カテゴリ: ボクシング界はいつだって魑魅魍魎

認定団体が協力することは極めてまれです。

独自のデタラメ・ランキングによって独自のタイトルを作っている彼らにとって、マフィアがそうであるように同業者は限られたパイを争う敵でしかありません。

しかし、「デタラメでないランキングを作る」「タイトルは1階級に一つ」「意味のない水増し階級は廃止」と、ド正論を唱える者が出現すると話は別です。

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…ガラクタ?


サウジアラビア総合娯楽庁の肝煎りで立ち上げられたZuffa Boxingプロモーションの責任者ダナ・ホワイトは「認定団体のランキングはおかしい。つまりチャンピオンシップも腐敗、崩壊している。おかしくないと考えるなら、堂々と表に出てきて釈明してみろ」と笑い飛ばしています。

しかし、認定団体はまともな回答はできず「ホワイトはUFCと同じように選手を搾取しようとしている」と議論をすり替えています。

「収益を下位のファイターにも分配する」というUFCのやり方は間違っていません。「持続可能な成長のため(の内部留保)」は怪しい部分もありますが、収支決算を透明化することなどで正当化できるでしょう。

わずか30年あまりで、ゼロからボクシング界を買い取るまでに成長したUFCの方が経営的に優れているのは疑いようもなく、既存のボクシング界がこの30年でさらに没落したのは「選手ファーストの姿勢を貫いたから」なんて綺麗事ではないことは、ボクシングファンなら誰もがわかっています。

認定団体の反論はあまりにも虚しく、弱々しく、そこには盗人にもある一部の理すらありません。彼らは、ほぼすべて、何から何まで間違っているのです。

2026年、IBFとWBOは異例の合同総会を開催、現在のシステムの維持と、各国コミッションがZuffa Boxingと提携しないようロビー活動にも取り組んでいく方針ですが、すでにカリフォルニア州ボクシング・コミッションはサウジの提案を受け入れることを決定しています。

また、リヤド・シーズンからスポンサー資金の提供を受けているWBAとWBCは、この合同総会の参加を拒否しており、主要団体の足踏みは乱れています。

ホワイトの「規制の認定団体は認めない」という声明が聞こえているはずのWBAとWBCですが、ここでサウジに反旗を翻すのは得策ではないと考えているのでしょう。しかし、「認定団体のベルトはチャンピオンベルト(一番強い証拠)ではない」と断じられているのです、存在を否定されているのです。

それでも「自分たちのランキングは正しい。ベルトには価値がある」とはっきり反論できないのは、自分たちが間違っているのを、自分たちでよくわかっているからでしょう。

それにしても、デタラメ仲間が戦おうとしているのに無視…腐り切った認定団体らしくて笑えます。



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Q:今はボクシングの黄金時代らしいですが、何を基準に言ってるのですか?

A:それは世界王者の数です。白井義男が初めて世界王者になり、陥落してから8年間も世界王者不在という屈辱的な時代もありました。



Q:8年間!今では考えられません。つい最近、たった一つの階級だけで4人も日本人王者がいたこともありました。昔の人が聞いたらびっくりしますよね!

A:そうですね。昔のバンタム級はエデル・ジョフレという謎のブラジル人が強いと言われていましたが、何度防衛したか?というと、8回だけ。ジョフレはフェザー級のタイトルも獲りましたが、たかが2階級制覇なのに当時のファンやメディアは大騒ぎでした。



Q:バンタム級タイトルを8回防衛って、亀田興毅と同じですね。そうか、ジョフレって興毅と同じレベルなんですね。

A:いや、それは興毅を馬鹿にしすぎです。ジョフレは2階級制覇しかできなかったって言ったじゃないですか!

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Q:確かに!興毅は3階級制覇でした!ジョフレとは次元が違いますね。

A:昔はとにかくレベルが低かったから、仕方がありません。大谷翔平と井上尚弥のようなレベルの高い現代に生まれた私たちは幸せです。



Q:井上尚弥なんて、権威のあるリング誌のPFP1位になったこともありましたよね?こんなのサッカーでいうバロンドールに匹敵、野球なんて米国内でやってるだけで大谷のMVPなんて全くステージが下ですね。

A:その通り。井上尚弥のようなボクサーと同時代に生きられるなんて、何度も言いますが、私たちは本当に幸せです。世界的にはむしろ井上尚弥の方が大谷より騒がれているのに「なんで(母国の)日本での評価が今ひとつなのか」という松本人志の嘆きもよくわかります。


ーーー【僕らは何を見ているのか?】1971年と1992年。そして…2025年が暮れてゆく。



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11月14日に予定されていた平岡アンディの世界挑戦が、卑劣なガーボンタ・デービスの愚かな犯罪行為によって消滅してしまいました。

デービスへの怒りもありますが、それ以上に人気階級のタイトルマッチですら、スポーツとしてのボクシングを愚弄するジェイク・ポールとデービスの茶番劇のアンダーカードにすぎないこと、茶番劇のキャンセルで吹っ飛んでしまうほどの軽さであることに、米国ボクシングへのやりきれない幻滅を抑えることが出来ません。





さて。

今を遡ること33年の1992年6月23日、国技館。

ユーリ・アルバチャコフが挑戦したWBCフライ級王者ムアンチャイ・キティカセムは、特別なファイターでした。

日本で「伝統のフライ級」と呼ばれるように、日本で好き勝手できる軽量級の中でも112ポンドは日本人に馴染み深いクラスでした。

馴染み深い…言い換えると、フライ級は全く特別ではないクラスなのです。

それなのに、ムアンチャイが何故、特別なのか?

簡単な話です。

強かったからです。

日本のホープやエース級の選手の視界に、ムアンチャイは決して入ることはありませんでした。

今でも、あの井上尚弥ですら、最初のタイトルはドニー・ニエテスを回避、階級最弱評価のアドリアン・エルナンデスを選んだように、期待の日本人選手が明らかに強いファイターに挑むことは稀有です。

今から33年前、そんなムアンチャイに敢然と立ち向かったのがユーリでした。

いや、その言い方は正しくありません。王者でありながらムアンチャイがユーリに挑む、そんな構図だったのです。

軽量級離れした強烈な右を打ち下ろすユーリと、好戦的なムアンチャイの激突。

スペクタクルな試合になることが約束された、ボクシングファンが涎を垂れ流す試合でした。

そして、期待通りのバトルが繰り広げられたのです。

しかし、伝統のフライで傑出したファイターが聖地・後楽園ホールで戦うというのに、あの興行のメインイベントのリングに上がったのはミッキー・ロークという俳優でした。





1995年4月1日、ネバダ州バッファロービルズ・スターアリーナ。

あの頃、リカルド・ロペスはすでにリカルド・ロペス、つまり完璧なボクシングを体現するフィニートでした。

3年前の1992年、後楽園ホール。フィニートは最強の挑戦者を迎えていました。

台湾史上初の世帯王者を目指していた、林明佳です。

「リンはノーチャンスではない」と言われていましたが、つまりはそういことでした。誰もがノーチャンスと思っていたから、この試合はそう見られていたのです。

林は負けるだろうが、意地も見せるはずだ。そんなふうに思っていましたが、結末はストロー級ではあり得ないワンパンチKOでした。

林は日本のジム所属、ジムの名前を取ってロッキー・リンのリングネームでデビューから7戦目で日本ストロー級王者、そのまま14戦全勝の勢いに乗ってロペスに挑んだのでした。

興行を仕切った本田明彦は「ここまで強かったか」とため息をつき、あの試合を最後に、日本のジムも選手も誰1人としてロペスと戦うことはありませんでした。

フィニートはムアンチャイ以上に、特別なファイターでした。

日本のボクシングファンに「最も完成されたボクサーは誰か?」と聞けば、ロペスは間違いなくトップ3に挙げられるでしょう。

しかし、米国では信じられないほど酷い扱いでした。

軽量級を蔑ろにするお国柄というだけでなく、メキシカンが溺愛する打撃戦上等のスタイルからかけ離れたフィニートは日陰を歩き続けます。

話を1995年4月1日のネバダ州バッファロービルズ・スターアリーナに戻します。

あろうことが、ロペスは女子ボクサー(クリスティー・マーティン)の前座に押しやられてしまうのでした。

もちろん、マディソン・スクエア・ガーデンをフルハウスにするケイティ・テイラーやアマンダ・セラノら女子ボクサーのトップは、井上尚弥ら外国人の軽量級選手とは比較にならない人気があります。

あり得ませんが、もし井上陣営が「ラスベガスのTモバイル・アリーナの次はニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンだ!」とまた変なことをやってしまうと、さらに悲惨な興行事故を起こしてしまうでしょう。

マーティンはトロント国際映画祭で大きな話題を呼んだ伝記映画が米国で今週末に封切りされるように、ただの女子ボクサーではありませんでした。

彼女は、ミッキー・ロークと同列に語るべきではないでしょう。

それでも…。やはり、当時のやり切れなさは痛恨でした。

ロペスを挑発しながら対戦が実現しなかったウンベルト・ゴンザレスや、大橋秀行とも対戦交渉があったマイケル・カルバハルにしても、ゴンザレスと激突して、やっと100万ドル。

ボクシングマガジンの記事で彼らの報酬の低さに何度も愕然としたものです。



くたばれ、茶番劇。まだまだ続きます。





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11月14日に予定されていた平岡アンディの世界挑戦が、卑劣なガーボンタ・デービスの愚かな犯罪行為によって消滅してしまいました。

デービスへの怒りもありますが、それ以上に人気階級のタイトルマッチが、スポーツとしてのボクシングを愚弄するジェイク・ポールとデービスの茶番劇のアンダーカードにすぎないこと、茶番劇がなくなったことで吹っ飛んでしまうほどの軽さであることに、米国ボクシングへのやりきれない幻滅を抑えることが出来ません。



ただ…ボクシングの世界は、そんな幻滅を何度も繰り返してきました…。
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「最も幻滅したボクシングの試合は…?」そう聞かれたボクシングファンは「そんなもん、ボクシングの試合で数えきれんわ!」と即答してきました…2015年5月2日までは。

フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ。

2009年から激突が熱望されながら、6年間も熟成させて腐ってしまったメガファイト。

マネーが冒険しないのはわかっていましたが、パッキャオまで安全運転。

勝者はメイウェザーとパッキャオの2人だけ。それ以外の関係者もファンも全ての人が敗者という凄惨きわまるメガファイトでした。



この2人の再戦がexhibitionではなく公式戦で、来年に実現する可能性が膨らんできたというのです。

パッキャオは今年12月に47歳、メイウェザーは来年2月で49歳になります。

それでも、スター不在のボクシング界に超がいくつもつくスーパースターが戻ってくるのです。興行規模は10年前を上回る見込みで、Netflixが早くも巨額の資金を提示しているといいます。

。。。。。。。。。。。。う〜〜ん。ボクシングは死んでますね、完全に。











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サウジアラビア総合娯楽庁のトゥルキ・アル=シャイフ長官とダナ・ホワイトが設立したプロモート会社 Zuffa Boxingが「ボクシング興行に参入する」と宣言したのが、今年6月。

その最初の興行「カネロ・アルバレスvsテレンス・クロフォード」が9月13日に開催されました。

宣伝広報活動ではUFCの3文字が踊り、違和感を覚えたファンも少なくなかったでしょう。既存勢力は「ポッと出の総合格闘技の参入はボクシングの伝統や格式を混乱させるだけ」と嫌悪感をあらわにしますが、Zuffa Boxingの主張が正論です。

「4つの認定団体がデタラメランキングをベースにチャンピオンシップ制度を騙る現状がボクシングをここまで堕落させた元凶。腐敗した認定団体と共謀したプロモーターたちも同罪」と糾弾、4Belt -Eraの深まりと共に認定団体のベルトの価値はますます下落、認定団体と既成の利益にしがみつくプロモーターを追放する」。

ボクシングは腐敗認定団体が選手報酬の3%を徴収してタイトルマッチを認定する異常な事態が常態化、米国ではマイナースポーツに追いやられただけでなく、もはやスポーツとしての扱いを受けないケースも多々見られています。

Zuffa Boxingは、最終的に軽量級を中心に利益追求だけのために水増しされた階級を廃止、タイトルも一本化する方針です。ベルトも総合娯楽庁の機関誌「The RING magazine」に統一されると見られています。

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⬆︎カネロvsクロフォードで用意された黄金をふんだんに使った特別ベルト…。結局、やってることはWBCと変わりません。主張は正論でも、人気階級のスター選手を優遇する本性は隠せません。

それでも、これまで放置されてきた8回戦以下のプロボクサーに対して、従来自己負担だった健康保険と薬物検査の費用を保障、ファイトマネーも引き上げることを約束、カリフォルニア州アスレティック・コミッション(CSAC)は緊急の採択会議を開き、全会一致でZuffa Boxingを受け入れることを決定しました。

いつまでに認定団体と既存のプロモーターを追放するのか、そのロードマップはまだ示されていませんが、最も多くの興行が開かれているCSACはこれから様々なレギュレーションの変更に着手します。

エディー・ハーンやオスカー・デラホーヤはこの動きに「ファイターが搾取される」と、すぐさま猛反対していますが、「ボクシングはスポーツとしてもう死んだ」と市場から撤退したHBOやSHOWTIME、ESPNが自らも利用していた認定団体のデタラメランキングに基づくデタラメタイトルマッチを「間違いだった」と反省したことには、一切口をつぐんでいます。

認定団体が複数あるのは異常…というか認定団体が存在して、世界的な統括団体が無い状況が狂っています。そして、階級が多すぎるというのも誰も反論できない、ボクシング堕落の大きな原因。

「彼らはボクシングの素晴らしい歴史と伝統と格式を踏み躙ろうとしている」(デラホーヤ)と叫んだところで、虚し過ぎます。

長官とホワイトが指摘するボクシングが堕落した原因は、まさに正鵠を射ています。

Zuffa Boxingが本部を置くネバダ州のコミッションがどう動くか分かりませんが、CSACの動きに同調しそうな気配です。

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さて、ボクビーでも買ってどこぞで読みましょうか…。

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昨日、フィラデルフィアで行われたWBAジュニアミドル級王者決定戦(ジャロン・エニスvsウイスマ・リマ)の試合後の記者会見で、エディー・ハーンは、ボクシングに新規参入したUFCの最高責任者ダナ・ホワイトとの提携について「全く興味がない」と吐き捨てました。

「私たちが取り組んでいるのは選手ファーストの本物のボクシング。 Muhammad Ali Act(アリ法)を変更することなんて考えていない。このイベントでもエニス陣営と興行収入についてオープンに仕事をしている」。

アリ法は、興行収入の内訳(テレビ放映権料やゲート収入の詳細)を選手が知る権利を保障するもので、プロモーターが選手を搾取する弊害を排除するために制定されました。

ホワイトが立ち上げた Zuffa BoxingはUFCスタイルをそのままスライドさせた経済モデル。

収益の大部分をプロモーターが手にしてしまうため、より人気のあるUFCのトップファイターよりも斜陽産業のボクシングのトップファイターの方が多くの報酬を受け取っています。

ホワイト側の言い分は「UFCが持続可能な発展をするために必要な内部留保」。

ハーンは「選手をないがしろにするやり方を認めない。アリ法はもちろん、リングの規格やルール変更もありえない。ボクシングがどれだけの歴史と伝統によって、今の場所に辿り着いたのかを(ポッと出の)UFCには理解できないんだろう」。


I’m not interested in a fake belt.


「(ホワイトが)新たに導入するベルトなんて偽物だ。私がボクシングファンに届けたいのはエニスのような素晴らしいファイター。彼はハグラーやハーンズ、ウイテカーらと同じ素質のあるファイターだと信じている。我々が追求するのは本物のベルトと本物のボクシング。偽物には興味はない」。


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▶︎▶︎▶︎新規参入に強烈なアレルギー反応を起こすのは既得権益を握る者たちにとって当然のこと。

UFCが持続可能な発展をするために必要な内部留保のために、ボクシングの超トップ選手と比較するとファイトマネーが大きく見劣るのは、UFCが抱える短所の一つ。

また、ボクシング同様に軽量級への興味・関心が極端に低く、報酬もさらに低くなるという現実を放置したまま。「大きな意味での発展」と表明しているのですから、軽量級の待遇を向上させる取り組みも必要でしょう。

ハーンはあえて持ち出しませんでしたが、ホワイトの「金儲けのためだけの細分化された階級を廃止、UFCと同じ8階級に、公明正大なランキングに改善しタイトルの価値を引き上げる」「金儲けだけで蠢く認定団体を排除して一つのベルトだけにしてベルトの価値を引き上げる」という言い分は正しい。

まともなボクシングファンなら、WBAやWBCのベルトやランキングが本物とは誰一人考えていません。

タイトルが一つだけになると、ファンが見たいマッチメイクの実現はより容易になります。王者(タイトル・ベルト)がいくつもある現状では、乱立する王者が対戦を避ける、先延ばしにするのは避けられません。

ホワイトがド正論、ハーンの発言は既得権益を守りたいだけの惨めなやっかみです。



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日本時間の昨日、カネロ・アルバレスをマイルド・アップセットで下したテレンス・クロフォードを祝賀するパレードがネブラスカ州オマハで行われました。

贅沢に黄金を施したリング誌特製ベルトを肩にかけ、沿道からの歓声を受けていたクロフォードですが、あの〝ちょっとした番狂せ〟が後世、どう評価されるのかはまだわかりません。

クロフォードが勝利を収めたのは、スーパーミドル級の偉大な絶対王者だったのでしょうか?

それとも、ドミトリー・ビボルに大番狂せで完敗してから自分のボクシングを見失い、3年以上もKOから遠ざかっていた、完全劣化版のカネロ・アルバレスだったのでしょうか?

日本では多くのボクシングファンが「クロフォードがやったことは井上尚弥には出来ない偉業」と、高く評価、PFPのランクダウンを受け入れています。

しかし、海外では早くも〝後世〟がクロフォードの周りを取り囲んでいます。




カネロの勝利が8/13(1.62倍)、クロフォード13/10(2.3倍)というオッズは、クロフォードが勝ったとしてももはや番狂せとはいえない数字です。


ファイトウィークから試合前までの短い時間でも、掛け率が逆転する可能性も十分ありうる差です。


当時WBCミドル級王者だったカネロが、アミール・カーンのスピードに手こずりながらも6ラウンドで痛烈に沈めたのが2016年5月7日、9年以上も前のこと。


クロフォードがカーンとは違うのと同様に、カネロもあのときのカネロではありません。


ーーー⬆︎これは、戦前に「CANELO vs BUD 〜クロフォードが明白に勝利を収めたら?{④}」で書いたものです。

試合前から「衰えた2人の対決」「より衰えが深刻なのはカネロ」という2点はメディアやファンの共通認識でした。
https://fushiananome.blog.jp/archives/39249067.html




ビボルに敗れてからの6試合の相手を振り返ると、ゲンナジー・ゴロフキン(キャリア初のスーパーミドル級で40歳バージョン)、ジョン・ライダー(技術もパワーもない英国の〝ゴリラ〟)、ジャーメル・チャーロ(2階級下から一気にスーパーミドルに挑んだ上に、劣化バージョン)、ハイメ・ムンギア(当時無敗ながらジュニアミドル級がベスト)、エドガー・ベルランガ(作られた連続KO記録の雑魚)…。

そして、クロフォード戦の4ヶ月前に行われた非力にもほどがあるウィリアム・スカルとの試合では、12ラウンドの試合でカネロは152発、スカルは293発、2人合わせてわずか445発しか交錯しなかったというCompuBox40年の歴史で不名誉な新記録を樹立したばかりでした。

カネロが楽にKOすると予想されていた6試合でしたが、全試合でジャッジの手を煩わせていたのです。

そして、カネロの場合は井上尚弥とは違い、当該階級に物足りない相手しかいない状況ではありませんでした。

ボクシングの世界で重視される「負けた相手へのリベンジ」では、ビボルとの再戦に消極的で、最も対戦が期待されたデビッド・ビナビデスに対しては「逃げた」と言われても仕方がない態度を取り続け、その挙げ句の果てが、クロフォード戦…。

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シュガー・レイ・レナードが競り落としたマービン・ハグラーも劣化が指摘されていましたが、対戦相手の質は〝ファン投票〟で選ばれたような豪華さ、そんな相手をKOで倒し続けていました。

実質5年のブランクもあるレナードが、いきなりミドル級デビュー戦でカムバック。しかも相手は、ハグラー。

当時のハグラーは、現在のカネロと同じく米国リングの支配者でしたが、その強さ、対戦相手の質は、比べてしまうとカネロが憐れになるほど差がありました。

もちろん、カネロとセットの「疑惑の判定」は、ハグラーには全く無縁でした。

当時のハグラーと、クロフォードが勝ったカネロとは、全く格が違います。


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階級をジャンプしてミッション・インポシブルを完遂するーーーこの手のメガファイトの代表例がマニー・パッキャオとオスカー・デラホーヤの「THE DREAM MACTH」です。

わずか9ヶ月前までジュニアライト級を主戦場としていたパッキャオが、ウエルター級でデラホーヤに挑戦するメガファイトには、フィリピンの国会が「事故が起きたら誰が責任を取るのか?」と、試合中止の議案を通過させるほど、常軌を逸したマッチメイクと捉えられていました。

そして、試合後は「衰えていた」と言われたデラホーヤですが、前年にフロイド・メイウェザーとクロスゲームを演じていました。

デラホーヤ自身も「減量苦で脱水症状」「アルコールとドラッグ中毒」だったことを告白しますが、それを差し引いてもパッキャオのボクシングは誰の目にも出色の出来映えでした。

一方で、クロフォードのカネロ攻略はそもそもミッション・ポシブルと考えられていました。そして、クロフォードの動きは出色よいうには程遠く、カネロの鈍重ぶりばかりが目立つ36分間でした。


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あの試合で、クロフォードは誰に勝ったのでしょうか?

一部識者の「PFP1位はクロフォードではなく、引き続きオレクサンデル・ウシク」という意見に、最も説得力を感じるのは私だけではないでしょう。







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マービン・ハグラーやテレンス・クロフォードはサウスポーで括られることもありますが、時代を代表するスイッチヒッターでした。

スタイルが違うため、どちらが優れたスイッチヒッターか?というと、多くの人がクロフォードを評価するはずです。

もっとわかりやすくいうと、1993年のUFC 1: The Beginning (無差別級)で圧倒的な強さでで優勝したホイス・グレイシーを現代にタイムスリップさせてUFCのヘビー級タイトルマッチに出場させたらどんな光景を見ることになるのか、誰にでもわかるでしょう。

サウジアラビアの主導でボクシング界の改革にまで乗り出しているUFCは、わずか30年という短い期間で技術的にも大きく発展しました。

ボクシングの場合は1950年代にシュガー・レイ・ロビンソンが現代ボクシングを〝発明〟してから、大きな技術的進歩はなく、ジョージ・フォアマンやバーナード・ホプキンスらのように20代から40代までトップ戦線で活躍する傑物も存在します。

10代、20代、30代、40代で世界王者になったマニー・パッキャオの活躍も、ボクシングが技術的にはほぼ完成していることの状況証拠でしょう。

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最近なら、マルコス・マイダナやアントニオ・マルガリートのような〝シュガー・レイ・ロビンソン〟以前の原始的なファイターが生き残っているのは、このスポーツの深さ、進化について考えさせられるところです。

総合格闘技では、原始的なファイターが生き残るのは非常に難しいはず。

それでも、少しずつでもボクシングの技術も進歩しているはずです。

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技術体系のフロントランナーが、最初のライト級(135ポンド)からスーパーミドル級(168ポンド)までの33ポンドを遊泳してみせたクロフォードだとすると、彼をGOAT(史上最高)と考えることもアリかもしれません。

ただ、この理屈では10年後にはクロフォードよりも優れたテクニシャンが登場しているかもしれませんし、50年後には間違いなくそんなボクサーたちが躍動しているでしょう。

…となると、過去は現代に勝てない、現代は未来には勝てないということになります。


さて…。

時代を超えたGOATをあれこれ妄想するなんて意味はないのでしょうか?


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After defeating Canelo, is Crawford the best fighter of his generation?

カネロ・アルバレスに勝利したテレンス・クロフォードは彼の世代のベストファイターなのか?

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現代ボクシング、4-Belt Eraで留意しなければならないのはタイトルの乱立がもたらす巨大すぎる弊害です。

1960年代末にWBAからWBCが分離独立したとき、すでに「世界王者が2人いる」という倒錯の世界が出来上がっていました。

しかし、単純にその2倍が4-Belt Era というような単純な話ではありません。

1980年代になると、やはりWBAから分離したIBFが第三勢力となりました。

それは、4-Belt Era から見ると、そこから認定団体が一つ増えただけじやないか、という単純な話でもありません。

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このブログでも度々紹介していますが、2団体時代が始まってからの約10年、両団体のランキングは相似していました。

今では驚愕の事実でしょうが、まともなスポーツではそれが当たり前です。

対立団体の王者をランキングするのは当たり前、リング誌やESPN、あるいはファンが描く真っ当なランキングとも大きく外れたものではなかったのです。

現代は、目を覆いたくなるようなデタラメランキングが横行、同じ団体が同じ階級に複数の世界王者を擁立するのも常態化、さらに各団体は数えきれない地域タイトルを続々と作っています。

団体は自身が認定する地域タイトルの王者や挑戦者を優遇して世界ランキングに組み込んでいくのは当然です。

認定料を支払ってくれているのですから。その意味では、4-Belt Eraのランキングはカネで買うことが出来ます。

その裏返しで、対立団体の地域タイトルに関係が深いファイターはランキングから遠ざけます。認定ビジネスはスポーツではなく、営利活動ですからこれも当然。

認定団体と階級の増殖は、世界王者を粗製濫造しているだけでではありません。

世界王者はみんな強い。世界ランカーに弱いやつはいない…そんな常識が完全に崩壊したのが4-Belt Era なのです。

世界王者は鋼鉄のプライドでタイトルにしがみついたものです。しかし、今では体重超過でベルトを放擲する輩も珍しくありません。

4-Belt Eraの現代に「世界タイトル挑戦なんて一生に一度チャンスがあるかどうか」なんて言う人がもしいたなら、面白い冗談をいう人だと笑われるでしょう。

After defeating Canelo, is Crawford the best fighter of his generation?

his generation…彼の時代、つまり4-Belt Eraとはそういう時代です。


現代に生まれたボクサーは his generationを超えた評価を得ることは不可能なのでしょうか…?

レナードとフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、彼らとクロフォードの実績を、あなたならどう評価するでしょうか?


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