ボクシング・ビート8月号「ジョー小泉の珍談奇談」から「日本人中量級はなぜ世界に通用しない『世界の壁』突破の試案その1」について。

佐々木尽のウエルター級挑戦が惨敗に終わったことを受けての記事です。

「軽量級選手が多数、世界を制覇する一方で、中量級以上ではパワー負け、技術(特に防御)負け、スピード負けしている現実にどう対処すればいいのだろう」というテーマに迫っています。

そして、その対処法として「軽量級と中量級の教え方は違えるべきか」として、「手打ち、連打型の軽量級」「パワー、強打型の中量級」の差があるとして、結論は9月号の「その2」に持ち越されますが、教え方を変えるべきという立場を示しています。

「手打ち、連打型の軽量級」「パワー、強打型の中量級」という棲み分けは、非常に単眼的な見方で、ジュニアフェザー級の井上尚弥はもちろん、バンタム級を実質制圧している日本人選手を見ても「手打ち、連打型」では括れません。


「日本人中量級はなぜ世界に通用しない」、本当の原因は大きく二つ。

一つ目は、スタイルの差ではなく日本人が好き勝手できないクラスだからです。

具体的には、コストが大きく「挑戦機会があまりにも少ない」から「穴王者狙いのマネジメントが効かない」からです。

もし、ウエルター級が好き勝手できる階級なら、日本人初のウエルター級王者を狙う場合「まずはマリオ・バリオス」だったはずです。

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バリオスはウエルター級を好き勝手できるマニー・パッキャオに取られてしまいますが、〝まずは〟ならブライアン・ノーマンJr.は危険すぎます。

もちろん、そんな好き勝手を言っていては、チャンスが限定されている中量級ではいつまでたっても挑戦できません。何度失敗してもチャンスが与えられる軽量級とは全く違うのです。

そして、パッキャオやフロイド・メイウェザーが人気階級で見せたパフォーマンスは運動量豊富な軽量級のボクシングでした。

軽量級と中量級の指導に大きな差はありません。

「日本人中量級はなぜ世界に通用しない」原因の二つ目は、国内レベルが低いから。

世界レベルにある練習相手はゼロ、ほとんど手探りの状態でシャクール・スティーブンソンやアンディ・クルス、ノーマンに当たって砕けろとばかりに挑戦したのが吉野修一郎であり、三代大訓であり、佐々木尽でした。

贔屓目かもしれませんが、ダウン応酬のようなギリギリの戦いなら日本人は勝負根性で上回ったかもしれません。しかし、彼らとの実力差は勝負根性が試される次元ではありませんでした。

豊富で多彩な練習相手に不自由しない海外を拠点にするのは、「世界の壁」突破の解答になるかもしれません。

そして、村田諒太のように奇跡的にアマチュアでハイレベルのスタイルを確立したボクサーなら、プロ転向を機に米国を拠点にすべきだったと思いますが、多くのボクサーは早い段階から米国で練習・試合をすべきです。

亀海喜寛は日本でマエストロと呼ばれたテクニシャンでしたが、米国では小手先の技術は通用せず、天性の打たれ強さを全面に出した激闘型への転身を余儀なくされました。

真逆のスタイル転換を強いられながらも、最高峰の舞台でも潰されずにゲートキーパーの手前まで辿り着いた亀海はやはりマエストロだったのでしょうが、本来なら、米国でマエストロとして成長すべき才能だったかもしれません。

「挑戦機会が少なすぎる」「練習相手がいない」という問題さえ解決されていたら、ウエルター級の空白などとっくの昔に埋められていたはずです。

そして、日本のジムやファンがラスベガスを目指したいと本気で考えているなら、そこがメジャーリーグだという意識を明確に持つことです。

「軽量級でPFPに入ったからゴール」という考え方も間違ってはいません。

しかし、ラスベガスの大会場でPPVイベントのメインを張るのがメジャーリーグだとしたら、軽量級はベガスとは無縁の日本が主要地域のマイナーリーグなのです。