BOXINGSCENE から。

Victor Conte maintains he’s a changed man in pursuit of clean boxing〜「私はクリーンなボクシングを追求する別の人間に生まれ変わったんだ」ビクター・コンテ。


「私のことをいつまでもドーピング・グルのままだと決めつけてくる人があまりにも多いのにはウンザリしている」。

「どうせアイツは今も陰で、アスリートの心理に突け込んでドーピングを施している」。そんな一方的で厳しい批判の他に、新たな敵がコンテの前に現れました。

膵臓癌と診断されたのです。

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Conte has continuously argued that people change. “I hoped that my knowledge from the dark side would contribute to clean sport,”

ダークサイドで培った私の知識を、クリーンスポーツのために正しく使いたいと、そう心を改めたんだ。

コンテはスポーツ界最大のスキャンダルを起こした張本人です。

コンテを知らないという人でも、バルコ・スキャンダルでドーピングが白日の下に晒されたアスリートの名前を見ると、このスキャンダルがどれほど大きな衝撃を与えたのかがわかるでしょう。

マリオン・ジョーンズ、ティム・モンゴメリら陸上競技で15人。バリー・ボンズ、ジェイソン・ジアンビらMLBで27人、NFLでビル・ロマノフスキーら7人。

2005年に禁止薬物をアスリートに提供した罪などでコンテは懲役20年以上の罪で起訴されましたが、禁止薬物の流通、資金洗浄での有罪を認める司法取引に応じで懲役4年・保護観察4年の大幅な減刑に漕ぎ着けます。

結審したことでアスリートたちが裁判所で再び証言する義務はなくなり、疑惑はグレーのまま幕引きされてしまいます。

それでも、この一大スキャンダルの中でドーピングを否定したジョーンズらに対して、コンテは禁止薬物の使用を暴露したことで、アスリートが涙の自白をする衝撃的なシーンもテレビで放映されます。

ボクシング界の大物ではシェーン・モズリーがバルコ社から禁止薬物を提供を受けていました。「禁止薬物だとは知らなかった」と主張するモズリーに、コンテは「あなたにはそれが何かを説明して処方した。まさかビタミン剤の対価として1650ドルも支払ったのか?」と痛烈に反論。

デビン・ヘイニー戦のあと、ライアン・ガルシアのドーピングが明るみに出たときも、モズリーは「VADAと共謀したコンテの仕業だ」と非難しました。

コンテが、検出されやすい禁止薬物の入ったサプリメントを施し、VADAと共謀してアスリートを貶めている…そんな噂はおそらく嘘でしょう。

現在、アンチドーピングの推進者として旗を振るコンテは「何年も前にWADAやUSADA、そしてVADAからの要請でアドバイスをした。かつて私がどのようにして薬物検査を回避したのか、その情報が欲しかったのだ。私は全ての情報を提供し、さらに効果的な検査プログラムの作成に貢献した。VADAの薬物検査の〝成功〟をサポートするような特別な関係はない」と、モズリーの批判を否定。

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コンテが釈放されたときには多くのボクサーが群がりました。ノニト・ドネアもその一人です。

https://fushiananome.blog.jp/archives/26867499.html


釈放後もコンテはことあるごとに「VADAの検査はザル。簡単にマスキングできる」と豪語してきました。

また「ボクサーは試合のない合間に禁止薬物を使用している可能性がある」と繰り返しています。

コンテを慕う現在のボクサーはドネアをはじめテレンス・クロフォード、デビン・ヘイニー、クラレッサ・シールズ、バム・ロドリゲスら…。

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コンテから栄養剤の提供を受ける契約を結んだヘイニーは、VADAの24/7/365(24時間365日対応のランダムテスト)に登録されている唯一のボクサーです。

井上尚弥らも試合が決まってから24/7/365プログラムに登録することはありますが、試合が終わるまでの〝時限型〟。検査が入らない「試合の合間」があります。

「コンテのセカンドチャンスは誰も邪魔するべきではない。ただ、彼から栄養剤を受け取るアスリートがどう言う目で見られるのかも理解している。だから私はボクシング界で誰も参加していない24/7/365プログラムに登録しているんだ」(ヘイニー)。

五輪代表選手など多くのスポーツではフルスペックの24/7/365プログラムが常識ですが、世界的な統括団体がないボクシングの場合は検査費用を選手側が支払う、異常なケース。任意になるのは仕方がありません。

コンテが膵臓癌を患ったことに「天罰が降った」と嘲るコメントが多く見られますが、全くもって卑劣な言動です。

コンテが再び栄養剤ビジネスで成功を収めていることは、犯罪ではありません。セカンドチャンスを広く認める米国には、それを受け入れる度量があるということです。

同じことを日本でやればコンテはその業界から永久追放、もし再び栄養剤ビジネスに乗り出しても、誰も見向きもしないでしょう。万一、ドネアらのようにコンテに飛びつくアスリートがいたら冷たい疑惑の目を向けられ、日本での居場所がなくなるはずです。

日本のボクシングファンがドネアに恐ろしいほど寛容なことには、笑うしかありません…彼らはアメリカ人なのかもしれません…それなのにバルコ・スキャンダルもビクター・コンテも知らないのかもしれません。