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大橋ジムの石井武志がウィルフレド・メンデスと空位のWBAストロー級タイトルを争い、鮮烈な初回65秒KOで新チャンピオンになりました。

イベントのメインもWBAの決定戦でジュニアフライ級の吉良大弥がカルロス・カニサレスに7回KO勝ち。一夜にして二人の世界王者の誕生です。

石井のKOタイムは、平仲明信(vsエドウィン・ロサリオ:92秒)を上回るタイトル奪取最短記録、タイトル戦でも井上尚弥の70秒(vsファン・カルロス・パヤノ:90秒)も更新しました。

そして、吉良のプロ5戦目での戴冠も、田中恒成に並ぶ最短記録。

スポーツファンからの注目度は非常に寂しい〝世界〟タイトルマッチでしたが、記録づくめ。

さらに、大橋ジムの石井ンはジムの〝師匠〟格で「チャンピオンメーカー」と呼ばれたヨネクラジムのチャンピオン5人を上回る、ジム6人目のチャンピオン。

ちなみに、大橋ジムの6人は川嶋勝重(ジュニアバンタム級)、八重樫東(ストロー・ジュニアフライ・フライ級)、井上尚弥(ジュニアフライ・ジュニアバンタム・バンタム・ジュニアフェザー級)、井上拓真(バンタム級)、武居由樹(バンタム級)、そして石井(ストロー級)。

ユネクラの5人は柴田国明(フェザー・ジュニアライト)、ガッツ石松(ライト級)、中島成雄(ジュニアフライ級)、大橋秀行(ストロー級)、川島郭志(ジュニアバンタム級)。

ヨネクラから大橋へと繋がれた半世紀、この11人の系譜から読み取れるのは日本人の体格向上に反比例するようにより軽いクラスでタイトルホルダーが作られているというパラドックスです。

もちろん、ボクシングのマイナー化が進み、体格の良い才能がメジャースポーツに流れる傾向が強まったこと、団体と階級(特にフェザー未満の超軽量級)の増殖でタイトルへのハードルが下がったことを考えると、これは矛盾でもなんでもありません。

ライト級以上の人気階級にフィットするような体格の才能は、ボクシングジムには目を向けません。日本人の平均体格を下回る人材ばかりが集まるのがボクシングというスポーツです。

自分が〝その立場〟なら、ヘビー級やウエルター級の選手育成に注力し、本物の世界に打って出るか?

そう聞かれたなら、答えはNOです。

おそらく今のジム経営者と同じような、ライト(軽量)級未満で選手を育てていくでしょう。

しかし、大谷翔平のようにMLBでの「日本人には無理」と言われたホームラン王、さらには「現代では不可能」とされた二刀流をやってのけたように、メジャーに向けた挑戦の本気の意気込みを見てみたいです。

もちろん、大谷のような恵まれた体格と運動能力を併せ持つ才能は、ボクシングを選んでくれません。

しかし、奇しくもきょう、石川雅規が引退会見を開き「プロ野球は無差別級。小さいから大変だね、頑張ってるねとおっしゃってくださいますけど、僕はこの体しか知らない。大きい選手に勝ちたい、負けたくない思いが根底にある。その中で、いろいろなものにアンテナを張りながら、自分の体で実験しながらやってきた」と笑ってユニフォームを脱ぎました。

〝大きな相手〟を倒すのは、スポーツ最大のカタルシスです。ここで〝大きな〟というのは、ラスベガスやロンドンの大会場を主戦場とする米英での「人気階級」や、自分よりもはるかに大きな経済力を持つ「スポーツセレブ」を指します。

それは、エコノミークラスで遠路はるばる来日、ビジネスホテルで宿泊、「ウィニングのグローブが欲しい」とおねだりした、その辺のサラリーマンより収入が低いメンデスらではありません。