サウジアラビア娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官が日本の井上尚弥に言及したのは、今回が初めてではありません。

そもそも、サウジの掲げる〝大義名分〟は「ボクシング黄金時代を取り戻すこと」(アラルシク長官)。

プロモーターやプラットフォーム、ライバルのファイターの間に横たわる確執や思惑を排除して、ファンが熱望しても実現しなかったドリーム・ファイトを成立させるというもの。

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長官は井上についても
今春に「WBA世界ライト級王者ガーボンタ・デービスの対戦を実現することが出来る」と公言。

これまでも、米国や英国のプロモーターでは実現しなかったり、実現にもっと時間がかかっていたはずのメガファイトを続々と実現させてきました。

井上は「試合が見たいのなら日本に来たらいい。日本のマーケット以上の物がアメリカにあるのなら喜んで行く」とSNSで発信してきましたが、現実には米国や英国に軽量級のアジア人に大きなニーズがあるはずもなく、井上の試合を取材に訪れる海外メディアの記者も一人もいないというのがデフォルト、悲しい現実です。

サウジアラビアにボクシングの歴史も文化もないことは、これまで開催してきたメガファイトの恐るべき静けさを見るまでもなく明らか。

長官の言葉を真に受けるなら、サウジアラビアは収支を無視して、ボクシングをはじめ欧米スポーツを盛り上げるために正義のオイルマネーを惜しみなく投入していることになりますが…。

井上については「いくらだったらタンク・デービスとのキャッチウェイトに応じるのか?」から始まり、井上サイドが「いくら積んでもやらない」と交渉が平行線だったことは容易に想像出来ます。

今回、契約に至ったということはどこかに妥協点を見出したということですが、落とし所がどこだったのかはわかりません。

帝拳や大橋ジムのプロモートで実現できるこれまでのレベルの対戦相手でも仕方がないとサウジ側が妥協したのか、それとも井上陣営がある程度の冒険マッチに歩み寄ったのか。

長官は最近になって
「井上を日本国内だけで戦わせ続けないよう、世界に彼を見せたい。サウジアラビア、米国、ロンドンで試合をさせるようにするための話し合いをする準備ができている。彼が数年後に引退し、その試合の99%が日本で行われたとなれば残念だ」という意味のことを繰り返していますから、冒険マッチではなく、従来路線の試合に高額の報酬を用意して招致するということかもしれません。

日本ボクシング界の活性化という一点では、サウジマネーが入ることは悪いことではありません。

コミッションを持たないサウジ開催なら、これまでの 
British Boxing Board of ControlなどのようにJBCが統括することになるはずです。

まさか、BBBofC はないでしょう。

ここは譲ってはいけません。