日本時間の昨日、カネロ・アルバレスをマイルド・アップセットで下したテレンス・クロフォードを祝賀するパレードがネブラスカ州オマハで行われました。

贅沢に黄金を施したリング誌特製ベルトを肩にかけ、沿道からの歓声を受けていたクロフォードですが、あの〝ちょっとした番狂せ〟が後世、どう評価されるのかはまだわかりません。

クロフォードが勝利を収めたのは、スーパーミドル級の偉大な絶対王者だったのでしょうか?

それとも、ドミトリー・ビボルに大番狂せで完敗してから自分のボクシングを見失い、3年以上もKOから遠ざかっていた、完全劣化版のカネロ・アルバレスだったのでしょうか?

日本では多くのボクシングファンが「クロフォードがやったことは井上尚弥には出来ない偉業」と、高く評価、PFPのランクダウンを受け入れています。

しかし、海外では早くも〝後世〟がクロフォードの周りを取り囲んでいます。




カネロの勝利が8/13(1.62倍)、クロフォード13/10(2.3倍)というオッズは、クロフォードが勝ったとしてももはや番狂せとはいえない数字です。


ファイトウィークから試合前までの短い時間でも、掛け率が逆転する可能性も十分ありうる差です。


当時WBCミドル級王者だったカネロが、アミール・カーンのスピードに手こずりながらも6ラウンドで痛烈に沈めたのが2016年5月7日、9年以上も前のこと。


クロフォードがカーンとは違うのと同様に、カネロもあのときのカネロではありません。


ーーー⬆︎これは、戦前に「CANELO vs BUD 〜クロフォードが明白に勝利を収めたら?{④}」で書いたものです。

試合前から「衰えた2人の対決」「より衰えが深刻なのはカネロ」という2点はメディアやファンの共通認識でした。
https://fushiananome.blog.jp/archives/39249067.html




ビボルに敗れてからの6試合の相手を振り返ると、ゲンナジー・ゴロフキン(キャリア初のスーパーミドル級で40歳バージョン)、ジョン・ライダー(技術もパワーもない英国の〝ゴリラ〟)、ジャーメル・チャーロ(2階級下から一気にスーパーミドルに挑んだ上に、劣化バージョン)、ハイメ・ムンギア(当時無敗ながらジュニアミドル級がベスト)、エドガー・ベルランガ(作られた連続KO記録の雑魚)…。

そして、クロフォード戦の4ヶ月前に行われた非力にもほどがあるウィリアム・スカルとの試合では、12ラウンドの試合でカネロは152発、スカルは293発、2人合わせてわずか445発しか交錯しなかったというCompuBox40年の歴史で不名誉な新記録を樹立したばかりでした。

カネロが楽にKOすると予想されていた6試合でしたが、全試合でジャッジの手を煩わせていたのです。

そして、カネロの場合は井上尚弥とは違い、当該階級に物足りない相手しかいない状況ではありませんでした。

ボクシングの世界で重視される「負けた相手へのリベンジ」では、ビボルとの再戦に消極的で、最も対戦が期待されたデビッド・ビナビデスに対しては「逃げた」と言われても仕方がない態度を取り続け、その挙げ句の果てが、クロフォード戦…。

スクリーンショット 2025-02-08 14.31.34

シュガー・レイ・レナードが競り落としたマービン・ハグラーも劣化が指摘されていましたが、対戦相手の質は〝ファン投票〟で選ばれたような豪華さ、そんな相手をKOで倒し続けていました。

実質5年のブランクもあるレナードが、いきなりミドル級デビュー戦でカムバック。しかも相手は、ハグラー。

当時のハグラーは、現在のカネロと同じく米国リングの支配者でしたが、その強さ、対戦相手の質は、比べてしまうとカネロが憐れになるほど差がありました。

もちろん、カネロとセットの「疑惑の判定」は、ハグラーには全く無縁でした。

当時のハグラーと、クロフォードが勝ったカネロとは、全く格が違います。


スクリーンショット 2025-02-08 14.53.40

階級をジャンプしてミッション・インポシブルを完遂するーーーこの手のメガファイトの代表例がマニー・パッキャオとオスカー・デラホーヤの「THE DREAM MACTH」です。

わずか9ヶ月前までジュニアライト級を主戦場としていたパッキャオが、ウエルター級でデラホーヤに挑戦するメガファイトには、フィリピンの国会が「事故が起きたら誰が責任を取るのか?」と、試合中止の議案を通過させるほど、常軌を逸したマッチメイクと捉えられていました。

そして、試合後は「衰えていた」と言われたデラホーヤですが、前年にフロイド・メイウェザーとクロスゲームを演じていました。

デラホーヤ自身も「減量苦で脱水症状」「アルコールとドラッグ中毒」だったことを告白しますが、それを差し引いてもパッキャオのボクシングは誰の目にも出色の出来映えでした。

一方で、クロフォードのカネロ攻略はそもそもミッション・ポシブルと考えられていました。そして、クロフォードの動きは出色よいうには程遠く、カネロの鈍重ぶりばかりが目立つ36分間でした。


スクリーンショット 2025-08-11 15.25.18

あの試合で、クロフォードは誰に勝ったのでしょうか?

一部識者の「PFP1位はクロフォードではなく、引き続きオレクサンデル・ウシク」という意見に、最も説得力を感じるのは私だけではないでしょう。