◉さんちょう 

当時前人未到の4階級制覇に挑み達成は出来ませんでしたが、強敵から獲ると引かなかったアルグエーリョは現在のボクサーより尊敬されていると思います。 時代もあるかもしれませんがこうゆう選手は今はなかなかいないですね。


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1980年代初頭。

すでにWBAからWBCが分離独立、IBFが発足する前夜の時代です。

世界ジュニアウェルター級チャンピオンはAとCで2人もいました…いや、今となっては2人しかいなかったというのが正解か。

Cの方はソウル・マンビー、レロイ・ヘイリー、ブルース・カリーと絵に描いたような穴王者が緑のベルトをリレーする一方で、Aでは史上最強の140パウンダーと評価されるアーロン・プライアーが君臨していました。

その強さがどれほど鮮烈だったのかは、一つ上のウェルター級のスーパースター、当時立ち上がったばかりのリング誌年間PFPで1位に輝くシュガー・レイ・レナードが対戦を避けたという噂がまことしやかに信じられていたほどでした。

フェザー、ジュニアライト、ライトと軽量級から人気階級への階段を駆け上がってきたアレクシス・アルゲリョは史上初の4階級制覇を狙うと宣言、世界中のボクシングファンの興奮と喝采を集めていました。

プロモーターとテレビ局も軽量級離れした人気を誇るハンサムな長身ファイターの偉業にカネの匂いを嗅ぎつけて熱心にバックアップ。

プライドの高いアルゲリョが「相手はプライアーしかいない」と宣言するのは想定内、周囲は「まずWBCを獲ろう。それからプライアーとの最強決戦だ」と説得します。

しかし、アルゲリョは「メディアやボクシングを知っているファンは、私がプライアーを回避してレロイ・ヘイリーを選んだと思うだろうし、実際あなたたちがやらせようとしていることはそういうことだろう?」と、至極常識的な提案を一蹴。

「私は誰でもいいから4階級制覇したいんじゃない、強いやつに勝って4階級制覇したいんだ」。

試合発表の記者会見では「WBC王者との対戦を熱心に薦めてくれた全ての人に感謝する。あなたがたのおかげて、アーロン・プライアーがどれほど価値のある相手なのかがよくわかった」と、笑って見せました。

ただでさえカッコいいアルゲリョが、どれほどカッコよく見えたことか!



あれから40年。

アルゲリョと同じノッポの日本人が急いで階級を駆け上がり、やはり3階級制覇を〝通過〟しています。

中谷潤人もまた、アルゲリョのように彼にとっての〝プライアー〟を見つけました。

井上尚弥の高い評価を聞くたびに、中谷は青く燃え上がる至福にゾクゾクしているはずです。

サッカーのW杯も、テニスの四大大会も、MLBのワールドシリーズもない、興行だけが一人歩きするプロボクシングは「誰に勝ったか?」が全ての世界です。


誰に勝ったのか?

その問いに満点回答を何度も叩き出したのがモハメド・アリやシュガー・レイ・レナード、マニー・パッキャオでした。

中谷がアリやレナードやパッキャオになれるかどうかはわかりません。

もしかしたら、アルゲリョのように苦い挫折を味わうかもしれません。

それでも、全く矛盾する物言いになりますが、「誰に勝ったのか」を追求する彼らの挑戦が、勝ち負けなどを超越して美しいものであることを、私たちはよく知っています。

Chasing Monster.

愛の拳士は、どの階級でモンスターを捉えるのでしょうか。