根尾昂の投手転向が厳しい視線に晒されているのは、根尾という才能に対する球団の優柔不断で朝令暮改な態度だけではありません。

「野手から投手に転向して成功した選手はいない」。

それは、ジンクスと呼ぶにはあまりにも重く、枕に「プロで」まで付けると成功者は一人もいない絶対の真理になっています。

野球からゴルフに転向しても、逆はない。スピードスケートから自転車競技に転向はあっても逆はない…。
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しかし、「キックボクサーからボクシングに転向して成功した選手はいない」、これは逆もそうです。ボクサーからキックに転向して成功した選手はいません。

落ちぶれたボクサーがキックボクシングに転向するから通用しないだけ、西城正三らはもちろん、魔裟斗もボクシングの落ちこぼれ…。

そう反論するかもしれませんが、それは狭い島国の中だけのジンクスです。

「キックボクサーからボクシングに転向して成功した選手はいない」。それは世界的には全く通用しない、くだらない迷信です。

「野手から投手に転向して成功した選手はいない」。田中将大も〝転向組〟だと言うと、多くの人は「それは小学生の頃の話。ボーイズリーグですでに投手として活躍していた」と笑うでしょう。

つまり「まだあらゆるポテンシャルが残されている段階、年代での転向にそんなジンクスは当てはまらない」ということです。

では、23歳の那須川天心は「あらゆるポテンシャルが残されている段階、年代」をもう通り越しているのでしょうか?

「私は4年前、那須川を見た時に感じたことがある。75年にプロ3戦目で世界王座を獲得したムエタイ出身のサンセク・ムアンスリン(タイ)の記録に並ぶことができるのは、日本人で那須川しかいない」と。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者、大橋秀行ジム会長)

呼吸するように嘘を吐く大橋会長だけに「プロ3戦目」はさすがにありえません。

そして、やはり多くの人は「日本限定の層もレベルも低いキックの選手が、世界的な土壌のあるボクシングに通用するわけがない」と笑うでしょう。

つまり「レベルの低い競技から、高い競技への転向が成功するわけがない」と。

しかし、バンタム級やジュニアフェザー級での世界王者なら、そこまで層が厚くレベルも高いわけがありません。軽量級はウェルター級やミドル級とは全く違う世界です。

「キックボクサーからボクシングに転向して成功した選手はいない」という日本限定の迷信を解き明かし、那須川天心が「あらゆるポテンシャルが残されている段階、年代」を通り過ぎてしまったのか、「バンタム級やジュニアフェザー級での世界王者はキックと比べて絶望的にレベルが高いのか」を考えてみましょう。

大橋会長はムアンスリン超え(ワシル・ロマチェンコもプロ3戦目で世界ゲット)はいつもの適当節ですが、軽量級の世界王者なら十分チャンスがあり、強豪王者に成長する可能性もあるでしょう。

根尾の挑戦も心から応援していますが、根尾の投手成功よりも、天心のボクシング世界王者(ジュニアフェザー以下)の方がはるかに可能性、確率が高い挑戦です。