もし、あの頃にSNSがあったなら。

あの小さな古い映画館で、同じ時間を何時間も過ごしていた僕たちは、すれ違いで終わってなかったかもしれません。

まともに会話したことがなくても、元ミス近大には冷たいコーラをおごってもらったり、どうみてもあっちの筋の人のおっちゃんには酒を勧められたりしていた不思議な関係は、SNSの時代なら僕らは何かしら繋がっていたでしょう。

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ミス近さんとは、社会人になってから偶然遭遇、名前もわかって(仮名・三井さん)、いまは同じ横浜に住んでいて年に一回ほど映画を見たり、お酒を飲んだりしています。

あっちの筋のおっちゃんについては、なんとか探せないものか?と話題に上がることもありましたが、なんの手がかりもなく、映画館もとっくの昔に取り壊され、そもそも当時で50歳過ぎには見えましたから、もう90前か、それ以上の年齢になっていると考えられます。

どう見ても不摂生を重ねていたおっちゃんが、90過ぎ…もう死んじゃってる、生きててもボケてて僕らのことは覚えていない…そんなことを話しました。

先日、三井さんから「あの映画館があった街で酒でも飲もう」と唐突で強引なお誘いがあり、三連休の少年野球のコーチを断って、大阪空港の待ち合わせ場所へ。

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ほんわかした雰囲気の三井さんが、結構強めに誘うのは、明らかに何かがおかしいと感じていました。

まさか、この年になって「駆け落ちしよう」なんて、あるわけもなし。

大きな病気を患っていると告白されるのかとか、いろいろ〝おかしい〟と感じた元を考えても、どれも違う気がしましたが、一つだけ「もしかして」と思い浮かびました。

三井さんとはなんだろう、人間の相性が良いというか、一緒にいるとうまい言葉で話せたり、彼女が何を考えているのか、企んでいるのか、よくわかることがあるのです。



そのときも、直感的に「三井さん、あのおっちゃんを見つけたんだな」とわかりました。