フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: パウンド・フォー・パウンド

アルツール・ベテルビエフの〝入閣〟でシャッフルされたリング誌とESPNのPFPランキングを比べてみましょう。

二つのPFPのメンツは同じことも多いのですが、現在一致するのは8人。

リング誌がジョシュ・テイラー(8位)と、ジャーメル・チャーロ(9位)というUndisputed championを10傑に数え、ESPNはPFPでは〝禁断〟のヘビー級からタイソン・フューリーを5位、10位にはシャクール・スティーブンソンをランクイン。

スクリーンショット 2022-06-24 23.28.09

ドミトリー・ビボルとベテルビエフが、短い期間で印象的な試合を見せてくれたおかげで、PFPの非常に特徴的な性格が、この二つのランキングで浮き彫りになりました。

カネロ・アルバレスに完勝したビボル、ライトヘビー級最強候補のベテルビエフというロジックが完全に破綻しているのがリング誌で、PFPでも整合性が取れているのがESPNです。

ESPNはヘビー級で見てもフューリーが5位、ウシクが6位と階級の中での整合性を妄想ランキングでも貫いています。

両者のPFPを見慣れている人の多くは「ESPNのランキングの方が納得出来る」という感想をお持ちでしょう。

ただ、リング誌に入っていないフューリーとスティーブンソンはともにトップランクと契約しているボクサーなので、せっかく説得力のあるランキングでも「ふ〜ん、そういうことですね」という冷めた視線も集めています。

数年前までゴールデンボーイ・プロモーションズの子会社だったリング誌も、元を辿れば大物プロモーターのテックス・リカードが創刊したようなもので、そのランキングはいつもスキャンダルにまみれてきました。

トップランクは、世界最大のスポーツメディアESPNのボクシング部門子会社みたいなもので、慢性経営難のリング誌とは真逆の立場ですが。

毎週のようにシャッフルされ、今年のように上半期だけで1位が3人も交代する液状ランキング、これがPFPの呆れるほどの軽薄さであり、良い意味で笑える面白さでもあり、そんなどうでも良さ、良い加減さから親会社や提携関係の強力なプロモーターの意向を反映させるメリットが少ないとも考えられます。

それでも、プロモーターと関係の強いメディアのランキングというのは胡散臭さを拭いきれません。

そうなると、BOXING WRITERS ASSOCIATION OF AMERICA(BWAA)や、ボクシングシーンや英国ボクシングニューズ誌がそのままスライド流用しているTransnational Boxing Rankings Board(TBRB)のPFPがプロモーターの恣意的な働きかけを排除した不純物・添加物の入っていないランキングといえます。

しかし、PFPは世界挑戦の順番が決まるような重要性が全くない人畜無害の妄想ランキングなのでプロモーターの意向を反映させたとしても、それもまた妄想の一部ということで、よろしいんじゃないかと個人的には楽しんでします。

リング誌もPFPで捏造(妄想だから捏造もありえないんですが)する分には好きなだけやってれば良いのですが…そうじゃないからときどき露見して、信用失墜しちゃうんです。
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ESPNに続いて、リング誌もPFPランキングを更新。

アルツール・ベテルビエフが10位に入って、ファン・フランシスコ・エストラーダがランクアウト。

10位の変動だったので、1〜9位は変わらず。

①井上尚弥
②オレクサンダー・ウシク
③テレンス・クロフォード
④エロール・スペンスJr.
⑤カネロ・アルバレス
⑥ワシル・ロマチェンコ
⑦ドミトリー・ビボル
⑧ジョシュ・テイラー
⑨ジャーメル・チャーロ
⑩アルツール・ベテルビエフ

近年、エストラーダとローマン・ゴンザレス、ドニー・ニエテス、井岡一翔らが印象的なパフォーマンスを見せ、最多で三人が10傑入りしていたジュニアバンタム級でしたが、今回のエストラーダのランクアウトを受けて、ついに〝絶滅〟。

現在、最多勢力は、カネロをカウントすると三人のライトヘビー級、続いてクロフォードとスペンスのウェルター級が二人となっています。

井上の視界に捉えるジュニアフェザー、フェザーでも誰か食い込んでくれると面白いのですが…。
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ESPNがP4Pランキングを更新。

1. TERENCE CRAWFORD   
Previous ranking: No. 1

RECORD: 38-0, 29 KOs
DIVISION: Welterweight (champion)
LAST FIGHT: W (TKO10) Shawn Porter, Nov. 20
NEXT FIGHT: TBA

2. NAOYA INOUE   
Previous ranking: No. 2

RECORD: 23-0, 20 KOs
DIVISION: Bantamweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (TKO2) Nonito Donaire, June 7
NEXT FIGHT: TBA

3. ERROL SPENCE JR.  
Previous ranking: No. 3

RECORD: 28-0, 22 KOs
DIVISION: Welterweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (TKO10) Yordenis Ugas, April 16
NEXT FIGHT: TBA

4. CANELO ALVAREZ  
Previous ranking: No. 4

RECORD: 57-2-2, 39 KOs
DIVISION: Super middleweight (undisputed champion)
LAST FIGHT: L (UD12) Dmitry Bivol, May 7
NEXT FIGHT: Sept. 17 vs. Gennadiy Golovkin

5. TYSON FURY  
Previous ranking: No. 5

RECORD: 32-0-1, 23 KOs
DIVISION: Heavyweight (champion)
LAST FIGHT: W (TKO6) Dillian Whyte, April 23
NEXT FIGHT: TBA

6. OLEKSANDR USYK  
Previous ranking: No. 6

RECORD: 19-0, 13 KOs
DIVISION: Heavyweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (UD12) Anthony Joshua, Sept. 25
NEXT FIGHT: Aug. 20 vs. Anthony Joshua

7. ARTUR BETERBIEV   
Previous ranking: N/R

RECORD: 18-0, 18 KOs
DIVISION: Light heavyweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (TKO2) Joe Smith Jr., June 18
NEXT FIGHT: TBA

8. DMITRY BIVOL  
  Previous ranking: No. 8

RECORD: 20-0, 11 KOs
DIVISION: Light heavyweight (champion)
LAST FIGHT: W (UD12) Canelo Alvarez, May 7
NEXT FIGHT: TBA

9. VASILIY LOMACHENKO  
 Previous ranking: No. 7

RECORD: 16-2, 11 KOs
DIVISION: Lightweight
LAST FIGHT: W (UD12) Richard Commey, Dec. 11
NEXT FIGHT: TBA

10. SHAKUR STEVENSON  
 Previous ranking: No. 9

RECORD: 18-0, 9 KOs
DIVISION: Junior lightweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (UD12) Oscar Valdez, April 30
NEXT FIGHT: TBA

Others receiving votes: Devin Haney (19), Gervonta Davis (14), Jermell Charlo (9), Juan Francisco Estrada (4), Josh Taylor (1), Gennadiy Golovkin (1), Stephen Fulton (1).


ESPNもようやくPFPが何たるかを理解したようだ。

ヘイニー追放、正解です。鬼ごっことボクシングの区別が付いてない奴はランキングがから外すべきなのである。

 
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今、世界で最も面白いファイターはアルトゥール・ベテルビエフと、井上尚弥です。

しかし、米国ではベテルビエフはマディソン・スクエア・ガーデンのシアター、井上に至ってはまともな舞台すら用意されません。

ベテルビエフとドミトリー・ビボルの完全統一戦でも、大会場や破格の報酬は難しいでしょう。

この二人の価値を理解できない米国のボクシングファンが不憫でなりません。だから市場が没落するのです。

ボクシングど素人のメキシコ系のファンのためにも「ベテルビエフvsカネロ・アルバレス」をセットしてあげて欲しいです。

誰にでもわかる試合こそが、専門家にもコアなファンにも歓迎される試合です。

「(3人のジャッジが115−113というアナウンスを聞いて)そういうことか、と思った。負けたと思った」(ビボル)なんて試合ばかり見てると目が腐ります。



319秒で終わった試合のパンチスタッツを見る必要性を感じませんが、初回だけを切り取って見るのは意味がありそうです。

まずは319秒の全体数字から。

PUNCHESBETERBIEV SMITH
Total landed4811
Total thrown10267
Percent47%16%
Jabs landed144
Jabs thrown3933
Percent36%12%
Power landed347
Power thrown6334
Percent54%21%

ジョー・スミスJr.のスタイルと性格が早いKO劇を演出した側面もありますが、パンチスタッツから浮かび上がるのはベテルビエフの正確さ。

現実の試合を見てしまうと、あまりのパワーに目が奪われてしまいますが、数字から見えてくるのはベテルビエフの巧さです。

   First round Punch-stats
PUNCHESBETERBIEV SMITH
Total landed187
Total thrown4737
Percent38.3%18.9%
Jabs landed73
Jabs thrown2219
Percent31.8%15.8%
Power landed114
Power thrown2518
Percent44%22.2%  

初回は、終了間際にダウンを奪われるまではスミスがうまく戦っていたようにも見えましたが、ジャブもパワーパンチもベテルビエフが手数で上回り、的中率に至ってはほぼダブルスコア。

恐怖のハードパンチャーに手数と精度で圧倒されたスミスが下がらずに前に出続けてしまうと、次のラウンドで起きる事態は必然でした。

スミスのKO負けは、時間の問題だったことがよくわかります。

「じゃあ、もう一度やり直せるとしてスミスはどう戦えば良かったのか?」と聞かれると、あれしかありません。

むしろ、スミスが第2ラウンドまで持ったことは幸運でした。

「スタートからいくつかのミスを犯した」というベテルビエフの方が「もう一度やり直したら」初回で試合が終わっていたのは間違い無いでしょう。
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2022年も上半期が終わろうとしています。

勝手ながら独断と偏見でFighter of the yearをノミネート。

4団体統一の、Undisputed championが支持される、ここ数年の傾向を考えると、今年新たに完全統一を果たしたファイターが有力になると思われます。
IMG_0127
Fighter of the year有力候補

◼️ジャーメル・チャーロ◼️

昨年、ドローに終わって持ち越されていたジュニアミドル級の完全統一。

ブライアン・カスターニョをストップ、完全決着という形も印象的でした。


◼️井上尚弥◼️

ジャーメルと同じように、前戦です苦戦したノニト・ドネアを粉砕して、Undisputed championに王手。

リング誌PFP1位に選出されたこともプラス材料。

年内に最後のピース、WBOを吸収するようならFighter of the yearは決定かもしれません。

ただし、12月下旬に選考されるため、大晦日興行はカウントされない可能性大。大晦日の試合は避けたいところです。


◼️デビン・ヘイニー◼️

三団体王者ワシル・ロマチェンコを大番狂わせで下したテオフィモ・ロペスを、やはり大番狂わせで破ったジョージ・カンボソスJr.を楽々と封じ込めて、4団体時代で初めてライト級のUndisputed championになりました。

カンボソスというカモネギ三冠王を相手に退屈な36分間を過ごしたのはマイナス点。

また、Undisputed championとはいえ、ロマチェンコやガーボンタ・デービスらに勝たなければ階級最強を証明出来ないという状況も「目覚ましい活躍をした」という印象を希薄にしています。


◼️ドミトリー・ビボル◼️

UP -SET of the year=年間最大番狂わせ賞も有力候補ですが、PFP1位のカネロ・アルバレスに完勝した印象は強烈。

世界的な注目はジャーメルや井上、ヘイニーを大きく凌駕したものの、カネロとの1試合だけでは専門家を納得させることは無理でしょう。

今週末にWBA/IBF王者アルトゥール・ベテルビエフとWBO王者ジョー・スミスJr.の勝者と年内に激突出来るなら、カネロ戦との合わせ技一本で、一気に大本命。



[条件付き]

上記の有力候補は上半期の結果から予想したもの。つまり、下半期にもっと有力なボクサーが躍り出るかもしれません。


◼️ゲンナジー・ゴロフキン◼️

村田諒太もの一戦はアジアで行われた歴史に残るメガファイト。

9月17日の「カネロ3」で圧倒的な勝利を収めるようなら、意外にもキャリア初のFighter of the yearが転がり込むかもしれません。


◼️テレンス・クロフォードor エロール・スペンスJr.◼️

この数年、噂はあれども形無しなファン熱望のカード。

「層が厚くレベルも高いウェルター級」「Undisputed champion」「全盛期の無敗王者が激突」「PFPファイター対決」…華やかなポップが立ち並ぶメガファイトに明白な形で勝った方がFighter of the yearに選ばれる可能性は高そうです。

ただ、年内に決まりますかね?

クロフォードを挑発しているジャーメルを倒してジュニアミドル級のUndisputed champion、4階級制覇なんて瓢箪から駒なら、BWAAで2014年以来、リング誌ではキャリア初のFighter of the yearもありえます。

ちなみに、2014年のリング誌がFighter of the year
に選んだのはセルゲイ・コバレフでした。




…他にもだれかいたかなぁ?




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忌々しいパンデミックが「良かった」ことなんて、何一つありません。

あってはいけません。

しかし、 今年のInternational Boxing Hall of Fameの式典は、パンデミックの影響で式典が開催できなかった2020、2021年も合わせたTriple Header となったのです。

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trilogy_boxers
モダーン部門に選ばれた豪華絢爛なメンツ↑です。



日本人ではフィティング原田しか入神できていない殿堂。

しかし、井上尚弥は史上二人目がほぼ確実かもしれません。引退年のライバルにもよりますが、一発殿堂も十分ありえます(と思いたい!)。

しかし、よくよく考えると…。

毎年3人枠(というのもおかしな話で、それは後々お話しするとして)だと、例えば上のメンバーでメイウェザー、ロイ・ジョーンズJr.、バーナード・ホプキンスのレベルが3人揃う〝死のグループ〟に入ってしまうと、間違いなく4人目に落ちてしまう井上の一発殿堂は夢散してしまいます。

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現時点の井上では、さすがにこのメンツとはステージが違います…。井上も一発殿堂を確実にするにはFighter of the yearを最低1回は獲りたい!


マルケス、コット、ウォード、クリチコと比べたら…井上の現時点のレガシーはどうでしょうか?このメンツでも、かなり不安じゃないですか???

モズリーやトニーと比べても…全く安心はできません。

そう考えると、一発殿堂のハードルの高さがあらためてよくわかります。




どうなんでしょう?

少し目線を落として、現時点で区切って、井上とドネアのレガシーはどっちが上でしょうか。

PFP2年君臨のロマゴンには勝てるわけがないにしても、ドネアにも負けてますかね?

もちろん、何よりも、井上にはまだまだ未来が残されているので。ここで区切るのが間違っているのですが…。
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最も分かりやすいFighter of the year からおさらいです。

Fighter of the year サッカーでいうパロンドール、つまり年間最高選手賞。

「その年に最も目覚ましい活躍をしたファイター」に贈られる賞です。

では「目覚ましい活躍」とは何なのか?

最近5年間の受賞者から見てみましょう。

左が全米ボクシング記者協会(BWAA)右がリング誌Fighter of the year です。


【2017年】

ワシル・ロマチェンコワシル・ロマチェンコ
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▶︎何が評価されたか▶︎▶︎▶︎前年11月のニコラス・ウォータースから、この年はジェイソン・ソーサ、ミゲール・マリアガ、ギレルモ・リゴンドーと戦い3戦全勝、全ストップ勝ち。

いずれも、肉体的には大きなダメージを与えなくても、絶望的な技術差を見せつけて相手の心をヘシ折る〝ノー・モア・チェンコ〟勝ち。

リゴンドー戦では、まだプロ10戦目。アマチュア史上最高のボクサーが、プロのリングで失神KOよりも衝撃的な勝ち方があることを見せつけました。



【2018年】

オレクサンダー・ウシクオレクサンダー・ウシク
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▶︎何が評価されたか▶︎▶︎▶︎ウクライナ人が2連覇!WBSSのファーストシーズンで優勝、イベンダー・ホリフィールド以来、クルーザー級史上二人目、4団体時代では初のUndisputed Championに就きました。

〝クルーザー級のロマチェンコ〟は、本家が跳ね返された階級の壁を、のちに易々と突き破る大勝負を魅せてくれることになります。

バルト3国など欧州のボクシング市場も刺激しましたが、WBSSの路線は米国で人気ない階級を狙い撃ちにしたため、ファーストシーズンは米国で放送がありませんでした。



【2019年】

カネロ・アルバレスカネロ・アルバレス

この年は、ミドル級の強豪ダニエル・ジェイコブスとのクロスゲームを制し、ライトヘビー級でかつて絶対王政を敷いていたセルゲイ・コバレフを追いかけまわしてノックアウト。

「強豪とはいえジェイコブスとどっこい」「借金苦と前日計量のリバウンド制限の二重苦のコバレフ」…まともなボクシングファンは、ラスベガスから立ち昇る腐臭に鼻をつまみました。



【2020年】
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テオフィモ・ロペステオフィモ・ロペス&タイソン・フューリー

▶︎何が評価されたか▶︎▶︎▶︎リング誌はロペスとフューリーがW受賞。

ロペスは、パンデミックの最中とはいえ、ロマチェンコを大番狂わせで下した1試合だけ。ロマチェンコは肩の古傷が悪化していたから負けました。

人気はあるロペスですが、フィジカルは中谷正義の方がずっと上で、技術的にもどっこい。あの日のロマなら、今頃は中谷がFighter of the yearに輝いていたかもしれません。

。。。。。泥酔してると、我ながら好き嫌いがはっきり出るわい!



【2021年】

カネロ・アルバレス
カネロ・アルバレス

昨年のカネロは文句無し。以上。

。。。。。泥酔してると、我ながら好き嫌いがはっきり出るわい!


**************



メディアによって、評価が分かれるFighter of the yearももちろんあります。

2012年のFighter of the year はBWAAがノニト・ドネア、リング誌はファン・マヌエル・マルケスでした。

ドネアはこの年4試合を戦い、フライ級〜バンタム級〜ジュニアフェザー級の3階級を制覇(世界的にはジュニアバンタム級のタイトルは獲ったと認められていませんので、今でも4階級制覇です)。

バンタム級時代までの破壊的な強さは影を潜めたドネアは、一部の専門家から明らかな劣化も指摘されていましたが、多くのファンやメディアの目には、その蜃気楼がまだ見えていました。

一方のマルケスが2012年にリングに上がったのは、2度だけ。そのうち1試合はセルゲイ・フェドチェンコ相手のWBOジュニアウェルター級王者決定戦。Fighter of the year にはなんの効力もない一戦でしたが、もう1試合が歴史的に残る名勝負だったのです。

「2012年のFighter of the year。BWAAがドネアで、リング誌がマルケス」。

そう問いかけられて、軽量級に明るい日本のボクシングファンでもドネアのFighter of the year については「なんで獲ったんだっけ?」という人もいるかもしれません。
スクリーンショット 2021-05-01 10.08.46

しかし、マルケスのFighter of the year と聞けば「マニー・パッキャオを失神KOしたからだ!」とすぐに思い当たるでしょう。

BWAAは人気階級におもねることなく、軽量級のドネアの4試合を「目覚ましい活躍」と評価しました。

一方のリング誌は、世界中のボクシングファンを戦慄させたマルケスのカウンターを「目覚ましい活躍」と見たのです。

もし、リング誌的な視点からFighter of the year が選ばれてしまうと、欧米での関心が低い軽量級ボクサーに光が当てられるチャンスは益々少なくなってしまいます。

そもそもの注目度が低く、欧米で関心が薄い軽量級ボクサーには「目覚ましい活躍」など不可能ということになるのです。

PFPに2年も君臨しながらFighter of the year には一度も選ばれなかったローマン・ゴンサレスや、日本ではマニアがあれほど評価し、世界的にもリング誌PFP1位に立った井上尚弥が米国や英国市場でまともな需要が無いという悲劇は全てここに起因しています。

もし、100万ドルの報酬に一度も手が届かないチョコラティトが軽量級ではなくヘビー級で、タイソン・フューリーやアンソニー・ジョシュア、デオンティ・ワイルダーを圧倒していたなら、100万ドルどころか1億ドル稼いでForbesのアスリート長者番付に名前を刻んでいたかもしれません。

欧米は軽量級を嫌って無視しているというか、もっと最悪で視界にも入っていないのです。

しかし、しかし…日本でも、軽量級を蔑視しているなんてことはないでしょうか?

あってはいけないことですが…。

井上もバンタム級ではなくミドル級周辺の人気階級で同じことをやっていたなら、つまりエロール・スペンスやテレンス・クロフォード、カネロ・アルバレス、ゲンナジー・ゴロフキンを倒しまくっていたら、大坂なおみや錦織圭に後塵を浴びせてForbesのトップをメッシやフェデラーと争っていたかもしれません。

そして、日本でも「バロンドールと同じ〜」なんてマヌケな評価ではなく、正真正銘、本物の尊敬が集まっていたでしょう。
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もし、村田諒太の五輪金がミドル級ではなくバンタム級だったなら、電通がプロジェクトチームを立ち上げることは100%あり得ませんでした。

「Fighter of the year」と「PFP」、そして「IBHOF=International Boxing Hall of Fame=国際ボクシング名誉の殿堂」。

この三つは評価基準が違います。

その最大の違いは評価の対象となる「時間」です。

PFPはそれこそ「1試合」で順位が変わります。

Fighter of the yearは文字通り「1年間」。

そして、IBHOFは「キャリア全体」です。

PFFが過大評価を誘発しやすくてダメみたいな気もしてきますが、Fighter of the yearとIBHOFは、米国の人気階級に偏りがちですが、PFPは人気のない軽量級選手にも門戸を開いています。

まだまだ、続きます。。。。 
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井上尚弥のリング誌pound-for-pound =PFP1位で日本のメディアが大きく取り上げたPFP。

そこには「サッカーでいうとパロンドールを獲るようなもの」(上田晋也)という、大きな勘違いも横行しています。
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パロンドールは年間最高選手賞ですから、PFP1位ではなく、文字通りFighter of The the yearに該当します。

PFPと違い、Fighter of The the yearを受賞すると全米ボクシング記者協会(BWAA)ではトロフィー授与の式典を開催、リング誌でも「Fighter of The the year」と刻印されたベルトが贈られます。

最近のように、月に何度も交代するPFP1位でこれをやると大混乱を招いてしまいます。
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シュガー・レイ・ロビンソン トロフィーを手にするパッキャオ。

ボクサーの名誉には、先週末に式典が開催されたIBHOF=International Boxing Hall of Fame=国際ボクシング名誉の殿堂もあります。

この三つ、価値のある順番に並べたらどうなるのでしょうか?

もちろん、評価基準が違う三つを比較することに意味はありません。

とはいえ、格付けするなら、評価基準が曖昧で表彰制度もなく「意味がない」と揶揄されることもあるPFPキングがまず脱落するのでしょうか?

PFP1位になっても、Fighter of The the yearを受賞しても泣かなかったフロイド・メイウェザーが殿堂入りで咽び泣いたのは単純に年を取ったからなのでしょうか?

そもそもが泣き虫のマネーですからPFPやFighter of The the yearで泣いても良いんじゃないでしょうか?

ただ、メイウェザーやマニー・パッキャオはPFP1位はもちろん、Fighter of The the year、一発殿堂入り(パッキャオはまだ3年後ですが一発殿堂は疑いようもありません)、全てを手にしています。

そして、リング誌とESPNのPFP1位経験者は必ず殿堂入りしていますが、一発殿堂のウラジミール・クリチコがPFP1位になったことがないように、その逆もまた然りではありません。

それどころか、一発殿堂のアーツロ・ガッティやダニエル・サラゴサはFighter of The the yearはもちろん、PFPのベスト10経験すらありません。

彼らの全盛期は、今ほどインターネットの普及が進んでいなかったこともPFPに入りにくい環境にありました。

サラゴサに至ってはインターネットそのものが存在しない時代でした。

「サラゴサがカルロス・サラテを下して2階級制覇に成功した1988年2月のPFPは誰?」。この質問に答えることが出来る人は、世界中を探しても1人もいません。

PFPランキングっていつからあるの?という疑問は、そもそも今でもPFPランキングって本当に存在してるのか?という真理に突き刺さります。

例えば、今日2022年6月15日のリング誌PFPは井上尚弥ですが、6月11日まではオレクサンダー・ウシク、でした。

そして5月12日まではカネロ・アルバレスが1位。

1年後ですら「去年のPFP1位って誰?」という質問に誰も答えることは出来ません。

それでも…PFP1位は必ず一発殿堂入り。PFP1位は必ずしもFighter of The the yearではないが、Fighter of The the yearはPFP1位とは限らないという事実が横たわっています。

ややこしい書き方になってしまいましたが、ローマン・ゴンサレスはPFP1位に2年間も君臨、一発殿堂確実ですが、Fighter of The the yearには一度も獲れていません。

また、最近でもBWAAとリング誌で2020年のFighter of The the yearに輝いたテオフィモ・ロペスはPFP1位経験はなく、現状では殿堂入りもあり得ません。

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この相関関係を考えると、PFP1位>Fighter of The the year>殿堂入り という不等式が成り立ちそうで、同時にジャンケンのような関係性が浮かび上がってきます。

ただ、PFPの目を覆うばかりの液状的性格から、PFPの2位以下は記録はもちろん記憶にもとどまりにくいことはお分かりでしょう。

PFPはキングになって初めてマナイタの上に乗ることが出来るのです。

評価基準もその成り立ちも、歴史も全く違うPFPとFighter of The the year、そして殿堂。

PFPに関しては「井上が日本人初の1位」と言われても、具志堅用高らは「俺たちの時代はそんなの雑誌のお遊び企画でしかなかった」と笑うでしょう。

まあ、今でも雑誌のお遊びですが。

しかし、もっと、突き詰めてしまうと…。



さて、PFPとFighter of The the year、殿堂の評価基準と成り立ち、歴史を振り返ってゆきましょう。
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チョコラティトがPFPキングに立った2015年は「メイウェザーvsパッキャオ」が挙行されたエポックでした。

満票一致でPFPを分け合ってきた超弩級のスーパースターが山を下り始める年。

一方、井上が初ランクインした2017年は、ポスト・パックメイの新しいレジームが出来上がった時代で、順位を上げるのが難しい時期でもありました。


【The Long And Winding Road】

2015年の〝初入閣〟から丁度2年で頂点を極めたローマン・ゴンサレスに対して、井上尚弥のPFPキングへの航海は決して順風満帆とはいえないものでした。

mythical ranking=妄想番付にモンスターが初登場したのは2017年5月。昨日、1位に昇りつめるまでに要した時間は丸5年。

デビュー以来の無敗の快進撃を続け、この5年間でも勝利をジャッジに委ねたのはノニト・ドネア戦だけ。

それでも、2017年はマイキー・ガルシアがWBCライト級王者デジャン・ズラティニカンを倒して3階級制覇、エイドリアン・ブローナーも一蹴するなど印象的なパフォーマンスでPFPに突入、井上はランクアウトしてしまいます。

それでも、チョコラティトの連敗やアンドレ・ウォードの引退で10傑に再突入。 

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2018年、井上は日本人最高位(山中慎介=8位)を更新、6位まで順位を上げました。↑こちらはリング誌2018年11月号のPFPランキング。

バンタム級の井上、ジュニアバンタム級のシーサケット・ソールンビサイとドニー・ニエテス 、フェザー級のレオ・サンタクルスと軽量級から4人がランクイン。

ライト(軽量)級のマイキー・ガルシアまで含めると、10傑のうち5枠を軽量級が占めました。

そして、2019年。波乱万丈のズッコケトーナメントWBSSが何とかかんとか着地する年です。

ランクを4位まで上げて臨んだWBSS決勝の相手は、まさかのノニト・ドネア。そして、まさかの激闘。

ドネアにキャリア最大の苦戦を強いられた井上でしたが 、PFPランクは一つ上がって3位に。

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何気にマニー・パッキャオが10位に入って来たのも凄すぎます。

ドネアはノルディーヌ・ウバーリ戦でも明白なアンダードッグだったように、完全に峠の超えたロートルとみられていただけに、個人的にはランクダウンはあってもアップはないと感じていました。 

そして、2020年2月号でチェックメイト、2位に。

上は、カネロ・アルバレスだけ!

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しかし、テレンス・クロフォード(vsショーン・ポーター)、オレクサンダー・ウシク(vsアンソニー・ジョシュア)がビッグネームの強豪相手に相次いで出色のパフォーマンスを見せ、井上はまさかの4位転落。

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井上4位、ファン・フランシスコ・エストラーダ6位、チョコラティトが9位に返り咲き、9位だった井岡は10位に。ジュニアバンタム級から3人、バンタム級から1人、115〜118ポンドのわずか3ポンドに隣接する2階級から計4人がPFPに食い込んでいました(その後、カネロを大番狂わせで下したドミトリー・ビボルのランク入りで井岡はランクアウト)。

そして、先週火曜日のNo Drama in Saitama で、ドネアを完全な形で撃退。

初登場から丸々5年間の航海を終え、ついに井上は目的の港に着岸しました。

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井上の希望通りに、年内にWBO王者ポール・バトラーに勝利、1972年のエンリケ・ピンダー以来、50年ぶりのバンタム級 Undisputed Championの座に就くと、その座は安泰です。

チョコラティト超えの2年以上の君臨は至難の業に思えますが、一つ階級を上げてジュニアフェザーに2年とどまるなら無敗をキープできるかもしれません。
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注目度が一段上がるフェザー級進出はいつになるのか?

とはいえ、バトラー戦の交渉が難航して、3位クロフォードと4位スペンスJr.のウエルター級 Undisputed Champion決定戦が行われると、その勝者が井上に取って代わる可能性大。

年内にバトラー戦を決定しなければなりません!



PFP1位キープのためというのは、正直どうでもいいんです。

井上のキャリア、残り時間を考えたときに、これ以上ロスタイムを作ってはならないのです! 
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当初の企画「PFP定点観測」は後ろ倒しにして、軽量級でリング誌PFP1位に輝いた井上尚弥と〝唯一の先輩〟ローマン・ゴンサレス、PFPを巡る経緯などもろもろ比較ひながらチョコラティト越えにはあと何が必要かを考えてゆきます。

そして、マニー・パッキャオのラスベガス征服まで長らくアジア最高と評価され、今なお日本最高と見られているファイティング原田のBWAAのプロフィールを書き換えるには何が必要か?も突き詰めてゆきます。

チョコラティトが順調に階段を駆け上がってPFPキングになったのに対して、意外にもモンスターは紆余曲折を経ての頂上制圧でした。

「PFPキングへの道」という点では、2人の軽量級はまったく対照的な道程を歩むのです。

※ご紹介するのはリング誌電子版のPFPに連動した雑誌のランキングです(電子版の記録はさすがにありません)。また、リング誌の年間表彰にも組み込まれていた投票制の年間PFP=The Best Fighter Poll(2017年で惜しまれながら廃止)とは異なります。


【THE BEGINNING〜初めの一歩】
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ローマン・ゴンザレスがリング誌PFPに突入したのは2015年1月号。第9位にランクイン。

ヘビー級に冷たいリング誌で3位のウラジミール・クリチコは、本当に強かった。米国では人気が上がりませんでしたが、PFPの見方として純粋ヘビー級で上位評価されているファイターへのリスペクトは特別です。

逆に言うと、マイケル・スピンクスやイベンダー・ホリフィールド、ロイ・ジョーンズJr.、オレクサンダー・ウシクのようなボクサーは「階級支配度」の評価基準を緩和され「ヘビー級を獲るなんて凄い!」枠で高い評価を得ました。

ロイに至っては1試合限定の〝ピンポンダッシュ〟。ボクシングの神様の怒りを買うのは当然でした。

これは「結局はヘビー級なんじゃん」ということ。チマリ、PFP本来の「どの階級も平等」という大前提から逸脱しているのです。
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激しいトラッシュトークや予告KO、ダウンを奪うとギロンチンポーズがデフォルト、ちょいワル時代のドネア。「ドネアは人格者」と信じている最近ボクシングを見始めた方には目の毒かも知れません。

パックマンを必死で追いかけていた「ちょいワル時代」と〝ドーピング教祖〟
の異名をとるビクター・コンテを迎え入れた聖人君子ドネア…あなたはどっち派でしょうか?

ちなみにこの号では、ニコラス・ウォータースに破壊されたノニト・ドネアについて「(ギレルモ・リゴンドーにレッスンを受けてウォータースに惨敗では)さすがに引退すべき」と指摘されていました。

それが、まさか7年後に、井上尚弥とバンタム級最強決戦を戦っているとは、当時は誰も想像できなかったでしょう。

このときのランキングを見ると、8位までのグレートはいずれもキャリア晩年。多くのボクシングファンが、9位のチョコラティト、10位のカネロ・アルバレスが新時代の鐘を鳴らすと予感していました。

そして、2017年1月号。

フロイド・メイウェザーとアンドレ・ウォードが無敗のまま引退。クリチコやパッキャオらが敗北する〝グレートたちの地滑り〟を受けて、芸術的なコンビネーションを紡ぐチョコラティトがついにトップに立ちます。
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そして、もう一目瞭然ですが↑、この号で日本人が初めてリング誌PFPに登場。神の左、山中慎介です。9位にランクイン!

4団体17階級時代の荒れまくる大海原、PFPはその羅針盤の一つでしたが、長谷川穂積も西岡利晃も10傑に名前を刻むことが許されませんでした。

山中に続いて内山高志もランクイン。日本人2人体制になり「そのドアをノックしている」(リング誌)井上尚弥のランク入りも時間の問題と見られていました。

日本人3人体制!の期待もむなしく、内山がジェスレス・コラレスにまさかの番狂わせに散ります。

そして、2017年5月にPFPの扉がモンスターに開かれます。
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そして、ここからモンスターのPFPキングへの疾走が始まるのです…というわけにはいきませんでした。

井上は、ランクアウトを余儀なくされてしまうのです。
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