大本命の駒澤大学が青学大に惨敗した原因に、昨年11月のトラックレース、八王子ロングディスタンスを指摘する声が多くあがっています。

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このトラックレースで、駒澤の3選手が27分40秒を切る脅威の記録を叩き出したことも「箱根盤石」の予想をコンクリートさせたましたが、それを今になって「八王子ディスタンス(トラックレース)にエネルギーを使い過ぎた」というのは結果論です。

もちろん、トラック1万メートルの持ちタイムが、アスファルトの上を20キロ超も走る箱根駅伝の結果にそのまま映し出されるとは限りませんが、解説で語られてたような「全く関係ない」なんてことはありません。

3区の衝撃的な〝下剋上〟を目の当たりにして噴き出した言葉でしょう。

それでも、逆の立場、つまり大番狂せを起こした青学大から見ると箱根駅伝に傾注した戦略が成功したのは間違いありません。

出雲全日本大学選抜駅伝競走)、全日本大学駅伝対校選手権大会とグレードが上の〝全国駅伝〟で敗北した青学大ですが、関東ローカルの箱根駅伝で往路復路の完全優勝を果たしたことで、世間一般からは勝者と認められるのでしょうが、到底納得できません。

青学大が箱根に全てを箱根駅伝について否定的な考えも持っている原晋監督にしても「(箱根の番狂せは)ピーキングの差」という言動からも箱根に照準を合わせていたのは明らかです。

八王子ディスタンスで27分28秒50を出した佐藤圭汰は、青学大の誰よりも世界にチャージしたという事実はもっと多くの人に知ってほしいです。

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明らかな助力になるプレートを仕込んだ厚底シューズがトラックレースでは禁止されていることにも、嫌悪感しか覚えません。

母校の「厚底がフィットしない」という長距離選手には「残りの現役時間が長いと思うなら、お前が厚底にフィットしろ」と、ほとんど強制的に厚底を薦めてきましたが、本心は「これはチート(ズル)の公認」だと思ってます。

もちろん「公認されていた時期のレーザーレーサーはズルではない」ように、ズルでも公認されるとズルではなくなる、のですが。

唯一の救いは駒澤大学の藤田淳史監督の「(トラックで標準記録を破らないと五輪や世界選手権の選考対象にならないことから)タイムを出さないと次のチャレンジができない」「我々は世界を目指しながら箱根も、という考えでやっている。今後もブレずにやっていく」という言葉です。

箱根駅伝が世界最高峰のレースであるわけもなく、五輪や世界選手権のような「次のチャレンジ」が存在するのであれば、箱根駅伝は「通過点」であるべきです。

もちろん、本戦に出場する選手だけで200人(記念大会の今年は230人)が走る箱根駅伝は、卒業してからも競技を続ける学生と、就職する学生、競技レベル・競技への意識の乖離が大きい大会です。つまり、「通過点」ではなく「ゴール」の学生も多く存在しています。

しかし、未完成の才能が激突する若いステージでは、高校野球の甲子園を見るように「こいつはプロで通用しそう」と「次のチャレンジ」、「二刀流なんて絶対無理」なんて否定論も含めて、大きな舞台での活躍に期待を膨らませることの一つです。

「次のチャレンジ」「より大きな大会」への視界を閉ざし、知名度向上の資金投入先を探す私立大学のニーズも汲み取りながら、「関東ローカル」の閉塞した空間で完結する〝感動の宇宙〟を創造した読売グループと、関東学連の才覚と努力はビジネス、マーケティングの観点からは素晴らしいとしか言いようがありません。嫌味でも皮肉でもなく、見事なイリュージョンです。

やはり、同じ歪な構造にあった、かつての関東ラグビー対抗戦リーグという閉塞した空間の〝感動の宇宙〟が、世界に目を塞いだファンたちによって自然発生的に起きていたのに対して、箱根駅伝には「タネ」も「仕掛け」もありました。

ただ、スポーツの観点からは100年以上の長い歴史の中で五輪メダリストを一人も生み出せていないことからも、大きな欠陥を抱えているのは間違いありません。欠陥というよりも、病巣、それもどんどん大きくなっている癌細胞と表現した方が正しいかもしれません。

箱根駅伝が〝歪な化け物〟に変容する前の80年代まで、今と比べると全く注目されていませんでした。福岡国際マラソンの方がはるかに注目され、何よりもはるかに尊敬されていたのです。

ファンの視線は「箱根」の向こうの「福岡国際」、そしてその先にあるモスクワ五輪やロス五輪のセンターポールに日の丸が揚がる光景を見据えていました。

同列に並べるのは誤解を生むかもしれませんが、茶番劇のボクシングが井上尚弥の世界戦よりも遥かに大きな注目と報酬を生み出しているのと同じ構図です。「箱根」の場合は、日本列島限定なだけにまだタチが良いと言えますが…。


よりレベルが高い舞台に注目が集まる。ラグビーのように、そんな正常に回帰する日は、いつか再びやって来るのでしょうか?