「取材パスを発行しない」という事件が、日本と海外でほとんど同時に報じられ、ちょっとしたニュースになっています。

日本では、NPB(日本野球機構)が日本シリーズの取材パスをフジテレビから没収したことなどが独占禁止法に違反するおそれがあるとして、公正取引委員会が調査に乗り出しています。

NPBは2024年10月、TBSによる日本シリーズ初戦の中継と同時刻に、フジテレビが大谷翔平選手が出場するMLBワールドシリーズのダイジェスト番組を放映したことを理由に、フジテレビの取材パスを没収しました。  

フジテレビ問題もからんで大きく報道されましたから覚えている人も多いのではないでしょうか?

公取委は「フジテレビの取材機会を著しく制限するだけでなく、放送各局の番組編成の制約につながるおそれがある」として、NPB関係者に聴取を開始したということです。

「MLBの放映権を最大限に活用したい」というフジテレビの思いは〝ムラ社会〟の中では「罪」なのでしょうか?

NPBの最大、最高イベントである日本シリーズへの関心や視聴率に悪影響が及ぶことが確実な番組を同時刻にぶつけてきながら「日本シリーズも取材させて」というのは虫が良すぎるというのが、NPBの言い分。

日本のメディアは記者クラブスタイルの「みんな仲間」が基本スタイルで、この傾向はスポーツメディアにおいて特に顕著です。

ボクシングの場合は「みんな仲間」というよりも、提灯記事を連ねるお抱えメディアに堕ちています。

もちろん、NPBとフジテレビの事件を見るまでもなく、取材パスを発行してもらえないような事態になると、特に専門メディアにとっては死活問題です。

さて、これは是か非か?

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海外の「取材パスを発行しない」はサウジアラビア。

サウジアラビアが強力に推し進める「Vision 2030」はスポーツ界を支配して国際的な存在感を高める国家プロジェクト。

強力な統括団体を持つメジャースポーツを支配するハードルは高いものの、サッカーやゴルフで超ビッグネームを招聘しています。

そして、世界的な統括団体を持たないプロボクシングは、米国史上は没落一方、長年経営難に喘いでいたリング誌が破綻するなど、サウジからするとハシタ金でマルッと買収できる格安物件。

サウジ国民が欧米スポーツに大きな関心を寄せているなんて聞いたこともありません。ましてや、ボクシングなんて…。

この国家プロジェクトの真の目的が「スポーツ・ウォッシング」にあることは明らかです。そして、その札束パワーの破壊力は異次元。

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かつて、キャッチウエイトでのウシク戦に興味を示していたカネロですが、ライトヘビーでずっこけてヘビー級への野望は封印。


プロモーターや認定団体を振り回してきたカネロ・アルバレスは「どんなにカネを積んでも奴らの言いなりにはならない」と断言してきましたが、サウジ側は契約金をどんどん釣り上げ4試合4億ドル(約575億円)でカネロをついに籠絡。

そして…非民主的な醜い顔はVision 2030プロジェクトで覆い隠そうとしても、隠しきれません。

このブログでもときどき記事を紹介している専門サイト、ボクシングシーンが昨秋から「ネガティブな報道」を理由に、サウジ主催の興行で取材パスの発行申請を拒否され続けています。

気に入らない記事を書けば取材はさせない、ということです。

買収したリング誌もジャーナリズム精神は完全に放棄。例えば、ボクシング界の諸悪の根源の一つ認定団体に対する厳しい見方は完全に影をひそめただけでなく、主要4団体をリング誌PARTNERSとして迎え入れているのです。

フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスにも容赦なかった鋭い批評は、もうリング誌で読むことはできません。


・・・・・NPBとサウジアラビア。

感情のもつれからフジテレビに取材パスを発行しないという暴挙に出てしまった軽はずみなNPBと、周到で狡猾なVision 2030 という名のスポーツ・ウォッシングを推し進めているサウジアラビアでは、共通点は「取材パスの発行拒否」だけが共通のキーワードで、全く違うのですが…。

先日の井上尚弥の試合にからんで、朝日新聞など一部の大手メディアが「スポーツ・ウォッシング」という言葉を出して批判しました。

年末に予定されている井上とニック・ボールの一戦はサウジが主催。「スポーツ・ウォッシング」という言葉を使った日本のメディアは出入り禁止になるかもしれません。