フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 世界の軽量級,世界に挑む日本人

▶︎日本のスター井上尚弥は国技館でアラン・ティパエンを8ラウンド2分34秒でストップ。

リング誌、IBF、WBAバンタム級のタイトル防衛に成功した。

PFPファイターの井上はタイ人を終始圧倒、第7ラウンドに大きくグラつかせると、第8ラウンドに左フックでダウンを奪い、立ちあがったティパエンにさらに左フックを追加、主審がここでストップ。

ティパエンは12勝3敗(11KO)と戦績は悪くないが、世界タイトルに挑戦する価値のある実績は持っていない。

30歳のタイ人は8ラウンドまで持ちこたえたものの、甚大なダメージを受け、井上相手とはいえIBF5位という評価は恥ずかしく映った。
 
The 28-year-old Inoue is one of the finest pound-for-pound fighters in the world today and a fight likes this is several levels beneath him.
 
現在28歳の井上は、世界で最も優れたPFPファイターの一人であり、今日の相手は彼が戦うべき相手ではなかったかもしれない。

▶︎アンダーカードで、谷口将隆がウィルフレド・メンデスを11ラウンドでストップ。2度目のWBOストロー級タイトルを獲得しました。オフィシャルは1分8秒。

第2ラウンドに左フックでダウンを奪い、拮抗したラウンドをしのいで第11ラウンドに一気呵成のスパート 、番狂わせを呼び込んだ。

谷口はリング誌ストロー級8位、2度目の世界挑戦で悲願を果たした。

メンデスは3年半ぶりの敗北、16勝2敗(6KO)。
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ネバダ州ラスベガス パークシアター


ジュニアフェザー級のストラップは、すでにWBAとIBFを掌握しているムロジョン・アフマダリエフと、この試合の勝者が激突すると完全統一王者=Undisputed Champion誕生、そこでは当然リング誌タイトルもステイクされます。

急速に完全統一への磁力が強まっている122ポンド。井上尚弥がこのクラスに進出すると、世界挑戦は完全統一王座を賭けた大一番になる公算が出てきました。

軽量級という小さな世界でライバルに恵まれなかったモンスターにとって、ジュニアフェザー級は最も輝ける場所になるかもしれません。

オッズはフルトン3/10(1.3倍)、フェイゲロア5/2(3.5倍)。大方の予想はフルトンの判定逃げ切りですが、果たして?

まずはアンダーカード。

ゲイリー・アントニオ・ラッセルvsアレクサンドロ・サンティアゴ。ノンタイトルのバンタム級10回戦。

序盤は、サンティアゴの攻勢にアントニオがやりにくそう。決定的なシーンはなし。

第5ラウンドからアクションが増えますが、どちらにでも振れる内容。アントニオはロープに詰まるシーンが増える。

最終10ラウンド、アントニオの左ショートでサンティエゴがグラつきますが、詰めきれません。試合終了。

番狂わせです…。いや、違いました。

MD2-0でアントニオ。うーん…。


レイース・アリームvsエドゥアルド・バエス。NABO北米ジュニアフェザー級タイトルマッチ10回戦。

アリームはよくまとまったボクサーファイターですが、今日は硬い。

この試合もMD。98-92/96-94/95-95。アリームが苦戦の末に順当勝ち。


ニューヨークのテオフィモ戦待ちだったのでしょうか。やっとメインイベント。



WBC王者 Brandon Figueroa vs WBO王者 Stephen Fulton 

さあ、The Heartbreaker(和訳すると「色男」…そんなニックネームもあり?)がソンブレノをかぶって先に入場。Cool Boy Stephもなぜかソンブレノ、ガウンもメキシコカラー。

メキシコの時代ですなぁ。

予想通りの立ち上がり。フィゲロアのゴリ押しをフルトンが向か打つ展開。場内はフィゲロアへの「メヒコ・コール」。

フルトンがクロスレンジでの打撃戦、フィゲロアの土俵で戦っています。

「私はルイス・ネリとは違う」(フルトン)。その通りに根性見せてますが、ボディをもらい過ぎ。第5ラウンドで、フィゲロアがペースを掌握。

「フルトンは足を使わないといけない」(ジョー小泉)。その通りですが、それをさせない、色男の執拗な突貫です。

削り合いの試合は、フィゲロアのシナリオです。

第7ラウンド、後半戦に突入。フルトンも頑張ってますが、スタミナが持つか?

両者のフィジカル差が、徐々に明らかに。 

フルトンがKO宣言していた第9ラウンド。 この回は精度でフルトンですが…消耗してます。

チャンピオンシップラウンド。フルトンの足腰が怪しい。足を使ってリングを丸く使って、見栄えはフルトン。

クロスゲームです。

激戦の12ラウンド。どっちの転んだか???

また2−0のMD。フルトンが薄氷の勝利。116-112*2/114-114。

boxingscene.comは114−114のドロー。

しかし、3試合続けてのMD。大激戦。とはいえ、なんだか疲れたのは、山場のない混戦ばかりだったからでしょうか。
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朝も早よからお仕事へ…、

愚痴は言わずに、話を変えて…。


ボクシングの試合はどう転ぶかわかりません。

メタメタに面白くなるに違いないと思われたカードが、とんでもない塩試合になることも珍しくありません。

それでも、井上尚弥vsジョンリール・カシメロや、村田諒太vsゲンナディ・ゴロフキンのようなパンチャーの激突は、戦前から胸が踊ります。

そして、ボクサーvsファイターの〝タテホコ〟対決もまた、塩風が吹き荒れる予感に慄きながらも、パンチャー対決にも優る名勝負を期待してしまいます。

ジュニアフェザー級団体統一戦「WBO王者スティーブン・フルトンvsWBC王者ブランドン・フィゲロア」。

既に残る二つのストラップ、WBAとIBFをムロジョン・アフマダリエフが保持、Undisputed Champion誕生に王手が懸かる試合というのに、試合展開へのワクワク感が大きいマッチアップです。

下馬評は27歳のフルトンが明白に有利、24歳のフィゲロアの突貫を足と手のスピードでかわすと見られています。

オッズはフルトンが3/10(1.3倍)に対して、フィゲロア5/2(3.5倍)。

舞台はラスベガス、パークシアター。3年前に村田諒太がロブ・ブラントにまさかのばんくるわせを食らった美しいリゾートホテルに内蔵されたアリーナ。

会場はテキサスのハートプレーカーへの応援が圧倒的でしょう。

フルトンがアウエーの空気に飲み込まれるとは考えられませんが、タフな人気者がしつこく繰り返すアタックを12ラウンド捌き切れるか?

あるいは、精度の高いフルトンの迎撃にフィゲロアがジリ貧に陥るのか?

試合は判定か終盤決着にもつれると見られています。

井上尚弥の122ポンド進出時に誰がUndisputed Championであって欲しいか?を考えると、ラスベガスやテキサスの大舞台に引っ張り上げられる可能性大のフィゲロアが印象的な勝ち方を収めて欲しいところです。。

個人的にはテキサス、アラモドームでブーイングの嵐が360度吹き荒れる中、花道をリングに上がるモンスターを見たい!
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◉11日(土)52.5㎏契約10回戦@名古屋国際会議場:田中恒成vs石田匠

▶︎ジュニアバンタム級=115ポンド・52.16㎏=のサバイバルマッチです。

実績では3階級制覇の恒成に軍配が挙がりますが、タフな石田を明白な形で破る方ができるか?

井岡一翔を除くと、恒成にとって最強の相手かもしれません。



◉12日(日)WBOバンタム級@UAEドバイ コカコーラ・アリーナ:王者ジョンリール・カシメロvsポール・バトラー

▶︎井上尚弥との対戦を熱望する32歳のフィリピン人にとって、絶対に負けられない戦い。

挑戦者バトラーは33歳の英国人。35戦33勝15KO2敗。二つの黒星はゾラニ・テテとエマヌエル・ロドリゲスに喫した完敗。底の見えたボクサーです。

常識的に考えるとカシメロの圧勝ですが、このフィリピン人には常識が当てはまらないだけに、番狂わせもあり得ます。

日本のボクシングファン目線では、カシメロがバトラーを粉砕、井上への思いを大上段からぶちまける、という流れが理想ですが…。




◉12日(日)WBCバンタム級@カリフォルニア州カーソン ディグニティヘルス・スポーツパーク:王者ノニト・ドネアvsレイマート・ガバリョ

▶︎ドネアはノルディーヌ・ウバーリ戦に続いて2戦連続で、カリフォルニア州立大学キャンパス内テニスコートに特設されたお馴染みのリングに登場。

フィリピーノフラッシュが西岡利晃の夢を打ち砕いたのも、この場所でした。

バンタム級に再び落としてからの年老いたドネアがアンダードッグ扱いされなかったのは、代打出場のステフォン・ヤング戦だけ(順当にテテとの試合だと圧倒的不利でした)。

今回の相手は、そのヤングに初黒星をつけたガバリョ、ヤングに勝った者同士の対決になります。

そして、今回のガバリョ戦はおそらく、ドネアにfavoriteのオッズが出ると思われます。




◉14日(水)リング誌/WBA/IBFバンタム級:王者・井上尚弥vs アラン・ディパエン

▶︎試合枯れのモンスター、ファンの双方にとって「やらないよりはやった方がいい」という後ろ向きなマッチメイク。

ディバエンはリング誌ランキングには入っていないませんが、リング誌タイトルはステイクされます。

井上にとってモチベーションを上げにくい試合ですが、期待通りの圧勝で来年以降の団統一戦に備えるしかありません。




◉29日(水)ミドル級団体統一戦:WBA王者・村田諒太vsIBF王者ゲンナディ・ゴロフキン

▶︎「タイソンの東京ドーム以上の興行」という報道もありますが、日本人メインでは間違いなく日本史上最大のメガファイト。

五輪金というステイタスを獲得済みの村田にとって、いや、電通が担いだ神輿の目標地点はメガファイトでビッグネームに勝つことでした。

そこに、やっと辿り着きました。

この試合ばかりは「村田諒太がんばれ!」だけではなく、電通と帝拳、そこに夢を賭けたスポンサー企業に感謝、感謝、感謝です。

舞台は整えてくれました。あとはファンが力の限り応援するだけです。

そして、なんと嬉しいことか、この試合に勝てば「日本史上最大のメガファイト」をさらに更新する、もっと巨大な相手を引っ張り込むことが出来る可能性が膨らみます。



◉31日(金)ジュニアバンタム級団体統一戦:WBO王者・井岡一翔vsIBF王者ジェルウイン・アンカハス

まだ、正式発表はありませんが、これは是非実現して欲しいカードです。

井岡にとっては、ストロー級に続く2度目の団体統一戦。

フィリピンのプリティボーイ、不気味ですが、井岡のいう「メリットのある試合」です。

いつも以上の調整能力と、試合での集中力を見せてくれるでしょう。

この試合に勝つと、リング誌などのPFPでさらにランクを上げることも期待出来ます。

ジュニアバンタムの残りのベルトを賭けた「ファン・フランシスコ・エストラーダvsローマン・ゴンザレス3」の日程・会場がいまだに発表されませんが、この勝者と完全統一、Undisputed Championの座を賭けて戦いたいところです。
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やっと録画が見れた「ボクサー兄弟〜二人で起こした番狂わせ〜」。

30分の短いドキュメンタリー。

兄弟って、きっとそうなんだろうなあと思わせる「普通の二人」。

でも目指してるのは、全く普通じゃないこと。

いい作品でした。

ずっと賢弟愚兄だった2人に、この一年で大きな転機が訪れます。

亮明は宿願のメダルを掴み取り、恒成は初めての挫折から再起戦に向かう。

勝負の世界です。石田匠にもNHKが取り上げないだけで、ボクシング人生の物語を七転八倒しながら、東海のエースに挑むのです。

田中兄弟を一方的に賛美するのではなく、透明なフィルター越しに2人の成長を見せてもらったようでした。

繰り返しになりますが、いい作品です。
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【番組ディレクターから】
 
 兄・亮明さん 「僕の親、うどん屋さんやっていたんです、小さい時。忙しいお昼頃の時間になると、僕も手伝いで皿洗いしてたんです。で、弟はしないんです。あいつは車の中でゲームしているんですよ。代わって、と言いに行ったら、いや無理、と言われたことを一番覚えています。めっちゃむかつきません?」  

妻・百美さん 「今まで夫は一人で練習したい、孤独になりたいと思って、ずっと一人でやってきたと思うんですけど、やっぱりオリンピックが決まったことで肩の荷がおりたというか、誰かに頼ってもいいかなという気持ちになれたのかなと思いますね。」  

弟・恒成さん 「僕は去年の大晦日に、プロボクサーになって初めて負けて、一回沈んだし、気持ちもやっぱり落ち込んだし。そんな中で次の試合、誰よりもかっこいい立ち上がり方で復帰した姿をみんなに見せたい。こんなにかっこよく立ち上がるんだというのを見せたいなと思います。」 

妹・杏奈さん 「亮明は冷たくはないけどツンデレみたいな感じで、恒成はいつも優しいです。」 

父・斉さん 「空手、ボクシングと、お前たちがやりたいと言ったから父さんも付き合う。ただ自分で言うたからには、自分で責任取らすのは、子供の頃からそう。言ったのはお前らやから。人のせいにできへんでしょ。それだけは、そういう教えでよかったなと思うとる。」  

母・由紀子さん 「二人が頑張ったのは、お父さんに好かれたかったのかも。褒められたいとか。いつも一緒にいられるのは空手だったり、ボクシングだったりとか、それで頑張ったのかもしれないですね。」 
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ESPNの「ESPN's top 25 boxers under 25 =25歳以下のトップボクサー25人」にWBOフライ級王者の中谷潤人が8位に選ばれました。

25人にはテオフィモ・ロペス(24歳)、シャクール・スティーブンソン(24歳)、デビン・ヘイニー(22歳)、ライアン・ガルシア(23歳)、シャロン・エニス(24歳)、ダニエル・デュボア(24歳)らが名を連ねました。


8. Junto Nakatani (22-0, 17 KOs)

WBO flyweight champion

23 years old
2020 ranking: 
Tied for 15th

The fighter: 長身サウスポー中谷潤人は、軽量級にスター選手を続々と送り込む日本の才能溢れる23歳。

直近の試合は、ツーソンに乗り込んでアンヘル・アコスタを4ラウンドで粉砕、米国のボクシングファンにも鮮烈な印象を残した。

Accomplishments: ジーメル・マグラモを8ラウンドで仕留めてタイトル獲得、初防衛戦でもアコスタを圧倒したパフォーマンスは対戦相手の質的にも評価できる。

Future ceiling and expectations: フライ級では破格のパンチ力を持つ中谷は、見ていて面白いファイター。その未来は明るい。

同胞の井上尚弥や井岡一翔のように、将来は複数階級制覇を果たし、軽量級を代表するスターとして名前を刻むだろう。

中谷の前に最初に立ち塞がるのは、ライバル王者フリオ・セサール・マルティネスか?

▶︎▶︎▶︎まだ23歳。 あの体格は魅力的です。矢吹正道が名前を挙げてますが「注目されるカード」と「世界評価につながるカード」をうまく組み合わせて、大きな試合をやって下さい!

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WBCジュニアフライ級の新王者、矢吹正道が現役続行を決断しました。

海外の大手プロモーターから好条件でオファーがある、とも報じられています。

京口紘人やエルウィン・ソトらジュニアフライ級のビッグネームを傘下に収めているマッチルームと契約するなら、近い将来団体統一戦がセットされるはずです。

それまで矢吹がベルトを死守できているかどうか、です。
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海外での試合となると報酬が下がりますが、井上尚弥vsノニト・ドネアのさいたまスーパーアリーナを絶賛していたエディ・ハーンは、日本でのビッグファイトを見据えていると思われます。

軽量級メインであの規模の興行なんて、欧米では想像すら出来ないでしょう。

ただ、矢吹はもちろん、寺地拳四朗や京口ですら、井上と比較すると一般のスポーツファンへの認知がまだまだ。現状で「たまアリでメイン」は考えられません。

マッチルームのジュニアフライ級戦略のクライマックスが、日本であることは間違いありません。

寺地の参戦や、ジュニアフライ級最強トーナメントを謳って、具志堅用高トロフィーを用意などの仕掛けも必要でしょう。

すでにリング誌タイトルを保持している京口が団体統一戦で明白な勝利を収めると、PFP入り濃厚です。

現在、井上が3位、井岡一翔が10位のMythical Ranking(妄想ランキング)。

京口が入ると井岡が弾かれる形になりますが、なんとか日本人3人揃い踏みのランキングを見たいところです。

もちろん、寺地や矢吹が京口を下せばその評価はそのまま掴むことになります。

リング誌PFPはこれまで、山中慎介と内山高志、山中慎介と井上尚弥と2人同時はありましたが、3人同時となると史上初。

しかも、WBOフライ級王者の中谷潤人も世界評価は抜群に高く、4人目も期待されまふ。

日本人が4人並ぶと、さぞかし壮観です。

ジュニアフライ級に戻って、京口と寺地の実力は世界も認めるところ、あとは人気です。

マッチルームが企画しているジュニアフライ級トーナメント、WBSSが絡むかもしれません。

WBSSは女子で開催予定でしたが、このパンデミックで頓挫。

さらに、WBSSは選手の間でも不信感が根強いため、賞金の最低保証や支払い期限の厳守、スケジュールの明確化など信用できる契約形態にして再出発する必要があります。

イバン・バランチェクらの「ファイトマネーの遅配と約束の金額と違う」なんて言語道断です。

遅配と報酬減額は飲んだドネアが離脱を仄めかしたのは「事務局との連絡が音信不通」ということでした。

契約書には上手に逃げ道を作っていたんでしょうが、普通に考えると詐欺集団です。

優勝賞金1000万ドル、賞金総額5000万ドルとか大嘘は要らないのです。
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THE REAL。

当時、長谷川穂積の世界戦を中継していた日テレの看板文句です。    

JBCがIBFとWBOに加盟するのは「長谷川穂積vsフェルナンド・モンティエル」(2010年4月30日)から3年後、事務局長の安河内剛は「長谷川選手が本当に強い相手と戦うためにに特例」と認めたものでした。
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長谷川vsモンティエルを展望するボクマガから。リング誌9位の〝絶対穴王者〟モンティエルが強豪王者に祭り上げられました。

長谷川はWBCのピースを10連続防衛、直近5試合は全て4ラウンド以内に終わらせるという、数字上は圧倒的な絶対王者でした。

ただ、当時はすでにインターネットが広まり、長谷川の対戦相手のクオリティが異常に低いWBC御用達で、トレーナーの山下正人が「WBCには恩義がある」とカメラの前で公言したこと等も様々な憶測を呼んでしまいます。

モンティエルはメキシコのボクシング一家の出身。幼い頃に「東京で世界王者」とWBCのベルトを巻く自分を絵に描くなど、ボクシング一筋のプロフェッショナル。
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とはいえ、WBOとべったりの関係や、母国での人気の低さからも分かるようにメキシコでも日陰のファイターでした。

折りも悪く、モンティエルが世界に駆け上がった2000年代初頭のメキシコはマルコ・アントニオ・バレラやエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスという一発殿堂の歴史的グレートが3人も席捲、相対的にもモンティエルの影が薄かったのは仕方がありません。

コチュリトは「バレラvsモラレス」の前座で2階級制覇しても報酬は1万5000ドルと、メキシカンの恩恵を全く享受できないまま。その扱いはアジアやアフリカの世界王者並みです。

そして、無敗のキャリアもマーク・ジョンソンとの大勝負に敗れて初黒星。

さらに、WBOバンタム級王者ジョニー・ゴンザレスとの試合では「どっちがチキンか?」を競うような〝逆〟メキシカンスタイルの戦いっぷりに「両者が敗者。最大の敗者は観客とテレビ観戦者」と断罪される内容に終わります。

ジョニゴンにスプリットで敗れたあとは再び連勝街道を走りますが、メキシコでも米国でも人気は上がりません。

WBO3階級制覇を果たしたバンタム級王者としても、長谷川に粉砕されたアレハンドロ・バルデスにも分の悪いテクニカルドローを演じてしまうなど、その評価は階級最弱王者で一致していました。

リング誌のランキングでは王者であるにもかかわらず、なんと9位。王者でなければ圏外評価だったのは確実で「バンタム級では世界基準の実力はない」と見られていたのは当然でした。

そんな穴王者との対戦ですら、長谷川にとっては本当に強いかどうかのテストマッチだったのです。

ただ、モンティエルの中にも忸怩たる思いがあったでしょう。3階級制覇しても報酬は5万ドル前後、メキシコでは十分な富裕層とはいえ、世界王者としては満足出来る待遇ではありませんでした。

ジョニゴン戦のあとはメキシンスタイルを意識して戦いますが、ボクシングの世界は一度捺された烙印を消すのは並大抵のことではありません。

そんな、迷い狼に千載一遇のチャンスが舞い込むのです。

東京でバンタム級最強と目される長谷川穂積との対戦。メキシコの軽量級にとって憧れの象徴、「東京」「WBCの緑のベルト」です。

前年に長谷川とエリック・モレルとの防衛戦が流れた時に、リザーブとしてモンティエルが一旦合意していたこともあり、この試合の障害は金銭面以外はありませんでした。

前年合意ではファイトマネー5万ドルでも快諾したモンティエル陣営は、長谷川の足元を見て、釣り上げ交渉を続けます。

「長谷川君はファイトマネーはゼロでもいいと言ってきたが、さすがにそれはできない」(プロモーターの本田昭彦)。

粘ったモンティエルは最終的には50万ドル以上を手にしたと言われています。人気も評価も低い迷い狼が、キャリアハイを5倍以上更新するビッグマネーを掴み取ったのです。

契約交渉では大勝を収めたモンティエル。

そして、当時のメキシコはバレラ、モラレスが黄昏れ、新鮮なニュースを求めていました。

長谷川戦決定にメキシコメディアは「日本は確実に勝てる相手を選んだ」「モンティエルがまたリングの上で恥を晒す」「バルデスが2ラウンドで沈められたからモンティエルはもっと早く負ける」と最初から諦めムード。

モンティエルは「バルデス戦はスパーでカットした傷が治らないまま戦った」と弁解しますが「スパーで切り裂かれた人が長谷川に勝てるのですか?」と意地悪に返される始末。

ただ、モンティエルは当時を振り返り「ボクサーとして全盛期を迎えていた。メキシコのメディアからあれだけ注目されたのも初めて。長谷川に勝てば母国で大歓迎を受けると思うと、もっと過小評価しろと思ったくらい」と語ります。

「勝って当たり前」と過大評価されていた長谷川と、「メキシコの恥さらし」と勝機はないと言われたモンティエル。

そして、結果論ですが両者の実力は…モンティエルの方が上でした。
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ビッグファイト、クラシック(大勝負)の定義とは?

誰もが文句無しのビッグファイトというなら、桁外れの興行規模となった2015年の「フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ」が思い浮かびます。

野球なら大谷翔平がリアル二刀流でワールドシリーズ進出を賭けたニューヨーク・ヤンキースとの決戦のマウンドに上がり、打席に立つ…。

ボクシングなら、村田諒太がカネロ・アルバレスのスーパーミドル級完全統一王座に挑む…。

そんな興行規模の数字や米国の関心の高さだけて〝ビッグファイト〟の目盛りを決めるとしたら、そんな「単純な話」はありません。

日本のボクシングファンは、具志堅用高の左ストレートに酔い、辰吉丈一郎の復活祭に感涙し、井上尚弥のジャブクロスに喝采を送ってきたのです。


2010年4月30日、日本武道館。WBCの長谷川穂積vsWBOのフェルナンド・モンティエル。

もし「単純な話」だけで語るなら、この日の武道館と2019年12月5日のさいたまスーパーアリーナは、日本のエースが事実上の二団体統一戦、対立王者(長谷川は勝ってもWBOは獲得できない契約/このとき井上のWBAはセカンドタイトル)に圧倒的有利予想の風を受けて挑んだ、という点で同格でした。

もちろん、最も大切な結果、勝敗を考えると「さいたま」の方がより大きな意味を持っています。

しかし「日本ボクシングの興廃、この一戦にあり」という緊張感は、あの日の日本武道館にこそ強烈に張り付いていました。

この10年間で日本のボクシング観戦は非常に内輪な性格を色濃くしていきました。

幟を立てて盲目的に教祖様を〝信仰する〟。教祖様以外の選手を受け付けない。

ひどいケースではチケットを買ったのに教祖の試合しか見ない、なんてことも普通にあります。

30年前の後楽園ホールは煙草が煙り、前座から席に着いたおっさんのヤジがメインまで響く、やさぐれたボクシングファンの空間でした。

亀田兄弟や井上兄弟の応援団とは違い、おっさんは特定の選手の幟を立てません。というか、奴らはそもそも幟なんて持ってません。
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私の場合、結婚したり子供が出来たり、勤務先が東京を離れたりする中で、後楽園ホールから足が遠のいたと思っていました。

しかし、ボクマガなどで〝後楽園ホールの排他的な内輪ウケ〟を嘆く記事をいくつか読むうちに、この雰囲気に嫌気がさした部分もあるのかもしれないなと思うようになりました。

長谷川の時代も、その芽はすでに息吹いていましたが、いまはそれがフェイクニュースを肥やしにして醜い毒花に育った感じです。

ダミ声のおっさんがヤジを飛ばす昔のホールは排他的でなく健全だったのか?と質されると、答えに窮してしまいますが、これも時代なんでしょう。
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このビッグファイトの舞台も日本武道館でした。

武道館を凍てつかせた緊張の末の「審判ま」には、〝自腹アナ〟に代表される「世界中が注目するメガファイト」と喧伝する欺瞞も渦巻いていましたが、9ヶ月と19日後にラスベガスで下されたもう一つの「審判」では一切の欺瞞や虚飾を拝した軽量級の哀しい実態を剥き出しにした現実を目の当たりにすることになります。



さて、2010年4月30日の「審判の日」。

まずは、当時のバンタム級シーンを振り返ります。

WBCは長谷川、WBOはモンティエル。

そして、WBAはアンセルモ・モレノが粛々と存在感を高めていた時期です。

WBAバンタムは2010年12月から3年間、亀田興毅がセカンドタイトルを保持しますが、これは世界の中心地図とは全く関係のない、辺境での出来事でした。このお話のテーマから大きく逸脱する事象なので、無視して差し支えありません。

そして、もう一つのピース、IBFで非常に興味深い動きがあったのもこの頃でした。プレミアムケーブルSHOWTIMEが仕掛けたSuper4、バンタム級トーナメントです。
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スーパーミドル級で展開したSuper Six World Boxing Classic の極小版がSuper4でしたが、誰が優勝するかがわからなかったスーパー6とは違い、バンタム4は、ゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(GBP)とSHOWTIMEが仕組んだ出来レースでした。

バンタム4は、ビック・ダルチニアン、ジョゼフ・アグベコ、ヨニー・ペレスというバンタム級抜きにしても地味な3人に、スター候補のアブネル・マレスで争われます。

Winner Takes All〜勝者が全てを手に入れる、敗者は全てを失う。

バンタム4の正体は、Mares Takes All でした。

バンタム転向を表明していたノニト・ドネアに長谷川にもSHOWTIMEから招待状が届きましたが、2人はあまりにも劣悪な報酬に呆れ果て参戦を見送ります。

1試合3000万円以上を稼ぎ出していた長谷川はともかく、ドネアはPFP10傑には名前を連ねていたものの、報酬は10万ドル前後の不人気選手。

長谷川だけでなく、人気のないドネアまでが参戦を拒否したのですから、契約書に記されていた報酬が背筋も凍る恐ろしい数字だったことは間違いありません。

アルメニアのダルチニアン、ガーナのアグベコ、コロンビアのヨニー・ペレスはドネアに輪をかけて人気がありませんでしたから、世界王者でもその報酬は2万ドル前後。

モンティエルが2階級制覇したときは1万5000ドルでしたから、メキシカンの衣を羽織ってた彼が本当は一番悲惨だったかもしれません。

「マレスを倒して有名になりたい」(アグベコ)という動機は、自然なことでした。

逆に言うとSHOWTIMEは、嘘で塗り固めたWBSSとは違い、バンタム級の現実と正直に向き合っていたのです。

「GBPからは生え抜きの世界王者は生まれない」。

そのジンクスを初めて打ち破ったのが、ハンサムなメキシコ系、マレスでした。

2010年当時は、今以上に承認団体間の確執が深く、統一戦にはいくつもの障害が横たわっていたこともあり、バンタム級の動きもバラバラ。

実力的には無冠ながらドネアが最強、長谷川がその対抗馬(たりうるかどうかがモンティエル戦でテストされる)、そして不気味な存在の〝ゴースト〟モレノ、という構図でした。

そして、人気で長谷川に匹敵する亀田興毅とマレスは、ドネアと長谷川、モレノの最強決戦には近寄らないであろうことは、多くのファンにもわかっていました。

GBPとしても将来、フェザー級で100万ドルファイターになるマレスを米国で全く人気のないドネアやモレノ、〝未知の強豪〟長谷川との危険な勝負に晒すことは出来ません。

大勝負はレオ・サンタクルスのような、ハイリターンを伴う相手でなければならないのです。

話が脇道に逸れました。

2010年4月30日、日本武道館。

長谷川穂積vsフェルナンド・モンティエル。

試合前から両者は舌戦を繰り広げ、長谷川が小さいモンティエルをバカにしたTシャツを作ると、モンティエルも「自分の家から出ない引きこもり王者」と応酬。

そして、これぞ「国際試合」という緊迫感の中でゴングが打ち鳴らされます。

その張り詰めた空気と不釣り合いだったのは、3-1~4-1というオッズと、楽観的な専門家が語る「長谷川の圧勝」という予想だけでした。

モンティエルは衆目一致で階級最弱王者と見られ、世界王者にもかかわらずリング誌バンタム級9位という王者でなければ10位にも数えられないファイターでした。

メキシカンで無敗で2階級制覇してもファイトマネー1万5000ドル、王者なのにリング誌9位というのは悲劇を通り越してもはや喜劇です。

その、モンティエルと拳を交えた長谷川がコーナーに戻って口にした言葉をマイクが拾いました。

「過去最強や」。

実質世界9位以下を相手にした、その言葉に、この試合でどんな審判が下されるのか…多くのファンの喉元に嫌な予感が込み上げて来ました。
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バンタム級のビッグファイト。

ビッグファイトの定義を「HBOやSHOWTIMEのPPVメイン」「どちらかのファイトマネーが現在の貨幣価値で10億円以上」とくくってしまうと、バンタム級ではそんな試合は歴史上一度もありません。
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PPVを外して、ファイトマネー2億円にすると、60年代でファイトマネー6000万円、現在の価値なら2億円以上を稼いでいたファイティング原田、両者合わせて3億4000万円のバンタム級史上最大興行を戦った辰吉丈一郎と薬師寺保栄の3人が入ってきます。
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五指で十分の1試合1000万ドルを稼ぐPPVファイターは、人気階級の人気選手限定です。

米国で見向きもされないバンタム級では、そんなことは起こり得ません。

しかし、そんな米国基準のメガファイトなど、日本のボクシングファンにとってどうでも良いことです。

現在のバンタム級は、井上尚弥の完全統一が注目されていますが、まだファンが期待するような試合は行われていません。



今から約10年前に、このバンタム級最強と目された長谷川穂積が対立王者の1人、WBOのストラップを持つフェルナンド・モンティエルとの決戦のリングに上がった試合は、日本ボクシングにとって画期的なメガファイトでした。

間違いなくメガファイトでした。

リングサイドで「ここまで張り詰めた世界戦は初めて」と感動していた亀田興毅の言葉が全てを物語ってくれています。

のちに長谷川と同じ評価を得た井上は、階級最弱王者モンティエルではなく、最強ライバルと言われたエマヌエル・ロドリゲスを2ラウンドで破壊していますから、彼こそが21世紀日本で文句無しの最強バンタムです。

それでも、あの日の武道館の超弩級の緊張感と、長谷川を粉砕したモンティエルがマンダレイベイで予告KOに沈む惨劇、この2試合は日本のボクシングファンにとっては、井上のどの試合にも優るビッグファイトでした。


2010年4月30日、日本武道館。

それまでも、後楽園ホールはもちろん武道館や国技館を満員札止めにするビッグファイトを何度も見てきましたが、あの日の空気は全く異質でした。

他のビッグファイトは「ヒーローを見たい」という興奮でしたが、あのときの武道館には「長谷川が最強を証明する第一歩」という高揚感だけでなく「審判の日」の冷たく固い緊張が会場に凍てついていました。

そして、2011年2月19日のラスベガス。最強の長谷川を失神させたモンティエルが、予告KO通りの2ラウンドで倒されてしまいます。

あの試合もまた、日本のボクシングファンにとっては「審判の日」でした。

10年前に起きた二つの「審判の日」を振り返ります。
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