今、世界で最も面白いファイターはアルトゥール・ベテルビエフと、井上尚弥です。

しかし、米国ではベテルビエフはマディソン・スクエア・ガーデンのシアター、井上に至ってはまともな舞台すら用意されません。

ベテルビエフとドミトリー・ビボルの完全統一戦でも、大会場や破格の報酬は難しいでしょう。

この二人の価値を理解できない米国のボクシングファンが不憫でなりません。だから市場が没落するのです。

ボクシングど素人のメキシコ系のファンのためにも「ベテルビエフvsカネロ・アルバレス」をセットしてあげて欲しいです。

誰にでもわかる試合こそが、専門家にもコアなファンにも歓迎される試合です。

「(3人のジャッジが115−113というアナウンスを聞いて)そういうことか、と思った。負けたと思った」(ビボル)なんて試合ばかり見てると目が腐ります。



319秒で終わった試合のパンチスタッツを見る必要性を感じませんが、初回だけを切り取って見るのは意味がありそうです。

まずは319秒の全体数字から。

PUNCHESBETERBIEV SMITH
Total landed4811
Total thrown10267
Percent47%16%
Jabs landed144
Jabs thrown3933
Percent36%12%
Power landed347
Power thrown6334
Percent54%21%

ジョー・スミスJr.のスタイルと性格が早いKO劇を演出した側面もありますが、パンチスタッツから浮かび上がるのはベテルビエフの正確さ。

現実の試合を見てしまうと、あまりのパワーに目が奪われてしまいますが、数字から見えてくるのはベテルビエフの巧さです。

   First round Punch-stats
PUNCHESBETERBIEV SMITH
Total landed187
Total thrown4737
Percent38.3%18.9%
Jabs landed73
Jabs thrown2219
Percent31.8%15.8%
Power landed114
Power thrown2518
Percent44%22.2%  

初回は、終了間際にダウンを奪われるまではスミスがうまく戦っていたようにも見えましたが、ジャブもパワーパンチもベテルビエフが手数で上回り、的中率に至ってはほぼダブルスコア。

恐怖のハードパンチャーに手数と精度で圧倒されたスミスが下がらずに前に出続けてしまうと、次のラウンドで起きる事態は必然でした。

スミスのKO負けは、時間の問題だったことがよくわかります。

「じゃあ、もう一度やり直せるとしてスミスはどう戦えば良かったのか?」と聞かれると、あれしかありません。

むしろ、スミスが第2ラウンドまで持ったことは幸運でした。

「スタートからいくつかのミスを犯した」というベテルビエフの方が「もう一度やり直したら」初回で試合が終わっていたのは間違い無いでしょう。