フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 世界のボクシング:階級/キャッチウエイト

ミドル級タイトルマッチにもかかわらず、ジュニアミドルより1ポンド重いだけのキャッチウェイトを使うようなカネロ・アルバレスです。

クルーザーやブリッジャーでも倒錯のキャッチを弄ぶのは間違いありません。

ジュニアミドル級154ポンドカネロ級155ポンド<<<<ミドル級160ポンド

問題はヘビー級です。

無差別級のヘビー級でキャッチウェイトとなると、いくら低脳なカネロファンでも気づくのではないでしょうか?

「ヘビー級でキャッチウェイトはおかしい」と。

ああ、でも気づかないでしょうね。今までわからなかったんだから。バカは死ぬまで治りません。

ただ、現在のヘビー級はタイソン・フューリーとアンソニー・ジョシュアという、カネロでもAサイドに立てるかどうか微妙な大巨人が王座を分け合っています。

しかし、フューリーのキャッチウェイトって、何ポンドになるのでしょうか?

「クルーザー級(200ポンド)で逆2階級制覇」をほのめかしたこともあるデオンティ・ワイルダーなら195ポンドキャッチとか受け入れそうですが、あれはカネロが徹底的に逃げ回ってきたパンチャーの究極型です。

そう考えると、ジョン・ルイスのような180㎝台の遅鈍な穴王者がタイトルを獲ったら、ロイ・ジョーンズのようにすかさず空き巣に入る。もちろん、キャッチウェイトの保険もかける。これしかありません。

なかなか、そんなやつ見つからないので、決定戦ですかね…。ロイと同じように圧倒的有利のオッズと予想、その通りにヘビー級獲得。めでたしめでたし。
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それでは、現時点でのカネロと複数階級制覇のグレートの比較です。


◀︎第1弾▶︎マニー・パッキャオvsカネロ・アルバレス▶︎

今までに何度か話題に上がったカードです。

UAEドバイや、メキシコの世界的な大富豪が招致に名乗りを挙げるなど、具体的な日程・会場がメディアに踊ったこともありました。 

今年になってからも、42歳のフィリピン人が「カネロとの対戦はない」と断言するなど、今や現実性はありません。

パッキャオがステイクしたタイトルの最重量はジュニアミドル級の154ポンド。カネロが主戦場宣言したスーパーミドル級の168ボンドとの乖離は大きすぎます。

しかも、パッキャオが戦った唯一のジュニアミドル級は、アントニオ・マルガリートにキャッチウェイト151ポンドを強いた試合。

さらに、現実の計量でフィリピン人が目盛りを刻んだのはわずか144ポンド、ウェルター級リミットを3ボンドも下回っていたのです。

そもそも、今のパッキャオとカネロではメキシコ人がAサイド。カネロが最大の譲歩をしても160ポンド前後のキャッチウェイト。

現実のリングで向かい合う可能性は、あらゆる意味でないでしょう。

では、そのレガシーを比較した〝仮装対決〟はどっちに軍配が上がるでしょうか?

「誰に勝ったのか?」。対戦相手の質という最も重要な物差しで見ると…。

◎全盛期 △未熟・または劣化期 ★キャッチウェイト


…まずは42歳から。
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【殿堂クラス】


◎マルコ・アントニオ・バレラ(一発殿堂・初戦対戦時リング誌王者・PFP3位)

◎エリック・モラレス(一発殿堂・第2戦対戦時PFP4位)

◎ファン・マヌエル・マルケス(一発殿堂・第3戦対戦時リング誌王者・PFP6位)

△オスカー・デラホーヤ(一発殿堂・引退試合・元PFPキング)

◎リッキー・ハットン(一発ならず、殿堂入り待ち・Fighter of the Year2005年・対戦時リング誌王者・PFP8位)

◎ミゲール・コット(一発ならず、殿堂入り待ち・対戦時PFP7位)★

△シェーン・モズリー(一発殿堂・元PFPキング)



【PFPファイター】

◎チャチャイ・ダッチボーイジム(対戦時PFP9位)

◎ティモシー・ブラッドリー(第1戦対戦時PFP8位・第3戦対戦時PFP4位)



パックマンの対戦相手の質はちょっと、異質というか異常です。モハメド・アリやシュガー・レイ・レナードでもここまで異常じゃありません。




…次に、30歳の赤毛。

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【殿堂クラス】

△ミゲール・コット(一発ならず、殿堂入り待ち)★

△シェーン・モズリー(一発殿堂・元PFPキング)

◎ゲンナディ・ゴロフキン(現役・初戦対戦時PFP1位・第2戦対戦時PFP1位)



【PFPファイター】

◉カラム・スミス(対戦時PFP10位※)
※実際には10位に入っていませんが。WBSS優勝で10位にランクイン、無敗をキープしてたのに入れ替え激しくランクアウト。無敗を考慮して特例10位。

やはりTripleG に1勝1分(多くのファンの目には1勝1敗)というのが光ります。逆に言うと「ゴロフキン!なんで叩きのめせないんだ!」という憤りです。

そして、カネロの質の高い4試合はいずれも判定勝ちにとどまっていることも、本質的な何かをしっかり伝えてくれています。

質の高い相手では印象的なKOどころか、KOすら出来ていないのです。それが当たり前なのですが。

比べた相手が悪すぎたとはいえ、殿堂クラス2人、PFP2人(実質ゴロフキン1人)に勝っているのは十分なレガシーです。




パッキャオと比較したのがそもそもの間違いでした。完全なミスマッチ。
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英国ボクシングニューズ(BN)誌、デジタルは引き続き定期購読していますが、プリントバージョンは先月でやめました。

しかし、さすが週刊誌。早いです。プリントバージョン、欲しくなります。
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あのメタリックブルーのグローブの中に本物のメタルが仕込まれてる…何て事はないでしょうね?厚底シューズじゃあるまいし…。

ビリー・ジョー・サンダースは英国でも問題児ですが、BN誌からは「サウスポー」「ファイターをいなすテクニシャン」「勝てば英国史上最大の番狂わせ」と、その期待がひしひしと感じられました。

たしかに、サンダースは健闘のカケラを見せてくれました。カネロも、やりにくさは感じたでしょう。

それでも「サンダース」の延長上に「打倒カネロ」のゴールがあるか?と問われると、言葉に詰まってしまいます。

「あと7年で引退」と公言している30歳のメキシカン。「スーパーミドルがベスト」というのは、その通りでしょう。

ジュニアミドル(154ポンド)からライトヘビー(175ポンド)まで21ポンドに渡る4階級で王座に就いたカネロはあと7年間、スーパーミドルで防衛のテープをひたすら伸ばすつもりでしょうか?

そう考えているファンも、メディアもいません。そして、おそらくチーム・カネロも。
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ネロはヘビーまであげそうですね。

2021-05-10 19:41:45 返信編集 GGG 126.255.211.131
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劣化と私生活の乱れ、借金で弱り切ったセルゲイ・コバレフにリバウンド制限で弱らせた卑劣なメキシカンが、同じやり方でクルーザーとヘビーも視野に入れていたとしても何の不思議はありません。

「ジュニアミドル級王者」だったカネロがヘビー級を射止めれば、ボブ・フィッツモンズとロイ・ジョーンズJr.の「ミドル級」を更新することになります。

複数階級制覇の怪物、マニー・パッキャオのフライ級(112ポンド)〜ジュニアミドル(154ポンド)は42ポンドの旅路でしたが、カネロはそれを上回る46ポンド(ヘビー級をクルーザー超の200overと見るなら)、あるいは58ポンド(ブリッジャー超のヘビー級を224overと見るなら)ものロングショットを撃ち抜くことになります。


複数階級制覇に純真な野望を燃やしたアレクシス・アルゲリョから、暗黒面に堕ちたリングのダースベイダー、シュガー・レイ・レナードに、4−BELT Eraの申し子パッキャオ、そして異形のヒットマン・トーマス・ハーンズ、才能だけで〝リアル・ヘビー〟を実現したジェームス・トニー…。

カネロがクルーザーとヘビーを獲る青写真と、80年代以降の複数階級制覇王者との比較、一部メディアが先走っている「カネロはメキシコのAll TIME−PFP1位」は妥当なのか?まで、独断と偏見で斬り刻んでいきます。
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ボクサーの健康・安全対策のために導入されたはずの前日計量ですが、不公平なリバウンドにより、ボクサーの健康・安全を脅かす新たな問題を浮き彫りにしています。
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日本では井上尚弥と井岡一翔のトップ2が〝リバウンドの達人〟として有名です。

世界でも、今日、ロンドンでIBFフライ級のピースを手放したモルティ・ムザラネのIBFルールにアジャストした体重管理は絶妙でした。

IBFルール範囲内の最高体重コントロールは「前日計量(公式)112ポンド=50.8㎏(リミットいっぱい)→当日朝計量(公式)121.9ポンド=55.3㎏(リバウンド制限10ポンドギリギリ)」です。

ムザラネはこの数字にぴったり合わせてきます。そして、当日試合前2−3時間前(参考計量)では129.5ポンド=58.74㎏とジュニアライト級の体重まで増やしてリングに上がるのです。

もちろん、ルールを目一杯活用しているのですからムザラネや井上、井岡は達人、名人です。リバウンドも含めた体重管理が重要な戦略になるのは当然です。

しかし、当日計量よりも当該選手の健康という意味では有効に思える前日計量ですが「ジェイミー・マクドネル」や「アートゥロ・ガッティ」のサンプルを出すまでもなく、より危険でより不公平な問題を孕んでいます。

前日計量から当日試合までの回復時間を考慮して、より過酷な減量が可能になり、ときとしてマクドネルのような重篤な状況に陥るケースも珍しくありません。

また、当日リバウンドは現実のリング内でとんでもない体重差を生み出し、ガッティやムザラネ、井上、井岡らの対戦相手はずっと上のクラスのボクサーと戦う羽目になっているのです。

リング誌などでもたびたび取り上げられ「リバウンドに上限を設けた当日計量をIBF以外の団体でも実施。当日朝ではなく試合前計量とする」という案から「前日計量と当日計量の係数で階級を再編する」というラジカルながらより公平な意見までさまざまなアイデアが寄せられています。

現在の前日計量が大きな問題を抱えていることは間違いありませんが、その改善のキモが「試合前計量」となると、プロモーターやテレビ局は「試合2時間前に体重超過でキャンセルなんてありえない」と強く反対しています。

興行側からしたら試合中止・マッチメイク変更の可能性が高まるようなシステムは極力避けたい、というのは当然です。



減量の目的はたった一つ。「より弱い相手と戦うため」です。それ以外にありません。もちろん表向きは「自分が最も強く輝ける場所で戦うため」ですが、そのために心身とも消耗して弱くなってるボクサーがほとんどです。

「自分も弱くなるけど、相手の方がより弱くなる階級で戦う」のが減量です。そのために頬がこけ、足が痙攣しても、弱い相手を追い求めるのが減量です。

もちろん、パックメイのように適正体重を明らかに上回るウェルター級で戦う変態もいますが、あいつらは例外中の例外中の極めて例外。二人の体重管理目的は「より弱い相手と戦うため」よりも「より注目されてカネが儲かる相手と戦うため」です。

ムザラネが巧妙な体重コントロールを駆使するのも、井上が過酷な減量に耐えるのも、ドネアがバンタム級に落ちてきたのも、全ては「より弱い相手と戦うため」です。

17階級の中であらゆる選手が「より弱い相手と戦うため」ではない体重管理をしているのが、ヘビー級です。
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https://www.youtube.com/watch?v=ebVe-tj7eSg&t=15s
 
明日、ヘビー級のメキシコ系米国人がWBA王座挑戦権をステイクして激突します。

40歳のクリス・アレオラは228.5ポンド=103.7㎏、31歳のアンディ・ルイスJr.はなんと256ポンド=116㎏で体重計を降りました。

かつて250ポンドオーバーが当たり前だったアレオラは18年45試合のキャリアで最軽量。この試合に賭ける意気込みが感じられます。腹回りが別人です。

アンソニー・ジョシュアとの再戦では283.5ポンド=128.6㎏で秤に乗ったメキシコのデストロイヤーも、そこから29.5ポンド=13.4㎏も減量したことになります。

29.5ポンド、バンタム級=118ポンドから見上げるとウェルター級=147ポンドまでの7階級がすっぽり収まる数字です。さすがヘビー級、スケールが違います。

女性レポーターの「キャリ最軽量!どうしたのですか?」という質問にアレオラは「体重は気にしていない。メイウェザーの助言でDedication and Hardwork(全身全霊でハードワークを追求)した結果だ」。

ルイスも「セクシー(な体型)」と褒められ「カネロ・アルバレスと共にDedication and Hardworkにつとめた結果」とビッグネームを絡めた同じ言葉を口にして周囲を笑わせました。

オッズはルイス勝利が1/20(1.05倍)、アレオラ13倍。

「オッズは圧倒的不利ですが?」という問いにも顔もスリムに引き締まったアレオラは「オッズも年齢も体重と同じだ。単なる数字に過ぎない」。

試合前のコメントではアレオラが中差判定勝ちですが…。好戦的な二人が殴り合う明日は、凄まじい試合になるはずです。
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現代ボクシング、4−Belt Eraの特徴は「世界王者の権威が失墜した」という一言で表現できます。

「世界王者の権威が失墜した」という傾向は、WBAからWBCの分離独立が決定的になった1970年代、IBFが発足した80年代、WBOが産み落とされた90年代と、その色合いが濃くなっただけで 4−Belt Eraになって急に始まったわけじゃなく、この50年以上に渡って継続した病理じゃないか…?。

それは、総論ではその通りです。しかし、3−Belt Era までは王者の権威の「失墜」は「分離・分散」という説明ができました。

つまりは「団体の追加」と「階級の増殖」です。 

しかし、4−Belt Era になると団体内で世界王者が増殖、大量生産されることが常態化します。
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メキシコベルトに並ぶメガファイト専門のシンコ・デ・マヨ ベルト。


最多の加盟国を抱えるWBCを例にとると、上位タイトルから「フランチャイズ」「レギュラー」「暫定」「休養」「シルバー」「インターナショナル」「ユース」が active champion(防衛戦に敗れると失う)。

「インターナショナル」はランキング16〜30位の選手で争う〝明日の世界王者〟タイトルのはずでしたが、マニー・パッキャオがマルコ・アントニオ・バレラやエリック・モラレスとメガファイトを繰り広げたときにリング誌王座と並べて掛けられるなど、正体不明のタイトルとして迷走しています。

知らない人が見れば「最上位はインターナショナル」と思うでしょうし、あのときは実質そうでした。

また「ユース」はその名の通り「U21」のレギュレーションがありましたが、これもいつのまにか実質撤廃されています。

そして、active championに加えて、防衛義務のない「名誉」「ダイアモンド」 というspecial championも存在します。 

4−Belt Eraは、当たり前のことですが「4つのベルトをを集めるのが最も面倒な時代」です。しかし、その一方で「ベルトの価値が最も下落した時代」でもあります。

まだ価値の欠片が残っていたベルトを集めていた3−Belt Era の完全統一王者と、許容範囲を超えて価値が暴落した4−Belt Eraの完全統一王者。

どちらが価値があるでしょうか?

ベルトの価値が軽くなればなるほど、簡単に王座を返上、平凡な実力しか持っていないボクサーでも複数階級制覇に乗り出すだけでなく、契約体重を守らずに王座を剥奪されるダメージまで限りなく軽くなります。

体重超過でタイトルを失う、プロとしてあるまじき事件が頻繁に起きる最大の原因は、現代のボクサーが規律を失っているからではありません。

世界タイトルそのものが本当ならあるべき規律、すなわち権威を喪失してしまったからです。

世界王者の権威が失墜しているのですから、複数階級制覇の価値も暴落しています。

それでも〝偏差値が高い〟と見られる複数階級制覇があります。

現在の17階級で、最も壁が高く厚いクラスはウェルター級です。その反対、最もレベルが低いのがストロー級です。

しかし、全盛期のリカルド・ロペスからストロー級のベルトを奪うことは、テレンス・クロフォードに勝つよりもはるかに難易度が高いことは論を待ちません。

MLBで首位打者を獲るよりも、1994〜2000年の7年間のNPBパ・リーグでイチローよりも高い打率を残す方が至難なのと同じく、スポーツの世界では単純な物差しは通用しないのです。

リカロペやイチローのような、例外の変態は一旦忘れましょう。

「偏差値の高い複数階級制覇」は「階級間の体重差が大きい重量級」と「レベルが高いウェルター級」を絡めたものであるのは誰にでもわかります。

それに対して、ジュニアフェザー級以下の細分化されたゾーンでの階級制覇は「階級間の体重差が小さい」「階級の層が薄いからレベルが低い」ため、相対的に簡単安易であることが想像されます。
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井岡一翔も成し遂げた4階級制覇で、最も困難なロードマップは、欧米で人気のクラスで32ポンド(14.51㎏)以上にわたる「スーパーミドル→ミドル→ライトヘビー→クルーザー→ヘビー」です。

これはクルーザー(200ポンド)からスーパーミドル(168ポンド)を引いた数字です。

現実にはブリッジャー級(224ポンド)新設の根拠「ヘビー級は重すぎる」を考慮すると224−168=56ポンド(25.40㎏)とするのが適正です…いやそれでも控えめな数字です。

この最難関を突破したのはロイ・ジョーンズJr.、ただ一人。

ちなみに井岡の4階級の体重レンジは10ポンド、4.54㎏。ライトヘビーからクルーザーの25ポンド(11.34㎏)と比べても半分以下。

スーパーミドル〜ヘビーの56ポンドと並べると5分の1以下、同じ4階級制覇として見るには、許容範囲を超えた不公平です。
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その次が「ジュニアライト→ライト→ジュニアウェルター→ウェルター」。体重レンジは17ポンド(7.71㎏)。

この4階級制覇を達成したのは歴史上4人。とはいえ、ブローナーさんがいなければ「これはムズい」と評価してしまいますが、やはり4団体時代、他の3人を見ると勘違いしそうですが、たいしたことありません。

ロイもブローナーと同様に4階級目(ヘビー級)は、穴王者を狙い撃ちにした〝空き巣〟 。最も厳しい階級で輝きを放ったオスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオとは同じステージで語るボクサーではありません。
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4−Belt Eraでも、軽量級のジュニアライトを起点に最もレベルが高いウェルターで大暴れしたデラホーヤとメイウェザーは歴史の残る傑出したボクサーですが、フライ級起点のパッキャオになると、もはや説明不可能の化け物です。

この「ジュニアライト→ライト→ジュニアウェルター→ウェルター」の地図を握りしめ、ジュニアウェルター級間で進出してきたのがガーボンタ・デービスです。

ずんぐりタンクは〝デラホーヤ〟〝メイウェザー〟なのか?

それとも冷やかし4階級制覇の〝ブローナー〟なのか?
 
これまで弱い相手ばかりと戦ってきたキャリアと、醜悪なまでの規律の無さからはブローナーと同じ臭いがプンプン漂っていますが…。

メイウェザーの秘蔵っ子は8月14日、マリオ・バリオス相手に一次試験に挑みます。 
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欧米のボクシング市場には、階級間に明らかな〝貴賎〟が存在します。

日本では中量級やときには重量級として紹介されることもあるライト(軽量)級以下が、欧米の軽量級です。

ジュニアフェザー級以下はランキングは一気に薄くなり、ファンの関心は悲劇的に減少してしまいます。 

世界王者の数が今と比べるとはるかに抑制されていた2団体、3団体時代はヘビー級やミドル級の注目試合のようなメガファイトはないにしても、超軽量級でもそれなりの尊敬と存在感を維持していました。

しかし、4団体時代が深まると、様相は大きく変わります。

4団体時代は、単なる「+1」や、「×4」ではなく、様々な世界王者が承認される王者が大量生産される時代です。

承認団体は承認料の支払い実績と支払い能力のあるボクサーを優先して捏造的にランキング、他のスポーツではありえない世界戦が当たり前に繰り広げられています。

カネロ・アルバレスが小手先でひねったアブリ・イルディルムや、井上尚弥への挑戦が内定しているマイケル・ダスマリナスが指名挑戦者というのは、もはや〝犯罪〟です。

WBCやIBFのランキング委員も一人残らず「おかしいのはわかってる」はずです。犯罪です。
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「これが最も価値のある世界チャンピオンベルト」とメキシコベルトをお披露目する嬉しそうなマウリシオさん。

そして、世界王者が粗製乱造される現代、超軽量級の試合が大きなイベントでメインを張ることは絶対になく、前座に回されるのが常態化してしまいます。

このビジネススタイルが、ただでさえ軽量級に関心のない米国のカジュアルファンの心理に「超軽量級は安っぽい」というイメージを植え込み続け、その地位は下落する一方。

ボクシングがメジャースポーツだったという絶対的な背景があるとはいえ、オリジナル8の時代は「ウェルター級がメインイベントで前座に超軽量級の世界戦が複数ぶら下がってる」なんて興行はありえません、というかできません。

そんなことしたら、世界に8人しかいないチャンピオンを1晩で3人も4人もリングに上げてしまうことになります。世界戦を複数パックした興行なんて、馬鹿げています。

しかし、世界王者がいくらでもいる現代なら、一つの興行で複数の世界戦がパックされるのは当たり前、人気階級を目玉に超軽量級がオマケで付いてくる構図です。

米国市場において、超軽量級は日陰に隠された〝被差別クラス〟。ライト級でもタレントが揃わないと大きな注目を浴びることは出来ません。

ファン・フランシスコ・エストラーダのように「体が小さいということはボクサーにとって悲劇」「中量級との報酬格差は酷すぎる」と嘆いていても何も変わりません。人気がないんだから。

どうしたらそこから脱出できるのか?

この難問には、すでにマニー・パッキャオが満点回答を示してくれています。超軽量級で「報酬が少ない」と文句を言ってないで、報酬が高い階級で勝てばいいんです。

パッキャオは人種差別の激しい米国で、米国人やヒスパニックでなくてもスターダムに駆け上がる方法まで明確に提示してくれています。パッキャオのやり方を真似るだけで日本人でも中国人でも米国で大人気のスーパースターになれます。

「PFP8位なら世界で8番目に報酬が高くてもいいはず」なんて寝言です。過去のランキングを見ればわかるように、PFPは不人気階級にもスポットライトを当てる差別補正装置の役割もあります。


もちろん、この話は「黄金のバンタム」がまかり通る日本では全く関係ありません。


前置きが長くなりました。

日陰階級から陽の当たる場所へ。 

1年少し前までジュニアライト級で戦っていたガーボンタ・デービスが、6月26日にマリオ・バリオスを相手にジュニアウェルター級デビューを飾ります。

「ここがゴールと思っていない」。身長166㎝/リーチ171㎝のタンク・デービスが米国の花、ウェルター級を見据えているのは明らかです。

自堕落な26歳ですが、心意気は素晴らしい、これがファイターです。

バリオスはセカンド王者ながらWBAのストラップを握る25歳。

タンクとの無敗対決はSHOWTIMEがPPVで提供するビッグファイトになります。

ジュニアフェザー級でデビューしたバリオスですが身長178㎝、リーチ180㎝とデービスを大きく上回る骨格の持ち主。この階級で4年間戦って、完全な140パウンダーの肉体を作り上げています。

現在のジュニアウェルター級はジョシュ・テイラーがIBFとWBA、ホセ・ラミレスがWBCとWBOを分け合う、やはり無敗の〝2強〟体制。そして、この二人が5月22日に完全統一王座を賭けて激突するのです。

テイラーとラミレスがトップランク、タンク・デービスがPBCという障壁はありますが、フロイド・メイウェザーは秘蔵っ子の完全統一に乗り気です。

デービスもバリオスも無敗とはいえ、強豪との対戦はありません。

デービスはユリオルキス・ガンボア、レオ・サンタクルスに勝ってるとはいえ、この二人は「下のクラスから上がってきたピークを過ぎたビッグネーム」。それでも、苦戦する場面も見られました。

今のところ「弱い相手に豪快に勝ってきただけ」というのがタンクの中身です。

デービスが鮮やかに勝つのがファンも含めた〝米国の総意〟でしょうが、番狂わせもありえます。

体重超過も含めて、常に有利なウェイトで戦って作ってきたデービスの戦績が本物なのかどうか?

バリオスは格好のリトマス紙です。
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「最近の若い者はなってない」。

古代エジプト時代から口にされてきた苦言です。

愚かな人類の縮図のようなボクシング界でも「え?それってそんな大昔から言われてたの?」という苦言があります。

昨年、WBCが18番目の階級ブリッジャー級を創設し、多くの批判を集めました。

「これ以上ボクシングの階級を作るべきではない」と。

しかし、同じ喧騒はちょうど100年前の1920年にも沸き起こっていました。「ニューヨーク州やNBAはジュニア階級を増やすべきではない」と。

ベアナックルの時代にヘビー級のほかにミドル級、ライト級の3つの階級が存在していたことが確認できていますが、ミドルとライトは英国と米国で統一した規格がありませんでした。

しかし、複数の王者が生まれる種は、すでに19世紀の段階で蒔かれていたのです。

無差別級(ヘビー級)以外の階級が、統一規格を持たない状況は、第一次世界大戦以前まで続いていました。

例えば、フェザー級は英国が9ストーン(126ポンド)であった一方、米国では122ポンド(今のジュニアフェザー級)のリミットで行われていましたが、定着したのは英国式でした。
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英国発祥のボクシングですが、ブリッジャー級も加えた18クラスでストーン制の名残りを残すのは5つにとどまり、オリジナル8に限定するとフライとフェザーの2階級のみです。


オリジナル8の規格は、アントワープ五輪が開催された1920年にはほぼ完成していました。

Flyweight (112)、Bantamweight (118)、Featherweight (126)、Lightweight (135)、Welterweight (147)
、Middleweight (160)、Light heavyweight (175)、Heavyweight (176+)。

しかし、この1920年代にはニューヨーク州はジュニアフライ級(109ポンド=現行は108ポンド)、ジュニアバンタム級(118ポンド=現行は115ポンド)、ジュニアフェザー級(122ポンド)、ジュニアライト級(130ポンド)、ジュニアウェルター級(140ポンド)と、5つの階級の新設を画策していました。

英国主導への抵抗という側面もありましたが「階級を増やせばタイトルマッチも増える。ニューヨーク州の収入も増える」という、現在の承認団体と同じ思考回路だったことも窺えます。

〝やつら〟が思いつくようなことは、時代など簡単に超越するのです。

偉大な白井義男が日本に世界チャンピオンベルトを初めてもたらした1952年当時は、オリジナル8の時代でしたが、一般的には認められていなかったとはいえ、ジュニア階級は蠢いていたのです。

〝記念すべき〟最初のタイトルマッチが開催されたジュニア階級はジュニアライト級でした。

1921年11月18日、マディソン・スクエア・ガーデンで行われた初代王者決定戦は「ジョー・ダンディvsジョージ・チェイニー」。

ニューヨークの怪人プロモーター、テクス・リガードがダイアモンドを散りばめた2500ドルのチャンピオンベルトを用意、大興行の匂いを発散させると、ニューヨーク州はたまらず新階級を承認したのでした。

この流れに、ニューヨーク州と対抗していた〝地方連合〟NBAも乗らないわけがありません。NBAはジュニアライト級とジュニアウェルター級を新設します。

カネと欲望が渦巻く1920年代に生まれたジュニアライト級は、最初から腐敗していました。10年近く存命できた理由はたった一つ、バレなかっただけです。

1929年12月20日、5年間も王座を守ったトッド・モーガンがベニー・バスに2ラウンドKO負けを喫し、タイトルを手放します。

“Little Fish” の異名を持つバスでしたが、この試合にはrotten fish(腐った魚)の匂いが充満していました。

マフィアが仕組んだ八百長疑惑です。

証拠不十分でペナルティは科せられなかったとはいえ、1930年1月にニューヨーク州がジュニアライト級を廃止、NBAも同じ処置を行います。

それでも、ジュニアライト級のタイトルマッチはニューヨーク州とNBAが世間体を気にして廃止しただけで、各地で〝任意の〟世界タイトルマッチは行われ続けました。


“Our goal,” said The Ring editor Nigel Collins, “is to restore boxing to the way it used to be, when the champ really meant something. The thing is so watered down now that it has become a farce.”

1987年、当時リング誌編集長・ナイジェル・コリンズは「我々の目標は、チャンピオンが本物の価値を持っていた時代のボクシングを取り戻すことだ。今のボクシングは(ジュニア階級と複数団体によって)水増しされ、見るに堪えない茶番劇になってしまっている」。


カネと欲にまみれて誕生したジュニア階級が、腐敗するのは必定でした…。

では、オリジナル8はカネと欲にまみれていないのでしょうか?腐敗とは無関係だったのでしょうか?



現状で、日本人がチャレンジできる常識的な限界階級が、この数奇な歴史を持つジュニアライトです。

ライト級で世界のトップで戦う日本人は例外です。ジュニアウェルター級以上となると、現状では突然変異と言っても差し支えないでしょう。

戦後、栄養状態の悪かった頃から、70年以上も経つというのに、この国のボクシング事情は何も変わっていのです。

現代は、別の意味で栄養失調の時代なのかもしれません。


それでも、ジュニアライトはオスカル・バルデスにガーボンタ・デービス、シャクール・スティーブンソンと、日本人が倒してくれたらわくわくするタレントが揃っています。

ジュニアライト級は、21世紀になってからライト級からジュニアウェルター級、そして絢爛のウェルター級へと続く滑走路としてスーパースターが離陸してゆきました。 

「滑走路が限界」というのは、悔しいですが、それが現実です…。



このジュニアライト級という滑走路の歴史と現在の世界地図を、日本とアジアの視点も交えて迫ります。
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ボクシングに限らず、スポーツに向けられる関心は常に限定的でドメスティックです。

米国ではボクシングは完全にニッチスポーツ、一般のスポーツファンはカネロ・アルバレスも知りませんし、タイソン・フューリーと聞いても「マイク・タイソンと関係があるのか?」と聞き返してくるほどです。 

その限定的でマニアックなファンに支えられているマイナースポーツ・ボクシングの中でも、105ポンド(ストロー)から122ポンド(ジュニアフェザー級)の「超軽量級」はほとんど関心が払われることがない空気階級です。

まして外国人となると、PFP2位の井上尚弥の試合ですら直前までオッズが出ることなく、リング誌やESPNは電子版でも専門家の試合予想をアップしません。

オッズがどれだけ早く立ち上がるか、戦前予想や試合結果を分析する記事がどれだけ詳細かは、注目・関心度を示すバロメーターです。

ある程度の人気選手になれば、ファンが期待するマッチアップは試合が決定していなくてもポテンシャルファイトとしてオッズが立ち上がりますが、現状の井上ではそれすらも夢のまた夢です。

「PFPと人気は全く関係がない」というのは、カネロがPFP圏外だった頃にすでにスターダムの頂点に駆け上がっていたこと、2年間もPFPキングに君臨したローマン・ゴンザレスのキャリア最高報酬が60万ドル(HBOが捻出した1試合だけ)という事実から、どんな低脳でも簡単に理解できるでしょう。 

このブログでも「米国で名前を挙げるとは?」という視点として「雑誌をカバーする」という 事象から「スポーツイラストレイテッド」や「ESPNマガジン」「リング誌」の表紙を飾れば、米国で一定の認知を得たことになるーーなんて書きました。
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実際、リング誌に井上尚弥が2019年1月号で集合写真、2月号と9月号で単独カバーする快挙を果たしました。しかし、その内容は軽い日本特集で、通常の単独カバーとは程遠い薄い内容でした。

また「井上vsノニト・ドネア」は2019年の Fighter Of The Year に選出されましたが、この試合もオッズは直前まで立たず、戦前予想は本誌はおろか電子版でも組まれず、米国での関心の低さがひしひしと伝わりました。

挙げ句の果ては、昨年8月、ジョンリール・カシメロ戦について日本側との放映権料で交渉が行き詰まったとき、ESPNは「米国では超軽量級に関心があるファンはいない。井上は日本では大騒ぎのようだが多くのファンはその名前も聞いたことがない」と厳しい牽制球を投じました。

「米国で無視されている名前も知らない外国人を放送してやるんだから、それなりの放映権料を、憧れ料も含んだ金額で払え」ということです。


低脳な井上信者は「PFP2位とは世界で2番目に注目されているということ」と信じ込み、井上の海外記事を洗いざらい探し出してそれを煽る一部メディアが信者の蒙昧をさらに加速させてしまいました。

井上はもちろん、超軽量級の外国人は嫌われること、軽蔑されることよりも酷い、ほんの一部のマニアを例外に、多くのボクシングファンには存在が視界に入っていない状況なのです。

ここから、どうやって名前を挙げるのかを考えなくては、どうしようもありません。

ボブ・アラムが「井上は報酬の大幅減額を受け入れた」と公言した一方で、大橋秀行は「報酬は当初と変わらない100万ドル」と口にする矛盾。そして、ネバダ州アスレティック協会(NSAC)や米国メディアからは井上の報酬について一切発表なし。

「MGMグランドでメイン」を張った西岡利晃のデジャブです。あのときも、小さな会場と貧弱なプラットフォームにもかかわらず西岡の報酬は100万ドルでした。

もちろん、西岡も井上も100万ドルを受け取ったのでしょう。しかし、それはマニー・パキャオのように米国から引っ張り上げたカネとは全く違います。ナジーム・ハメドと同じ、富裕国からのスポンサードが還元されただけです。

もちろん、これは全く恥ずべきことではありません。富裕な母国がそれだけのバックアップをしたい才能だからこそです。

しかし、それならハメドのように最初から正直に公開すべきです。隠すから恥ずかしいんです。西岡もあとで辛い思いをしてしまうんです。

メディアも井上を褒める記事を血眼になって探すよりも「味方であるべきESPNが『多くのファンは井上なんて名前も知らない』と書きやがった!みんな怒れ!」と、真実を報じるべきなんです。

大本営発表な真実を捻じ曲げた報道は「米国では人気があるのに日本ではイマイチ井上の凄さがわかっていない」という真逆の事実を植え付けてしまうのです。

「井上は米国でスーパースター候補」「PPVに乗ってファイトマネー20億円」という虚構を築き続けてきた手前、今更本当のこと、都合の悪い記事は報じることができないのでしょう。

もちろん、木村悠のように単なる無知から「スーパーフライ級は米国ではその名前が興行に付くほど人気のあるクラス」と書いちゃうのも罪は罪ですが、知ってて低脳な信者を煽るのはさらにタチが悪い。

井上の場合は2017年の米国初登場でNSACから182,500ドル(約2000万円)の報酬が発表されました。今以上に無名の井上に、日本の放映権料から歩合的に上乗せされたのは当然です。

それでも、日本での報酬よりはるかに低く、渡航費など諸経費まで差し引かれるとビジネスとしては何をしてるのか訳がわかりません。そして、日本のメディアが報じたのは4000万円。「日本でやってた方がはるかに実入りがあった」とならないように補填したのでしょう。

前置きが長くなりました。

そんな井上や、先日の井岡一翔と田中恒成らとは技術もハートもはるかに劣るYouTuberらの方が段違いの関心を集めるのが米国という国です。

YouTuberよりはましとはいえ、今朝、ダウンを盛り返してルーク・キャンベルをノックアウトしたライアン・ガルシアもまたライト級という人気クラスとメキシコの血筋で過大評価されている典型です。

井上とは違い、早くからオッズが立ち、すべての専門メディアで勝敗予想が組まれるなど、高い注目を集めてきました。そして、今朝の「スター誕生」。

やりきれない話です。本人がリング上でぶち上げたように、ガーボンタ・デービスとの無敗対決が大勝負です。


一方で、米国でまず関心が払われない超軽量級で、さらに外国人である井上は、いつ日本に戻ってくるのでしょうか。

唯一の救いは、井上本人が現状をよく理解している言葉を紡いでくれていることでしょう。

「最低でもフェザー級」とラスベガスでの戦いを希求し、「米国で名前を挙げるにはメキシコのライバルが必要」とこのままではどうしようもないこともわかっています。

フェザー級程度では「パッキャオが見た風景」など全く見えてこないことも承知してるでしょう。

「35歳で引退」なら、あと7年。

人気クラスの入り口・ライト級まで辿り着くには、十分な時間です。そのとき、22歳のガルシアや23歳のテオフィモ・ロペスははもっと上の階級に移っているでしょうが、彼らに匹敵する人気者が待ち構えているのを願うばかりです。
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ミドル級が事実上の最上限クラスの日本では「中量級」であるフェザーからライトまでは、世界的には軽量級ゾーンです。

オスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザーらが、ジュニアライト級から最も豪華なクラスであるウェルター級で活躍、マイキー・ガルシアもフェザーで最初のタイトルを獲ってウェルターに挑戦したように、このゾーンからスーパースターの座にアタックすることは珍しくありません。

一方で、ミドル級の村田諒太は突然変異にしても、ジュニアライト級で世界王者を定期的に輩出してきた日本ですが、隣接するフェザーとライトの王座獲得は分厚い壁のままです。

しかし、世界的にも人気階級であるライト級で中谷正義が、完全統一王者になるテオフィモ・ロペスを苦しめ、プエルトリコ最大のホープ、フェリックス・ベルデホを大逆転でKOするなど、米国で大きな花火を打ち上げました。
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リング誌ランキングで10位に入った中谷は人気のライト級で堂々の強豪です。

さらに、日本国内ではライト級ウォーズが勃発、伊藤雅雪を番狂わせで下した三代大訓と、日本・OPBF・WBOアジアパシフィックの三冠王者・吉野修一郎の勝者が世界発進にスタンバイします。

〝中谷効果〟がさらに波及して、かつてのジュニアライト級のようにライト級で日本人が席捲する日が来るかもしれません。


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【中量級:140−160】


【重量級:168−200】


【ヘビー級】
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105ポンドから122ポンド、日本があまたのタレントを展開するホットゾーンです。

やはり、注目は井上尚弥のバンタム級統一と、井岡一翔のジュニアバンタム級での大物対決。
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▶︎井上の次戦はまだ不透明なままですが、残るストラップはWBC(ノルディーヌ・ウバーリ)とWBO(ジョンリール・カシメロ)。

コロナ下による興行の停滞がしばらく続くとみられている中で「バンタムのベルトを一つ増やしたい」(井上)と、本人は至って現実的。

WBCがウバーリと暫定王者レイマート・ガバリョとの団体内統一戦を優先すると、今年狙えるのはカシメロのベルト。

フィリピンの野獣は3月にWBAセカンド王者ギレルモ・リゴンドーとの大一番が大筋合意に向かっており、この試合の勝者と今年後半に、前半にもう1試合戦いたいところ。

来年4月に28歳になるモンスターは、今がプライムタイムのど真ん中。本当は年3試合はリングに上がって欲しいのですが…。

井上の言葉を借りると「35歳で引退」「2022年にジュニアフェザー、そこから先はどこまで行けるか」ですが、ファンがじっくり見たいのは〝どこまで行けるか〟。

「メキシコのライバルは重要だと思う」とどこまでも冷静に分析する井上ですが、現状でまともなメキシカンはこのゾーンには存在しません。

そして、そもそも欧米の関心が低く、まともなメキシカンも見当たらないこのゾーンで戦う限り「パッキャオが見た風景」など幻覚でも拝むことはできません。

ここを突き抜けないと「米国でまともな注目を集めることのない無名」のままです。




▶︎昨夜、田中恒成の果敢な挑戦の大きな壁となった井岡一翔は、最激戦区であるジュニアバンタム級の〝最強決定トーナメント〟に名乗りを挙げました。
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現在、タイトルのピースは井岡のWBOの他、WBC(ファン・フランシスコ・エストラーダ)、WBA(ローマン・ゴンザレス)、IBF(ジェルウィン・アンカハス)と完全分裂状態ですが、3月にエストラーダvsロマゴンの「世紀の再戦」が決定、ここで2つのベルトが一人の王者の腰に巻かれることになります。

この4人の王者に加えて、エストラーダと1勝1敗、ロマゴンに2勝のシーサケット・ソールンビサイも絡み、PFPファイター展示会の様相を呈している階級。

誰もが紛うことなき強豪ですが、井岡にとってはアムナット・ルエンロンやドニー・ニエテスよりも噛み合う相手が揃いました。

とはいえ、田中恒成のような純情な相手は一人もいません。両拳に危険で狡猾な猛毒を持つ輩ばかりです。

それでも…いつも過小評価されてきた31歳のグランドマスターは、その偉大なキャリアを最高の勝利で締めくくってくれるはずです。


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【軽量級:126−135】


【中量級:140−160】


【重量級:168−200】


【ヘビー級】
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中谷正義がフェリックス・デルベホを逆転ノックアウトした試合は、様々な意味で典型的に「現代的」なドラマでした。

18番目のブリッジャー級が新設され「4belt−18class 」 時代が幕開けようとしている今、もはや世界タイトルそのものの価値は限りなく透明に希釈されてしまいました。

その一方で、散逸した世界タイトルのピースをコンプリートする作業は、歴史上最も困難な時代を迎えています…そのはずです。

そして、この3年間でテレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシクという完全統一王者が生まれました。

薄っぺらい世界王者が量産される時代に、この二人は濃厚に階級最強を証明しました。

しかし、ウェルター級にもかかわらず地味を極めるクロフォードと、WBSS優勝のウシクもまた、完全統一を果たしたがゆえに、現代においてタイトルが大きな意味を持たないことを皮肉にも証明しています。

WBSSは「完全統一王者を決める」という大義名分を掲げ、米国で人気のない階級を狙って羊頭狗肉の賞金を掲げた〝新手のアルファベット承認団体〟でした。

当初ぶち上げた「賞金総額5000万ドル、優勝賞金1000万ドル」は、ついにどの階級でも支払われることなくフェイドアウトしている〝詐欺的蜃気楼〟。それがWBSSの正体です。

もちろん、米国の不人気階級とはいえ、日本では特別なバンタム級で井上尚弥という異才がジャンプしたという意味でWBSSは、日本のファンに素晴らしい機会を与えてくれました(もちろん犯罪的に杜撰な運営は別の話ですが)。

そして、アルファベット団体の恣意によって如何様にも世界タイトルが分配されることを、テオフィモ・ロペスが新たに完全統一王者の仲間入りを果たすことで証明してくれました。

21世紀の完全統一王者は〝人気のない実力者たちの駆け込み寺〟でしたが、そこに駆け込むには高いハードルがいくつもありました。

それでも、人気者ロペスがWBCに「フランチャイズもステイクして欲しい」とリクエストすると、WBCは「フランチャイズが上位タイトル」と二つ返事で了解。WBC王者デビン・ヘイニーは、いきなり「セカンド王者」に落とされてしまうのです。

タイトルの価値が失墜「中谷vsベルデホ」にもWBOインターコンチネンタルという、地域タイトルがステイクされていましたが「日本vsプエルトリコ」で争う地域タイトル…もう悲劇も喜劇も超えてどこまでもシュールです。

中谷の劇的な逆転勝ちに「よっしゃー!WBOインターコンチ王者や!!!」と喜んだファンは、一人でもいるのでしょうか?

どこまでも、シューリアルです。前衛芸術のように、常人の理解を超えているのはWBOインターコンチ王座だけではありません。アルファベット団体の世界タイトル自体が、悪夢の中の虚構です。

中谷の勝利に、日本のボクシングファンが巨大な価値を見出しているのは、①ライト級という人気階級で、②ベルデホという名前のあるスター候補を粉砕した、という2点からです。

「人気階級」は競技人口だけからは推し量ることはできませんが、BoxRecによると、今日12月15日現在の競技人口は以下のとおりです。

ストロー267人、ジュニアフライ469人、フライ776人、ジュニアバンタム853人、バンタム1095人、ジュニアフェザー1372人、フェザー1654人、ジュニアライト1767人、ライト2359人、ジュニアウェルター2259人、ウェルター2380人、ジュニアミドル2067人、ミドル1745人、スーパーミドル1512人、ライトヘビー1269人、クルーザー1293人、ヘビー1449人

以前、このブログで取り上げた数字から全体的に伸長している原因は、BoxRecの情報収集能力の向上、つまり試合経験のあるボクサーだけでなく、ライセンス発行されたデビュー前のボクサーまで、各地域のコミッションから吸い上げているからです。
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この種の数字を見て、多くの人が最初に驚くのは「ミドル級が1番層が厚いと思ってた」です。しかし「ミドルが最も層が厚い」というのは幻想ではありません…そういえば書きかけの話がありました、続きを書くときですね。

競技人口は、それぞれの階級レベルを推し量る指標の一つですが、あくまで「指標の一つ」に過ぎません。

例えば、ヘビー級の競技人口は1449人で、フェザー級の1654人を下回りますが、この数字を持って「階級難易度(レベル)でフェザーが上」と考える馬鹿はどこにもいないでしょう。

階級難易度を正確に測るには「競技人口」「報酬」「専業ボクサーの比率」「注目度(人気選手の存在によっても変動します)」など、いくつものフィルターを濾過しなければ、その実態には迫れません。

「競技人口が多い」ことよりも「報酬が高いこと」の方がレベルを引き上げるのは当然です。その結果として「専業ボクサーの比率」にも差が出ます。

例えば、バンタム級の1095人に対してジュニアミドル(2067人)は約2倍ですが、階級難易度も2倍かというと、それはおそらく違います。ウェルターとミドルに挟まれたジュニアミドルの方がもっと上です。

これは、ライト級2359人と、ウェルター級2380人の競技人口トップ2にも当てはまります。今日の競技人口ではほぼ同じの二つの階級、その攻略難易度も同じと考える人はいません。

「中谷はロペスだけでなくライト級の誰にとっても試練」(今日のリング誌)ですが「エロールやテレンスに試練を与える日本人はいるか?出てくるか?」と問い詰められると、目をそらしちゃいますね。

軽量級の世界ランカーや王者は井上尚弥の対戦相手を見るまでもなく、人気階級と比べると同じスポーツとは思えないほどに報酬は劣悪、本職は引っ越し屋さんや銀行員だったり、あるいはボクシングが本業でも副業を持つケースも珍しくありません。

一方で、井上が憧れる「パッキャオの世界」では、本業が引っ越し屋さんとか、銀行員はまずいないのです。

中谷が粉砕したフェリックス・ベルデホも、おそらく引っ越し屋さんとか銀行員が本業ではありません。

こういう風に書くと、勝手に曲解してひねくれちゃう脳足りんちゃんも湧いてくるでしょうが、コメント欄はいくらでも開放しています。

前置きが長くなりましたが、今夜のお題は「タイトル自体の価値が失墜した今、誰に勝つのが大きなトライアンフか?」です。

実現可能性を無視するなら「日本人がタイソン・フューリーをノックアウトする」が最大の勝利でしょうが、じゃあ誰が?となると一人も思い浮かびません。

ある程度はリアルの匂いを残して欲しいですね。

「村田諒太がカネロをKO」「中谷がテオフィモをぶっ倒す」が普通に思い浮かびますが、「ジュニアライトに落としたロマチェンコを圧倒して切り刻んでストップしたシャクールを井上が死闘の末にSD勝利」もいいですね。

それにしても、中谷が初回に痛烈に倒されたときは「最悪のパターン」と、早い結末を覚悟しましたが、ボクシングは頭の固いフシ穴の浅はかな予感を鮮やかにひっくり返してくれるから面白い、感動します。
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