フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 世界に挑む日本人,THE SUPER FLY,世界の軽量級

世界戦の地上波生中継が激減、スター選手(といっても村田諒太と井上尚弥のトップ2)がネット配信で〝実験〟を進める中で、WBOジュニアバンタム級王者・井岡一翔の5度目の防衛戦が13日(水)午後9時からTBS系列で全国生中継されます。

地上波生中継よりもネット配信の方が選手報酬がより多くなる、というのは決定的に正しい方向ですが、それが事実なのかは疑問です。

最近の村田と井上の試合を配信したアマゾンprimeの収支の詳細は闇の中、まだまだ赤字を織り込んだ実験段階です。

さらに、アマゾンがその実験台に選んだのはトップ2で、その他世界王者は完全に置き去りにされた格好です。

実験が成功、ビジネスモデルが確立できたら、その他世界王者の試合も手がけていく方針でしょうが、たとえそうなったとしても、既存のファン、マニアをターゲットにしたネット配信やPPVの行く末は全体市場のシュリンクと相場が決まっています。




60年代からクローズドサーキットが定着、90年代からPPVが成長している米国は、新規のファンを開拓出来ないまま「ボクシングは一部の高齢男性」が好むマイナースポーツとして先細りを続けています。

それでも「80年代までは五輪が全米予選からテレビで観戦できたから、若いファンの興味をつなぐことができていたが、今では完全にマニアのスポーツに成り果てた」(バーナード・ホプキンス)。

そんな米国でも、PPVはほんの一握りのスーパースターのメガファイト限定。PPVファイター手前のスター選手は、HBOのボクシング番組という活躍の場がありましたが、2018年で撤退。

ショウタイムやESPNは引き続きボクシングイベントを放送していますが、凋落傾向に歯止めはかかっていません。

7月13日にドニー・ニエテスへのリベンジマッチに〝挑む〟井岡ですが、ウィークデイの午後9時に合わせた試合、どこまで視聴率を稼げるか注目です。 時間帯を考えると、10%は欲しいです。

ボクシングファンでない人がチャンネルを合わせたときに、面白い試合が展開されている…そうなって欲しいのですが、何しろ井岡とニエテスのマッチアップです。

両者が完全なコンディションでリングに上がると、ジャッジ泣かせのチェスゲームが繰り返される可能性大。

本来は、こんなこと考えもしませんが、ニエテスの劣化が一気に進行して、井岡が多彩なテクニックを披露する見本市のような試合になるのが理想かもしれません。
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「フェニックスバトル(PXB)89!」=29日後楽園ホール=

大橋ボクシングジムを運営するフェニックスプロモーションが主催するボクシング興行、メインはWBOアジアパシフィック・ジュニアバンタム級戦。

王者・橋詰将義に田中恒成が挑戦する構図ですが、焦点は田中が〝どう勝つか〟。

橋詰は22戦19勝11KO2分の28歳。格上の田中を喰えば世界が一気に近づきます。

一方、28歳の田中は2020年12月に井岡一翔にプロ初黒星を喫してからの再起2戦目。

オープニングラウンドこそ、サウスポーの王者がリーチ差を活かしたジャブで田中の接近を拒みましたが、第2ラウンドからは距離を潰した3階級制覇の挑戦者がゲームを支配。

ジャッジ3者とも39-37で迎えた第5ラウンド、田中が王者をロープに追い込んで顔面、ボディ、に多彩なパンチを集めたところでレフが試合をストップ。

WBO王者・井岡、あるいはIBF王者フェルナンド・マルチネスとの大勝負を見据えて、年内に地元名古屋で1試合を挟み、来年の世界戦で悲願の4階級制覇を狙います。

井岡へのリベンジマッチも興味をソソられますが、アンカハスを番狂わせで下した無敗のマルチネスを攻め落として、新旧スター選手が群雄割拠するクラスに殴り込んで欲しいところです。

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Saturday 5, March 2022
Pechanga Arena, San Diego, California, USA  
Jr.Bantam weight 12R


チョコラティト、見事な完勝でした。

二人のスタイルとマルチネスの体重超過から、年間最高試合の候補になるような激闘になる、という予想も聞かれましたが、両者の技量と経験の差は如何ともしがたい大きなものがありました。

体重差は関係なし。

ウェイト超過した相手との対戦を受け入れることは、肯定しません。

しかし、ローマン・ゴンザレスが何者なのかをあらためて思い知らされた12ラウンド36分間でした。

良い子は真似しちゃいけません。

Punch Stats

PUNCHESGONZALEZMARTINEZ
Total landed374182
Total thrown1076713
Percent35%26%
Jabs landed2814
Jabs thrown394262
Percent7%5%
Power landed346168
Power thrown682451
Percent51%37%
-- Courtesy of CompuBox
12ラウンドで1076発。相変わらずの手数と、利き手の着弾率50%超え。解説陣が何度もaccuracyという言葉で、34歳のニカラグア人を絶賛していました。

試合は第6ラウンドにフライ級王者をグラつかせる見せ場もつくったワンサイドゲーム。オフィシャルは118-110, 117-111,116-112。

「計量では大きく見えたマルチネスが小さく、弱く、経験不足に映った。彼はフライ級に戻るべきだ。チョコラティトは素晴らしい。加齢は軽量級ボクサーにより厳しくのしかかるはずなのに、今日の彼は全盛期のようだった」(エディ・ハーン)。

ロマゴンは「メキシコのお客さんがいっぱい入っていたから、正面から打ち合って彼のパワーを感じたい、そして私のパワーを彼に伝えたい」とコーナーに話したそうですが「一つのラウンドも与えるな」と指示されて、その通りに実行しました。

「マルチネスが最後まで立っていたことに驚いた。6週間前のオファーを受けてくれた上に、素晴らしいハートも見せてくれた」と27歳のメキシカンに感謝、体重超過については「厳しい減量ではミスや不測の事態もある。しかも今回の彼には準備期間がなかった」。

性善説の塊…。世界中の人々がロマゴンなら警察は入りません。戦争も起きません。

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チョコレートカラーのエバーラストには「Chocolatito」とロマゴンのシルエットがイラストされています。。マルチネスのグローブはエディ・レイノソがプロデュースするメキシコカラーのNO BOXING NO LIFEブランドで、やはり「Rey Martinez」とプリントされている、オリジナル版。

それにしてもロマゴンのチョコレート色のエバーラスト、格好いいです、強そうです。


そして、偉大なチョコラティトはキャリアハイのファイトマネー72万5000ドルに加えて、マルチネスのファイトマネーから罰金2万5000ドルが上乗せされ、最終的な取り分は75万ドルに。

ちなみにマルチネスのファイトマネーもキャライアハイの25万ドル。当日計量で122.6ポンド、ファイトマネー20%の5万ドルをロマゴンとカリフォルニア州アスレティックコミッションに2万5000ドルずつ徴収されることになりました。

新型コロナ感染で休養中のLineal/リング誌/WBA王者ファン・フランシスコ・エストラーダは、セカンドタイトルホルダーのジョシュア・フランコとの団体統一戦が6月開催を目処に義務付けられています。

エストラーダとの第3戦がセットされなければ、シーサケット・ソールンビサイとのやはり第3戦が有力視されています。

日本のボクシングファンからすると、井岡一翔も絡めて欲しいところですが、今のロマゴンやエストラーダを日本に呼ぶには100万ドルでは済まないです。そう考えると、井岡が出て行くしかありません。

ESPNなど複数のメディアが、ロマゴンのバンタム級転向の可能性にも触れています。

He'll chase a title in a fourth weight class. Gonzalez expressed interest in a 118-pound title bout, a weight class headlined by Naoya Inoue, but that also features future Hall of Famer Nonito Donaire. 

ロマゴンは階級制覇を追求するつもり。井上尚弥が君臨、未来の殿堂選手ノニト・ドネアもいるバンタム級でのタイトル戦に興味を示している。

※ロマゴンはカルロス・クアドラスに勝ってWBCジュニアバンタムのピースを獲得していますから、バンタム級で目指すのは4階級制覇ではなく5階級制覇。カル・ヤファイから奪ったWBAもスーパーに格上げされていますから、いずれにしてもすでに4階級制覇は達成しています。

日本では5階級制覇のドネアのジュニアバンタムは暫定タイトルだったため、ドネアは世界的には4階級制覇。 

決着をつけなければならないエストラーダにシーサケット、井岡もいますからバンタム転向はまだ先でしょう。
 
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ESPNからHow Roman 'Chocolatito' Gonzalez changed boxing's perception of smaller divisions(ローマン・"チョコラティート"・ゴンザレスは、ボクシングの軽量級に対する認識を大きく変えた)。

ゲンナジー・ゴロフキンは10年近くHBOボクシングの主役として活躍してきたが、2015年5月の夜、カリフォルニア州イングルウッドでウィリー・モンロー・ジュニアと対戦するリングに上がる前座に、ニカラグア出身の小さなボクサーの姿を見たリングサイドの関係者はざわつきました。

エドガー・ソーサを美しいコンビネーションで2ラウンドTKO、チョコラティートが眩しい輝きを放ちました。

軽量級が軽視されるのは、試合が面白くないからではなくて、偏見を持つメインストリームのファンが最初から見ないからでした。あるいは偏見のないファンでも、軽量級を見る機会がなかったからでした。

ゴンザレスは、このソーサ戦で1997年以来18年ぶりにHBOに出場した115ポンド以下のボクサーとなったのです。

その後も、GGGのカードに登場、最終的にはヘッドライナーとしての道を歩みました。

軽量級ボクサーとして史上初めてPFP1位の評価を獲得、

土曜日にサンディエゴで開催されるフリオ・セサール・マルティネス戦。4試合連続でゴンザレス戦をプロモートするMatchroom Boxingのエディ・ハーンはESPNに「チョコラティトは軽量級でも大きな興行に出場する道を開き、階級間の偏見を埋めてきた」と讃えました。

ゴンザレスが注目されたのは高等技術と無尽蔵のスタミナがハイテンポで披露される試合内容からでした。

重量級の選手は、優れた軽量級よりも心肺機能が劣り、体格が大きいため動きが遅鈍に見え、パンチの回転も物足りない。

ロマゴンは3月に行われたフアン・フランシスコ・エストラーダとの再戦でキャリアハイの70万$を手にしました。

Gonzalez's Notable Fights And Purses

OPPONENTRESULTYEARPURSE
Edgar SosaWin, TKO22015$200K
Brian ViloriaWin, TKO92015$250K
McWilliams ArroyoWin, UD122016$300K
Carlos CuadrasWin, UD122016$400K
Srisaket Sor Rungvisai (first fight)Loss, MD122017$500K
Srisaket Sor Rungvisai (second fight)Loss, KO42017$600K
Moises FuentesWin, TKO52018$200K
Juan Francisco Estrada (second fight)Loss, SD122021$700K

「軽量級が注目されるのは嬉しい。若い選手の待遇に少しでも役に立っているとしたら、もっと嬉しい」と、いつものように柔和に語る小さな巨人が、対戦相手を冷酷に追い詰めるコンビネーションを放つファイターだというののには違和感しか湧いてきません。

数百万ドルを稼いでいるわけではないが、HBOデビュー前のロマゴンは何階級制覇しようがPFPファイターになろうが5桁(数万$=数百万円)のファイトマネーに甘んじていたことを考えると、70万$は夢の世界です。

▶︎▶︎▶︎井上尚弥は100万$を何度も稼いでいますが、軽量級の評価を引き上げるなんてことはなく、ちょっと違う貴族的存在です。


直近のマクウィリアムス・アローヨ戦でキャリアハイの12万5000$を稼いだマルティネスには、それ以上の報酬が保障されているそうです。

「チョコラティトは軽量級選手にとってアイドル。尊敬している彼と戦えることは最高に幸せで、最高に光栄」(マルチネス)。

▶︎▶︎▶︎尊敬している人と戦うのに2ポンドオーバーはないわ。130ポンドに膨れ上がったメキシカンがロマゴンを押し潰すような試合は見たくありません。

チョコラティト、何としても勝ってくれ!
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Saturday 5, March 2022
Pechanga Arena, San Diego, California, USA  
Jr.Bantam weight 12R


前日計量で27歳のメキシカンが2ポンドもオーバーする大失態を演じました。6週間前に急遽代役に選ばれたという背景があるにせよ、試合を受けたのなら、最低限の約束は守らなければなりません。

カリフォルニア州アスレティックコミッション(CSAC)は規定通り、マルチネスに2時間の減量時間を与えましたが再計量でも116.4ポンドと0.6ポンドしか絞れなかった始末。

ふざけてます。

それでも、ゴンザレス陣営は試合を受け入れました。

もちろん、チョコラティトは114.8ポンドで一発クリア。

それにしても34歳のグレートは人間が出来ています。目の前で対戦相手が2ポンドオーバー、再計量でも約束の体重に落とせなかった愚か者と表情一つ変えずにフェイスオフして、健闘を誓いあうハグまで。

まともなスポーツなら統括団体のCSACが試合中止と、ゴンザレスの不戦勝、マルチネスの不戦敗を宣告すべき事態ですが、ボクシングの場合は両陣営の合意があれば試合決行。

おかしなスポーツです。それなのに、チョコラティトが試合を受け入れたこと、マルチネスに対する態度に感動している私がいます。

CSACルールでは明日の当日計量でリバウンド上限を設けています。ジュニアバンタム級リミット(115ポンド)を10%超える126.5ポンドを超過すると試合報酬から罰金が差し引かれ、15%超過(132.25ポンド)で試合は中止。

マルチネスもさすがに中止は避けたいでしょうが、罰金覚悟で126.5ポンドは超えてくるかもしれません。

オッズはチョコラティト8/11(1.73倍)、マルチネス11/10(2.1倍)。

美しいコンビネーションでふざけたメキシカンを破壊しましょう。

ちなみにこの試合、WBCダイアモンドタイトルがステイクされています…どうでもいい情報でした。
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co-featureにセットされているのはマウリシオ・ララvsエミリオ・サンチェスのフェザー級10回戦。

ジョシュ・ウォリントンを大番狂わせで沈めて、フェザー級トップ戦線に躍り出たララ。

そのララに勝って一旗挙げたいサンチェスは前戦でクリスチャン・エスキバル(山中慎介と空位のWBCバンタム級を争ったあのエスキバルです)を2ラウンドKOしていますが、エスキバルは1分を挟んで9連敗中(内8試合がKO負け)という、試合させちゃいかんだろという当時35歳でした。

ララ1/12(1.08倍)、サンチェス13/2(7.5倍)。


セミファイナルでは、エスキバル同様に日本のボクシングファンの記憶に残っている34歳のファン・カルロス・ブルゴスが、11歳年下のWBO北米ライト級王者アンヘル・フィエロに挑戦します。

ブルゴスは3度の世界挑戦経験がありますが、直近5試合は1勝4敗、ホープの踏み台に落ちています。それでもまだKO負けは一度もありません。

フィエロは「マイキー・ガルシアが倒せなかったブルゴスをノックアウトする」と意気込んでいます。

フィエロ1/7(1.14倍)、ブルゴス9/2(5.5倍)。
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Saturday 5, March 2022

Pechanga Arena, San Diego, California, USA  
Super Fly Contest, 12 Rounds



ジュニアバンタム級の頂上決戦「ファン・フランシスコ・エストラーダvsローマン・ゴンザレス」が、エストラーダの新型コロナ感染で延期、マルチメスが代役を務めます。

リネラル(正統)、リング誌、WBAの3つのタイトルを保持するエストラーダが抜けて、ノンタイトルになってしまったのは残念。

このクラスは、WBOのストラップを握る井岡一翔も統一路線を打ち出しているだけに、主役のメキシカンの一刻も早い復帰が待たれます。

ただし、ジュニアバンタムだけでなく、一つ上のバンタムでも統一戦線が愚図つくようだと、とんでもない「瓢箪から駒」にありつけるかもしれないのですが、それはまた別の話。
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ローマン・ゴンザレスのボクシングは、嫌いな人はいないでしょう。

身長160㎝のチョコラティトほど、派手なパフォーマンスやトラッシュトークと無縁のファイターは非常に珍しい存在です。

リングの外で何かを表現することには全く興味がないのでしょう。

マイケル・カルバハルやリカルド・ロペスはもちろん、マルコ・アントニオ・バレラやエリック・モラレスですら届かなかった「フェザー級以下でPFPキング」の座に就き、2年間もその地位をキープしました。

チョコラティトは、軽量級を識る世界のボクシングファンにとって特別な存在です。

さらに、軽量級=ボクシングである日本のファンにとっては、ロマゴンの記事と切っても切れないTeiken Promotionsを見るたびに我が事のような誇りを感じてしまうのです。


さて、週末のマルチネス戦。

ボクサーとしての技術と経験の尺度では、ミスマッチでしかありません。しかも、相手は2階級下の急遽の代役。

それなのにオッズはファイトウィークになってからも徐々に接近。今日の数字はロマゴン勝利が8/11(1.73倍)、マルチネス11/10(2.1倍)と、試合当日までに逆転こそないでしょうが、ミスマッチとは到底言えない掛け率です。

専門家予想も「ロマゴン有利」が基本線ながら「マルチネスにも十分チャンスがある」と、オッズ同様にワンサイドゲームにならないという見方が少なくありません。

この理由は、①番狂わせが続いた先週末の〝余熱〟 と、②ロマゴンの限界と劣化、の2点に集約できます。

①はいうまでもなく、ジェルウィン・アンカハスとギレルモ・リゴンドーが相次いで番狂わせを食らった衝撃波がまだ鎮まっていないということ。

どんな長期政権も、どんな技術屋も、いつかは必ず転覆し、破綻する運命です。

34歳のチョコラティトが、ジュニアバンタム級でデビュー、バンタムでも試合経験のある27歳の強打に打ち負かされる、それは驚くべきシーンではないのかもしれません。

②は、すでにロマゴンが露呈している限界と劣化が「エストラーダ2」のダメージでさらに深みにはまっているのでは?という仮説です。

カルロス・クアドラスに大苦戦、シーサケット・ソールンビサイに破壊された、ジュニアバンタムの壁に戸惑っていたロマゴンは、もう払拭されたのでしょうか?

そして「エストラーダ2」 の歴史に残る打撃戦は、2人に大きな〝後遺症〟を残してのではないか?という懸念は、エストラーダが当初の試合離脱理由を「体調が戻らない」としていたときから囁かれていました。

モハメド・アリと死闘を演じたジョー・フレージャー、フリオ・セサール・チャベスの強打に12ラウンド晒されたメルドリック・テイラー…。

日本でも辰吉丈一郎や高橋直人、彼らは正々堂々の喧嘩のようなファイトを繰り返しながら〝彼ら〟ではなくなってしまいました。

ライバルとのハイレベルな激闘は、他のスポーツならアスリートをさらに高いステージへ押し上げてくれるエンジンです。

しかし、ボクシングの場合は、そうとは限らないのです。〝その激闘〟を境に、全く別人のボクサーになってしまう、そんな悲劇を私たちは何度も見てきました。

日本時間、日曜日にパチャンガ・アリーナの特設リングに上がるロマゴンが 、私たちの知っているロマゴンでない、そんな悲しい可能性は否定出来ません。

フレージャーはもちろん、テーラーも辰吉も、高橋だって素晴らしいファイターでした。

ただし、チョコラティトは高橋や辰吉、テーラーではありません。偉大すぎるフレージャーですら、小さなニカラグア人のステージには届いていません。

チョコラティトと渾名される、Román Alberto González Lunaという名前のファイターは、ボクシングファンにとってアリやチャベスと同じ倶楽部に所属する特別な会員です。

週末のサンティアゴ、パチャンガアリーナで、勢いに乗るメキシカンの勝利にベットしたファンやギャンブラーは苦い授業料を支払うことになるでしょう。

そして、マルチネス勝利もありうると予想した優柔不断な専門家は、ロマゴンが何者なのか?という補習を受けなければなりません。

序盤で主導権を握った偉大なチョコラティトが、終盤までにストップする展開を予想します。


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Saturday 26, February 2022
 
Cosmopolitan of Las Vegas, Las Vegas, Nevada, USA  

International Boxing Federation World Jr.Bantam Title 

ジェルウィン・アンカハスvsフェルナンド・マルチネス

次の試合で、WBO王者・井岡一翔との団体統一戦を予定しているIBF王者アンカハスにとっては負けられない一戦。

日本のボクシングファンにとっても、アンカハスには負けて欲しくなかったのですが…。

30歳、同い年の対戦ですが両者のキャリア、対戦相手の質には大きな差があり、戦前のオッズはアンカハスが1/5=1.2倍、マルチネスが50/11=5.55倍。王者の防衛が固いと見られていました。

しかし、試合が始まると激しい打撃戦を挑戦者が制する形で最終回のゴング。

王者のボディと挑戦者の顔面へのパンチ、どちらが見映えするかは明らかで、オフィシャルは117-111, 118-110, 118-110のユナニマス。

2012年3月以来、10年ぶりの黒星を喫したアンカハスは今春にも日本のドル箱スター井岡一翔との団体統一戦が内定呈していましたが、これでご破算。 

全勝のレコードを14(8KO)にまで伸ばしたフェルナンド〝Pumita(軽石)〟マルチネスは、今回の試合が米国デビュー。

アンカハスをプロモートするTGB Promotionsが再戦条項を盛り込んでいるかどうかは不明ですが、アルゼンチンのPumitaは初防衛戦を「井岡と日本で」となれば大喜びでサインするはず。

井岡陣営に取ってもアンカハスほどの報酬を積む必要はないでしょう。

そして、今日の試合を見る限りは馬力はあるものの、アンカハス以上に井岡にとってオーダーメイドのスタイルに思えます。

実績のあるアンカハスの敗北は残念ですが、マルチネスとの団体統一戦、早急に交渉して欲しいところです。
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フリオ・セサール・マルチネスは、彼のアイドルと戦うことに何の躊躇いもありません。

WBCフライ級王者のメキシカンは、1階級上の生ける伝説ローマン・ゴンザレス3月5日に拳を交えることになりました。

この日、本当ならロマゴンは、リング誌/WBAジュニアバンタム級王者ファン・フランシスコ・エストラーダとのラバーマッチに挑むはずでしたが、エストラーダが新型コロナに陽性反応を示したことでマルチネスに白羽の矢が立ったのです。

軽量級随一の激戦区115ポンドでは、WBC王者決定戦で22歳のジェシー・ロドリゲスが古豪カルロス・クアドラスを下して、史上初の2000年代生まれの世界王者に就いたばかり。

ただ、試合前にマッチルームと複数年契約を締結したロドリゲスは、クアドラス相手に明白に有利と見られていたのに対して、マルチネスは元PFPキングに対してアンダードッグです。
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「ずっと憧れだった伝説と戦えることが嬉しくて仕方がない。簡単な試合にならないことはよくわかっている。歴史を作るってことはそういう試合に勝ったときだ」。

フリオ・セサール・マルチネスはジェシー・ロドリゲスではない。ローマン・ゴンザレスはカルロス・クアドラスではない。

そのことは、オッズや専門家予想がはっきりと物語っています。

そして、34歳のロマゴンもまた、フライ級までの盤石のファイターではありません。27歳のマルチネスにも勝機がありそうです。

この試合のマッチメーカーはマッチルームのケビン・ルーニーJr.。エディ・ハーンの話題作りには、いつも感心させられます。
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2017年。

2014年に続いて、井上尚弥と井岡一翔の「差」が一気に広がったエポックになる年です。

この年、世界で最も注目された、というよりは最も世間を騒がせたのは「フロイド・メイウェザーvsコナー・マクレガー」の茶番劇でした。

その熱は、現在は解毒され気味とはいえ、神聖なリングに当たり前のようにおぞましい悪ふざけが持ち込まれる最初の引き金になりました。

そして、神聖なリングで長らく待望された「ゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレス」のメガファイトが9月16日に挙行されたのもこの2017年でした。

カネと、人の耳目を集めるのが大好きなマネーが「GGGvsカネロ」をあからさまに妨害するように8月26日に茶番劇をセットした理由は、醜悪なジェラシーと見られています。
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ヘビー級開催は手が届かないWBSSでしたが、優勝杯は「モハメド・アリ トロフィー」。どこかに真実っぽいものを紛れさせる、詐欺集団の常套手段です。

そして、神聖なリングではWorld Boxing Super Series(WBSS)のファーストシーズンを立ち上げました。

欧州を拠点とするComosa社が主催したWBSSトーナメントが、北欧で人気のクルーザー級と、英国を中心に欧州で支持されるスーパーミドル級で展開されたのは、ある意味当然でした。

しかし、冷徹に見ると米国でも欧州でも人気が高いヘビー級やミドル級、ウェルター級では開催は不可能だったということです。

そして「賞金総額5000万ドル、優勝賞金1000万ドル」と、明らかな誇大広告をぶち上げたWBSSは公表した報酬を支払うことはたったの一度もありませんでした。

さらなる不人気階級ジュニアウェルターとバンタムに手を伸ばしたセカンドシーズンでは、約束の報酬と違うだけでなく未払いや、主催者との連絡が不通になるなど〝詐欺集団〟の正体が明るみになります。

不人気階級のボクサーを騙す貧困ビジネス、それがWBSSです。

「マネーvsノトリアス」の下劣な茶番、「GGGvsカネロ」の後味の悪い判定、「WBSSの犯罪的な誇大広告」…こうして見直すと2017年はボクシング界が抱えていた既往症が一気に表面化した年だったと言えるでしょう。

この「激動の2017年」に井上尚弥はリカルド・ロドリゲス、アントニオ・ニエベス、ヨアン・ボワイヨというパートタイムボクサーを撃破。

それでも、マイキー・ガルシアの台頭で圏外に追いやられていたリング誌PFPに再びランクイン。

先行してランクされていた8位の山中慎介がルイス・ネリの凶拳に倒されランクアウト、10位のまま孤軍奮闘・臥龍状態に入ります。

井上は翌2018年にWBSS参戦が確実視され、日本人初のUndisputed Champion誕生への期待が膨らんでいました。

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リング誌でも日本の12月30日と31日の年末興行を見開き4ページで紹介「これはウェルター級やヘビー級の世界戦ではない」と超軽量級の興行で大きく盛り上がる会場の熱気を伝えました。



そして、一方の井岡一翔の2017年は4月23日、ノックノイ・シップラサートとWBAフライ級の5度目の防衛戦で判定勝ちした1試合だけ。

6月23日、フアン・エルナンデスに6TKO勝ちしてWBC世界フライ級王者となった比嘉大吾が、井岡との統一戦を希望、WBAも1位のアルテム・ダラキアンとの指名試合を指示します。
 
しかし11月9日、父親でもある井岡一法会長が井岡不在の不可解な会見で、ダラキアンと6度目の防衛戦について「練習が思い通りにできていないために間に合わない。指名試合で、相手を待たすわけにもいかない」と王座返上を発表。

そして12月31日、井岡は30日に日本ボクシングコミッションに引退届を受理されたことを明らかにし、「さらなる人生の目標を見つけたので引退を決めた」と電撃引退を表明するのでした。
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2014年。井岡が難敵アムナット・ルエンロンに初黒星を喫し、超特急で駆けてきたキャリアにブレーキがかかります。

同じ年、井上尚弥はオマール・ナルバエスを2ラウンドで破壊して飛び級2階級制覇を達成。

日本のエース争いで、井上が井岡を突き放して独走態勢に入ったのが2014年でした。

それでも、井岡は2015年にフライ級のWBAバージョンを獲得、3階級制覇に成功。 このタイトルは2017年までファン・カルロス・レベコやキービン・ララというリング誌ランカーも退け、5度防衛。

井上もナルバエスから強奪したWBOジュニアバンタム級のストラップを、WBO御用達の怪しい世界ランカーを撃破、2017年まで7度守りました。

2015年の状況を反映したリング誌2016年1月号の「THE RING 100 WORLD'SBEST FIGHTERS」(PFP100傑)では、ローマン・ゴンザレスが前年6位から一気にトップに駆け上がりました。軽量級史上初の快挙、PFP1位です。

日本勢は山中慎介9位、内山高志13位、井上尚弥15位井岡一翔31位、三浦隆司36位、亀田和毅72位、高山勝成78位、亀田興毅79位、田口良一100位と9人がランキングに入りました。
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79位亀田興毅…。この写真は闘拳ではなく、弁慶の方です。井上や井岡の階級を間違えたり、リング誌に限らず欧米メディアでは珍しいことではありませんが、闘拳と弁慶の区別もついていないのでした。

2015年、日本人ボクサーにとっては垣根が高かったリング誌PFP10傑に山中慎介(最高位8位)と内山高志(同10位)が名前を刻みました。井上のPFP圏突破は時間の問題、日本人3人同時ランクインもありえたのですが、内山が大番狂わせでジェスレル・コラレスに沈められてランクアウトしてしまいます。

リング誌やESPNのPFPに最初に乗り込む日本人は井岡一翔と考えられていましたが、現実には山中と内山が重い扉をこじ開け、井上尚弥がリング誌で2位、ESPNで3位まで駆け上がります。

井上と井岡。

ジュニアバンタム級とバンタム級で破竹の快進撃を見せる井上に対して、フライ級でアムナット・ルエンロン、ジュニアバンタム級でドニー・ニエテスとカミソリ1枚の差で勝利を逃した井岡。

両者の差はこのまま開く一方にも思われましたが、大橋秀行が「井岡くんはみんなが思ってる以上に強い。(井上がやるなら)強敵になる」と何度か発言するなど、一部の評価は依然として高止まりしていました。
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