ヘビー級の完全統一王者オレクサンデル・ウシクは、12月に行われるタイソン・フューリーとの再戦のあと「クルーザー級に戻る」と語りました。

2018年にクルーザー級(200ポンド)からヘビー級に乗り込んで215ポンド〜233.5ポンドで戦ってきたウクライナ人は、WBSS優勝でクルーザー級を完全統一しており「4団体史上初のUndisputed champion返り咲きが目標」ということですが、ヘビー級の体を作るための「大量の食事がきつい」というのが〝出戻り〟の最大の動機です。

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マニー・パッキャオも「1日8食、8000kcal〜10,000kcalを採る毎日はキツ過ぎる」と、その苦しみを吐露していましたが、過酷な減量自慢が横行するボクシングの世界では極めて異例のこと。

ただ、パッキャオのケースは人気のない軽量級から、人気のあるウエルター級に向かう「栄光への脱出」でしたが、ウシクの場合は華やかなヘビー級から出戻るのです。

もちろん、ヘビー級で最強を証明したウシクは、史上最弱クラスのジョン・ルイスとの1試合だけを狙った姑息なロイ・ジョーンズとは違います。

しかし、ウシクの肉体に〝ロイ・ジョーンズ現象〟が起きない理由はどこにもありません。

年齢を重ねて階級を上げてから、軽い階級に出戻るーーーもっと分かりやすくいうとレベルの高い階級から低い階級に戻るのだからリスクは少ないはず、という本人の意識と肉体の間に生じる大きな〝齟齬〟は悲惨な形でファイターに襲いかかります。

ロイ、シュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤ…彼らの出戻り試合は圧倒的有利と考えられましたが、凄惨な結果に終わってしまいます。

稀少な例外はノニト・ドネアですが、フィリピンの閃光はそもそも軽量級の小さなコップの中で出戻っただけ。なにより、その減量幅はわずか8ポンド、さらにドーピング・グルの便利なサプリメントも大きな効果を発揮したかもしれません。

38歳のウシクは、食事で急ごしらえしたヘビー級から30ポンド以上も体重を落としてクルーザー級に帰るのです。

何も起こらない方が不思議にも思えてくるのですが…。