日本におけるプロボクシングが他のスポーツと違うところを知りたければ、専門誌を見ると明らかになります。

他のスポーツ、「陸上競技マガジン」「サッカー・マガジン」「週刊ベースボール」「スイミング・マガジン」などなど…は日本国内で行われている競技大会を中心としたレポートが中心です。

ところが、ボクシングはプロボクシング、それも海外、特に米国の注目ファイトを大きく扱うことで異彩を放って来ました。

米国リングで活躍するスターが、日本のボクシング専門誌の表紙を飾ることは至って普通のことでした。

私が米国ボクシングに惹き込まれた1980年代からでも、シュガー・レイ・レナードやロベルト・デュラン、マイク・タイソンらはボクシング・マガジンの表紙を飾るだけでなく、彼らが繰り広げるメガファイトは増刊号まで発刊されていたのです。

今月下旬に「別冊ボクシング・ビート カネロvsベルランガ 速報」なんて絶対に出ません。

欧州サッカーもメジャーリーグも遠かった時代、日本と〝地続きの世界〟にあるスポーツはボクシングだけと言っても差し支えなかったのです。

米国のメガファイトも、国内の世界戦も「ボクシングこそが世界最高峰のスポーツだ!」と、日本のスポーツファンが完全に誤解していた時代です。

今でも「米国でのステイタスは大谷翔平と同じかそれ以上」と思い込んでいる井上信者が存在するのは、驚くべきことですが…。

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ボクマガがレナードの自宅を直撃インタビュー。それが巻頭大特集、古き良き時代でした。

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マイケル・スピンクスやドン・カリーは米国でも日本でもNo.1人気のボクサーではありませんでしたが、当たり前にボクマガの表紙を飾っていました。



この当時、米国ボクシングのスターは、日本では世界最高のアスリートとして受け入れられていたのです。

もちろん、モハメド・アリは60年代〜70年代にかけて文句なしに世界最高のアスリートでした。タイソンも知名度の点ではメジャースポーツのスーパースターと比べて遜色がありませんでした。

しかし…ボクシングの凋落が底なし沼的に進み、完全マイナースポーツに転落した1990年代以降のボクシング界限定のスター、オスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスは日本でも月刊専門誌の表紙から飛び出ることは出来なくなります。

〝権威がある〟はずのリング誌は慢性的な販売不振から深刻な経営難を乗り越えることができずに、2022年に1989年に続く休刊(今回は事実上の廃刊)。いくら売値を下げても、ついに買手がつきませんでした。

スーパースターのトーチを手にした最後のスーパースター、カネロは今、リレーする次世代のスターがいない路頭に迷っています。

カネロを最後に米国のスーパースターの系譜は途絶えてしまう、そんな絶望の鎮魂歌のボリュームがどんどん上がっています。

ライアン・ガルシアやガーボンタ・デービスはスーパースターではないのか?というと、実力的にも人気的にも、全くそこに届いていません。全く、です。

「実力」ならパッキャオやメイウェザーのような満場一致のPFP1位は難しいにしても、せめて1年くらいは1位をキープして欲しいところですが、二人とも論外。

「人気」ではForbes誌のアスリート長者番付の上位に、全盛期の数年はリストアップされないと、過去のスーパースターに申し開きができません。

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この条件を満たすファイターの系譜は、カネロで途絶え、トーチの火が消えてしまう可能性が濃厚になってきました。

当然のことながら、日本のボクシング専門誌(今ではボクシング・ビートだけになってしまいましたが)も、米国のスーパースターが表紙を飾ることは激減しています。

「いま、アメリカで一番人気のあるボクサーは誰?」と聞かれて、すらすら答えることのできるボクシングファンがどれだけいるでしょうか?