米国のBOXING NEWS24が「Inoue vs Kim: Why No Buzz?(井上とキムの試合はどうして誰も興味を示さないのか?)」という記事をアップ。

「井上尚弥はこれまでのキャリアで、36歳(当時)のノニト・ドネアよりも強い相手とは戦ったことがない。弱い相手ばかりを選んできた」。

「ドネア戦では右眼窩底と鼻骨を骨折、大苦戦を強いられたが、もしドネアの反射が若い頃のように鋭く、当て勘も正確であったなら、井上の顎を撃ち抜いていたはずだ」。

 The answer is pretty obvious as to why Inoue chooses not to move up to featherweight. It’s too hard. 

「井上が(めぼしい対戦相手のいないジュニアフェザー級にしがみついて)なかなかフェザー級に上げない理由は明らかだ。フェザー級はレベルが高いから」。


 I can’t blame him because of the easy money coming in without Inoue taking any risks. I’d probably do the same thing.

「強い相手を避けて楽してカネを稼ぐ井上を責めるつもりはない。もし、私が井上なら同じことをするだろう」。




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トップランクと業務提携しているESPNもなぜか井上には優しくなく、昨日も「Yet he still remains somewhat of a mystery to many American boxing fans since he constantly fights in Japan at odd hours in the U.S. (米国のボクシングファンにとって、米国では夜明けの時間の日本で戦っていることから見る機会がなく、ミステリーな存在のまま)」。

さらにESPNは「Is there a fight that could help Inoue become a star in the U.S.?(井上が米国でスターになるきっかけとなるような対戦相手はいるのか?」として「There's only one at the moment, and it's unlikely to happen. That would be a fight against Gervonta Davis(現時点では1人しかいない。ガーボンタ・デービスだ」。

確かに、米国でタンクを破壊するなら、スターへの足がかりになります。マニー・パッキャオのマルコ・アントニオ・バレラです(さすがにそこまでではないか)。

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また、井上はイチローや大谷翔平とは全く違います。

ここで難しいのは「世界最高峰」の定義です。

まず「ボクシングはマイナー競技だから野球やサッカーとは比較できない」という正論はここでは語りません。

世界最高峰の定義を「リーグのレベル」「世界的な注目度(尊敬と栄光)」「高額の報酬」「日本での逆輸入的人気」の4つにしてみましょう。



大谷翔平らのMLBを例にとると「リーグのレベル」が日本よりもはるかに高いのは明らかです。


▶︎「リーグのレベル」という点では、ジュニアフェザー級以下は日本が層も厚く、レベルも高いと考えて差し支えないでしょう。

つまり、海外にボクシングファンが注目する軽量級のスターなどまず存在しません。

軽量級には「世界的な注目度」というものは、そもそも存在しないのです。

これは何も恥ずかしいことではなく、大相撲や将棋などの世界も同じです。



▶︎「世界的な注目度」は野球は米国の影響を色濃く受けた環太平洋の一部の国だけでメジャーですが、米国でメジャースポーツに数えられていることで、こと定義も問題なくクリア。

世界最高のスポーツアワードESPYの最上位の賞をすでに獲得している大谷翔平が、他の日本人男子アスリートと一線を画した特別すぎる存在であることは誰もが認めるしかないでしょう。

一方で井上は言うに及ばず、フロイド・メイウェザーもマニー・パッキャオもESPY賞にはカスリもしませんでした。



▶︎そして「高額の報酬」。大谷を例に出すまでもなく、マイナー契約の佐々木朗希ですら契約金10億円です。説明不要。

大谷や大坂なおみはフォーブス誌などのアスリート長者番付にランキングされます。井上尚弥もサウジから30億円、ファイトマネー合計20億円(信者さんが信じてる額はもっと上?)、合計50億円レベルなら100傑の下位に顔を出しても良いはずですが…おそらくそうはなりません。

なぜでしょうかね…?



▶︎「日本での逆輸入的人気」。5番目に書きましたが、これも大きなポイントです。

米国のスーパースターたちと互角以上に渡り合う大谷翔平の大活躍に「日本人として誇らしい」という感情を膨張させることができるのは、その情報が世界最高峰の舞台からもたらされるからです。

世界最高峰が欧米に存在しないボクシングの軽量級では「日本での逆輸入的人気」は起こり得ません。






▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎井上には、マニー・パッキャオが歴然と意識していた人気階級=メジャー、軽量級=不人気階級=マイナーの意識はおそらくないでしょう。

より大きな報酬、より大きな注目度を渇望するパッキャオにとって、オスカー・デラホーヤから届いた対戦オファーは人生最高の喜びに打ち震えるものでした。

一方で、井上は当時1階級上のメキシカン、エマヌエル・ナバレッテの対戦要求に「階級が違うから縁がなかった」と、シラっと片付けるのでした。

もちろん、これはパッキャオが勇気の塊で、井上がチキンということではありません。

もし、井上がパッキャオの立場なら、タンク・デービスとの対戦に前のめりになっていたはずです。

そして、パッキャオが井上の立場なら、試合10日前にオファーが届いたリーロ・レジャバ戦なんて迷うことすらなく断っているでしょう。

ナバレッテの対戦要求も絶対に受けなかったでしょう。

マルコ・アントニオ・バレラやエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスなんて「縁がないにもほどがある」と、やはり断固受け付けなかったはずです。

「アメリカに日本以上の報酬と注目があるなら行くけど、そうでないなら行く必要も意味もない」という井上のスタンスですが、そもそもアメリカに軽量級に大きな需要がありません。

つまり、アメリカにもヨーロッパにも軽量級ボクシングの世界最高峰の舞台など影も形もないのです。

当然のことながら、サウジアラビアにも…。



最初の夢の見方が大間違いだっただけです。