カテゴリ: ドーピング

史上最悪のドーピングスキャンダルを巻き起こした〝ドーピング・グル〟ビクター・コンテが膵臓がんのため、75歳で亡くなりました。



このブログでも度々取り上げてきましたが、好意的に書いた記憶は一つもありません。

UNTOLD: Hall of Shame | Steroid Scandal Exclusive Clip | Netflix 

2023年にNetflixが制作したドキュメンタリーではかなり好意的に描かれていますが、スポーツ界にとっては彼が存在しなかった方が良かったに決まっています。

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マリオン。ジョーンズやバリー・ボンズというトップ中のトップアスリートを巻き込んだ一台スキャンダル。

そして、司法取引で懲役を短縮、社会復帰したコンテにセカンドチャンスが許される米国の懐の広さ、というか徹底した商業主義、成果主義。

〝李下に冠を正さず〟なんて格言を無視して、シャバに戻ったコンテに駆け寄ったノニト・ドネアら現役ボクサーたち。

スポーツ史上、最悪の犯罪者の1人でした。


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ボクシング界には世界的な統括団体が存在しません。

そのデメリットは数え切れませんが、最も深刻なものはドーピング検査です。

試合を統括する日本ボクシング・コミッションやネバダ州アスレティック・コミッション、英国ボクシング管理委員会(BBBofC)などのローカルコミッションは独自の検査を実施、そしてその検査は試合の直前と直後の採尿だけがほとんど。

試合直前まで体内にドーピング物質の痕跡を残したままでいるアスリートなど、まずいません。

それでも、ボクシングの世界ではそんな杜撰な検査でもひっかるファイターが後を断ちません。

ドーピングがバレて失うタイトルの価値と、ペナルティがあまりにも軽いことが「やったもん勝ち」の空気を醸成しているのです。

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認定団体でもドーピング検査を奨励していますが、大々的なクリーン・ボクシング・プログラムを展開するWBCですら現実の対応はグズグズ。最も目も当てられないドーピングは「メキシカンがらみのWBCタイトルマッチ」が相場です。

メジャースポーツも巻き込んだバルコ・スキャンダルの創始者で懲役刑を喰らったビクター・コンテのセカンドチャンスを後押ししたのはノニト・ドネアをはじめとしたボクサーたちでした。

ドネアが人気階級で風当たりの強い立場なら、わざわざ〝李下に冠を正す〟ような真似をしたかどうかはわかりませんが、日本ではドーピング疑惑にふれるメディアもファンもほぼ皆無。ドネアらにとって日本は素晴らしい国でしょう。

さて、ボクシングシーンの記事、エリオット・ウォーセル記者の「The Beltline: The importance of having friends when you fail a drugs test(ドーピング検査にひっかかった卑怯者たちにとって大切なことはそれを見逃してくれる優しい友達をもつこと)」。


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ドーピング発覚で科せられた6ヶ月の出場停止期間中に、これ幸いとばかりに古傷の膝を手術したカネロ・アルバレス。


***** ボクシングの世界でドーピングについて話すのは、両親が成人した子供にセックスの話をするよりも難しいテーマです。

そこに踏み込むか、それとも知らないふりをするか。

ボクシングにおいてドーピングの話を持ち出すのは〝the birds and the bees(鳥と蜂)〟(米国で子供にセックスについて婉曲に教えること)の問題ではありません。

それぞれの家庭によって、千差万別の問題ではないのです。

試合当日に解説者や評論家がこの問題にふれることは極めてレアで、試合前の記者会見などでもこの〝タブー〟が持ち出されることはありません。

ドーピングの話を取材する側から口にすると、ボクサーはたちまち機嫌が悪くなり、罵詈雑言を吐いたり、暴行を加えられるかもしれません。

ドーピングの話題を突くのは、ボクサーにとって都合の良いテーマでないことはもちろん、プロモーターやテレビ局、運営側にとっても歓迎できない行為です。

明日、サウジアラビアのリングに上がるディリアン・ホワイトはモーゼス・イタウマとの対戦で大金を得る予定です。

ファイトウィークになってもドーピングや検査の話題が掘り下げられることはなく、ホワイトがあたかもアルコール中毒の患者がリハビリの12ステップサポートでも受けているかのように、暖かい取り巻きとメディアに囲まれて快適な日々を過ごしました。

異常な光景です。

そもそも、ドーピングに手を染めたホワイトが大手を振って活動できるボクシング界が狂っているのです。

ドーピング検査で陽性反応を示しても、6ヶ月程度の出場停止処分が下されるだけ。年に2試合しかしないトップファイターにとって6ヶ月の出場停止は痛くも痒くもありません。

これが陸上競技などの五輪種目なら、選手生命を絶たれるほど長い出場停止処分を受けるでしょう。


Saturday 16, August 2025

Riyadh, Saudi Arabia
commission:UAE Boxing Commission
promoter:Eddie Hearn (Matchroom Boxing),
          Frank Warren (Queensberry Promotions)
matchmaker:Steve Furness
inspector:Mary Jean Juarez- Cubcuban
timekeeper:Leo Campuzano, Brad Williams
 view on DAZN PPV 


明日のイベントには堤駿斗も登場。堤のあとにリングに上がるレイモンド・フォードとアブラハム・ノバの勝者と激突する路線でしょうか?

井上尚弥との対戦が内定していたニック・ボールとサム・グッドマンのWBAフェザー級12回戦、ヘビー級はホワイトvsイタウマに加えて、フィピップ・フルコビッチとデビッド・アデレイもセット。

なんとも豪華なイベントです。

ゲート収入は小さく、DAZNへ支払う放映権料と選手へのファイトマネーは相場よりもはるかに高く、選手やチームの渡航費・宿泊費もサウジ持ち。

イベントを統括するのはUAEボクシング・コミッション。リング誌の事実上の本社があるUAEドバイの統括コミッションです。

サウジの興行をメインで統括してきたBBBofCを徐々に外していく算段でしょうか。

そして、このイベントもエディー・ハーンとフランク・ウォーレンの共同興行。少し前まで会場で隣席しても目も合わせなかった不倶戴天の敵同士だったというのに、オイルマネーで油まみれになるとたちまち笑ってハグする関係に。

とはいえ、次に切り離されるのは、こういうイベントを作れなかった私利私欲に走る無能なプロモーターでしょう。

Eddie Hearnや Frank Warren の代わりにTurki Al-Sheikhの名前が現れる日も近いかもしれません。



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BOXINGSCENE から。

Victor Conte maintains he’s a changed man in pursuit of clean boxing〜「私はクリーンなボクシングを追求する別の人間に生まれ変わったんだ」ビクター・コンテ。


「私のことをいつまでもドーピング・グルのままだと決めつけてくる人があまりにも多いのにはウンザリしている」。

「どうせアイツは今も陰で、アスリートの心理に突け込んでドーピングを施している」。そんな一方的で厳しい批判の他に、新たな敵がコンテの前に現れました。

膵臓癌と診断されたのです。

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Conte has continuously argued that people change. “I hoped that my knowledge from the dark side would contribute to clean sport,”

ダークサイドで培った私の知識を、クリーンスポーツのために正しく使いたいと、そう心を改めたんだ。

コンテはスポーツ界最大のスキャンダルを起こした張本人です。

コンテを知らないという人でも、バルコ・スキャンダルでドーピングが白日の下に晒されたアスリートの名前を見ると、このスキャンダルがどれほど大きな衝撃を与えたのかがわかるでしょう。

マリオン・ジョーンズ、ティム・モンゴメリら陸上競技で15人。バリー・ボンズ、ジェイソン・ジアンビらMLBで27人、NFLでビル・ロマノフスキーら7人。

2005年に禁止薬物をアスリートに提供した罪などでコンテは懲役20年以上の罪で起訴されましたが、禁止薬物の流通、資金洗浄での有罪を認める司法取引に応じで懲役4年・保護観察4年の大幅な減刑に漕ぎ着けます。

結審したことでアスリートたちが裁判所で再び証言する義務はなくなり、疑惑はグレーのまま幕引きされてしまいます。

それでも、この一大スキャンダルの中でドーピングを否定したジョーンズらに対して、コンテは禁止薬物の使用を暴露したことで、アスリートが涙の自白をする衝撃的なシーンもテレビで放映されます。

ボクシング界の大物ではシェーン・モズリーがバルコ社から禁止薬物を提供を受けていました。「禁止薬物だとは知らなかった」と主張するモズリーに、コンテは「あなたにはそれが何かを説明して処方した。まさかビタミン剤の対価として1650ドルも支払ったのか?」と痛烈に反論。

デビン・ヘイニー戦のあと、ライアン・ガルシアのドーピングが明るみに出たときも、モズリーは「VADAと共謀したコンテの仕業だ」と非難しました。

コンテが、検出されやすい禁止薬物の入ったサプリメントを施し、VADAと共謀してアスリートを貶めている…そんな噂はおそらく嘘でしょう。

現在、アンチドーピングの推進者として旗を振るコンテは「何年も前にWADAやUSADA、そしてVADAからの要請でアドバイスをした。かつて私がどのようにして薬物検査を回避したのか、その情報が欲しかったのだ。私は全ての情報を提供し、さらに効果的な検査プログラムの作成に貢献した。VADAの薬物検査の〝成功〟をサポートするような特別な関係はない」と、モズリーの批判を否定。

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コンテが釈放されたときには多くのボクサーが群がりました。ノニト・ドネアもその一人です。

https://fushiananome.blog.jp/archives/26867499.html


釈放後もコンテはことあるごとに「VADAの検査はザル。簡単にマスキングできる」と豪語してきました。

また「ボクサーは試合のない合間に禁止薬物を使用している可能性がある」と繰り返しています。

コンテを慕う現在のボクサーはドネアをはじめテレンス・クロフォード、デビン・ヘイニー、クラレッサ・シールズ、バム・ロドリゲスら…。

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コンテから栄養剤の提供を受ける契約を結んだヘイニーは、VADAの24/7/365(24時間365日対応のランダムテスト)に登録されている唯一のボクサーです。

井上尚弥らも試合が決まってから24/7/365プログラムに登録することはありますが、試合が終わるまでの〝時限型〟。検査が入らない「試合の合間」があります。

「コンテのセカンドチャンスは誰も邪魔するべきではない。ただ、彼から栄養剤を受け取るアスリートがどう言う目で見られるのかも理解している。だから私はボクシング界で誰も参加していない24/7/365プログラムに登録しているんだ」(ヘイニー)。

五輪代表選手など多くのスポーツではフルスペックの24/7/365プログラムが常識ですが、世界的な統括団体がないボクシングの場合は検査費用を選手側が支払う、異常なケース。任意になるのは仕方がありません。

コンテが膵臓癌を患ったことに「天罰が降った」と嘲るコメントが多く見られますが、全くもって卑劣な言動です。

コンテが再び栄養剤ビジネスで成功を収めていることは、犯罪ではありません。セカンドチャンスを広く認める米国には、それを受け入れる度量があるということです。

同じことを日本でやればコンテはその業界から永久追放、もし再び栄養剤ビジネスに乗り出しても、誰も見向きもしないでしょう。万一、ドネアらのようにコンテに飛びつくアスリートがいたら冷たい疑惑の目を向けられ、日本での居場所がなくなるはずです。

日本のボクシングファンがドネアに恐ろしいほど寛容なことには、笑うしかありません…彼らはアメリカ人なのかもしれません…それなのにバルコ・スキャンダルもビクター・コンテも知らないのかもしれません。




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今年のシンコ・デ・マヨの、最大のメガファイトはもちろんカネロ・アルバレスの試合でしたが、開催されたのは米国西海岸でもメキシコでもなく、アラビア半島のサウジアラビア。

サウジは米国以上にボクシングに関心が薄い国です。…というか、そもそもボクシングに馴染みがありません。総合娯楽庁のトゥルキ・アル=シャイフ長官は「長年のボクシングファン」と公言していますが、それが疑わしい発言が目立ちます。

それでも、まだデビュー前の堤麗斗と買収したリング誌のアンバサダー契約を締結。そんな情報まで知っているのですから、やはりボクシングにとてつもなく精通しているのでしょう。

それでも、人気階級の五輪や世界選手権のメダリストと契約するのが自然な気もしますが…。

一体全体、どんな力学が作用したらそんな歪みが生じるのかわかりませんが(本当はみんなが知っている)、今夜のお話はシンコ・デ・マヨでセミファイナルを務めたハイメ・ムンギアのドーピング。

ブルーノ・スラス戦後に採尿したAサンプルが外因性テステストロン代謝物に陽性反応を示したもの。

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このイベントの統括は英国ボクシング管理委員会(BBBofC)でしたが、ドーピング検査はVADAのみで実施。

このあとBサンプルの検査が行われ、そこでも陽性反応を示すと〝アウト〟。

とはいえ、サウジで行われたBBBofC管轄の試合で、検査機関を超えた権限は一切持たないVADAの検査。ペナルティが科されるのかどうかは、不明です。

仮にBBBofCの内規に照らして6ヶ月のライセンス停止処分が科せられても、これが有効なのはBBBofCの管轄内だけ。JBCやネバダ州などの米国の各州などには効力は及びません。


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現役ボクサーの中でカネロ・アルバレスが選手としての実績、稼いでいる報酬(人気)で抜きん出た存在であることに、誰も異論はないでしょう。

2度のSugar Ray Robinson Awardに、PFP1位には2年半も君臨、フォーブス誌のアスリート長者番付(人気)でも常連…PFPの在位期間2年でカネロに迫るローマン・ゴンサレスでもSugar Ray Robinson Award の受賞はなし、アスリート長者番付では圏外どころの騒ぎではありません。

オレクサンデル・ウシクと井上尚弥、テレンス・クロフォードはSugar Ray Robinson Awardの受賞回数で及ばず、PFP1位在位期間でも勝負になりません。さらにアスリート長者番付となると論外も論外。

34歳のメキシカンを上回るファイターを探すにはフロイド・メイウェザーかマニー・パッキャオ、すでに引退したグレートの名前を掘り起こすしかないのです。

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この赤毛のメキシカンを最後に、ボクシング界のスーパースターは絶滅します。

カネロが34歳になってしまったというのに、その後継者はどこをどう見渡しても見当たりません。

もし、ドミトリー・ビボルがメキシカンかプエルトリカン、あるいは日本人なら後継者になっていたかもしれません。しかし、あのスタイルでメキシコのファンから熱い支持を集めるとは考えにくく、プエルトリコのゴクシングは瓦解状態、日本に至ってはそもそも人気階級に人材を送り込めない軽量級専門工場です。

来年のシンコ・デ・マヨで、カネロが誰を選ぶのかはまだわかりません。

その舞台でビボルかアルツール・ベテルビエフがカネロに勝利してもロシア人がスーパースターのトーチを握れるはずがありません。

米国黒人のクロフォードが鮮烈にカネロを沈めたとしても、あの絶望的不人気の疫病神がいきなり人気者になれるとは思えません。

ライアン・ガルシアが覚醒してガーボンタ・デービスを再戦で破壊、パッキャオ並みの階級スキップでカネロを倒せばその可能性はありますが、何しろライアン君です。そんな器でないのは誰でも知っています。

さて、カネロ・アルバレスを総括しましょうか。

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ボクサーの評価は、引退してそのキャリアを見直したときに確定します。

ボクシングの場合、現役中の鮮烈なインパクトが異常に過大評価されがちで、多くの選手は全盛期の賞賛からその評価を暴落させてしまいます。

私が米国のボクシングに惹きつけられた1980年以降だけでも、リング誌の試合レポートを振り返るとロベルト・デュラン、トーマス・ハーンズ、シュガー・レイ・レナード、マイク・タイソン、ロイ・ジョーンズJr.、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオらが「史上最高かもしれない」と推定されましたが、いずれも蜃気楼に過ぎませんでした。

パッキャオは8階級制覇したとき、ヘンリー・アームストロングと比較されました。しかし、今、アームストロングの1団体8階級中3階級制覇(4階級目にも激しく肉薄)と、パッキャオの4団体17階級での8階級制覇を同列に並べる人は皆無でしょう。

圧勝したのは揃いも揃って弱い相手だけというタイソンとジョーンズに至っては、存命PFPですらトップテンに数えられることがありません。

そして…。ここ10年で推定・史上最高と謳われたのがカネロ・アルバレスです。

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2019年11月2日にWBOライトヘビー級王者でPFPでも2位まで上昇したことのあるセルゲイ・コバレフをストップ、ほとんどのメディアのPFP1位に躍り出ると、2022年5月7日までの2年6ヶ月余りの期間で、このmythical ranking(妄想ランキング)の王位を守り続けました。

さらに、2019年と2021年には全米ボクシング記者協会(BWAA)のSugar Ray Robinson Awardとリング誌のFighter Of The yearをW受賞。2019年にはBest Boxer ESPY Awardにも輝くトリプル受賞でした(2021年のBest Boxer ESPY Awardはタイソン・フューリー)。

ちなみに昨年、2012年のノニト・ドネアに並ぶ史上最軽量のジュニアフェザー級でBWAAとリング誌でW受賞を果たした井上尚弥はBest Boxer ESPY Awardはテレンス・クロフォードに譲っています。

カネロはBWAAが定める2010年代のJoe Louis Fighter of the Decade(Fighter Of The Decade)でも有力候補でしたが、10年最高選手賞はフロイド・メイウェザーが獲得。2016年引退のメイウェザーはわずか7年実績でカネロを退けたことになります。

34歳のカネロは15歳でプロデビューしてから20年、66戦(62勝39KO2敗2分)のキャリアを積み重ねてきました。

現役ボクサーではSugar Ray Robinson Award 2回は最多、PFP在位2年半も最長。現在、どんぐりの背比べ状態のPFP、オレクサンデル・ウシクと井上尚弥、クロフォードらからは頭ひとつ抜けた存在です。

昨日、カネロはエドガー・ベルランガを相手にスーパーミドル級のタイトルマッチを行いました。

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まともな相手と戦わなかったバレロでも、このメンバーの中ではかなりマシに見えます。


ボクシングの世界では、プロモーターが数字だけの紛い物ファイターを養殖することは珍しくありません。「連続1ラウンドKO」の世界記録で注目を集めた偽物ベルランガがカネロに勝てるわけがなく、カネロにとってもどんな勝ち方をしようが、キャリアの無駄遣い。

試合はカネロの完勝でしたが、自身も「8ラウンド」と予告していたKOは逃してしまいます。

This time, he should finish.

実況席では、カネロが第3ラウンドにダウンを奪うと「今度こそKOしなければならない」。

しかし、その瞬間はついに訪れませんでした。

現代ボクシング随一の注目選手。34歳という年齢。ジュニアミドル級(154ポンド)からライトヘビー級(175ポンド)という層の厚いゾーンのトップで戦い続けた66戦508ラウンドというキャリアは長いだけではなく、非常に濃厚なものでした。

本物のグレートは「終わった」と見られてからも、まばゆい輝きを見せつけます。

モハメド・アリが無敵のジョージ・フォアマンを沈めたように。マニー・パッキャオが無敗のキース・サーマンを倒したように。

しかし、カネロにその瞬間は訪れるでしょうか?


「It's a good time to sum up Canelo. カネロを総括するのにちょうどいいタイミングだ。」なんて書くと、カネロのファンに「来年5月のシンコ・デ・マヨでドミトリー・ビボルに雪辱を果たしたらどうするんだ!」と怒られそうです。

もし、来月のサウジアラビアでアルツール・ベテルビエフがビボルに圧勝して、そのベテルビエフをカネロが倒すようなら、カネロの評価は一気に跳ね上がります。

しかし、カネロにそんなことは起きないでしょう。あのカネロに限って、そんな勇気あふれるグランドフィナーレが訪れるわけがありません。









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アスリートのスキャンダルを暴く野次馬メディア、TMZスポーツから。



ドーピング問題の渦中で、ネバダ州アスレティック・コミッションに召喚、審問され処分が下されるというタイミングでライアン・ガルシアがビバリーヒルズ警察(BHPD)に逮捕、勾留されました。

現地時間19時47分に、顧問弁護士ダリン・チャベスが「ライアンはBHPDに地元病院に搬送された。酩酊と器物破損の罪で起訴される可能性がある」と発表。

元WBCライト級暫定王者はウォルドーフ・アストリア・ホテルに滞在中で、水曜日の深夜に暴れたためホテル側がアルコールの提供を拒否していたそうですが、家族が警察にライアンの精神状態が危険だと通報。

すぐに警官が駆けつけましたが、そのときのライアンは安定していたそう。翌日には実兄と付近を散歩する姿も撮られ、事件に発展することはないと見られていましたが、この通報の段階からTMZスポーツがネタになる匂いを嗅ぎつけていた模様です。

https://www.tmz.com/2024/06/08/ryan-garcia-arrested-felony-vandalism-waldorf-astoria-hotel-los-angeles/




2021年1月、WBCライト級の暫定王座に就いたキング・ライはこの年の4月にメンタルヘルスの問題を抱えていたことを告白、1年3ヶ月のブランクを作ってしまいます。

それでも、2022年に復帰すると連戦戦勝、2023年4月にはガーボンタ・デービスとのビッグファイトに漕ぎ着けました。しかし、ここでキャリア初黒星、それも痛烈なTKO負けを喫してしまいます。

過酷な減量とリバウンド制限で戦う前から消耗していたタンク・デービスの試合で25歳のメキシカンが学んだことは「勝てば官軍」。今年4月のデビン・ヘイニーとの大勝負に体重超過で挑みます。

勝ってもタイトル獲得とならないことは承知の上、結果は大方の予想を覆す勝利。

ライアンの暴挙を非難する正論がある一方で、若きスーパースターの大番狂せを高く評価する声の方が多く、プロボクシングが抱える不条理と狂気が噴き出した試合になりました。

そして、ドーピング発覚。最近は母親が乳がんと診断されたそうです。

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元々、メンタルヘルスを抱えていた25歳のメキシコ人がホテルで暴れ、部屋や公共スペースの器物を破壊、ホテルと家族からの通報で12台のパトカーと数十人の警官が駆けつける物々しい捕物劇でしたが、ライアンは抵抗することなく逮捕に応じました。

現在の米国ボクシング市場でカネロ・アルバレスに次ぐドル箱スターがキング・ライであることは誰もが認めるところです。

しかし、あの貧相な実績と、120万件のPPVをセールスする人気のギャップはあまりにも歪つです。

エキシビションだけでなく公式試合でも醜悪な茶番劇が繰り返されることと比べたら、まだマシかもしれませんが、様々な意味でレベルの落ちた4belt eraで、アルファベットのタイトル獲得でいっぱいいっぱいというファイターが頭抜けた人気ものなのです。

このスポーツはどこに行ってしまうのでしょうか。


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フリオ・セサール・マルチネスがドーピングの疑いで、キャリアの中断を余儀なくされてしまいそうです。

3月30日にラスベガスT -モバイル・アリーナで開催されたPBCとアマゾンプライム・ビデオの提携イベント第一弾の前座で行われたWBCフライ級王者マルチネスのアンヘリノ・コルドバを迎えた6度目の防衛戦。

ネバダ州アスレティック・コミッション(NSAC)のドーピング検査で採取したマルチネスのサンプルが、複数の禁止薬物に陽性反応を示したというもの。

反応を示したのはS5利尿薬などで筋肉増強剤ではありませんでしたが「減量のために利尿薬を使った」というのは通用しません。

マルチネスの検体が反応したS5利尿薬やその他の化学物質は、いずれもドーピングの世界で「マスキング剤」と呼ばれる物質。

つまり、筋肉増強剤を使用したドーパーが禁止物質の尿中、血液中濃度を下げるために利用する隠蔽(マスキング)物質です。

そんなマスキング物質がゾロゾロ出てきたのです。

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マルチネスはタイトル返上、ジュニアバンタム級への転級を発表していますが、NSACによる追加検査や審問を受ける必要があり、その全てが終了するまでNSACも所属する全米ボクシング協会が管轄する試合に出場することができません。

つまり、米国での試合が出来ないということ。

一方で、米国以外ならライセンスが交付される可能性があるということで、メキシコシチーでタイトルマッチを行っても、それを禁止することは現時点ではできません。

世界的な統括団体が存在しない、ということはそういうことです。


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マルチネスは以前もドーピング検査で筋肉増強剤クレンブテロールが陽性反応を示した前科者。

当時WBCジュニアフェザー級王者だったレイ・バルガスも同じ物質で陽性でしたが「クレンブテロールが含まれた飼料で育った牛肉を食べたから」という二人の抗弁を認めてWBCはタイトル剥奪などのお咎めなし。


今回もメキシコでWBCの地域タイトル戦などを行いながら、米国でのライセンス交付停止期間(半年くらい?)を待つことになりそうです。

他の競技なら過去に遡って全てのタイトルを剥奪、永久追放もあり得ますが…もう、笑う気もありません。 THIS IS BOXING です。

そして、他の競技ならもっと上手くドーピングします。

医療機関や製薬会社に勤めてる私の友だちレベルでも「体に残った化学物質をマスキングしたり完全に排泄するのは3日もあれば出来る」と、ドネアが栄養アドバイザーとして信頼しているビクター・コンテと全く同じことを言っていました。

それもしない、この大胆不敵さ。メキシカンだけではありません。





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昨日、日本プロボクシング協会のセレス小林会長は、日本ボクシングコミッション(JBC)の実行委員会で、昨年12月31日の世界戦後に井岡一翔の尿検体から大麻成分が検出されたことについて、JBCに対して迅速な対応と、厳しい独自ルールづくりを要求しました。

JBCによると、井岡のA、Bサンプルともに大麻成分が検出されましたが、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の基準値を下回っていたため、違反していないと判断、6月24日の世界戦が実施されました。

小林会長は「数値の問題ではない。(日本で法律で吸引が禁止されている大麻は)いけないものはいけない。ボクシングはクリーンなイメージでなければならない。(WADAの)ルールとは別」と、協会の姿勢を示しました

また「協会には何の報告もなかったこと」「どんな検査内容だったのか」「なぜ発表が遅れたのか」など、理由説明を求めたといいます。

先日の「平仲ジムの選手替え玉事件」も含めて、一番大事なのは「なぜこんな問題が次々に起きるのか」と、JBCのガバナンスが全く効いていないことに不満を露わにししています。

小林会長は「協会は選手の命がかかっている仕事なので、今の状態であればJBCに選手は預けられない」とはっきり伝えたそうです。


「今、プロ人数(有効なライセンスの保有者数)が2000人を切ったが、もう1度二千数百人レベルに戻して、後楽園ホールが4回戦で埋まるくらいの時代に戻したい。そのためにはクリーンでなければ、公平でなければならないと思う。それがなければボクシングではなくなるという思い」。

小林会長がJBCに伝えたのは一部報道されている「最後通告」とまでいかなくとも、その一歩手前の〝ハル・ノート〟です。 

JBCは小林会長の質問に誠実に答えるべきです。

どこの検査機関に委託したのか、そしてその検査機関の担当責任者から、どんな大麻成分がどれくらいの量が検出されたのかを明らかにしなければなりません。

それにしても井岡一翔や、亀田興毅らはどんなに心が広いのでしょうか?

何度も書いていますが、この団体は運営部分の組織を完全刷新させなければ、いつまで経っても腐った蛆虫が巣食う団体のままです。
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▶︎麻…夏のお召し物に気持ち良い麻です。マリファナは麻の花冠、葉を乾燥、液体化させたもの。

▶︎ケシ…アヘンは、ケシの実から取り出された果汁を乾燥したもの。

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七味唐辛子には「麻の実」も「ケシの実」も入っています。七味唐辛子ををいっぱい振りかけたきつねうどんを食べると、ドーピング検査に引っかかるのでしょうか…?

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モルヒネ↑はアヘンから生成される鎮静剤です。

「麻薬及び向精神薬取締法」は七味唐辛子の摂取を厳しく禁じています…なんてことはもちらんありません。
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