スポーツの世界は技術だけでなく道具(ギア)の進化によっても記録を伸ばしてきました。

靴本体とブレードが分離するスピードスケートのスラップ・スケート、人体を流線型に締め上げる競泳のレイザーレーサー(現在は禁止)、反発力を生み出すプレートをソールに内蔵した厚底シューズ…。




…そしていま、ニューヨーク・ヤンキースの分析部門が開発した魚雷型のトルピード・バット(torpedo bat)が旋風を巻き起こしています。

トルピードバットは、いわゆるバットの芯の部分を太くしたボーリングのピンのような形が特徴で、愛用者の1人であるヤンキースのベリンジャーは「重量が手に近いように感じるため、バットが軽くなったように感じる。それが最大の利点」と語っています。

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ESPNはこのバットを発明した元物理学者のアーロン・リーンハートの「2023年の開幕から三振が増えていることに芯の部分を太くするとヒッティング面積も増え三振が減るはず」という最初の仮説を紹介しています。

もちろん、芯を太くすると重量が増し、スイングスピードが落ちてしまうため、先端部分を細くする方向で開発を進めます。

寸胴型のツチノコバットやスリコギバットは、金属バットやプロ野球でも福本豊が愛用していましたが、重量は重くなっており、ゴツン!と強打してパワーを補完する意味合いが大きいバットでした。

MLBを席巻している魚雷はツチノコとは違い、パワーヒッターにも好んで愛用されています。

シーズン開幕当初、魚雷バットは「規定に反する違法バットではないか?」とも疑われましたが「バットは滑らかで丸みをおびた棒状のもので、最も太い部分の直径は2.61インチ(6.6㎝)以下、長さは42インチ(106.7㎝)以下でなければならない」というMLBルールの中に収まった正当なギアで、コルク内蔵のサミー・ソーサの違法バットなどとは違います。

さて、しかし。

重量そのものは変わらなくても、重量バランスは大きく変わります。スイングしたときのイメージには、少なくとも使い始めは大きな違和感を覚えるはずです。

昨季、大谷翔平とMVP争いをしたメッツのフランシスコ・リンドーアも今季から魚雷バットに持ち替えましたが、打率.100、本塁打ゼロと悪戦苦闘しています。


一方で、当のヤンキースの主砲アーロン・ジャッジは従来型のバットを使用して今季も爆発的なパフォーマンスを見せています。

大谷翔平も「いまのバットで十分満足」と、魚雷を握る気はありません。

魚雷の効果をどこまで評価すべきかは、もう少しデータが揃ってきてからになるのでしょうが、現時点ではスラップスケートやレイザーレーサー、プレート仕込みの厚底シューズのような「誰がどう考えても明白なアドバンテージがある」とは言えません。

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と、ここで早めのお昼。

なんとシンプルな中華そばじゃ。