キックボクシングは日本で生まれたドメスティック極まる格闘技。

それは間違いではありませんが、ムエタイや空手はボクシングほどではないにせよ、世界各地に愛好家が分布、 ルールの違いはあれ拳と蹴りを使う格闘技の団体が世界各地に生まれています。

最大勢力は、もちろんムエタイ。ここから国際式(ボクシング)に転向して大きな成功を収める〝キックボクサー〟は数え切れません。

「キックボクサーからボクシングに転向して成功した選手はいない」。こんなジンクスは大嘘です。

タイの国技、ムエタイはその勝敗が賭けの対象にされますが、トップ選手の競技人口が少ないため同じマッチアップが繰り返される傾向が強く、あまりに強いと賭けの対象としての商品価値がなくなりかねません。

かくして、ムエタイの競技と賭けの枠にハミ出た選手が国際式に活躍の舞台を移すのです。

キックボクシングの枠からハミ出た那須川天心のボクシング転向は、ムエタイから国際式とよく似た構図です。

センサク・ムアンスリンもそんな規格外のムエタイ戦士でした。

国際式転向の時点から「史上最短で世界奪取」を目論み、予定通りにペリコ・フェルナンデスを破って3戦目で世界奪取。

この記録は、ワシル・ロマチェンコがタイで並んでおり、2018年7月15日にはマレーシア・クアラルンプールで行われたマニー・パッキャオvsルーカス・マティセのアンダーカードでルー・ビン(呂斌)がWBAジュニアフライ級王者カルロス・カニザレスに挑戦、プロ2戦目でのタイトル奪取を目論みました(12ラウンドTKO負けで最短記録更新ならず)。

天心が穴王者に狙いを絞り、あるいはわけのわからない選手との決定戦をでっちあげれば、それこそ「デビュー戦で世界王者」も可能でしょう。

もちろん、その場合は欧米の人気階級では無理ですから、日本に簡単に引っ張り込め、好き放題できるジュニアフェザー級以下の超軽量級に限定されますが。