子供は3歳までに一生分の親孝行をする。


大人は、子供から贈られた歓喜や癒し、笑いや安らぎ、そしてときどきの心配…そんな宝石のような時間を簡単に忘れてしまう、本当に愚かで悲しい生き物です。

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1998年の夏、甲子園で横浜高校が繰り広げた伝説的な激闘の数々は決勝戦でのノーヒットノーランでフィナーレを迎えるという、松坂大輔を主人公にした筋書通りのドラマでした。

プロ初登板の日には、どの局のニュース番組もナイターのプレイボールが待ちきれずに昼間から平成の怪物の一挙手一投足を生中継、前代未聞の大フィーバーを巻き起こしました。

そして、プロ一年目から、松坂は高卒ルーキーとして球史に残る大活躍を見せるのです。

2006年3月には記念すべき第一回ワールドベースボールクラシックで快投、大会MVPに輝き、サムライ・ジャパンを世界一に導いてくれました。

2006年のシーズンオフ、ボストン・レッドソックス入りが決まると日本の都市では号外が配られ、米国メディアは「日本の国宝がやって来る」と大々的に報じました。

レッドソックスから西武ライオンズに渡った移籍金は、なんと60億円、その金額は松坂が在籍した8年間の総年俸の4倍以上にのぼったのです。

松坂大輔が日本中をどれほど楽しませてくれたことか。野球界の発展にどれだけ貢献してくれたことか。

そして、みんながみんな、どれだけ松坂大輔を愛したことか。


「給料泥棒」
「今さら通用するわけがない」
「これ以上、晩節を汚すな」

はぁ?

松坂大輔は、日本のスポーツファンと野球界に対する〝親孝行〟をとっくの昔に、でっかい熨斗まで付けて済ませた偉大な野球人です。

その彼が「気の済むまで野球をしたい」と希望しているのです。

誰もケチをつけたり、文句をたれる資格などありません。

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ソフトバンクは、なんの前触れもなく、いきなり現れた37歳の投手と大型の複数年契約を結んだわけではありません。

松坂は、誰かを傷つけたわけでも、もちろん法を犯したわけでもありません。

確かに、真夏に咲き誇るヒマワリのようなピッチングは、残念ながら、長い間、目にすることが出来ていません。

しかし、誰かを叩くのが大好きなメディアから「いろいろ言われてますよね?そんな非難、批判を見返すようなピッチングを見せて下さい」と、皮肉っぽくマイクを向けられても「野球は誰かを見返すためにやるものじゃないです」と笑った松坂大輔は、あの熱い夏の日から何も変わってはいません。

松坂の夏は、きっと必ずまた訪れます。

全天候型のナゴヤドームは、夏の青空も、漆黒の夜空も、吹き抜ける風も楽しめない、味気も季節もないスタジアムですが、ドラゴンズファンは本当に幸運です。

松坂が、熱い夏を運んで来てくれるのですから。

新しい元号はまだ発表されていませんが、平成に続く元号も「怪物」の冠言葉にしちゃいましょう。

二つの時代を股にかける怪物なんて、格好いいじゃないですか!


もちろん、甲子園も待っていますよ。

あなたが甲子園のマウンドに帰って来る日、私は生まれて初めて三塁側の席を買いますね。