東京ドーム決戦まで、あと1週間。

残念ながら、世間的にはあまり盛り上がってない気がします。元々、軽量級を大きく取り上げることがない海外メディアでもカネロ・アルバレスのメガファイトの話題で、東京ドームは完全にかき消されている状況です。

シンコ・デ・マヨに日本で大きな試合をぶつけるのは、世界的な興味・関心を引くという観点から、今後は控えるべきでしょう。軽量級の試合は、そもそも世界的な興味・関心がないから、そんなの関係ないと言われたらそれまでですが。

日本のボクシングファンの多くもシンコ・デ・マヨなんて気にしてないか、なんのことかも知らないかもしれませんし。

ただ、考えてみると万一、ルイス・ネリが大番狂せを起こすと、カネロの試合の余韻が残っているものの、メキシコでは結構な騒ぎになりそうです。



前置きが長くなる前に、本題です。

今回、WBCの「30日前〜計量」が日本のメディアにちらほら出ていますが、これに違和感を感じている人も多いのではないでしょうか?

ちなみにWBC規定の事前計量は、30日前がリミット55.3キロの10%(バンタム級なら60.83キロ)、15日前が5%(同58.065キロ)、7日前が3%(同56.959キロ)を上限に設定しています。

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厳格に適応されるとモンスターも〝アウト〟になる可能性があります。


これは、WBCが全てに試合に求める義務ではなく、公開採点などと同じオプションです。

まず、この事前計量が自己申告、自分の体重計で測って画像や動画を送るという「えーー?」と驚くいい加減さ。これで体重超過してしまう正直者は、まずいません。

さらに、この独自の事前計量に超過した場合(そんな正直者はいませんが)、WBCは「Failure on the part of those parties to comply with this rule’s requirements may result in the WBC taking such actions…(違反した場合WBCは以下の措置を取る可能性がある)」として罰金、出場停止、挑戦者資格やタイトルの剥奪を示唆していますが、これはmay(その可能性がある)ということで、現実には発動されないでしょう。

というか、違反者が出る可能性が限りなくゼロに近いのですから、そもそも発動する機会もありません。

先日のWBCジュニアウエルター級王者デビン・ヘイニーとライアン・ガルシアの後味の悪い試合にしても、ガルシアはいまだに7位にランキングされています。

この性善説に立脚した摩訶不思議な事前計量について、WBCは「急激な減量でボクサーの健康が損なわれるのを防ぐため」としていますが、オプションとしてしか採用していませんし、全くの詭弁です。

この種の事前計量の最も大きな目的は「水抜き減量の禁止」です。それを明記していないWBCは片手落ちどころじゃありません。もちろん、水抜き禁止となると多くのボクサーを大混乱に陥れてしまいますから、意図的に明記していないのでしょうが。

水抜きを厳格に禁止している英国ボクシング管理委員会(BBBofC)は、ファイトウィークに入ってからのサウナ使用でレッドカード。これに違反したジョンリール・カシメロは試合機会を失いました。

極端な水抜きの抑止になる尿比重の検査も含めて、有効な施作はいくらでもあります。

水抜き減量は、近年頻発している体重超過の原因の一つですが、最大の元凶はタイトルの価値暴落です。

ボクシングの世界チャンピオンには価値があるーーーそんな日はもう永遠に訪れないのだとしたら、水抜きを排除しても体重超過は無くなりません。