会場未定ながジョンリール・カシメロとギレルモ・リゴンドー が激突します。

カシメロは32歳、リゴンドー は40歳。軽量級としては共に若くはありません。
しかし、ジュニアフライ級で最初のタイトルを獲ってから、4階級目のバンタムでカシメロは最も凶暴になっています。
意外性の塊のようなフィリピン人は、いまがプライムタイムと見て良いでしょう。
一方のリゴンドー 。40歳という年齢は軽量級でなくても完全に黄昏刻です。

◼️「あるキューバ人ボクサーの生き様」。カストロを裏切った男から、アメリカのチャンピオンへ。◼️
この亡命キューバ人は二つ大きな誤解を受けています。
一つ目は、ボブ・アラムやESPNが名指しで批判した「試合が面白くない」ということ。
22戦20勝1敗1NC、20勝のうち13がKO。圧倒的なパワーを見せることもあり。退屈な判定を繰り返しているわけではありません。
もちろん、スペクタクルなファイターではありませんが、人気がない最大の原因はクリチコ兄弟と同じく〝東側〟への偏見です。
もし、彼らがメキシカンなら…。クリチコ兄弟はカネロ・アルバレスを凌ぐ人気者だったでしょう。
リゴンドーもロマチェンコをジュニアフェザーまで痩せ細らせ、リバウンド制限まで飲ませて快勝していたかもしれません。
そして、もう一つの誤解は「不人気打開のため打撃戦上等に変えている」というスタイルチェンジ。
ここ数試合のリゴンドー が強引な打ち合いを避けないのは、反射能力の衰えを自覚しているからです。
スピードと動体視力、パンチの回転、フットワーク、軽量級に求められる要素は、非常に衰えやすいものばかりです。
そして、それらを支える反射は、鍛えることが難しく、加齢による劣化は止められません。
年齢を重ねても最後まで残るパワーと対極にあるのが、反射です。
リゴンドー がパワーに縋り付くのは当然の帰結なのです。
〝酒場の乱闘〟に易々と巻き込まれる今のリゴンドー は、卓越した防御技術と反射でシドニー2000とアテネ2004を連覇したキューバ代表の天才とは別人です。
20年前ならもちろん、10年前のリゴンドー でも、カシメロがどんなに意外性の塊だとしてもノーチャンスだったでしょう。
しかし、8月14日にリングに上がるのは、反射能力を完全に喪失し、スピードとフットワークまでもがれた〝10年後〟のリゴンドー です。
全盛期の野獣と、経年劣化が激しい精密機械。
対照的な二人ですが、悲しい共通点もあります。
「不人気階級の外国人」という二重苦から正当な人気や報酬が得られず、母国のリングに立てないまま不遇のサーキットを続けるジプシー・チャンピオン、ということです。
そんな二人が真夏に正面衝突します。
フィリピン人の強打が40歳のキューバ人を破壊する、と予想しますが、どちらが勝っても少し苦い味のする世界バンタム級タイトルマッチになりそうです。