カテゴリ: ボクシング界はいつだって魑魅魍魎

Saturday 12, October 2024
  
Kingdom Arena, Riyadh, Saudi Arabia
promoter
Bob Arum (Top Rank),
Eddie Hearn (Matchroom Boxing),
Benjamin Shalom (Boxxer),
Frank Warren (Queensberry Promotions)

matchmaker Steve Furness

 DAZN PPV, USA ESPN+


世界中のボクシングマニアが垂涎する今年一番のカードは「アルツール・ベテルビエフvsドミトリー・ビボル」のライトヘビー級 Undisputed championship です。

WBC /IBF /WBO王者ベテルビエフは20戦全勝オールノックアウト、WBA /IBO王者ビボルも23戦全勝(12KO)。

ブックメーカーのオッズはほとんど互角。ウィリアム・ヒルの掛け率はベテルビエフ勝利が1/1(2倍)、ビボルが4/5(1.8倍)。

活動的にリングに上がっていないのは両者に共通してますが、怪我が多い39歳のベテルビエフと、安定した試合内容が続く33歳のビボル。

そして、歴史的にもホコタテ対決は盾が有利というのが大方の見立てですが、それでも一発のジャブで一気に流れを呼び寄せるベテルビエフの桁外れの強打は、この決戦を味付ける最高のスパイスです。

スタイル的には左右の拳に一打必倒のパワーを持つベテルビエフと、多彩なリードで相手を封じ込めるビボル。

「強打」を数値化するのは難しく、40年以上も同じシステムのBoxRecではパワーパンチは「利き手のパンチ」というまさかの定義。ベテルビエフはBoxRecでは計り知れない強さなのです。

対するビボルは、わかりやすい数字に強さが反映されています。

ビボルは統計をとった現役ボクサーの中で最もジャブの比率が多く(65.5% =35.3発/53.9発)、そのヒット率は53%と唯一の50%超をマーク。

さらに対戦相手のヒット率では、あの打たれないことだけしか考えていないチキン・シャクール(13.7%)を上回る13%でやはりトップ。

この対戦相手のヒット率では井岡一翔が19.3%で6位、寺地拳四朗が19.5%で7位と日本から2人がトップテン入り。ロベイシ・ラミレス、ワシル・ロマチェンコら巧みなジャブの使い手が目立つランキングになっています。




さて、米国ではこの今年一番のカードがなんとESPN+で事実上の無料放送で提供されるのです。

米欧にファンベースのないロシアン・ルーツの対決ではPPVは売れないということでしょうが、マニアにとってはこんなに嬉しいことはないでしょう。

そして、普通なら真逆にアンダーカードがPPVで課金されるというのですから、お笑い種です。

しかもPPVの〝メイン〟はWBCライト級王者シャクール・スティーブンソンがジョー・コルディナを迎える防衛戦。

These aren’t fighters that fans would want to pay to see. 

14.99ドルと価格は抑えたものの、カネを払ってシャクールの試合が見たい…そんな素っ頓狂な人が世界に何人いるでしょうか?

Shakur  doesn’t belong on PPV, even on an undercard. 

シャクールはたとえ前座に組み込まれてもPPVで売るべき素材ではありません。



PPVを支払った人が「騙された」と訴訟を起こせば、試合のビデオを見た裁判官は「これはひどい」とDAZNに慰謝料も含めた割り増しの払い戻しを命じるでしょう。



If Shakur could become a star, Top Rank would have never let him leave in a million years. 

シャクールがスターになれる可能性を秘めていたなら、トップランクは絶対に手放さなかったはず。

エディ・ハーンが長期契約しなかったのも、どこかのタイミングでスター性のあるメキシカンの格好の餌にしたいと考えているからでしょうが、あれは餌にもなりません。

悲惨な数字が発表されそうです。

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92歳のユダヤ人が大層お元気なことには敬意を払うしかありません。

んが、しかし。

ボクシング界でこれほど嘘を嘘で塗り固めてきた御仁も滅多にいません。

大橋プロモーションズ、帝拳プロモーションズと並ぶ井上尚弥のco-promoter(共同プロモーター)ですが、マッチメイクをはじめ直接的な影響力はほとんどなく、ESPNへの橋渡しくらいがせいぜいのお役目。

わかりやすく言うと、ジミー・レノンJr.と同じ「日本人はアメリカっぽいのが大好きなんやろ」という時代錯誤のネオンサイン。

Inoue's co-promoter, Top Rank's Bob Arum, said "The Monster" would return to Tokyo for the third defense of his undisputed championship at the end of the year. After that, Inoue will headline in Las Vegas "for a big celebration," per Arum.

The last seven fights for the 31-year-old Inoue have taken place in Japan, where he's a major star. His last stateside fight was in June 2021.

そんなお爺さんが語るのです。

「モンスターは3度目の防衛戦を年末の東京で行う。そして来年はラスベガスで〝盛大な祝勝会〟を行う」らしいです。

「盛大な祝勝会」を真に受けるボクシングファンはいません(いたりして?)。

ここ7戦は全て日本のリングに上がり続けている井上が最後に米国で戦ったのは2021年6月19日のマイケル・ダスマリナスとのIBFバンタム級防衛戦

 " a big celebration" (盛大な祝勝会)に舞台をラスベガスのT -モバイル・アリーナやMGMグランド・ガーデンアリーナで開催したいようですが、ふさわしい相手は見当たりませんし、米国では井上は全く無名。

アラムさんも「大谷翔平のようにツアーが組まれて日本人が詰めかけてくれたら」と、やはり日本人頼み。

井上は、米国の野球ファンも取り込んでいる大谷翔平とはステージが全く違うのです。

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幻に終わった2020年4月25日のジョンリール・カシメロ戦はラスベガスのマンダレイ・ベイのアリーナ(ノニト・ドネアvsフェルナンド・モンティエルと同じ会場)が用意されました。

そして、このときもアラムさんは「日本から金持ちが大挙して押し寄せる」と、いつもの風呂敷を広げていましたが…
あまりの人気のなさにドネアのときと同じく上階席を封鎖することになり、売れないチケットはリングサイドでも元々150ドルがさらに暴落、悲惨な興行になるところでした。

マンダレイ・ベイのミケロブ・ウルトラ・アリーナやMGMグランド・ガーデンアリーナは大きすぎるので、現実的には5000人キャパのマディソン・スクエア・ガーデンのHuluシアターがお手頃な感じもしますが…。

完全マイナースポーツのボクシング、その中でもマイナーな軽量級でアジア人となると、やはり米国進出はしないのがベターか?

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団体と階級だけでなく、同一団体内でタイトルまで増殖してしまっているプロボクシングの世界は、もはやスポーツの体をなしていません。

主要とされるだけで4つの団体が対立し、それぞれが都合の良いランキングを作成。彼らが17階級で何人のWorld chanpion を承認しているのか、もはや専門家やマニアですら把握しきれていない惨状です。

MMAも多くの団体がチャンピオンシップ体制を敷いていますが、誰もが頂点と認めるUFCは8階級だけという、ボクシングがとうの昔に忘れ去ったスポーツらしいわかりやすさがあります。そのランキングは、ボクシングのデタラメランキングとは一線を画しています。

2010年代半ばから絶対的エースとして米国市場を支えてきたカネロ・アルバレスでしたが、2019年11月2日の4階級制覇をかけたWBOライトヘビー級王者セルゲイ・コバレフとのメガファイトで、UFCのメインカードが終わるまで開始ゴングが伸ばされました。

あの夜に鳴らされたゴングは、ボクシングが倒された鎮魂の鐘でした。




ボクシングの拠り所は、カネロや一部のファイターは人気で劣っても報酬でMMAのスターを上回るという「カネ」と、ラスベガスの家主MGMグループがT -MobileアリーナやMGMグランドガーデン・アリーナで優先的にボクシングを招致してきた「場所」でした。

しかし、スポーツとしてすでにボクシングを踏み潰したUFCはサウジアラビアと団体として提携、カネの面での地盤を固めています。

さらに「MGMグループには散々嫌がらせを受けてきたが、彼らはもはやラスベガスの最高勢力ではない」(ダナ・ホワイト)と、ボクシングに先んじてニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン グループが建設した The Sphereで9月14日にイベントをぶち上げるのです。

9月14日、どちらが米国でより注目されるか、世界からより関心を集められるか…戦う前から勝負はついています。

ボクシングの惨敗しかあり得ません。

https://fushiananome.blog.jp/archives/36374938.html



“I heard somebody say they’re going to ‘eat me’ or something like that.”

「また誰かが俺のことを食おうとしてるらしいじゃないか」。カネロはうんざりした口調で吐き出します。

「競争は悪いことじゃないが、UFCやサウジアラビアには勝手に俺の名前を使うなと言いたい。そっちは意識しているかもしれないが、俺はお前らに何の関心もない」。

ラスベガス・ボクシングの顔であるカネロの試合が〝UFCの標的〟にされるのは、それだけの存在であるということです。

そして、カネロだけが標的にされるのも、米国ボクシング界でそれにふさわしいのが今やカネロだけ、だから。

テレンス・クロフォードは論外、ライアン・ガルシアやガーボンタ・デービスでも眼中にないということでしょう。

ちなみに、カネロの9月14日の試合(vsエドガー・ベルランガ)はチケットの販売状況から最上階席を封鎖して行われることが発表されています。



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Tuesday 3, September 2024
  
Ariake Arena, Koto-Ku, Tokyo, Japan
commissionJapan Boxing Commission
promoterHideyuki Ohashi (Ohashi Promotions)





いつの間にやらあと1週間に迫っていた「NTTドコモ Presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ 井上尚弥 vs TJドヘニー & 武居由樹vs 比嘉大吾」。

メインの井上vsドヘニーは、勝敗という点では全く興味がそそられないマッチメイクですが、リングの上では何が起こるかわかりません。

ドヘニーについて不気味なのは常識はずれのリバウンド。

ジャフェスリー・ラミド戦(2023年10月31日に後楽園ホール)で、前日計量の55.2kgから試合当日は67.8kgまで体重をリバウンドし、12.6kgもリバウンド。ジュニアフェザー級からジュニアミドル級へとバルクアップしていました。

リバウンド率22.8%は、パフォーマンスに悪影響を与える境界線15%を大きく上回る数字です。

1週間後の有明アリーナでも同じようなリバウンドを見せるのか?

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という話はまた別に取っておいて、このイベントは全国47都道府県の映画館でライブビューイングで上映されます。

https://lemino.docomo.ne.jp/ft/0000002/

米国では1960年代には定着していたクローズドサーキットです!

現在はより課金力の高いPPVが広がっていますが、絶滅したわけではありません。メガファイトはラスベガスなど需要のあるエリアで上映され続けています。

日本ではもちろん、史上初の試み。

観に行きたいのですが、平日の18時開演。仕事を調整しなければなりません。


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長嶋茂雄と大谷翔平。

国民的英雄指数はどちらが上なのか?

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「新聞の1面登場回数、号外発行回数、夜の総合ニュースの扱いとなると、長嶋は大谷の比較対象ではありません。なにしろ、長嶋はそれぞれ2回しかないのですから。

夜のNHKニュースが冒頭で長嶋茂雄を伝えたことは展覧試合と引退試合だけ。つまり、現役時代の全盛期は一般紙の1面やニュース番組で取り上げられることはまずなかったのです。

大谷は引退などまだまだ先の話ですが、その日は日本中が悲しむことになるのは間違いありません。長嶋を上回る報道になるのも、何の疑いようがありません」。

国民的英雄度は、大谷の方が明らかに上です。



…ウソは一つもありませんが、この文章は読者を明らかに誤解を招くという意味で、大きな間違いです。

まず、国民的英雄指数をメディアの扱いに限定していることが、真実を歪めてしまっています。

1980年代までスポーツが一般紙の一面を飾ったり、号外が発行されたり、テレビのニュース番組の冒頭で取り上げられることはまずあり得ませんでした。

スポーツのステイタスや選手報酬は、今ほど高くはなかったのです。

このロジックでは、長嶋は井上に勝ちようがありません。

国民的英雄指数というなら、日本国民全員に「最も熱狂しているスポーツ選手は?熱狂度は?」と聞くべきです。

そうなると、現代では大谷翔平以外の名前を出す人も多く出てくるでしょう。

聞き取り調査の地域や時期によっては、大谷はNo.1ですらないかもしれません。

しかし、1960年代ならどう考えても、どこで聞いても長嶋茂雄の人気は1位でない時期や地域が特殊なレベルでしょう。


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さて、ではマイナースポーツ、ボクシングの中でもマイナー階級で活躍する井上尚弥を詭弁を弄して嘘をつかずに、ミスリードすることが出来るでしょうか?


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ボクシングにおけるFighter Of The Year はジャック・デンプシーやジョー・ルイス、モハメド・アリが受賞してきたアワードで、彼らは全米、いや世界を代表する唯一無二のNo.1アスリートだった。

大谷翔平と比較されるベーブ・ルースと、同じ1920年代に生きたデンプシー。当時、どちらがより大きな存在で、圧倒的巨額の報酬を得て、世界的なインパクトを与えたか?

やめよう、こんなことを議論したってベーブ・ルースが惨めになるだけだ。

ルイスがナチスドイツとの代理戦争でマックス・シュメリンクをノックアウトした試合の重要度は他のスポーツとは比較してはならない。


アリに至っては、もう論外。マイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズらとは全く違う、異空間の住人だ。

井上尚弥は、ボクシングはおろかスポーツの枠組みさえも超えた彼らと肩を並べたということを、まず最初に理解しなければならない。

アジア人という不利な条件まで考慮すると、肩を並べたのではなく、彼らを凌駕したと考えても差し支えないだろう。

ところが、肝心の日本では大谷翔平の評価と人気だけが暴走している。世界的に見てより大きな偉業を成し遂げているのは井上尚弥だというのに。

大谷が比較されるのは、ベーブ・ルースが精一杯。デンプシーやルイス、アリを超えた井上の方が遥かに高いステージに到達していることは、どう考えても明らかだというのに。

最も権威があるスポーツ専門誌であるThe Ring magazineにPFPという、ボクサーの純粋な実力評価を表す指標があるが、この権威の塊のようなランキングで、井上は1位になった。

過去の1位を振り返るとロベルト・デュラン、トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラー、シュガー・レイ・レナード、マイク・タイソン、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオと錚々たる名前が居並ぶ。

この動かし難い事実から火を見るよりも明らかなことは、井上が世界中のスポーツファンから彼らと同じ実力だと認められ、尊敬を集めているということ。

このファイターの名前を聞けばわかるだろうが、井上がもうすぐ日本では見ることができなくなる、世界的なスーパースターになったと理解できるはずだ。彼らと同じように、ラスベガスの大会場でPPVのメガファイトを展開して、ファイトマネー20億円以上を稼ぎ出すのも疑いようがない。

そう、環太平洋のほんの一部の国でしか馴染みのない野球選手の大谷翔平よりも、世界的な名声は井上の方が上なのだ。

それなのに、なぜか日本のメディアは情報操作して井上の偉業がどれほど世界で報道されているのかを伝えていない。

「(世界では大騒ぎされているのに)日本での評価や人気が今ひとつなんが、どうも僕は残念でね」と、松本人志が忸怩たる思いを吐露するのも当然だ。

MLBなど米国1カ国を管轄しているだけの組織に過ぎないが、ボクシングのWBAやWBC、IBF、WBOは100カ国以上の国や地域と連携、独自のランキングを制定、チャンピオンを認定しているのだ。

あまりにも権威がありすぎて、権力分立の観点からも、WBAらは統括団体ではなく、認定団体にとどまっているのが現実。

これこそが、世界的に野球よりも人気があり、権威も認められている動かぬ証拠だ。

MLBやFIFAのように一つの組織ではカバーしきれないほど、世界的な人気を博しているゆえに、主要とされるだけで4団体も必要で、この先もっと増えそうな勢いなのだ。

また、階級制を敷かない野球やサッカーはまだまだ原始的な段階のレベルの低いスポーツと言える。

ボクシングも19世紀半ばまで、無差別級しかなかったが、あまりの人気に競技レベルの成熟と高度化から階級が分かれた。

まだライト級もミドル級も設定していないMLBごときは、ボクシングと比べると未熟にも程がある。


現在、ブリッジャー級も含めて18階級が存在するのは、わずか3ポンドの差でも大きな不公平が生じるほど競技レベルが高くなっているからに他ならない。

偉大な組織である認定団体の幹部たちは「もっと階級を増やさないと不公平が生じる」と危惧してくれているほどだ。


野球やサッカーもこれから頑張って発展して、ジュニアフライ級とジュニアバンタム級、バンタム級、ジュニアフェザー級でホームラン王4階級制覇、バロンドールで8階級制覇とかするようなスーパースターが出現すると良いのだが…。

未熟な彼らがそこまで辿り着くのは、いつのことになりますやら…応援はしてるが、現状では次の世紀まで待たなければならないだろう…ご苦労なことだ。


そして、日本では大騒ぎのオリンピックも、IOCだけが代表する小さな大会だ。

あの大袈裟な運動会もボクシングのようにIOAやIOF、IOO、WOA、WOC…など多くの認定団体が独自のメダルと出場資格を設定、統括は開催地に任せるしかないほど人気が出たら良いのだが…。それも来世紀に持ち越しか。




…ここでも嘘は一つもありません。

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井上がマイケル・ダスマリナスを相手にWBA /IBFバンタム級の防衛戦を行ったのはラスベガスのバージンホテル。恋焦がれたMGMグランドのガーデンアリーナではなく、ましてやTモバイル・アリーナのような大会場でもなく、テレビもESPNとLatin America: Canal Spaceが放映するにとどまりました。

しかし、大橋秀行会長はまたしても幻覚を見たのか、幻聴を聞いたのか「今年、ESPNで中継されたボクシング中継で2位」と妄言を撒き散らして、日本のメディアもそれを報じてしまうのでした。


「このまま防衛戦を重ねていけばファイトマネーは天文学的数字になる」などと同じ、これは真っ赤な嘘でした。

信者たちが熱心に唱えていた「ラスベガスでPPVで20億円」「天文学的数字」「ESPNで2位」…みんなどこへ行ってしまったのでしょうか?

そして、あの信者たちは今どこで何を思っているのでしょうか?


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イスライル・マドリモフをプロモートするエディ・ハーンが、テレンス・クロフォードを絶賛しています。

日本時間の明日、8月4日にマドリモフが保持するWBAジュニアミドル級タイトルに挑戦するクロフォードはライト級、ジュニアウエルター級、ウエルター級に続いてジュニアミドル級と、人気階級を貫く4階級制覇を目論んでいます。



先ほど終わった前日計量は王者マドリモフがリミットいっぱいの154ポンド、挑戦者クロフォードは153.4ポンド。


ライト級からジュニアミドル級までの人気クラス4階級制覇を成功したのはオスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオの3人だけ。


クロフォードがマドリモフを攻略すると「史上4人目」とはいえ…ジュニア階級のない時代にフェザー級、ライト級、ウエルター級でUndisputed championになったヘンリー・アームストロングは、この先達の3人をはるかに上回る評価を得ています。

また、史上最強と謳われたライト級からジュニアウエルター級をスキップしてウエルター級、ジュニアミドル級、ミドル級を掌握したロベルト・デュランも、この3人より上かもしれません。

そして「誰に勝ったのか?」と聞かれて「エロール・スペンス」と答えると後が全く続かないクロフォードでは、この3人に表面上は並んでもオールタイム・グレートの俎上にあげる人盲目的なクロフォードのファン(そんな人がいるとしたら)以外は皆無でしょう。

それでも、クロフォードはゴールデンボーイもマネーもパックマンも一度も達成できなかった(興味を示さなかった)Undisputed championにジュニアウエルター級とウエルター級の2階級で就いているのです。

「クロフォードの評価は歴代最高クラスなのに強い相手ととのマッチメイクができな勝ったために低迷している。人気に至っては可哀想になるくらい」(ハーン)よいう見方は間違っていません。

シュガー・レイ・レナードの時代とは次元が違います。そして、メイウェザーとパッキャオのつい最近の時代と比べても、HBOとSHOWTIMEが撤退した現在のボクシングシーンはより一層のマニア化が進み、スターが生まれにくい土壌が出来上がっています。

そんな、ボクシング低迷の谷底の時代に生まれたのがクロフォード。

クロフォードは技術的に優れているだけでなく、ウエルター級でもKO能力を向上させているように、退屈な試合が多いわけではありません。

しかし、クロフォードの人気が笑うほどない原因は、レナードやメイウェザー、パッキャオが放っていたオーラを全く感じることが出来ないからです。

とにかく、絶望的に華がないのです。

もちろん、華というのは持って生まれた天賦という側面もありますが、強豪とのスペクタクルな試合を勝ち抜いて身にまとう後進的な資質でもありますから、クロフォードの華の無さと〝スペンスだけ〟の貧弱なキャリアは合わせ鏡です。

さらに、度重なる頭の悪さが滲み出る言動も、稀代のスイッチヒッターの評価や人気に大きなマイナス作用をもたらしています。

Terence Crawford is not being promoted in the right way .

ハーンの「クロフォードが人気のない原因はプロモートの問題」という言葉も、全くのデタラメではありません。

まず、米欧で重視されるアマチュア実績が弱すぎました。五輪や世界選手権の出場を目指しましたが叶わず。米国内ではベスト8レベルでしたが、プロ転向のクロフォードを歓迎してくれる大手プロモーターは存在しませんでした。

2008年、北京五輪の年の3月にクロフォードはひっそりとデビュー。故郷のネブラスカ州オマハに住居を構えながら、小さなイベントの前座に出場し続けました。

プロデビューから13連勝した2011年にようやくトップランクから声がかかりますが、もちろん大きな期待をかけられたわけではありません。

やっとのことで地域タイトル、空位のNABOライト級への出場機会が許されたのはデビューから5年、21試合目のことでした。

トップランクとの契約が決して満足できるものでなかったことは、何度も裁判沙汰になっていることからも明らかです、

それでも、スペンス以外は取るに足らない相手ばかりとはいえ、層が厚い、つまりレベルが高いゾーンで3階級制覇を果たしたのです。

36歳のクロフォードに残された時間は十分ではありません。

しかし、ようやく風向きが変わろうとしています。

サウジアラビアが招聘を狙う最後にして最大の大物、カネロ・アルバレスの対戦相手としてクロフォードほどの適役はいません。

「クロフォードのPPVよりカネロの観客の方が多い」というピエロっぷりを笑われたクロフォードにとっては、自分に欠落している人気と華を持つカネロとの試合は願ってもないメガファイトです。

明日、マドリモフを誰もが納得する形で倒せば、カネロ戦は現実になりそうです。


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米国ボクシングの大きなイベントは5月のシンコ・デ・マヨ(1862年5月5日にメキシコ軍がフランス軍を撃退したことを記念した祝日週間)と、9月の独立戦争開戦(1810年9月16日のスペインに対する独立戦争の開戦を記念する祝日週間)の二つに行われます。

その舞台はメキシコ人が多く住む西海岸、ラスベガスです。

21世紀になって米国ボクシングシーンはビバ・メヒコの色彩がますます濃厚になり、メキシカンではないフロイド・メイウェザーもマネー(銭ゲバ)となってからはこの期間を意識して試合を行なっていました。

20世紀はヒルトン、シーザースパレスなどのカジノ&リゾーツがボクシングのメガイベントを積極的に招致してきましたが、21世紀はMGMリゾーツが展開するMGMグランドガーデン・アリーナと、キャパの大きいT モバイル・アリーナがラスベガスの中心となっています。

そして、昨年9月にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン・カンパニーがなり物入りでオープンしたのがThe Sphere




Tモバ(2万人)よりも小さく、MGMグランド(1万6000人)よりもお大きなキャパ1万7000人というサイズにインパクトはありません。

斬新な球形の内外両側の壁面を完全に覆う、最新の高精細LEDパネル。15万7000のウルトラ・ダイレクショナル・スピーカー(超指向性スピーカー)とビーム・フォーミング技術は、個々の席ごとに計算された最高の音質と音量を届けます。
インフラサウンド・ハプティック(触覚・超低周波音)と称される、音を深みのある振動として体感できるシステムも配備。

Tモバの建設費用が3億7500万ドルであったのに対して、The Sphereはなんと21億7500万ドル。破格の資金を投じて、現代科学の水を結集させたエンタテインメント空間を作り上げたのです。

The Sphereが他のカジノ&リゾーツのように莫大なサイトフィーを支払ってメガファイトを呼び込むのか?には否定的な意見が多く、竣工から1年が経とうとしているというのにボクシングの試合はまだ1試合も行われていません。

サイトフィーどころか、高額の使用料がネックになっていると見られています。

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前置きが長くなりました。

このThe Sphereに、ボクシング興行で「いつ」「だれ(プロモーター・選手)」が乗り込むのかが注目されていますが、今年9月14日の独立記念ウイークの皮切りでボクシングに先駆けてイベントをぶち上げたのはUFC。

ボクシングのアルファベット団体よりもはるかにスポーツライクで、比較にならない資金を持つUFCでもThe Sphereの高額な使用料を支払うと選手報酬を抑えざるを得なく、それでも興行的に厳しいと見られていました。

サウジの出番です。泣きついてきたダナ・ホワイトにサウジ娯楽庁長官トルキ・アル=シャイフは「よっしゃ、よっしゃ」と資金提供を快諾。

ホワイトは「 The guys at MGM have done nothing but f---ing disrespect me and the UFC for 20 years.(MGMとアル・ヘイモンはこの20年間も俺を侮辱し続けてきた。ざまあみろヘイモン、ざまあみろボクシング)」と、人のカネでThe Sphereへコンバットスポーツ一番乗りしたくせに、いきがりまくっています。

そして、同じ日には、スーパーミドル級の3団体統一王者カネロ・アルバレスがTモバでエドガー・ベルランガと防衛戦を行います。

2019年11月2日のセルゲイ・コバレフ戦では、同日開催のUFCの試合終了を待って開始ゴングを大幅に遅らせるなど、カネロ人気ですらUFCには太刀打ちできない現状を目の当たりにしたボクシングファンにとって、UFCに先を越されてしまったことは、もう悔しくもなんともないかもしれません。

今回は、UFCは軽量級と女子のタイトルマッチ。人気階級では選手報酬をめぐって難しいという事情があったのかもしれません。

それでも、UFCの試合結果を待ってTモバのカネロはロッカールームで待機する憂き目にあいそうです。可哀想なカネロ。



本題からはずれますが、いつか必ず現れる日本人初のUFC王者はどんな熱狂を持って迎えられるのでしょうか?




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διασπορά  Diaspora,  diaspora  גלות

撒き散らされた種子。

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人類史上、最も歴史のあるプロスポーツであるにもかかわらず、ボクシングは奇妙な因縁に絡まれる宿命を背負い続けています。

このスポーツには世界タイトルマッチを統括し、チャンピオンを認定する組織が存在しません。

統括するのはタイトルマッチが行われる地域のローカル・コミッション、認定するのは〝主要〟と呼ばれるだけで4つも乱立する認定団体です。

肝心カナメがばらばらであるだけでなく、認定団体に至ってはいくつも存在して、好き勝手なランキングを作り、階級と王者を濫造しているのです。

つまり、このスポーツ(スポーツと呼べるなら)にはガバナンスを効かせる統括団体が喪失しているのです。

そして、様々な地域でローカル・コミッションが統括するのですから、常設のリングも存在しません。

また、それゆえに常打ち小屋を持たないのも当然の帰結です。

そうです、ボクシングは〝国〟を持たないスポーツなのです。

後楽園ホールは〝常打ち小屋〟と呼べるかもしれない世界でも稀有なリングですが、他の格闘技や演芸も行われており〝後楽園ボクシングホール〟ではありません。

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メインバウトの副社長は、人類史上で最古の歴史を持つのに流浪を強いられ続けているボクシングの姿に、自らのルーツを重ねて見たのかもしれません。

いや、それはあまりにも物語を嗜好するものの見方です。

そんな正直で、わかりやすい思考回路など持っているわけのないのがボブ・アラムです。

彼を語るときの注意点を列記していると1日では足りませんが、濾過して凝縮すると「性善説は通用しない」ということに尽きます。

さて。

21世紀に実在する妖怪、ボブ・アラムのお話です。




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1966年3月29日、カナダ・オンタリオ州トロントのメイプルリーフ・ガーデンズでメガファイトが行われました。

当時、世界で最も有名だった人物の1人、世界ヘビー級王者モハメド・アリが地元カナダの英雄ジョージ・シュバロを迎えた3度目の防衛戦。

世界ヘビー級タイトルマッチが、サッカーのW杯はもちろん、オリンピック並みの大きな注目を集めていた、今では信じられない時代のことです。



この巨大イベントを手掛けたのはMain Bout(メインバウト社)。アリが立ち上げたプロモーションで、これが最初の大仕事でした。

メインバウトはネーション・オブ・イスラムの信者である実業化のジャビール・ハーバート・ムハンマドが出資、ネーション・オブ・イスラム指導者イライジャ・ムハンマドの首席補佐官であるジョン・アリらが株主に名前を連ねていました。

イスラム色が濃厚な新興プロモーションのメインバウトでしたが、副社長に抜擢されたのは異色の人材でした。

あまりにも異色。

その大きな理由は二つありました。

つまり、その男はボクシング産業には全くど素人だったのです。

そして、それ以上に異色だったのは、彼がユダヤ人だったということでした。

1966年3月29日は、メインバウトという奇妙な船が、ボクシングという奇妙な海に出航した記念日です。

もしかしたら「メインバウト」というプロモーションの名前を知らないボクシングファンがいるかもしれません。

しかし、メインバウトは今でも存在しています。

メインバウトが前身となった「トップランク」というプロモーションの名前を聞けば、知らないボクシングファンは誰一人いないでしょう。


21世紀に実在する、ボブ・アラムという名の妖怪のお話です。


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日本で最も有名な海外プロモーター、トップランクのお話です。

ハーバード大学法学部を優秀な成績で卒業したユダヤの青年は、優良企業の顧問弁護士として米国法曹界で活躍していました。

しかし、ボクシングには全く興味がなく、ユダヤのグレート、ベニー・レナードもバーニー・ロスも知らなかったとされています。

絵に描いたようなエリート弁護士が40歳を前に、どうしていきなりボクシングビジネスを選んだのか…?



21世紀に実在する妖怪、ボブ・アラムのお話です。



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