欧米では軽量級に大きな関心が払われることはありません。

大会場のPPVイベントでメインを張り、巨額のファイトマネーを手にしてフォーブス誌のアスリート長者番付に載るような常連ファイターが軽量級から輩出されたことは歴史上、一度もありません。

昨年4月にT-モバイル・アリーナのPPVイベントのメインに登場したライアン・ガルシアとガーボンタ・デービスは、例外中の例外。

ライト級よりも1ポンド重い136ポンドのキャッチウェイトできたが、軽量級と呼んで差し支えないでしょう。

しかし、ガルシアもデービスも〝人気者のメキシカンと、お騒がせ黒人〟という「カネロ・アルバレスvsフロイド・メイウェザー」のミニチュア版に過ぎませんでした。

何よりも、ガルシアもデービスもカネロやメイウェザーのように「メガファイトが当たり前」ではなく、あの試合だけがメガファイトという特別な舞台。

特別な事情が重なって、ライト級ならようやく光が差し込むということです。

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日本は軽量級、欧米は中量級以上の重いクラスに人気がある…というのは一面では事実ですが、真実ではありません。

欧米で人気のない軽量級はほとんど関心が払われません。馬鹿にされたり、軽蔑されているのならまだましで、彼らのレーダーに引っかからない、視界に入らてもらえないというのが実情です。

野球ファンに「男子ソフトボールをナメんなよ!」と啖呵を切れば、こう優しく返されるでましょう。

「ナメてなんかいません。きっと頑張ってると思いますが、すみません、全く興味がないのです」。

では、逆に日本では中量級以上のクラスに対して、欧米で軽量級が視界に入らないように、全く興味がないのか?…というと全くそんなことはありません。

欧米の人気階級のスーパースターは、日本でもスーパースター。

マディソン・スクエア・ガーデンのシアターで多くのボクシングファンに無視された井上に対して、有明アリーナに登場したカネロはまさにスター降臨でした。

日本のボクシングファンは意識的、無意識的かは別にして、欧米の人気階級に日本人が斬り込むことなんてあり得ないと諦めているのです。

その潜在意識を目覚めさせてくれたのが村田諒太で、あの特別な扱いは人気階級でも日本人が活躍できるという期待の噴火だったのです。

欧米で軽量級のホープが出現したとしても、村田のような扱いは絶対に受けません。

彼らには軽量級への憧れや期待などは、微塵もないからです。

もちろん、野球に負けない魅力がソフトボールにあるように、人気階級に負けない魅力が軽量級にはあります。

しかし、ソフトボールの選手は「いつかヤンキースタジアムでプレーしたい」とは言いませんが、長谷川穂積や西岡利晃、井上尚弥はラスベガスに恋焦がれました。

軽量級の選手が目指すべきは、欧米の人気階級の舞台ではなく、ソフトボールの選手が「ヤンキースタジアムよりも専用競技場でプレーしたい」と願うような思考回路です。

そして、一番のエクスタシーは軽量級のファイターが人気階級に土足で上がり込んで、スター選手をなぎ倒す光景です。

まあ、そんなスペクタクルは歴史上、マニー・パッキャオただ一人しかいませんが…。