7月5日、日曜日(東アジア時間7月6日)。大坂なおみがアリーナ・サバレンカに6-2、7-6のストレート勝利を収める番狂せを起こしました。

しかし、この日のウィンブルドンで主役を演じたのは28歳の日本人ではなく、さらに巨大な番狂せを起こした21歳のフィリピン人でした。




〜アレックス・イアラの幼い頃の夢は、スポーツを通して国民に勇気を与えることだった。

彼女がインスパイアされたのは、アジアが産んだ至上最高のボクサーだ。

「その日曜日は昼間だというのに街から人も車も消えて、国中の人が衛星放送のテレビ画面に釘付けになる。それは年に何回かの祝祭、そう本当にお祭りでした。大人も子供も、とにかく国中がマニー・パッキャオに熱狂していたのです」。

フィリピンの日曜日の昼間。その時間はラスベガスではサタデーナイト、ショーのクライマックス。巨大アリーナでパッキャオが自分よりも大きな相手を倒し続けたスペクタクルの時間だった。


"Of course, the national hero in sports in the Philippines is Manny Pacquiao. He's probably the first global Filipino athlete I can remember and associate with so many childhood memories. Whenever he fought, it felt like a holiday in the Philippines. People would gather to watch, and it was a huge event. He's incredibly inspiring," she stated.


「もちろん、国民的英雄といえばマニー・パッキャオのことです。小さい頃の思い出はとにかく強烈で、最初に衝撃を受けた世界的なスターでした。パッキャオの試合の日は祝日のようにみんなで集まって応援するんです」。

イアラにとってパッキャオは永遠に輝き続けるスーパースターだが、多くのボクシングファンにとって今のパックマンは「晩節を汚して欲しくない」終わったアスリートでしかない。

それでもイアラの記憶は鮮烈なままだ。

かつて、政府軍とゲリラの内戦が激しかった時期ですらパッキャオの試合がある日は、暗黙の停戦日だった。パッキャオが勝利した瞬間、静まり返っていた街は一気に息を吹き返し、あちこちで歓声が沸き起こり、車は祝福のクラクションを鳴らした。

信じられないことに、政府軍とゲリラが互いに空砲を撃って祝うことまであった。

しかし、パッキャオが神の座から姿を消してから何年もの歳月が流れてしまった。

それ以来ーーーー貧しい国に暮らす1億人近い人々は、つまらない日曜日をずっと過ごしていた。


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といっても、それは昨年までの話だ。

7月5日の日曜日。アレックス・イアラはディフェンディング・チャンピオンで世界3位のイガ・シフィオンテクを超絶の大番狂せで撃破したのだ。

「私は早朝から深夜まで、毎日12時間もコートで厳しい練習を積み重ねてきました。でも、それは一人ぼっちではなく、家族とトレーナー、練習パートナー、スポンサー…本当に多くの人が私と一緒に戦い続けてくれました」。

イアラが生まれたメトロ・マニラが内蔵するケソン市は、人口300万人に迫る巨大都市。15歳でプロになったイアラは、極貧の環境から成り上がったパッキャオとは事情が違うが、母国が抱える矛盾について無知ではなかった。

「とんでもない不利な条件を突きつけられても強敵に立ち向かって、フィリピンに勝利をもたらしてくれたからパッキャオは英雄になった。私がパッキャオになれるなんて思っていないけど、母国を勇気づけたい思いは同じ。私は私のやり方で母国を勇気づけたい」。

「パッキャオが引き金になって、オリンピックで金メダリストが誕生した。私も彼らに続く。ウィンブルドン3回戦突破なんて、富裕国のスター選手にはたいしたことじゃないでしょう…でもフィリピン人の私にとっては、私の国フィリピンにとっては…」そういうと、パッキャオ以上に欧州でセンセーションを巻き起こしたイアラは込み上げてくるものを抑えきれなかった。

シフォンテク戦が始まる前には、白昼のメトロ・マニラから人並みも車列も消えた。それは2019年7月、ちょうど7年前の「パッキャオvsキース・サーマン」以来の静けさだった。

そして、パッキャオのような大番狂せが起きた瞬間、あちこちでクラクションが鳴り響き、建物から歓声を上げる人々が溢れ出た。

パッキャオにしか出来なかったことを、21歳の女性がやってのけたのだ。

日曜日の午後、フィリピン中の島々をパッキャオ以来の興奮に巻き込んだイアラは母国の子どもたちへ「パッキャオや私を目指さないで。あなたは、最初のあなたになって下さい」とメッセージ。

国民的英雄に飢えた1億人の期待は膨張するばかりだが、イアラはまだ何も成し遂げていない。

そして、21歳の旅はまだ始まったばかりだ。