パック・ロスに悶え悩む私の「Best of Pac-Man〜マニー・パッキャオ10番勝負」5位から1位まで、です。
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★5位★【2014年4月12日】ティモシー・ブラッドリー2=168/175=

初戦はWBOが誤審を認める不可解な判定で失ったパッキャオでしたが、再戦ではきっちり雪辱。

議論を呼ぶ判定とはいえ初戦を取ったことで、ブラッドリーはパッキャオと3試合も拳を合わせる幸運に恵まれました。



33勝13KO2敗1分。2つの黒星はいずれもパッキャオに喫したもので、今は「パッキャオにしか負けなかったチャンピオン」としてESPNの解説者として活躍しています。 





パッキャオのジョーカーを持っていたファン・マヌエル・マルケス。

このときのパッキャオは、ジュニアライト級のリング誌&WBC王者マルケスへの挑戦者。第3ラウンドにダウンを奪ったパッキャオがクロスゲームを制してアジア初(当時)の4階級制覇を達成。

この2008年は、6月にWBCライト級王者デビッド・ディアスを撃沈して5階級制覇、12月にはオスカー・デラホーヤ戦とスターダムの頂点に一気に駆け上がった濃密な1年でした。



互いに真剣を振り回すような緊張感のある対決は、第3戦、第4戦と物語を紡いでゆきました。

初戦のファーストラウンド、マルケスが3度倒された時点で主審が試合をストップしていたなら…物語に続きはなかったでしょう。

初戦で敗れたパッキャオのリベンジマッチ。

モラレス陣営は、パッキャオのキャンプにドーピング検査と称して採血に押しかけるなど、Aサイドの工作活動を展開するも、二人の実力差は初戦から大きく離れてしまっていました。



あの打たれ強いモラレスをグラつかせるパッキャオに「こいつどんだけパンチが強いんだ」と度肝を抜かれました。



アジア人初の3階級制覇。

しかも、チャチャイ・ダッチボーイジム(フライ級)、リーロ・レジャバ(ジュニアフェザー級)、バレラ(フェザー級)といずれも階級最強を大番狂わせでストップした大金星です。

360度アウエーのアラモドーム。花道をリングに向かうパッキャオに、フレディ・ローチは「勝ったらすぐにロッカーに逃げるぞ。ぐずぐずしてると殺される」と冗談か本気かわからない言葉を吐き、初回に足を引っ掛けられて倒れたパッキャオがダウンを取られると観客が「まだ早い1もうちょっと頑張れ!」と罵声が飛んだという、伝説だらけのビッグファイトです。

それにしても、ローレンス・コールのジャッジは今更ながら酷い。さすが史上最低の主審です。
 


バレラはゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)と大型契約を結んだ第1戦で、メディアは「1階級下の雑なパッキャオを選んだボーナス試合」と見ていましたが…結果は「GBPと大型契約を結ぶと初戦で負ける」というジンクスの始まりでした。

そして、この大勝利でファイティング原田のアジア最高ボクサーの地位が揺らぎます。

当時は「原田のフライ、バンタムの2階級制覇はいずれも1団体時代のUndisputed champion、フェザー級も実質勝利していた。パッキャオの3階級制覇とは同列に比べてはいけない」という意見もありましたが、パッキャオはそんな議論も無駄に見える業績を重ねて、原田を「日本歴代最高ボクサー」に落としてしまいます。





パッキャオのファイトマネーは、1100万ドルが最低保証。リーマンショックに直撃された時期にもかかわらず、PPVは 125万件を売上げ、歩合収入も加算されると最終的な取り分は2000万ドルを超えました。

これは、2005年1月のプロデビューから14年間、52戦(47勝35KO3敗2分)のキャリアで積み上げた生涯報酬以上の金額を36分間で稼いだ計算です。


「デラホーヤは減量に失敗、体調を崩していた」というのは、後付けの結果論で、前の年にはフロイド・メイウェザーと激戦を繰り広げた35歳、メイウェザーとの再戦を想定してスティーブ・フォープス、そしてパッキャオとスピードのある相手を選んだとも考えられていました。

絶不調のデラホーヤと、絶好調のパッキャオでも勝ち目はない。そう考えられていたのです。 体格差、階級の壁はそれほど大きく、高く、分厚いものだと。

それでも、試合前は「事故が起きたらネバダ州が責任を取れるのか?」と騒がれ、フィリピン国会では試合中止の法案が可決するなど、誰もがパッキャオの勝ち目はゼロと考えていたのです。

日本でも「勝敗予想よりもこんな試合が成立するのが不思議」(川島郭志)と見られ、上田晋也は「なんでパッキャオなんだ?マルガリートとやるなら応援するけど、ちょっと違うんじゃないか」とデラホーヤに対する批判も少なくありませんでした。

しかし、専門家やファン予想がミスマッチとデラホーヤ勝利を確信する一方で、ウィリアム・ヒルのオッズが2-1と接近、掛け率では大番狂わせの数字ではありませんでした。

このパッキャオ贔屓は「THE DREAM MATCH」の文字通りに、パッキャオに夢を賭けたギャンブラーが多かったことを意味します。

メキシコの血を引くデラホーヤでしたが、小さなパッキャオを選んだことに加えて、出版したばかりの「America's Son=アメリカの息子」という自伝本もメキシコのファンから「コウモリ野郎」と批判され、試合の入場シーンではデラホーヤへのブーイングも聞こえます。

メキシコ目線では、小さい相手を選んだマッチョでないだけでなく、裏切り者のレッテルまで張られてしまったのです。

試合は「6人の敵と戦っているようだった」というデラホーヤの言葉が全てを表現してくれています。

第8ラウンド終了のインタバルで、デラホーヤがマウスピースをはめずにゆっくりと立ち上がり、対角線のパッキャオのコーナーに歩き出したとき、それは軽量級のボクシングが、世界を制圧した瞬間でした。 

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※試合の重要度を度外視して、単純に「体格差のある相手」ということなら…以下の〝巨人〟たちとも戦いました。

【2010年3月13日】ジョシュア・クロッティ=173/178=


【2010年11月13日】アントニオ・マルガリート=180/185


【2014年11月23日】クリス・アルジェリ=178/183=


【2017年7月2日】ジェフ・ホーン=175/173=


【2021年8月21日】ヨルデニス・ウガス=175/175=