カテゴリ: 世界に挑む日本人,THE SUPER FLY,世界の軽量級

井岡一翔を引退に追い込んだかもしれない、フェルナンド・マルチネスのお話から。

左右フックを振り回しながら前進して来る迫力は、まさにbuzzsaw attack(英国ボクシングニューズ誌)。

想定内の攻勢でしたが、あの勢いを12ラウンド、36分間も持続したことには驚きました。



しかし、見た目はパワフルですが、マルチネスは17勝のうちKOをマークしたのは9試合だけ。KO率は52.9%。

一定レベルの強豪と手合わせした世界戦4試合となると、KOは1試合にとどまり、わずか25%まで下落します。

軽量級でKO率50%超えはパンチャーと認識しても差し支えないのかもしれませんが、それを言い出すと井岡一翔も51.61%です。

※KO率の算出方法は2種類ありますが、BoxRecなどの「KO数÷勝利数」の数字を採用。

どんなに贔屓目に見ても、アルゼンチンのプーマはパンチャーとは言えません。

動きは派手ですが、拳を握るタイミングがズレている、当て勘が悪いということかもしれません。

世界レベルでは、完全に非力な部類に入ります。

ただし、破壊力はなくても見映えはする連打です。

井岡一翔が打たれ強いということを差し引いでも、完全に効かせる場面を一度も作ることができませんでした。

あの試合で井岡は何度も顎を跳ね上がられましたが、大きくグラつくこともありませんでした。

有効打という点では、井岡のボディが優っていたくらいでしたが、ボディは最も採点に反映されにくいパンチです。

そして、手数と見た目の派手さが融合したボリュームのあふれる攻撃をジャッジが評価するのは、当然です。

大橋秀行は「初回に井岡がボディで大きなダメージを与えたが、あれが早すぎた」と、そのあとのマルチネスがボディへの警戒度を引き上げたと見ました。

井岡も「初回のボディでしゃがみ込むか、しゃがみ込まないかが大きかった」と、オープニングラウンドをターニングポイントの一つに上げました。

マルチネスも「試合を通してボディがきつかった」と告白していますが、第2ラウンド以降はボディへの警戒度を上げるだけでなく、少しでも効かされると、下がりながら距離をとるボクシングも見せました。

そして、あそこで一気に攻め込まない、攻め込めないのも井岡一翔。

井上尚弥なら、本能的に襲いかかっていたでしょう。

マルチネス、見映えの良いファイターです。35歳とはいえ、劣化の綻びをほとんど見せない井岡を押し切ったのです。

150年に一人の男が「早すぎた」といったボディブローも、あの時点で決まってなければマルチネスの攻勢はもっと強まっていたかもしれません。

そして、何よりも初回で決壊寸前まで追い詰められたボディのダメージを抱えながら、12ラウンド終了ゴングまで決壊を拒み続け、攻撃の手を緩めませんでした。

生粋のファイターです。

ただ「バムよりも強い」(内山高志)はないでしょう。

バム・ロドリゲスにとって、マルチネスはオーダーメイド。井岡のように正面からの打ち合いには付き合ってくれません。

また「再戦したら井岡が勝つ」(内山)という予想も支持したい気持ちはあるのですが、難しいかもしれません。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

井岡一翔のキャリアのフィナーレが近づいています。

もしかしたら、本人の中でもう決着がついて、あとは発表のタイミングだけの段階かもしれません。

35歳という年齢と、15年近くも世界トップ戦線で戦い続けてきた心身おの消耗は想像する以上に蓄積されているはずです。

FullSizeRender
七夕の夜に、また複雑なスタッツが出来上がりました。




…朝からジリジリと焼かれるような暑さの7月9日、火曜日。

この記録的な暑さに、がむしゃらに冷房を効かせて寒いくらいの列車内からスタートする新しいお話。

Time To Say Goodbye 〜いまこそ分かれ目、いざ、さらば。

一昨日のジュニアバンタム級の統一戦、120-108はありか?から、判定の問題をまた考えながら、井岡一翔の去就にも触れて行きます。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

死んだ子の年を数えても仕方がありませんが、井岡一翔がフェルナンド・マルチネスに勝利していたなら…。

大晦日に井岡とジェシー〝バム〟ロドリゲスとのメガファイトが実現した可能性もありました。

「井岡が勝つと思う」「東京で戦いたい」とたびたび口にしていたバムにとっても、完全Aサイドに回るプーマとの対戦を急ぐ必要はなくなりました。

IMG_2139 2
 メキシカンのビッグネーム(バム)への道は、これで閉ざされました。


ジュニアフェザー級のUndisputed champion井上尚弥は9月にTJドヘニー、12月にサム・グッドマンとの防衛戦を予定していますが、2人ともリターンが極端に少ない挑戦者です。

ジュニアバンタム級のバムは、井岡と井上を対戦候補として挙げていましたが、井上については階級差から「今すぐなんてファンタジーファイト(現実的でない試合)」と語っています。

現在のジュニアバンタム級シーンで、バムがUndisputed championを目指すなら井岡のWBAを吸収したIBF王者マルチネスと、WBOの田中恒成を倒す、つまり最低でもあと2試合は115ポンドに滞留することになります。

さらに、バンタム級で完全統一王者が待ち構えているとして1試合。

どう考えても、ジュニアフェザー級に上がるのは早くて2026年になる計算です。それまで、モンスターが122ポンドで待っているかというと極めて懐疑的。

となると、バムとの対戦が最も現実的なのは恒成です。

スピードという絵札を持つ東海の超特急ですが、巧妙なサイドからの波状攻撃に耐えられるとは思えません。

今夜の試合で、恒成には「井岡に勝ったマルチネス」という標的も出来上がりました。

19歳で戴冠した恒成もキャリア21戦、29歳。寄り道してる時間はありません。


「打倒・バム」。時間的にトップバッターの位置に立っているのは、間違いなく田中恒成です。

。。。。。とはいえ、復帰戦でバムなんてどんでん返しも普通に起こりうるのがボクシング界です。

もちろん、それは誰も納得しないでしょうが。




このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

Lifetime Boxing Fights 22


7月7日(日)両国国技館

ジュニアバンタム級 団体統一戦

WBA©︎井岡一翔
vs
IBF©︎フェルナンド・マルチネス


井岡一翔の35戦のキャリアで初めて喫した、どうみても負けた試合でした。

リング誌は 「Scores were 116-112, 117-111 and a criminally poor 120-108 (Edward Hernandez Sr.) for Martinez.〜エドワード・エルナンデスの120−108は犯罪的まで狂ったスコアだった」と報じました。

BOXINGSCENEも「The fighters embraced before the final round, and the 120-108 card of Edward Hernandez will rightly cause a stir, because four-weight champion and future Hall of Famer Ioka merited far more than that.〜120−8は当然ながら議論を呼ぶだろう、未来の殿堂選手井岡が一つも取ってないなんてありえない」。

BOXING NEWS24は「The Night Of Questionable Judging: Fernando Martinez Crowned Amid Controversy(不可解なジャッジの渦中でフェルナンド・マルチネスが統一王者に就いた」。

ただ、個人的にはフルマークも許容範囲に見えた内容でした。

そして、いくらメディアの〝玄人筋〟に評価が高くても、彼らですらフェルナンド・マルチネスの勝利に対して、120−108というスコア以外には何の文句もなかったでしょう。

英国ボクシングニューズ誌の「The 120-108 card posted by Eduardo Hernandez Sr seemed extremely dismissive of Ioka’s efforts, but the right man got the nod.〜120−108は井岡の健闘を無視したカードだったが、勝者は間違っていなかった」というのが、多くの人の共通認識です。


 “I gave him everything I had. We gave the fans what they want. A war.”(俺はこの試合に全てを出し切った。ファンが見たかった戦争のような戦いをお見せできたはずだ)。

勝者を讃えるしかありません。

おめでとう、プーマ。

行きがかり上、バムとの決戦はあなたの応援に回ります。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

将来、殿堂入りするかもしれないファイターを the forgotten man(忘れられた男)と呼ぶのは、どこか違和感がある(BOXINGSCENE)。

米国で日本の試合を見るには、夜明け前に起きるしかない。そんなことをするのは、減少一途のボクシングファンの中でもほんの一部のボクシングマニア、さらにその中でもよほどのカルトだけ。

今回の井岡の試合は米国で見る方法が現時点でもわからない。夜明けに起きてもDAZNでもESPN+でもサクラ(日本)チャンネルに合わせても配信されないのだ。カルトなマニアはどうして良いのか、身悶えしてイラついているだろう。

しかし、それは米国での話。

井岡は日本ではthe forgotten manではないが、井上尚弥に隠れてしまっている。

非常にわかりにくいボクシングをすることもある井岡と、非常にわかりやすいボクシングをする井上。

それだけでなく、価値や人気を多様化させるよりも、1人に集約・偏向させる傾向が強い国民気質も影響しているかもしれない。

大谷翔平は傑出した存在だが、野球はもちろん、他の競技にも彼ほどではなくても十分な実績を残しているアスリートが何人もいる。

それなのに、報道や人気の差は、まるで地球上に彼しか活躍していないかのようだ。

大谷とトップアスリートの差よりも、井上と井岡の差は小さいが、それでも関心が井上に偏りがちな最大の要因はやはりこの国民性に行き着くかもしれない。



2008年の北京五輪出場を逃した小さな少年は、迷わずプロに転向した。

層の薄い軽量級の中でも最も競技人口が少ないストロー級で、最初のタイトルをピックアップ。その相手は非常に評価の高いWBC王者オーレイドン・シスマーチャイで、井岡は5ラウンドでノックアウトしてみせた。

それに必要だったのは、プロでわずか6戦、時間は1年10ヶ月だけで十分だった。

WBA王者の八重樫東に勝利して、史上初の日本人対決での団体統一に成功する。この時点でPFPのドアをノック。

しかし、当時の所属ジムは井岡をプロテクトする。これがPFPのドアを開くのに誰も予想できなかったほど時間がかかった最大の原因だ。

2012年11月17日、WBAジュニフライ級王者ローマン・ゴンサレスがファン・フランシスコ・エストラーダを下して5度目の防衛に成功、スーパー王者に格上げされると、翌月に井岡はホセ・アルフレド・ロドリゲスとの決定戦に勝利してレギュラー(セカンド)王座に就く。

井岡と同じようにストロー級から2階級制覇、やはり井岡と同じように専門家やマニアから高い評価を受けていたが、やはり井岡と同じようにPFPリストにその名前はまだ刻まれていなかった。

june2020-cover-spanish-2-thumb

しかし、すでにローマン・ゴンサレスはローマン・ゴンサレスだった。

慧眼の識者たちは声を揃えた。

「ESPNやリング誌のPFPリストは想像力に欠落しすぎている。誰がどう考えても階級を無視した最強はゴンサレス」。

WBAはジュニアフライ級の王座統一をオーダーしたが、井岡ジム(父・井岡一法)はゴンサレス戦を回避。このとき、親子の間に最初の亀裂が生じたと考えることに、なんの不自然もない。

ゴンサレスのフライ級転向で井岡は正規王者に昇格、晴れて2階級制覇。

そして、のちの世界フライ級王者で当時無敗のフェリックス・アルバラードをレッスンした井岡はチョコラティトを追うようにフライ級へ。

しかし、いきなりのタイトル挑戦はアムナット・ルエンロンに絡め取られてのSD負け。プロ初黒星だったが、井岡を支持する声は108−119をスコアしたヒルトン・ウイテカよりも圧倒的多数派だった。

それでも2015年4月、WBAフライ級レギュラー王者のファン・カルロス・レベコを競り落とし、ジェフ・フェネックを上回る史上最速18戦目での3階級制覇に成功。

2016年。レベコとの再戦を11ラウンドストップ勝ちと、より明白な形で終えた井岡はWBAスーパー王者のエストラーダとの対戦が既定路線になる。

しかし、エストラーダはチョコラティトを追ってスーパー王座を返上、ジュニアバンタム級へ上がる。

当時から、チョコラティトもガジョも井岡との対戦も望んでいたが、その三角関係でも井岡の影は薄かった。

2017年。井岡父子の確執はもはや修復不能なまでに膨れ上がってしまう。

井岡の引退が〝偽装〟であったことは、わずか7ヶ月後にトム・ロフラーと契約、パチンコメーカーがスポンサーに付いた手際の良さからも明らかだった。

ジュニアバンタム級でのカムバック、最初の世界戦は日本を離れたマカオのカジノでドニー・ニエテスと争った空位のWBCストラップ。

On New Year’s Eve in 2018, Ioka lost a split decision to Filipino legend Donnie Nietes for the vacant WBO junior bantamweight title. Some at ringside felt Ioka deserved the nod.

この試合も唯一の敗北と同じSDで落としてしまうが、リングサイドの専門家たちにの間では「井岡が勝っていた」という声も少なくなかった。


He deserves better. 

井岡はもっと評価されるべきだが、勝てなかった三つの試合が彼のボクシングのわかりにくさを象徴している。SDの二つの敗北と、MD引き分け。

テレビを見たボクシングを見慣れていないファンと、やはりまともではないジャッジには、アムナットとニエテスの試合は「井岡の完敗」としか見えなかった。しかし、多くの専門家は「試合をコントロールしていたのは井岡」と評価した。

引き分けたジョシュア・フランコとの試合も同様で、パンチスタッツの数字も井岡を支持するものだった。

「玄人うけする」というのは、プロの世界では決してありがたい言葉ではない。

ボクシングファンの多くは、チェスにも将棋にも囲碁にも詳しくない人種だ。

そして、彼らがチェスゲームを理解できないのと同じように、井岡はチェスゲームにしかならない戦略を選ぶことがある。

それはそれで、どちらも生き様だ。


ただし。

井岡一翔の現在地点については、間違いないことが二つある。

一つはファイティング原田以来、史上2人目のモダン部門での殿堂入りを果たす可能性があるほどの実績を積み上げていること。

そして、もう一つは、今夜のマルチネス戦では玄人うけするチェスゲームで勝利を逃すようなことがあると、もう取り返しのつかない、やり直しのきかない年齢とキャリアの段階に入ってしまっていること。

明白に勝って、14度目になる大晦日のビッグファイトでキャリア最高の勝利を収める道を開かなければならない。

父親と決別する原因になったチョコラティトとエストラーダとの試合は、もう手に入れることはできないだろう。


There is a Fight that cannot be lost,no matter what

それでも、なんの因果かチョコラティトよりも華があり、エストラーダを倒したバム・ロドリゲスが出現した。

ボクシング人生最後の時間帯に、キャリア最強の相手が立ち塞がる。

それが幸運なのか、それとも不運なのか。

井岡はそれを私たちに教えるためにも、今夜の試合には絶対に勝たなければならない。





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

Lifetime Boxing Fights 22


7月7日(日)両国国技館

ジュニアバンタム級 団体統一戦

WBA©︎井岡一翔
vs
IBF©︎フェルナンド・マルチネス


いよいよ明日に迫った大勝負。

エディー・ハーンを後悔させる大勝負はここをクリアした先にありますが、まずは、フェルナンド・マルチネスです。

そして、こいつは難敵かもしれません。

アルゼンチンのボクサーというと、最近ならスタイリッシュなセルヒオ・マルチネスや、ディフェンスマスターのオマール・ナルバエスらテクニシャンが思い浮かぶ一方で、マルコス・マイダナやルーカス・マティセのようなラフなパンチャーも強烈な印象を残してきました。

井岡の前に立ち塞がるフェルナンド・マルチネスは、どのタイプか?…となるとテクニシャンではありません。

マイダナやマティセほどの破壊力はないものの、好戦的で打撃戦での巧さは持っています。

メキシカンスタイルのアルゼンチン人、といったところでしょうか?

敵地に乗り込んでくることも考慮すると、マルチネスは序盤からいつも以上に攻撃的に前進して来るはずです。

井岡にとって、けして不得手な相手ではありません。

オッズは35歳の井岡の勝利が4/6(1.67倍)、32歳のマルチネスが6/5(2.2倍)。

15年間も世界のトップ戦線で戦い続ける攻防兼備の井岡が、一面的なスタイルのファイターに押し切られるとは思えません、

しかし、この試合で一気に衰えを曝け出したとしても全く不思議ではない年齢に差し掛かっていることもまた事実です。

IMG_1288

第二次世界大戦中は風船爆弾の工場として軍に接収され、敗戦後はGHQに接収され「国技館」は斎場のような「メモリアルホール」という名に改称されてしまいました。

1970年代に柴田国明や大場政夫、輪島功一という国民的英雄がホームにした「日大講堂」は日大が買収した、この国技館のこと。日本チャンピオンでも現在では想像もできない知名度があった時代でした。

現在の国技館は二代目。






さて。

このイベントのセミファイナルには堤聖也が昨年の12月26日以来、194日ぶりのリングに上がります。

堤は今年1月に日本バンタム級王座を返上、世界タイトルに照準を絞ってきました。

28歳のスラッガーが56kg契約の〝前哨戦〟に選んだのは無名のタイ人、22歳のウィーラワット・ヌーレ。キャリア5戦(4勝2KO1敗)の浅いキャリアで、日本のリングは今回で2度目。今年4月には西岡伶英の咬ませ犬として、きっちり役割を果たして判定負け。

堤の現在のランキングはWBA2位、WBC11位、IBF3位、WBO7位。どのストラップも射程に捉えています。

比嘉大吾と分の良いドローを演じて名前をあげた堤は、強打のスイッチヒッター。

スイッチヒッターといっても、テレンス・クロフォードらとは全くリーグが違う、そもそもの実力すら世界基準が怪しいレベルです。

しかし、現代はアルファベット4団体がそれぞれデタラメランキングを17階級で作っている4Belt Era。中谷潤人を例外にまともな強豪が見当たらないバンタム級という背景から、どれか一つのストラップを拾う可能性は十分にあります。

そして、昨年12月に見せた不撓不屈は、ボクシングファンに誓約させました。

「堤聖也を最後まで見届けなければならない」と。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

バム・ロドリゲスのPFPランキングはどこまでジャンプアップするのか?

https://fushiananome.blog.jp/archives/36153554.html

オレクサンデル・ウシク、テレンス・クロフォード、井上尚弥の3強の壁を崩すのは難しいものの4位に躍進することは十分ありうる、と先日書きましたが、思考回路がますます硬直しているリング誌がまず5位に引き上げました。

リング誌のトップ5はウシク、井上、クロフォード、カネロ・アルバレス、そしてバムの順。

バムにロックオンされたスーパーミドル級の完全統一王者カネロは、9月のメキシコ独立週間にラスベガスでウィリアム・スカールとの対戦が噂されていましたが、この時点でも進展はなし。

もし、スカールと対戦し圧勝したとしてもPFPランキングには微風すら起こせないでしょう。

それどころか、不細工な試合をすると勝っても順位を下げる、つまりバムに4位の座を明け渡すかもしれません。

facebook_P4P_thumbs


そして、明日の「WBAジュニアバンタム級王者・井岡一翔vs IBF同級王者フェルナンド・マルチネス」の勝者と対決、勝利を収めるようならカネロに代わって4位は確実。

それどころか、3強体制を崩すかもしれません。




クロフォードは8月3日(日本時間4日)に、カリフォルニア州のサッカー専用競技場BMOスタジアムで無敗のWBAジュニアミドル級王者イスライル・マドリモフに挑戦、4階級目のタイトルを狙います(空位のWBO暫定もステイク)。

ジュニアフェザー級の完全統一王者・井上は9月にTJ・ドヘニーとの防衛戦が決定的。

クロフォードが鮮やかに29歳のウズベキスタン人を斬り落として、レベルの高いライト級からジュニアミドル級の4階級を制覇するとPFP1位返り咲きを支持するメディアもあるでしょう。

一方で、井上が37歳のアイルランド人に圧勝しても、やはり何も起こりません。ただでさえ酷い選手が多い軽量級で、砂時計の砂が溢れ始めている井上がムロジョン・アフマダリエフを回避してドヘニーというのは、どういう理屈なのか全く理解不能です。

万一、クロフォードと井上が敗れるような大波乱があると、バムは棚ボタで二つ順位を上げることになります。

フロイド。メイウェザーとマニー・パッキャオが無敵を誇っていた時期は、PFPに議論などありませんでした。彼らはそれぞれの全盛期で、満票一致で1位の座(こうなるともはや「十人十色の妄想」とは言えない)を固めていたのですが、現在はどんぐりの背比べ状態。PFPのトップ戦線は液状化が続いています。

クロフォードと井上が予想通りの圧勝を収めることができないで、年末にバムがファン・フランシスコ・エストラーダに続いてKO負けのない井岡も撃沈すると、PFP1位の可能性が大きく膨らみます。

クロフォードと井上が圧勝したとしても、バムの1位はあり得ます。

さらに、今年のFighter Of The Yearもがっちりコンクリート。

来年、WBO王者の田中恒成も陥落させてUndisputed championになるとPFP1位の座はしばらく安泰、ローマン・ゴンサレスがマークした軽量級のPFP1位の最長記録2年を上回るかもしれません。

ただし。

これは、あくまで「井岡に勝てば」が大前提で始まるストーリーです。

現時点でPFP5位のバムに、井岡が勝てばPFP返り咲きは確実で、それも下位ではないでしょう。勝ち方によっては、あくまでPFP上で「日本のエース交代劇」が起きてもなんの不思議もありません。

もちろん。

これも「井岡が明日、マルチネスに勝つ」のが大前提。

リング誌のPFP9位はエロール・スペンスJr.、10位が中谷潤人。

井岡がマルチネスを印象的に沈めると9位に中谷、10位に井岡(あるいは逆の順位?)もあり得ます。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

今週末にIBFジュニアバンタム級王者フェルナンド・マルチネスとの統一戦のリングに上がるWBA王者の井岡一翔。

まずは、32歳の無敗のアルゼンチン人を撃破することが大前提ですが、その先にはLineal/The Ring/WBC王者ジェシー〝バム〟ロドリゲスとの大一番が視界に入っています。

「21世紀に入って日本人が戦ったビッグネーム」となると、2022年4月9日に村田諒太が挑んだゲンナジー・ゴロフキンが飛び抜けた存在です。

しかし、当時のGGGはPFP1位は過去の話、40歳で劣化の綻びをあちこちに露呈させていました。その意味では、淵上誠や石田順裕を破壊したバージョンのGGG、PFPキングに駆け登る途上のGGGこそが人気階級という意味ではもちろん、実力的にも抜きん出て最強だったともいえます。

欧米の人気階級という枠を外して、旬の強豪という一点を突き詰めると、2012年10月13日に西岡利晃が玉砕したPFP3位のノニト・ドネアも有力候補です。

あのときのドネアは29歳、この年の活躍が評価されて Sugar Ray Robinson Awardに輝くなど世界評価は沸騰していました。

残念ながら、村田も西岡も、そして淵上も石田も勝利を飾ることはできませんでしたが。

勝利を条件にすると、井上尚弥が粉砕したオマール・ナルバエスか、劣化バージョンのドネアでしょうか。

しかし、2人とも当時はPFPとは無縁で、ナルバエスに至ってはキャリアを通してPFPにはカスリもせず、数字だけ素晴らしい戦績とは反比例して世界評価は低迷したままでした。



。。。もし今年の大晦日に井岡がバムに勝利するようなことがあれば、21世紀の日本ボクシング界にとって間違いなく最大の勝利です。

しかも、24歳という年齢と才能を考えると、井岡が引退した後もバムが活躍するたびに井岡の強さが彷彿される可能性が高い、これ以上ない美味しい相手です。

日曜日に、井岡が番狂せに泣くことも十分にあり得ます。マルチネスには全くもって失礼な話ですが、井岡vsバムのお話です。





井岡のプロキャリアは15年以上にわたり、319ラウンドを戦い抜き34試合(31勝16KO2敗1分)。34戦のうち世界戦が25試合という濃密さです。

ストロー級からスタートしてジュニアバンタム級まで4階級でアルファベットのストラップをコレクション、35歳という年齢は軽量級のボクサーとして完全に下り坂となっていてもおかしくありません。

階級を上げても自分の持ち味を失わない、加齢による劣化をほとんど感じさせないことは高い規律を守って日々の練習に打ち込んできたからでしょうが、最も大きな原因は打たれないスタイルです。

BoxRecの被弾率17.8%という数字は世界基準のボクサーとして3位(1位はドミトリー・ビボル、2位はシャクール・スティーブンソン)。日本人ボクサーとしてはトップ。

井岡の防御がシャクールのような専守防衛ではなく、相手にプレッシャーを与えながら攻撃に繋げるスタイルであることはこれまでの試合でも明らかです。

ただ、数値上はバムは全階級を通じても非常にバランスの良い、総合的に優れた攻撃力を持っています。

全階級でNo.1の着弾率(39.7%)、最も特徴的なのはこのパンチの正確さ。

ある意味当然ですが、ジャブとパワーパンチでもNo.1。

ジャブの着弾率は28.7%。ジャブといっても、これはリードパンチなのでサウスポーのバムの場合は強烈な右フックや右アッパーも含まれてしまっています。立ち上げから39年も経っても、ほとんど進化していません。没落マイナースポーツの悲哀です。

このカテゴリーでは、1ラウンド平均の手数で寺地拳四朗(40.1発)が2位、中谷潤人(36.5発)が5位に入っていますが、バムはトップ10圏外。しかし、1ラウンド平均のジャブの着弾数では7.6発で拳四朗も中谷も上回って5位に出現します。

バムと同じ傾向が見られるのが、井上尚弥。ジャブの着弾率は26.6%ながら、手数としてはトップ10圏外、2ラウンド平均の着弾数は8.4発とバムを上回ってビボル(8.8発)に次ぐ2位。

着弾率に戻ると、1位がバム(28.7%)で2位は意外?にもデオンティ・ワイルダー(26.9%)、そして井上(26.6%)。

拳四朗や中谷はジャバー。リードの目的がダメージを与えることではなく、さらにヒットさせることですらない、距離を測ったり、相手の反応を見る触覚の役割としてもリードを使いこなすジャバーの的中率が下がるのは当然です。精度は目的ではないのです。

この数字だけで「拳四朗や中谷はジャブの手数は多いけど精度が悪い」と見るのは大間違いです。

また、ワイルダーや井上のCompuBox上の「ジャブ」には、試合を決定する狙い済ました強烈極まる「左フック」などのパワーショットが数多くブレンドされています。

また、井上は完全に手首を返した左ストレートをジャブのように打ち込んできます。厳密にはジャブとは呼べませんが、破壊を目的としたジャブともいえるでしょう。

そして、バムの場合は拳四朗型と井上型の中間でしょうか。ここにも、万能型の一面が見て取れます。

さて、井岡です。彼はこのカテゴリーでは手数も精度もトップ10に入っていません…。








このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2024年12月31日 日本武道館

vs
WBA /IBF王者
井岡一翔


ウィリアム・ヒルのオッズは1−3でバム・ロドリゲスが明白に有利。

井岡がアンダードッグに甘んじるのは田中恒成戦以来、キャリア2度目。しかし、恒成のときのオッズはレーザーシン(剃刀一枚の僅差)で、日本のファンや専門家の中には「井岡有利」の声が過半数を占めていました。

しかし、今回は大方の日本のファン、メディアでも井岡の勝利には悲観的。

「ファン・フランシスコ・エストラーダのようにキャリア初のKO負けを喫するんじゃないか」という惨敗予想も少なくありません。


 エストラーダは全盛期ではなかったにしても、バムは良い選手です。



さて、井岡とバムの戦力分析。

CompuBoxの「プラス・マイナス」は着弾率から被弾率を引いた数字です。


【PLUS MINUS +/ー】

SHAKUR STEVENSON+20.4
JESSE RODRIGUEZ+18.9
DMITRY BIVOL+17.8
VASILIY LOMACHENKO+17.2
DAVID BENAVIDEZ+16.5
GERVONTA DAVIS+14.7
NAOYA INOUE+14.5
KAZUTO IOKA+14.1
JARON ENNIS+13.7
WILLIAM ZEPEDA+12.6

バムは着弾率39.4%で、この数字は全体1位。被弾率は20.5%。39.4ー20.5=+18.9で、シャクール・スティーブンソンに次いで2位。

デビッド・ベナビデスやタンク・デービス、井上尚弥、ジャロン・エニスのような被弾も少なくないパワーファイターがランキングされているように「打たせずに打つ」よりも「1発打たれたら2発返す」要素を拾い上げた数値といえます。

バムは井上(35.1%)を4.3ポイントも上回るパンチの精度を示している一方、着弾率は20.5%で井上(20.3%)とほとんど変わりません。

階級を無視したPFP的な比較でこの数値を当てはめると、井上はバムの正確なショットに苦しめられた結果、敗北することになります。井上の性格から、圧倒的な精度の差に苛立って強引なアタックを敢行、終盤に凄惨なKO負けを喫するかもしれません。

もちろん、妄想PFPを離れた現実には、両者の間に7ポンドの体重差が横たわっています。

さらに、この種の数値は対戦相手のレベルによって大きく変わります。NPBでは当たり前に3割以上を打っていた鈴木誠也や吉田正尚が、MLBに行けば平凡な打者になってしまうのと同じ理屈です。

例えば、オレクサンデル・ウシクの着弾率は26.8%に過ぎず、被弾率は19.3%で+7.5と非常に頼りない数値になります。しかし、ウシクが10ポンド単位で重い相手とタイトロープを渡るような激闘を繰り広げていることを勘案すると、バムや井上と同列には語れません。

さて、井岡一翔です。35歳のグランドマスターは「着弾率31.9%ー被弾率17.8%」でプラス・マイナスは+14.1。

この被弾率17.8%はドミトリー・ビボル(13%)、スティーブンソン(13.3%)に続く第3位。上位2人とは大きく数値を離されていますが、バム(20.5%)を2.7ポイント引き離しています。


【OPPONENTS TOTAL CONNECT PERCENTAGE LOWEST PERCENTAGE】


DMITRY BIVOL13%
SHAKUR STEVENSON13.3%
KAZUTO IOKA17.8%
BRIAN CASTANO18.1%
VASILIY LOMACHENKO18.4%
KENSHIRO TERAJI19.5%
DEMETRIUS ANDRADE19.7%
ERISLANDY LARA20.1%
OSCAR VALDEZ20.2%
DEVIN HANEY20.3%

被弾の少ないトップ10には井上尚弥はもちろん、バムの名前も見当たりません。

微妙な差ですが、数値上では井岡がバムよりも対戦相手にとってパンチを当てにくいボクサーです。

さらに、データ上の数値だけではなく、経験に基づく駆け引きまで包含した防御面では井岡がバムよりも一枚(二枚も三枚も?)上手でしょう。

バムの+18.9という数字は、井岡の前では間違いなく下がります。井岡に対して40%近い着弾率をマークできるとは思えません。

もちろん、井岡の+14.1もバム相手には崩れるでしょうが。




では、着弾率だけでなく手数やリード(前の手)、パワーパンチも効力した攻撃力を比較すると、どうなるでしょうか?

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

How far away are we from Bam Rodorigez against Inoue we are only two weigh classes apart and that looks like one of the biggest fights that can be made in one of these weight classes.

I know people want that but let's be real right now it's a fantasy fight. I got to work my way up he's at 122 right now I'm  barely at 115 so I got business to handle out here at this  weigh classe.



【インタビュアー】バム・ロドリゲスVS井上(尚弥)との対戦はどれくらい先の話になるのでしょうか?体重は2階級しか離れていませんが、この階級(超軽量級)で実現できる最も大きな試合の1つになるでしょう。

【バム】みんなが井上戦を望んでいるのは分かっていますが、現実的に考えてみましょう。これはファンタジー・ファイトです。私は大きく体重を増やさなければなりません。彼は122ポンドで、私はかろうじて115ポンド。そして、私にはこの115ポンドでまだやらなければならないことがあります。

IMG_2006

試合後のインタビュー。Bam Rodorigez against Inoue のくだりが観客に理解されていないのか会場の盛り上がりはいま一つでした。

日本のメディアはちゃんと聞き取って報道してるのでしょうか?ファイターを「戦闘機」と訳した記事を平気でアップしてしまうようなアホにも程があるメディアの英語レベルではヒアリングできないか?

アリゾナ、メインはバムvsエストラーダという土地柄とマッチアップを考えると、観衆8000人の中には井上尚弥を知っている人も相当数いて欲しいのですが…。

まだまだ認知度が低く、発音の仕方もまちまちで、井上を知っている観客の耳にもしっかり伝わっていないのかもしれません。

さて、すでに書き進めているバムの戦力分析と合流する形で「井岡一翔」「井上尚弥」との近未来の話を始めましょう。

最初にお断りするのは、データはあくまでデータ。

CompuBoxの数値では井岡はパワーパンチが貧弱で、井上はディフェンスが弱いとなって、バムの圧勝になってしまいます。

それだけバムがデータ映えするファイターということですが、井岡と井上はデータに現れない強さも持っています。




まずは、井岡一翔です。

本当なら来週の今頃から、井岡がWBAとIBFのストラップを束ねてから語るべきテーマですが…。

さて、プライムタイムに向かって加速している24歳のメキシコ系アメリカンを前にして、35歳の井岡一翔に勝ち目はあるのか?


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ