法律が無ければ、犯罪も無い。当たり前です。

世界的な統括団体が無いボクシングにおいて、ドーピングや犯罪行為が露見しても、そのペナルティは試合を統括するローカル・コミッションに委ねられます。

ルイス・ネリは山中慎介戦との初戦で、帝拳が費用負担したドーピング検査で禁止物質が陽性反応、日本ボクシング・コミッションによって日本のリングから事実上の永久追放処分が科されました。

しかし、メキシコでの活動はフリー、現在では日本を除くあらゆる国のコミッションがネリのライセンスに制限を加えていません。

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2009年、アントニオ・マルガリートはシェーン・モズリーの試合前のグローブチェックでバンテージに乾くと石膏状に固まる液剤を染み込ませていたことが判明。

カリフォルニア州アスレティック・コミッションはマルガリートのライセンスを停止しましたが、やはりメキシコなどでの試合は認められ、翌2010年にはあろうことか、テキサス州のカウボーイズ・スタジアムでマニー・パッキャオとのメガファイトの舞台に上がるのです。

ネリのドーピング、マルガリートの石膏バンテージはいずれも故意とは認められませんでしたが、そんな言い訳が通用するなら警察は要りません…そう、ボクシングの世界にはそれを〝犯罪〟として〝懲罰〟を与える法律も警察も存在しないのです。

プロ野球で日本人初のドーピング違反の汚名を被った井端弘和の違反物質は、目薬に含まれていたもので、本人も中日球団も「治療目的の使用」と申請・受理されていましたが、更新手続きを忘れていたため、アウトになりました。

最上の舞台である世界戦をローカル・コミッションが統括している、という驚愕の倒錯は、許されざるルール違反があっても罰則はローカルにとどまってしまう危険を常に孕んでいます。


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カネロ・アルバレスのドーピング検査陽性となったメキシコ産牛肉については、サッカー・メキシコ代表が2011年ゴールドカップで、5選手がドーピングテストで陽性を示して大会を追放されるなどボクシングに限ったスキャンダルではありません。
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イベンダー・ホリフィールドやロイ・ジョーンズJr.、バルコスキャンダルに関わったモズリーらはドーピング不問で一発殿堂です。

この件に関して、あからさまなドーパーとは言い難いカネロですが、もちろんイメージダウン。

シュガー・レイ・レナードやフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオらが疑惑の範囲内だったのに対して、クロに足を踏み入れたのですから。

それでも、カネロも前例に倣って一発殿堂でしょう。

カネロとレナードらを隔てているのは、ドーピング問題よりも、スーパースターへの道程でしょう。

スーパースターのAサイドになるまでのマッチメイクの厳しさは、パッキャオが群を抜いて過酷な試合を潜り抜けてきました。

パッキャオを論外、例外とするとレナード>>>>>メイウェザー>>デラホーヤの順でしようか。

カネロはパッキャオとは逆にヌルいマッチメイクでスーパースターの座を手に入れました。

米国にファンベースを持たない軽量級のアジア人という〝卑しい〟出自から番狂わせを繰り返しながら、スターダムの階段を駆け上がったパッキャオのマッチメイクが厳しくなるのは当然です。

一方で、五輪金メダリストのレナードには破格の待遇でデビュー戦がセット、デラホーヤもデビューから温室に覆われた線路が用意されました。

メイウェザーは金ではなく銅メダル、それでもデビュー戦から注目され、けして恵まれた報酬とはいえないものの、パッキャオのような無謀なマッチメイクとは無縁でした。

レナードやデラホーヤ、メイウェザーには、スターへのパスポートが交付されていたのです。


しかし、パスポートを持っていないカネロがなぜかプロテクトされたキャリアを歩んで行くのです。

Free ride=〝無賃乗車〟と揶揄されるのも当然のことでした…。