残念なニュースです。

マイキー・ガルシアがインスタで、引退を静かに報告しました。

私が見たボクサーの中で、最もスタイリッシュなボクサーでした。

2006年7月のプロデビューから昨年10月のサンドル・マルティン戦までのプロ17年間で、42戦40勝30KO2敗の成績を残しました。

フェザー級からジュニアウェルター級までの4階級制覇。

フェザー級ではオルランド・サリド、ファンマ・ロペスをストップ。

ジュニアライト級ではローマン・マルチネスを倒し、ライト級でも無敗のデジャン・ズラチカニンを粉砕。エイドリアン・ブローナーの化けの皮も剥ぎました。

弱い相手を選ばない。それがマイキーの流儀でした。

それが原因で、生ぬるいマッチメイクを組むトップランクと何度も衝突してしまいます。

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内山高志との一戦が実現したら、私たちはどんなに打ち震えていたでしょうか。

ジュニアライト級は米国ではけして人気があるクラスではありませんが、それでもマイキーは別格です。

もちろん、大田区総合体育館に呼べるタマじゃありません。

ロサンゼルスやラスベガスの大会場、360度完全アウエー、大ブーイングを浴びながら花道を進む内山…。それだけで、ボクシングファンは泣いてしまいそうです。

リング誌もESPNも階級最強パンチャーと認めていたKOダイナマイトです。チャンスは、十分にあったと思います。

マイキーはジュニアウェルター級まで上げても、セルゲイ・リピネッツ、ロバート・イースターJr.との無敗対決を制しました。

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そして、キャリア初のアンダードッグとなったエロール・スペンスJr.戦では、あのシュガー・レイ・レナードの記録を更新する、史上最少10試合での5階級制覇に挑みます。

126ポンド(フェザー級)王者が、147ポンド(ウェルター級)王者になる。ボクシング150年の歴史で、そんな空前絶後の離れ業をやってのけたグレートはヘンリー・アームストロングとマニー・パッキャオの二人だけです。

2019年3月16日、テキサス州アーリントンはAT&Tスタジアム(カウボーイズスタジアム)。

プロ初黒星を喫したマイキーは、トレーナーの兄ロベルトの「棄権しよう」という助言を遮り、12ラウンド終了ゴングが鳴るまで、階級最強王者の前に立ち続けました。


マイキーの輝かしいキャリアで惜しむらくは、トップランクとの闘争で失った2年半もの時間です。

2014年1月25日(ファン・カルロス・ブルゴス戦)から、2016年7月30日(エロイ・ロハス戦)。年齢にして26歳から28歳までの2年6ヶ月と5日、トップランクからの独立闘争を法廷で展開、軽量級ボクサーにとって貴重な時間を喪失してしまいました。


「アリ法」以降の時代でも米国市場に大きな影響力を持つ大手プロモーターの犠牲者、と言って良いかもしれません。

高い志を持つ傑出した才能が潰される、その最大の被害者は本人だけではありません。私たち、ボクシングファンも、きっと見る事が出来たいくつものスペクタクルを奪われた被害者です。 
ワシル・ロマチェンコだけでなく、マニー・パッキャオとのメガファイトも交渉のテーブルに乗ったことがありました。




お疲れ様でした。それしかありません。
「マイキーの練習と試合を見ればトレーナーも教科書も要らない」と言われた美しいボクシング、兄ロベルトの血統を見るまでもなく、素晴らしい指導者になるのは間違いないでしょう。