将棋には「今日の良手は明日の悪手」という格言があります。

斬新な攻め手が有効なのは、対戦相手の研究と対策が確立されるまでの短い時間だけ…。

この格言は、スポーツにおいても顕著に当てはまります。

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ボクシングの世界でも一時、史上最強の呼び声もあったマイク・タイソンはバックステップはもちろんサイドステップも踏めない、得意のヘッドスリップにもナンバリンステムの弊害である明らかな癖があり、バスター・ダグラス戦を境に〝魔法のガウン〟を剥ぎ取られてしまいました。

「下がらされたらジ・エンド」。それがタイソンの正体でした。

もちろん、タイソンを下がらせるのは至難の業ですが、精神的な脆弱さもあり、一旦決壊した堤防を修復して逆襲する勝負根性もBプランも持っていませんでした。

猪突猛進しかできないアイアン・マイクは、変幻自在のステップを駆使するオレキサンデル・ウシクとは全く別のファイターです。

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野球でも、ここ2年ほどMLBを席巻した魔球スイーパーは、多くの打者が見極めるようになりました。

いまや、スイーパーを魔球と呼ぶ人はどこにもいません。



ただし…あらゆる事象に存在するのが、例外です。


ボクシングで〝メイウェザーの血族〟らが操るショルダーロールや、野球のナックルは時代を超えて研究しても対応策が見出せないままの魔術、魔球であり続けています。

そして、ショルダーロールやナックルは容易に模倣できない、習得する練習方法が明確に示すことが出来ないことでも広く知られています。

エイドリアン・ブローナーやマーロン・タパレスが「マスターした」と勘違いしていたのは魔法陣のショルダーロールではなく、中途半端なショルダーブロックに過ぎませんでした。

危険極まりない猛毒を飲んでしまったタパレスはムロジョン・アフマダリエフが馴化すると金魚すくいの薄弱な皮膜のように破られ、ブローナーに至ってはマニー・パッキャオに早々と薄皮を突破されてしまいました。

また、ナックルボールは投げる動作がわかりやすく、打者はあらかじめ待ち構えることが出来る点でも他の変化球ではあり得ません。

ナックルを除く全ての変化球は、直球を投げるときとほとんど変わらないフォームで投げることが絶対の鉄則ですが、ナックルにはこの絶対の鉄則が当てはまりまらないのです。

さて、佐々木朗希のスプリット(フォーク)です。

その特徴は160kmを優に越えるストレートとの差が大きな、140kmという〝遅さ〟。

打者にとってはチェンジアップです。

そして…140kmという〝速さ〟では考えられない回転数の少なさが、このボールを単なるチェンジアップでない魔球に仕立てているのです。

無回転に近いボールが不規則に動いて落ちるのはサッカーでも同じ、野球ではそれがナックルです。

ただ、回転数を少なくするとするほど、球速は落ちます。それなのに朗希のナックルは140kmもあるのです。

140kmでゆらゆら落ちる〝ナックルフォーク〟。捕球するキャッチャーが戸惑い、取れないこともあるのですから、打者が打とうだなんておこがましいにもほどがあります。

ストレートの球速、ナックル・フォーク、そして制球力…どれもこれもまだまだ私たちの知っている朗希ではありません。


ユニコーンにMVP、獲られてる場合じゃないぞ!