カテゴリ: 世界のボクシング:階級/キャッチウエイト

さて、第2回はBoxRecの PFPです。

誰が一番強いか?そんなのヘビー級に決まってる。ウエルター級は競技人口が多く、専業ボクサーも多いからレベルも高い…軽量級はそうではないからレベルが低い…そんな階級差別を取っ払って「ストロー級でもヘビー級でも王者の価値は同じ」という視点から評価するのがPFPの基本です。

その基本に従えば、バンタム級とジュニアフェザー級でUndisputed championになり、精力的にタイトルマッチをこなしている井上尚弥の業績はオレクサンデル・ウシクやテレンス・クロフォードを上回るーーーというのは一つの正論です。

ウシクは現実のリングで体重非同一時の戦いに勝利を重ね、クロフォードは一気に2階級も上げてボクシング界最高の人気者カネロ・アルバレスに完勝しました。しかし、ヘビー級とウエルター級という色眼鏡を外せば、井上がこなしている軽量級のタイトルマッチと何ら変わりはありません。

透明なレンズを通して評価するようなBoxRecのPFPです。

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なんと、井上と中谷潤人がワンツー。

先週、ラスベガスでマイルド・アップセットを起こしたばかりのテレンス・クロフォードは3位。

7位にジャロン・エニス、10位にタンク・デービスと他のメディアでは10位圏から離れたファイターがランクイン。

そしてオレクサンデル・ウシクがまさかの13位。無敗のヘビー級王者とはいえ、その戦いぶりは決して支配的とは言えず、もし、ウシクが他の階級ならもっと下の順位だったかもしれません。




話が逸れますが、BoxRecはこのスポーツの見方、楽しみ方に革命をもたらした素晴らしいデータバンクです。

しかし、WBAが無断でデータを使用したことに激怒し、WBAタイトルをでーたから全て引き上げてしまいました。

井上尚弥とテレンス・クロフォードはWBAも含んだUndisputed championですが、BoxRecのデータ上には表記されていません。

気持ちはわかりますが、いつまで続くのか?



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Major(主要)と呼ばれるだけで4つもあるSanctioning Bodies(認定団体)。4団体17階級で68人の王者がいるという常識的な計算が通用したのは3団体時代まで。

それぞれの団体が同一階級でも複数の王者を抱える4-Belt Eraは、余程のマニアでも王者の名前を全て把握できないカオスです。

さらに、各団体は認定料を稼ぐ機会を増やすために無数の地域タイトルを創設。認定料の支払いが良いボクサーを優先的にランキングに組み込むようになります。

そして出来上がったのが、4団体でまちまちのデタラメランキング。

「世界ランカーに弱いやつはいない」「世界王者はみんな強い」「世界挑戦は一生一度、何度もチャンスはない」「無冠の帝王」…そんな言葉が死語になってもう何十年も経ちました。

デタラメランキングを糾弾されたWBCのホセ・スライマン会長(故人)は「強い順番ではなくタイトル挑戦の順番」と言い放ちました。

強さの順番ではないデタラメランキング。強さの順番で挑戦できないデタラメ世界戦ーーーそんな中で、ファンが納得するランキングを発表してきたのがリング誌(過去にはランキングをめぐるスキャンダルもありましたが)や、ESPN、Boxingscene.com(現BOXING SCENE)などのメディア。

彼らは、Mythical ranking(妄想ランキング)PFPも作成、4-Belt Eraのボクシングファンを楽しませています。

このシリーズではさまざまなメディアのPFPランキングをご紹介。

第1回はプロモーターとプラットフォーム業務も持つPRO BOX グループの専門サイトBOXING SCENEです。

ランキングを並べる前に、ライターたちの意見をどうぞ。

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◾️トリス・ディクソン…(テレンス・クロフォードがカネロ・アルバレスに完勝した直後の今は)少数意見かもしれないが、オレクサンデル・ウシクを1位に推す。

五輪で金メダル、プロではクルーザー級とヘビー級というクラスでUndisputed championに就き、ヘビー級では自分よりもはるかに大きく重い相手に勝ち抜いてきた。しかも、その全てが敵地。

2位はクロフォード、そして井上尚弥がすぐ下の3位と考える。




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◾️トム・アイバース…私は、同じ体格で同じ体重だったらと仮定してPFPを考えます。

クロフォード、ウシク、井上のトップ3に異論はありません。

しかし、1位はクロフォードです。225ポンドのクロフォードは間違いなくウシクを倒すスキルとパワーがあります。122ポンドのクロフォードは、防御面で欠陥を露呈している井上も圧倒するでしょう。



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◾️デクラン・ウォリントン…クロフォードが素晴らしいファイターであることは全面的に認めるが、世界最高はいまなおウシクだ。

ウシクが自分よりも大きな相手にやってのけたことは、クロフォードの偉業とは少し趣が違う。もちろん、衰えていたとはいえカネロに勝利したことで、クロフォードはウシクに近づいた。

井上も素晴らしいファイターだが、ウシクとクロフォードとは離れた3位だ。




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◾️キルラン・マルベイニー…まず、井上は3位。これまでの実績、実力者のムロジョン・アフマダリエフに完勝したことも素晴らしい。

ウシクとクロフォードは難しい。1位と2位ではない、これは1か1Aの差。

クロフォードがウエルター級とジュニアミドル級で大きな成果(対戦相手の質が低かった)を残せなかったのはトップランクの力が乏しく、老いたボブ・アラムが無能だからで、彼の責任ではない。

しかし、ウシクはアンダードッグの立場で敵地に乗り込み、ヘビー級最強と見られていた2人(ソンソニー・ジョシュア/タイソン・フューリー)と、未来の強豪王者と見られていたダニエル・デュボアの3人と2度ずつ戦い、その全てに勝利した。




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◾️オーウェン・ルイス…スキルという面ではクロフォードの方がウシクよりも優れている。

ウシクは大きくて重い相手をスピードとスタミナで翻弄し、消耗させるタイプだが、クロフォードはアーミーナイフのように多彩なパンチで相手を切り刻んでいく。

その差はほとんどないが、私はクロフォードがより優れたファイターだと評価する。

3位の井上も含めて、この3人は無敗で負けるパターンが思い浮かばない。もちろん、4位以下のドミトリー・ビボルやバム・ロドリゲスを否定するつもりはない。未来のトップ3がどうなっているか、誰にも想像できない。




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◾️ジェイク・ドノバン…クロフォードが僅差でウシクを上回り、井上は不動の3位。

「クロフォードが勝利したカネロは全盛期をとっくに過ぎていた」という理屈は、わたしは受け入れることができない。それなら「ウシクが勝ったフューリーはフランシス・ガヌーと死闘を演じたレベル」ということだ。

他の記者の話を聞いていてもクロフォードかウシクか。それが焦点だということは、甲乙つけがたいということ。




◾️ライアン・ソンガリア…現代ボクシングにおいて、一つ確かのことはサウスポーが有利。

サウスポーの象徴的な存在がウシクとクロフォード。実績的にはウシクの業績は飛び抜けているが、クロフォードの対戦相手の質が極端に低いわけではない。

テクニックでカネロを封じ込めたクロフォードと、大きくて重い相手をスピードと機動力で翻弄するウシク。どちらが技術的に優れているか?非常に難しい問題だ。

井上の3位は確定、4位以下ではない。

このトップ3を抜き去るファイターがいるとしたら、私はバム・ロドリゲスを評価する。



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【BOXING SCENE's  PFP】

①オレクサンデル・ウシク
②テレンス・クロフォード
③井上尚弥
④ドミトリー・ビボル
⑤アルツール・ベテルビエフ
⑥バム・ロドリゲス
⑦中谷潤人
⑧カネロ・アルバレス
⑨デビッド・ベナビデス
⑩テオフィモ・ロペス


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さて、南蛮のお方たちと築地でごはん。(本文とは関係ありません)










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昨日、青柳晃洋投手が神宮外苑・コブシ球場で先発練習に参加しました。

13日(土)のDeNA戦(神宮)か、14日(日)の広島戦(マツダ)で日本復帰後1軍初登板初先発する見通しです。

フィリーズ傘下2Aレディングを自由契約となってメジャーの夢が潰えた青柳は、7月末にスワローズへの移籍が決定。

約1カ月間、2軍で悪戦苦闘、5度目の実戦登板となった7日の2軍ロッテ戦で5回を1安打無失点。

ようやく失点を許さない本来のピッチングを披露、1軍昇格が決まりました。

MLBでも日本でも積極的に獲得の手を挙げた球団はありませんでした。

どんな結果が待っているのか、誰にもわかりません。

フィールドの上は、実力だけが問われる世界です。

どんな結果になろうとも、挑戦を続ける男はいつだって、敗れざる者たちです。

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122Lb

ジュニアフェザー級、あるいはスーパーバンタム級。

そう呼ばれる122ポンド級は、1975年に新設されたジュニアフライ級に続いて、1976年に誕生した水増し階級の走りでし ら

クルーザー級のように、大型化するヘビー級とライトヘビー級との乖離が無視できなくなったという大義名分がない軽量級の細分化は、メディアやボクシングファンから冷ややかな視線を向けられました。

しかし、この素晴らしい競技の中では歴史の浅い50年という歳月を経て「水増し」などという批判が馬鹿らしくなるほどの突き抜けたファイターを輩出してきましたのがジュニアフェザー級でした。

リング誌が年間表彰の1カテゴリーとして1980年から発表しているTHE BEST FIGHTER POLL(年間PFP:2017年で廃止)にウィルフレド・ゴメスが3位にランクイン。

シュガー・レイ・レナードを中核にした中量級への注目を謀る目的で企画されたTHE BEST Fighter POLLでロベルト・デュランとレナードに続く評価を受けたのです。

もし、THE BEST FIGHTER POLLがゴメスの全盛期、カルロス・サラテを粉砕した1978年にも存在していたなら、ゴメスの1位は当然、おそらく全ての票を集めたでしょう。

バンタム級からライト級で活躍したジェフ・フェネックが、貴公子サーマート・パヤクァルンを破壊して大番狂せを演じたのもジュニアフェザー級。

エリック・モラレスが最初のでっかい花火を打ち上げたのもジュニアフェザー級。

あのマニー・パッキャオが鮮烈な米国上陸をマーキングしたのも、やはりジュニアフェザー級。

ノニト・ドネアが Fighter of the year に選出される活躍を見せたのもジュニアフェザー級。

そのドネアにボクシングのレッスンを施したPFPランキングの常連、ギレルモ・リゴンドーも、もちろんジュニアフェザー級。

カール・フランプトンがFighter of the yearを獲るのは、フェザー級でレオ・サンタクルスとの軽量級では稀なビッグファイトを制したからてしたが、この小さなアイルランド人が最も鮮やかな印象を残したのもジュニアフェザー級。

そして、いま。愚かなまでにKOフェロモンを撒き散らしてボクシングマニアを虜ににしている井上尚弥もジュニアフェザー級。

ーーー掃き溜めに降りる鶴が最も美しい。

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欧米では親近感の無い軽量級はオリジナル8の時代から注目度は低かった上に、現代では体重幅が小さく、3〜4ポンドで細切れされ、人気階級のメガファイトで前座をつとめるのが最大の晴れ舞台で、報酬的には日本人エースと日本で戦うのが手っ取り早くカネを稼ぐ方法です。

これが、井上のラスベガスへの片思い興行に付き合わされたラモン・カルデナスのようになると報酬は日本でやるよりもガクッと減ってしまいます。

「井上への挑戦が大筋合意」と伝えられたピカソが土壇場で対戦を拒否した事情は、おそらくそこにあります。

「え?全く無名のキム・イェジュンが50万ドルもらったと聞いていたのに、T−モバイルで戦うと言うのにこのファイトマネーは何なんだ?!」。

当たり前の話ですが、本当に逃げるつもりならドタキャンなんて無様な姿は見せません。最初から交渉のテーブルに付きません。

世界的な不人気と報酬の低さ。

世界王者でも1試合で10万ドル稼げないこともある軽量級。そこから、認定料やマネジメント料、トレーナーらコーナーマンたちに支払う日当、税金…などなどが差し引かれるわけです。

常識的に考えて、日本以外では専業ボクサーはほとんど存在しません。人気もない、報酬も良くない…。

軽量級には事実上、ビッグネームがいない。それは、すなわち、人気階級と比較して競技レベルが低いということです。

この掃き溜めには何羽もの美しい鶴が舞い降りましたが、その誰1人として人気階級のスーパースターの注目度や報酬の足元にも及ばないのが悲しい現実です。


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本文とは関係ありません。

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定点観測したいところですが、いつものことながら酔っぱらいの思いつき企画、前回は去年の3月24日、今回は4月21日、約ひと月遅れですが、ご容赦あれ。

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コロナ禍で2万人を割り込むまで激減した競技人口は、2万7000人以上まで盛り返しています。

ただし、BoxRecがより広く多くの国から情報を集め、より深くデビュー戦の決まったライセンス取得者(キャリア・ゼロ)のボクサーまで拾い上げていることも〝人口増加〟の一因です。

階級別の「競技人口」だけを見ると、ヘビー級は1547人で、井上尚弥が主戦場としているジュニアフェザー級の1401人と大きな差はありませんが、これをもって「ヘビー級とジュニアフェザー級の〝層〟の厚さは変わらない」と受け止めてはいけません。

ヘビー級のトップ10が英国人5人、オーストラリア人2人、ウクライナとドイツ、アルメニアが一人ずつという構成に対して、ジュニアフェザー級はメキシコ3人、日本とフィリピン2名ずつ、オーストラリアとウズベキスタン、ナミビアが一人ずつ。

欧米の富裕国が支える階級は関心も大きく、報酬が高く、専業率が高いのは当然です。

日本勢がタイトル独占のバンタム級はその日本が6名、メキシコとプエルトリコ、米国、タンザニアが1名ずつ。

ウエルター級は米国4名、日本と英国、南ア、ドミニカ、フランス、ウズベキスタンが1人ずつ。

米国市場で傑出した人気を誇るカネロ・アルバレスのスーパーミドル級はメキシコ、米国、プエルトリコ、フランスが2名ずつ、クロアチアとグァテマラが1人ずつ。

最軽量のストロー級は日本が4名、フィリピン2名、中国、タイ、南ア、プエルトリコが1人ずつ。

米国や英国など富裕国でも優れた軽量級ファイターは存在しますが、ナショナル・ランキングや州のランキングは貧弱で階級によっては無いものもあります。

欧米の富裕国が軽量級に興味がないのは当然です。

これ、逆もまた然りではありません。

つまり、日本では世界でいう重量級、スーパーミドル級から上のナショナル・ランキングは存在しませんが、けしてマイナーとは言えません。

日本のボクシングファンは世界(欧米)で人気のある階級、選手に敏感なアンテナを張っています。

ウエルター級はフライ級の3倍超の競技人口ですが、日本のファンはタイトル奪取の難易度とその偉業度が3倍では済まないこともよく知っています。

ヘビー級やミドル級、ウエルター級のスター選手はもちろん、欧米で脚光を集めるとライトヘビー級やクルーザー級にも積極的に興味を持つのが、オールラウンダーな日本のボクシングファンの特徴です。

しかし、欧米ではそんなことは全くありません。米国のカジュアルなファンがストロー級のオスカー・コラーゾや、「誰も見たことがない」(ESPN)ジュニアフェザー級の井上尚弥の興味があるかと言えば、ありえません。

そもそも、軽量級への偏見も強く関心が低い上に、井上や井岡ら日本の優れたファイターの試合は実質無料放送でもウイークデイの明け方にオンエア。「コアなマニア以外は誰も見ない」のは当然です。

井上のT -モバイル・アリーナのチケット販売状況は相変わらず重く、心配です。どんどん値下げして、最後はなんとか人を入れるかもしれませんが、上階席開放はもうあり得ません。PPV無しでゲート収入が売上のほとんどですから、とんでもない赤字興行になりそうです。



しかし、ボクシングファンの姿勢としてどちらがこのスポーツを真から楽しめるか、となると軽量級への偏見がない日本のボクシングファンであることは間違いありません。

YouTuberボクサーや、他のスポーツなら永久追放もののルール無視のライアン・ガルシア、ルールを守れないばかりか生粋の犯罪者ガーボンタ・デービスらが挑戦的なマッチメイクから逃げ続けても人気を保っている欧米の現状にはうんざりします。






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プロボクシングには、世界最高峰や本場の舞台、つまりメジャーが米国や英国に存在しないように思えます。

実際にジュニアフェザー級までの軽量級は日本が本場で、世界最高峰と言っても差し支えないでしょう。

軽量級は欧米では人気が低く、報酬も当然低く、大きな会場でメインを張ることはレアで、メガファイトではアンダーカードに組み込まれます。

しかし、軽量級でもジュニアライト級になると玉虫模様で、人気選手がいると、日本が本場とは到底言えない状況になります。

そして、ライト級以上になると米国と英国が世界最高峰で本場、日本で好き勝手できないゾーンになります。

ストロー級からジュニアライト級までがマイナー、ライト級からヘビー級までがメジャーというと気分を損ねる人がいるかもしれません。

しかし、日本を舞台とする軽量級よりも米国や英国に遥かに報酬が高くて華やかな舞台がある、そしてそれはライト級以上の世界ーーーそれは歴然とした事実です。

同じ世界王者でも、マイナー階級とメジャー階級ではファイトマネーが全く違うのが相場なのです。

他のスポーツでは体格の向上が明らかなのに、ボクシングだけが1970年代以前よりも退化、貧弱になっている大きな原因の一つは、そこから目を逸らしているからです。

ボクシングの世界にも米国に最高峰の舞台がある。しかし、それは軽量級とは関係がない…。

例えば、井上尚弥と中谷潤人のPFP対決、その勝者が世界中のボクシング専門家やコアなマニアから高く評価されるのは間違いありません。

では、日本人ファイターがPFPにも入らないIBFウエルター級王者ジャロン・エニスに完勝したなら?エニスでなくとも、階級最弱と見られるWBC王者マリオ・バリオスに勝ったら?

あるいは、カネロ・アルバレスやオレクサンデル・ウシクに勝ったなら?

日本人が好き勝手できないメジャー階級では、スター選手相手に凱旋するのもままならず、ラスベガスのT-モバイル・アリーナややニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンに引き止められ、ヤツらがタイトルを奪い返すまで日本に帰ることはなかなか許されないでしょう。

日本人がストロー級のオスカー・コラーゾやジュニアバンタム級のバム・ロドリゲスに勝つのとは、日本はもちろん世界でも全く違う反応を示すことになります。

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インターネットなど影も形もなかった、世界が広かった時代にリング誌はもちろん、スポーツ・イラストレイテッド誌でも特集された原田。


もちろん、エデル・ジョフレに2連勝したファイティング原田や、完全敵地でビセンテ・サンルディバルをKOした柴田国明が、専門家やボクシングのディープなファンから特別な尊敬を集め続けていることも歴然とした事実ですが、カジュアルなボクシングファンはジョフレすら知りません。

メジャーへの意識が希薄で、マイナーに引き込もっている日本ボクシング界で、メジャーに爪痕を残したファイターを振り返ってゆきます。



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但馬ミツロが来月21日に復帰戦を迎えます。

亀田興毅が口にする「明るい景色」を突き進んだ、その先のゴールが「日本史上最重量の世界チャンピオン誕生」であることは間違いありません。

但馬ミツロと亀田興毅が目論む「明るい景色」「日本史上最重量の世界チャンピオン誕生」のシナリオ通りにコトが進むと、結構面白いことが巻き起こりそうです。

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ミツロも公言しているように、狙うはヘビー級ではなく、ブリッジャー級の王座です!

現在、ブリッジャー級を設けているのはWBCと WBAだけ。

ライトなボクシングファンは、その存在を知らないかもしれません。

そもそも、カジュアルなスポーツファンで17階級を覚えている酔狂な方はまずいないでしょう。

亀田プロモーションズとの関係を考えると、ミツロは WBAブリッジャー級でタイトル挑戦することになりそうです。

そして、この層が薄く定着するかどうかすら極めて不透明な新設階級で、穴王者に勝つ、あるいは怪しい相手との決定戦をモノにすると「明るい景色」にめでたく着地する模様です。

ここで(あるいはここに辿り着く道筋が見えた時点で)、プロボクシングに対する数々の不信感が以下のように噴出することになるはずです。


①亀田に騙されるな!層が薄く存在意味もよくわからないブリッジャー級の世界チャンピオンに価値はない。

日本史上最重量級チャンピオンなんてとんでもない、あんなのタイトルじゃない。

ヘビー級でもクルーザー級でも通用しないボクサーが集められたガラクタ置き場、それがブリッジャー級だ。


②亀田は悪、井上は善という単純な二元論は大間違いで、どちらも腐ったボクシング界の住人。

〝亀田〟はルールを破って世界チャンピオンになったわけじゃない。

そもそも、世界の統括団体がないのに〝世界タイトル〟が横行している時点で、こんなもん正気の沙汰じやない。

ボクシング界が狂っていないと考えるなら、老舗の二つの認定団体が制定している世界ブリッジャー級チャンピオンになったのだから、但馬ミツロは立派に歴史を作ったと認めるべき。

しかし、これを認めないなら井上尚弥や中谷潤人も認めるべきではない。彼らも所詮は狂ったボクシング界の同じ穴のムジナ。


③大型化する一方のヘビー級と200ポンドリミットのクルーザー級との体重差があまりにも大きくなり過ぎ、そこで新設されたブリッジャー級には、ジュニアフェザー級などとは全く違う存在の大義名分がある。

クルーザーとヘビーの体重格差は50ポンドレベルまで拡大しており、3〜4ポンド刻みの細切れ軽量級は廃止・合併してクラス削減を進めるべき。

大義名分が無い、わけのわからない水増し階級は欧米の興味・関心がゆるい軽量級に集中している。

本当のインチキ詐欺はブリッジャー級ではなく、井上尚弥や井岡一翔の4階級制覇の方ではないか?

そんな腐った世界の象徴が、ヘビー級に厳しいPFPではないか?

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ーーーボクシングのステイタスが失墜してしまった原因は一つではありませんが、オリジナル8から階級を増やし続けたことも、タイトルの価値を貶めた一因です。

UFCが頑なにオリジナル8を守っているのは、ボクシングの失敗を反面教師にしているから。

一方で、ボクシングではヘビー級の巨大化に歯止めがかからず、直下のクルーザー級との乖離が無視できないレベルに広がっています。

そもそも、ライトヘビー級とクルーザー級の間には25ポンド!もの差があり、この二つの階級間でも細切れ軽量級のように気軽に複数階級制覇なんて出来ません。

分母が違うとはいえ、同じ2階級制覇でもストロー級から25ポンド重いと、ジュニアライト級までの8階級制覇。どんな馬鹿が考えても、もはや分母の問題ではありません。

これが、クルーザー級からヘビー級なら、さらにとんでもない体重格差を乗り越えなければならないのです。

そして、もっと重要なことは、ヘビー級が絡む飛び抜けて最も困難な2階級制覇は、多くの場合、前日計量でも(もちろん当日体重でも)他の階級ではあり得ない体重差が生じるのが当たり前。

最近なら、オレクサンデル・ウシクとタイソン・フューリーの約40ボンド差の対決などはその典型で、1パウンドあたりの強さを表すパウンド・フォー・パウンド(笑)の概念を根底から侮蔑する本物の強者による決戦でした。

より強い相手に勝つために最強の自分を作り上げる、というスポーツの根本に根差したクルーザーからヘビー級征服は、より弱い相手を求めて自分まで弱体化する減量に身を投じる他のクラスとは真逆の勇気ある挑戦です。

残念ながら「日本人初のヘビー級チャンピオン」を目指したミツロもブリッジャー級に下方修正し〝より弱い相手を求めて〟の方向に舵を切りました。

強豪王者には届かなかったものの、アルファベットのミドル級タイトルで当たり前に防衛したり返り咲いた村田諒太の方がミツロよりもはるかに上、というのが多数意見かもしれません。

それでも、ミツロがブリッジャー級で WBAかWBCのタイトルホルダーになると「日本史上最重量の世界チャンピオン」です。

WBFクルーザー級王者の西島洋介山とは違う、メジャータイトルだから、これを金字塔と、あなたは認めますか?

そんな形式主義を離れて、現時点のブリッジャー級を肯定する裏付けが何かあったら、教えて下さい。

それとも、ESPNやリング誌などのようにそもそも認定団体は全て腐り切ってるから、強いチャンピオンに勝ったマニー・パッキャオは8階級制覇が正解と考えて、日本のバカな多数派のようにパッキャオを6階級制覇とする方が狂ってる、ブリッジャー級なんて強い相手がいないのだから王者なんて存在しょうもないと否定しますか?



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さて今日のお題は 「 legend slayer 」。

エディ・ハーンはジェシー〝バム〟ロドリゲスを、そう呼びます。

直訳的には「伝説殺し」。

これが、超軽量級から鬼神の快進撃で人気階級を蹂躙していったマニー・パッキャオを指すなら、まさにその通り。

しかし、これが〝バム〟ロドリゲスに向ける言葉となると、訳し方も変えざるを得ません。

「伝説殺し」…はあっ?????

悪い冗談です。

バムはボクシングファンがついつい見惚れてしまう良いボクサーですが、彼をどうしてもlegend slayer と呼びたいのなら、和訳は変えなければなりません。

「ロートル狩り」。それしかありません。

もし、彼が〝汚名返上〟したいなら、最高の方法が一つ、あります。

敵地の横浜が東京に乗り込んで井上尚弥を倒すことです。

「伝説殺し」どころか、バムが伝説になります。

井上もスピードはまだしも、反射に衰えが見えるとも言われていますが、いまだ無敗。

2階級特進して、21世紀屈指の軽量級モンスターを倒すようなら、ボクシングマニアに永遠に記憶されますよ。





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4-Belt Eraでは4団体17階級時代どころか、同一団体同一階級でもタイトルホルダーが複数存在することもあり、統一しても王者はすぐタイトルを手放して複数階級制覇に乗り出すーーーそもそも現状の〝つまみ食い〟複数階級制覇にどれだけの意味があるのか?

無敗時代のエイドリアン・ブローナーや、その系譜に連なるガーボンタ・デービスは、どう評価すればい良いのか?弱い相手に鮮やかに勝利することだけを重ねてPFPランキングにも入ったとはいえ、全盛期のブローナーやタンク・デービスは常に「ところであなたは誰に勝ったの?」と笑われてきました。

タンクがいつか強豪と戦う日が来るのか?それともブローナーと同じ道を転がり落ちてゆくのか?

バッタもんが溢れるアルファベット団体の怪しいタイトルホルダーたちが跳梁跋扈する21世紀のリングは、もはやスポーツの色は完全に色褪せてしまっています。

「21世紀 階級最強は誰だ!?」。


第2回はジュニアフライ級(〜108lbs)

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ストローからの4階級制覇を果たしたローマン・コンサレスドニー・ニエテス井岡一翔田中恒成にとっては、層の厚さも考えると、彼らにとって最も勢いがあった階級かもしれません。

井上尚弥が最初のアルファベット・タイトルをピックアップしたのもこの階級。

階級支配度に加えて〝滞在時間〟を重視すると、Lineal titleとリング誌タイトルを獲った寺地拳四朗が最強か?


 
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ワールドシリーズと日本シリーズ。メジャースポーツの熱気に酔いながらも、世間的にはマイナーでもボクシングはやっぱり面白い。

というわけで?唐突にスタートする「21世紀 階級最強は誰だ!?」。

4-Belt Eraでは4団体17階級時代どころか、同一団体同一階級でもタイトルホルダーが複数存在することもあり、統一しても王者はすぐタイトルを手放して複数階級制覇に乗り出すーーーそもそも現状の〝つまみ食い〟複数階級制覇にどれだけの意味があるのか?

無敗時代のエイドリアン・ブローナーや、その系譜に連なるガーボンタ・デービスは、どう評価すればい良いのか?弱い相手に鮮やかに勝利することだけを重ねてPFPランキングにも入ったとはいえ、全盛期のブローナーやタンク・デービスは常に「ところであなたは誰に勝ったの?」と笑われてきました。

タンクがいつか強豪と戦う日が来るのか?それともブローナーと同じ道を転がり落ちてゆくのか?

バッタもんが溢れるアルファベット団体の怪しいタイトルホルダーたちが跳梁跋扈する21世紀のリングは、もはやスポーツの色は完全に色褪せてしまっています。

そこで…「21世紀 階級最強は誰だ!?」。

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まずはストロー級(〜105lbs)から。


◉イバン・カルデロン:殿堂入り。この階級でPFP10傑入り。日本に呼んではいけない人。


◉ドニー・ニエテス:のちの4階級制覇。ジュニアバンタム級でPFP。日本に呼んではいけない人。


◉井岡一翔:WBA・WBC統一王者。ジュニアバンタム級でPFP。


◉ローマン・ゴンサレス:のちの4階級制覇。日本に呼んではいけない人だが、帝拳プロモートの縁もあって日本人とも拳を交える。フライ級で軽量級史上初のPFPキングに。一発殿堂確実。


◉ノックアウトCPフレッシュマート:タイのストロー級最強戦線のサバイバー。


◉オスカー・コラーゾ:現役ストロー級最強と目されるWBO王者。来月、サウジアラビアでWBA王者ノックアウトと雌雄を決する。





【寸評】リカルド・ロペスがジュニアフライ級に転向した1999年にLineal championが途絶えてから、なんと25年。17階級で最も長い空位が続いています。

21世紀最強はカルデロンでしょうか。

最も競技人口が少なく、欧米での人気も低い105lbは、日本が好き勝手できる度合いが大きいクラス。

亀田興毅に、重岡兄弟をコラーゾとノックアウトの勝者にぶつける勇気があるか?

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