今から10年前の2013年。

世界ではフロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオの激突が期待される中、日本では井岡一翔や八重樫東、山中慎介、内山高志らが世界王者として安定した強さを見せつけていました。

それでも、一般的なボクシングへの関心は「亀田三兄弟」。

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この年7月、興毅がWBAバンタム級タイトル7度目の防衛に成功すると、8月には和毅がWBOバンタム級のストラップを獲得、9月には大毅がIBFジュニアバンタム級王座に就き、世界初の「3兄弟同時世界王者」という記録を達成しました。

ちなみに「3兄弟世界王者」も彼らだけの史上唯一の記録です。

この偉業の背景に、4団体17階級時代、王者がタイトルを放擲して安易な複数階級制覇に走る傾向が強まったカラクリがあったことは、今更説明する必要はないでしょう。

ボクシングファンはもちろん、世間の目も偉業を讃えるというよりも、安易な形で世界王者になった彼らへの冷たい視線が目立っていました。

ただ、彼らがやってきたことは日本ボクシング界では何も特別なことではありません。

しかし、ボクシング・マガジンもボクシング・ビートも亀田兄弟には非常に厳しい姿勢を打ち出し、ボクマガは「3兄弟同時世界王者」を「フロイド・メイウェザーvsカネロ・アルバレス」は仕方がないにせよ「ダニー・ガルシアvsルーカス・マティセ」「フリオ・セサール・チャベスJr.vsブライアン・ベラ」「ウラジミール・クリチコvsアレクサンデル・ポベトキン」の試合結果と、「マニー・パッキャオvsブランドン・リオス」の展望に山中慎介、ホルへ・リナレス、三浦隆司、村田諒太、井上兄弟の近況の〝後回し〟。

もちろん「3兄弟同時世界王者」がどの程度の偉業なのかと聞かれても、言葉に詰まってしまいますが、亀田史郎の3兄弟へのボクサーとしての指導は間違っていなかったとは言えるかもしれません。



今、興毅と大毅はプロモーターやジムの運営に乗り出し、まだ現役の和毅は彼らへのアンチテーゼとして登場した「井上尚弥」への挑戦を公言して憚りません。

もし、「亀田」が〝贖罪〟を果たすチャンスがあるとしたら、それは井上尚弥に勝ったときでしょう。それしかあり得ません。

それをもし成し遂げるようなことがあれば、リングの上での評価は全てが引っくり返ります。

意外と(失礼)聡明な和毅は、かなり早い段階で「それ」に気づいていたはずです。

和毅が一家をそこまで連れて行くのは、非常に険しい道です。それでも実現するなら、それなりのポジションを和毅が築いたということです。

試合会場は東京ドームか京セラドームか。

井上への大声援と、亀田トレインへの大ブーイング…会場の盛り上がりは日本ボクシング史上最高潮に達するはずです。