とアンソニー・ オラスクアガ。

日本の最高傑作と、帝拳の刺客、こんな面白い構図は滅多にありません。帝拳も意図的に送り込んだわけではありませんが。

さあ!佐々木尽とか那須川天心とか、あんなもん前座じゃ!というメインディッシュを堪能させてくれー!!! 



こういうのが、見たかったんだよ!!!!これがボクシング!!!!!!! 

拳四朗の男気、見ましたか?

これが、プライドがぶつかり合うボクシングの世界戦です。 
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タイではタイ式(キックボクシング)から国際式(ボクシング)の道筋が整備されており、ボクシングに数多くの世界王者を送り出して来ました。

しかし、タイは例外で、キックからボクシングは簡単に往来できる関係ではありません。

キックボクサーからボクシングに転向、大きな成功を収めた現役選手の代表格は 暫定ながらWBCヘビー級王者にもなったディリアン・ホワイトでしょうか。

過去に遡ると、やはりヘビー級で一時代を築いたビタリ・クリチコ(現キーウ市長)は、キックボクサーとして来日経験もあります。

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10年前のリング誌から。「ロシアはウクライナを占領する気だ」。ビタリの言葉を当時は切実に受け止めることができませんでした…。

キックボクシングからボクシングへの転向。ムエタイを除いて、そこには「栄光への脱出」という意味合いが包含されていました。

逆にボクシングからキックボクシングへの転向には「都落ち」の陰がつきまとっていたことも事実です。

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このヒエラルキーに最初に風穴を開けたのは、キックボクシングブームを巻き起こした沢村忠であり、ボクシングを諦めてボクシングの世界王者よりも高い場所に登った魔裟斗でした。

そして沢村よりもサステナな人気を持ち、ボクシングに挫折した魔裟斗とは違う、全く新しい才能、那須川天心が今週末、ついにボクシングのリングに上がります。

市場がシュリンクする一方のボクシング界にとって、最高のカンフル剤です。

今夜のNHKのニュースでも「那須川天心のデビュー戦」が大きく報じられました。専門誌で自己満足的に取り上げられていた「高校◉冠」とかとは注目度の次元が全く違います。

その「◉冠」側の粟生隆寛トレーナー、ミットが上手いのはわかってましたが、そればかりかまだまだ動けますね。頼もしいです、素晴らしいです。

あんな人にミット持ってもらったら、最高に気持ちいいでしょう。
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5月7日、横浜アリーナで予定されていた井上尚弥とWBO /WBCジュニアフェザー級王者スティーブン・フルトンのタイトルマッチが、井上の怪我のため7〜8月に延期となりました。

怪我の部位や程度は明らかにされていませんが「夏開催」 ということは、入院を要するような大きな負傷ではないようです。

井上はじっくり故障を治して、ベストの状態でリングに上がって来るでしょうから心配はありません。

心配なのはフルトンの方。減量苦からフェザー級に上げる予定を前倒しして、この試合の練習、減量を進めていたフルトンにとって、このタイミングでの仕切り直しは痛い。

井上は貴族ボクサー、フルトンは完全Bサイドの無名選手なので文句は言えません。 井上に選んでいただいて感謝する立場です。

とはいえ…なんだかなぁ。 
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Saturday 8, April 2023  
 Ariake Arena, Koto-KuTokyo 
(ESPN+)
 

12 rounds – junior bantamweights 
(for Teraji’s Ring/WBA/WBC and Gonzalez’s WBO titles)


寺地拳四朗vsジョナサン・ゴンサレスのリング誌とWBA /WBC /WBOの3団体のベルトがステイクされた注目の世界ジュニアフライ級タイトルマッチ。

…でしたが、リング誌は junior bantamweightsと誤表記。これ、軽量級あるあるです。

ジュニアバンタム級時代の井上尚弥もジュニアフライ級と、今回のケースの逆で誤表記されたことがありました。さて、試合の日まで間違いに気づくでしょうか…?



気を取り直して、寺地がこの試合に勝てばUndisputed Championに王手。残るはシベナティ・ノンティンガが持つIBFのストラップだけとなります。

日本でもお馴染みのWBO王者ゴンサレスは昨年11月に寺地がWBA王者の京口紘人を鮮やかにストップした名勝負のアンダーカードで岩田翔吉を老獪なボクシングで下したサウスポーのプエルトリカン。

ここまで27勝14KO3敗ですが、世界初挑戦で田中恒成に斬り落とされた黒星を含めて3つともKO負け。世界戦は3勝0KO1敗。

寺地も1敗はしているものの、その相手の矢吹正道にはきっちり雪辱。世界戦は10勝6KO1敗、このクラスの強豪をしっかり倒してきました。

ともに31歳という共通項はあるものの、両者の力量差は明白。スピード、テクニック、パワー、経験…全ての要素で寺地が上回っています。

机上の戦力分析が現実の勝敗と必ず一致するとは言えないものの、寺地の後半ストップ、あるいは明白な判定勝ちが固いと思われます。

オッズは寺地勝利が2/1(1.5倍)、ゴンサレスが13/8(2.63倍)。

予定通りに勝利を収めて、無敗(11戦全勝9KO)の〝Special One〟 ノンティンガとのUndisputed championshipへ!

ボクシングの枠を超えた人気者、那須川天心のデビュー戦がアンダーカードにセットされているだけに、この興味深い試合への注目は希釈されるでしょうが、それもまた一興です。 

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BoxingNews24が、井上尚弥とスティーブン・フルトンのジュニアフェザー級タイトルマッチが「4月に日本開催」とボブ・アラムが語ったと報じました。

しかし、アラムがこの試合にどこまで絡んでいるのか極めて怪しく、いつもの適当な戯言かもしれません。

それはさておき、記事の中で「井上は多くのタイトルを獲得してきたが、そのキャリアを通してまともな強豪とは戦っていない」とも書かれています。
 

While he has won many titles, he’s not faced any elite opposition during his career.

Inoue has on his resume are a mixed bunch of paper champions and B-level guys.

この手の記事は、ローマン・ゴンサレスやファン・フランシスコ・エストラーダらを語るときでも繰り返されてきました。

そもそも、軽量級は欧米では関心の低いクラスです。つまり、ヘビー級やミドル級でいうビッグネームなど存在しないのです。

ポール・バトラーが負け惜しみ半分で吐き捨てたように「(英国など先進国では)バンタム級は経済的に保障されていない(職業として成立しない」」階級です。


記事では「Inoue’s best opposition(井上の主な対戦相手)として、以下の10人を挙げています。

現役のPFPファイターは1人もいません。PFP経験者もドネアだけ。

ドネアを例外に、PFPのドアをノックしたファイターもいません。その意味では、物足りないリストかもしれません。

Nonito Donaire

Paul Butler

Jason Moloney

Emmanuel Rodriguez

Juan Carlos Payano

Jamie McDonnell

Kohei Kono

Omar Narvaez

Adrian Hernandez

Ryoichi Taguchi


この中で、井上との対戦時でESPNとリング誌、いずれもトップ10に数えられていたのが赤字のファイター。 10人中9人が文句なしの世界ランカー級の実力者。

バトラーはESPNでトップ10に入っていませんでしたが、リング誌では6位評価されていました。

アルファベット団体が勝手にでっちあげた〝世界チャンピオン〟や〝世界ランカー〟を倒してきたわけではないのです。

この10人で、最も高く評価すべき相手は田口良一で、誰も異論はないでしょう。

未来のリング誌王者にしてWBA/IBF統一王者。ただし、井上はプロ4戦目、田口は日本王者という蕾の激突でした。

それでも、he’s not faced any elite opposition during his career.と断じられてしまうのは、軽量級の悲哀です。

「超軽量級」という小さな井戸の中では、十分強い相手と戦ってきました。

もちろん、井上の舞台が先進国では「職業として成立しない」ような階級であることは残念です。

だからといって、井上がマニー・パッキャオのように「人気階級の本物のビッグネームをことごとく撃破してラスベガスのスーパースターになる」なんて夢が描けるわけもありません。

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「ビッグネーム狩り」。こんな芸当が出来るファイターはいません。


リカルド・ロペスは17階級で最も層が薄い、つまりレベルが低いストロー級でしたが、ミドル級やウェルター級のスター選手が霞むほど美しいボクシングを見せてくれました。

それでも、米国やメキシコではロペスの評価は低く、米国では小さな会場でもメインを張れず、女子ボクサーの前座に甘んじることもありました。

ロペスの評価が最も高いのは、目の肥えた軽量級の面白さを識る日本のファンです。

井上とロペスは欧米の不人気階級で無双し、専門家評価だけが高い存在、という点で共通しています。

しかし、ついに眩いスポットライトが当たる場所に恵まれなかったロペスとは違い、井上には母国の肥沃なリングがあります。

かつて恋焦がれたラスベガスの夢は幻覚に終わりましたが、欧米では職業として成立しない階級でも、日本のリングでビッグマネーを掴んでいます。 

4団体時代の超軽量級という井戸の中ではあるにせよ、井上はきっちり強豪に勝利しながら、ほとんど完璧なキャリアを刻み続けているのです。 
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